社内表彰制度は、同じ人や営業部門に受賞が続くと、形だけの行事になります。Jリーグの年間表彰が選ぶ人・枠・資格を先に公表している仕組みを参考に、賞の目的と部門の設計、推薦と選考の手順、選考理由の公開を整えます。
対象となるお客さま
- 社内表彰制度の見直しを任された人事・総務の担当者
- 管理部門や製造部門の貢献も認めたい経営者・事業責任者
- これから表彰制度を導入する企業の担当者
よくあるお悩み
- 受賞者がいつも同じ人や営業部門になる
- なぜその人が選ばれたのかを説明できない
- 人事評価との違いを聞かれても答えられない
課題|受賞が同じ人と部門に続くと、表彰は社員の士気につながらない
厚生労働省のモデル就業規則は、表彰について「労働者の士気を高め、会社の業績や生産性の向上等を図ることを目的として設けられるもの」と説明しています。ところが受賞者が決まった人や部門に続くと、ほかの社員にとっては自分と関わりのない行事になります。これでは目的に届きません。
偏りが生まれやすいのは、成果の見え方が部門で違うからです。売上や受注件数はそのまま比べられます。一方で、事故を防いだ点検、請求ミスを減らした手順の見直し、後輩の育成は、同じ数字に置き換えられません。何も起きなかったことが成果になる仕事は、特に目に留まりにくくなります。
原因|賞の目的、選ぶ人、評価との違いが決まっていない
受賞者の力量や、ほかの部門の努力不足の問題ではありません。制度の決め方に、次の3つの原因があります。
- 1つの賞に目的を詰め込む:業績を称えるのか、改善を広げるのか、支える仕事を認めるのかが分かれていないと、比べやすい数字で決まります。
- 選ぶ人と理由が見えない:誰がどの基準で選んだのかが分からず、受賞者の名前だけが発表されると、何をすれば認められるのかが社内に伝わりません。
- 人事評価と同じ物差しを使う:評価の高い人をそのまま表彰すると、同じ人が続きます。評価で見ていない貢献は、表彰でも拾えません。
見直しの最初にするのは、新しい賞を考えることではありません。直近の受賞者を部門別に並べ、どこに偏っているのかを事実で確かめることです。
スポーツ知見|Jリーグは選ぶ人と枠と資格を公表して年間表彰を決める
Jリーグは、年間表彰の決め方を「表彰概要」として公表しています。2025年の概要は11月5日に発表され、12月11日の表彰式より前に、選ぶ人と基準が分かる形になっていました。前年からの変更点も太字と下線で示しています。
- 誰が選ぶか:投票するのはJ1の20クラブの監督と選手、選考委員です。選考委員会はチェアマンと各クラブの実行委員など計21名で構成されます。ベストイレブンは投票の上位からDF・MF・FW・右サイド・左サイドを1名ずつ選び、GKを含む残り6名を選考委員が決めます。
- 何を基準にするか:最優秀選手賞やベストイレブンの対象は、J1で19試合以上に出場した選手です。投票の資格では、代表活動で出られなかった試合を出場数に加えます。賞も分かれており、得点王は最多得点者、フェアプレー賞は計算方法を定めた反則ポイント、最優秀主審賞は3つの評価を1対1対1で合わせた点で決めます。ベストヤングプレーヤー賞は21歳以下で過去の受賞者を除き、優秀監督賞は優勝監督を除きます。
- 結果をどう公開するか:受賞者の発表には選考方法を添えます。優秀監督賞は得票順位表も発表しました。
決め方は固定ではありません。2020年の概要では、投票の上位からGK1名・DF3名・MF3名・FW1名を選び、残り3名を選考委員会が決めていました。これを2024シーズンに今の枠へ変えています。2025年のベストイレブンは7クラブから選ばれました。
(参考)2025Jリーグ表彰概要 – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ
(参考)2025Jリーグ表彰概要について – Jリーグ公式サイト
(参考)2025Jリーグ 各賞決定のお知らせ – Jリーグ公式サイト
(参考)最優秀選手賞・ベストイレブン等の決定(2025年12月11日) – Jリーグ公式サイト
(参考)2024Jリーグ優秀選手賞 受賞選手決定(選考方法の変更) – Jリーグ公式サイト
(参考)2020Jリーグ表彰について(投票方法の変更) – Jリーグ公式サイト
ただし、試合と仕事は同じではありません。試合は出場数や得点、反則が公式の記録として残り、どのクラブの選手も同じ尺度で比べられます。会社は部門によって成果の見え方が違うので、数字をそのまま並べても公平にはなりません。そこで、部門ごとに枠を設け、部門内で比べます。数字のない貢献は、推薦する人が事実を書いて示します。投票する人が少ない部門では数票の差で結果が変わるため、投票だけでは決めず、選考委員の審議と組み合わせます。
解決策|賞を目的別に分け、推薦・選考・公開の手順を先に決める
