ナレッジ共有が進まないなら書き手を変える|サッカーの技術報告に学ぶ

ナレッジ共有が進まないなら書き手を変える|サッカーの技術報告に学ぶ ソリューション
SOLUTION|ナレッジ共有 × 組織開発

ツールを入れたのに、書かれない、読まれない、