式の演出や副賞から変えることはしません。先に、次の3つを文書にします。
- 賞の目的と部門を設計する:業績、改善、支える仕事、育成のように賞を目的で分け、賞ごとに対象の部門、最低条件、在籍期間、休業中や異動した人の扱いを決めます。同じ人の連続受賞をどうするかも、ここで決めます。
- 推薦と選考を分ける:部門長と同僚が、何をして何が変わったのかを事実で書いて推薦します。選考委員は部門を超えて構成し、自分の部門の候補者の審議からは外れます。
- 選考理由を公開する:受賞者の名前に、賞の目的と選んだ理由を添えて社内に出します。公開する内容は、事前に本人に確かめます。
あわせて、人事評価や賃金と切り離します。表彰の結果を査定の点数にせず、評価の結果を受賞の条件にもしません。なお、表彰の定めをする場合は、種類と程度を就業規則に記載する必要があります(労働基準法第89条第9号。常時10人以上の労働者を使用する使用者が対象)。個別の判断は社会保険労務士にご確認ください。
進め方|受賞者を棚卸しし、次の表彰で試してから定例にする
制度全体を一度に作り替えると、社員には変更の理由が伝わりません。これまでの偏りを事実で示したうえで、次の1回で試し、結果を見て直します。
診断では、直近の受賞者を部門・職種・受賞回数で並べ、規程と選考の実態を聞き取ります。設計・試行では、賞の目的と部門、推薦と選考の手順、公開の様式を決め、次の表彰で実際に使います。定着では、推薦の状況と社員の声をもとに翌年の設計を直し、見直しを社内の予定に組み込みます。
期間は目安で、表彰の時期に合わせて調整します。Human Soarは様式の用意、聞き取り、受賞者の分析、規程案の文書化を担い、御社には過去の受賞者の情報と規程の共有、選考委員の選任をお願いします。
成果物|担当者が替わっても同じ基準で選べる4つの様式
成果物は、御社の部門と過去の受賞者をもとに一緒に作ります。ひな形を渡して終わりにはしません。
最初に作るのが「表彰の目的と部門の設計表」です。賞ごとに目的、対象の部門、最低条件、受賞者の数を1枚にまとめ、経営会議で制度の全体を確かめるときに使います。次の「推薦と選考の手順書」は、推薦の時期、書く項目、選考委員の決め方、審議から外れる場面を定めたもので、人事の担当者が毎回の進行に使います。
「選考理由の公開様式」は、賞の目的、受賞者、何をして何が変わったのか、本人の確認を決まった形で残すものです。社内報やイントラネットに載せるときに、そのまま使えます。最後の「年次見直しの手順」では、毎年の表彰の後に受賞者と推薦の分布を確かめ、賞や部門の枠を変えるかを決めます。変更点は翌年の募集の前に社内へ公表します。
期待できる効果|経営・人事・現場の3つが変わる
経営にとっては、会社がどの貢献を大事にしているのかを、賞の目的と選考理由で社内に伝えられるようになります。人事の担当者は、なぜその人なのかを聞かれたときに、決めた手順と記録で答えられます。現場では、売上のような数字に表れにくい仕事にも、推薦される道ができます。
見る数字は「推薦のあった部門の数と推薦の件数」です。受賞の前に推薦が広がっているかが分かります。もう1つ「初めて受賞した人の割合」を見ると、同じ人に続いていないかを確かめられます。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、制度を見直す時期です。
Human Soarからのコメント
表彰は、会社が何を大事にしているのかを社員に伝える数少ない場です。だからこそ、誰がどの基準で選んだのかを説明できる形にしておきたいと考えています。Jリーグの表彰の決め方を手がかりに、御社の仕事に合った賞の目的と選び方を一緒に整えます。
よくあるご質問
Q. 部門ごとに枠を設けると、受賞の基準が甘くなりませんか?
枠は受賞者を必ず出すためのものではありません。賞ごとに最低条件を決め、満たす人がいない年は該当者なしにします。部門の中で比べるので、売上などの違う物差しで比べるより基準を説明しやすくなります。
Q. 受賞の結果を人事評価や昇給に反映してもよいですか?
おすすめしません。人事評価は処遇を決める場で、表彰は貢献を社内に伝える場なので、目的が違います。反映すると表彰が処遇を決める手続きになり、選考理由を社内に公開しにくくなります。処遇への反映を検討するときは、社会保険労務士に確かめたうえで評価制度の側で扱います。
Q. 賞金や記念品を出すときに確かめることはありますか?
就業規則と税の扱いの2つです。表彰を定めるなら、種類と程度を就業規則に記載します。税は支給するものや条件で扱いが変わり、国税庁は創業記念や永年勤続の記念品について、代わりに現金や商品券を支給すると全額が給与として課税されると示しています。個別の判断は社会保険労務士と税理士に確かめてください。
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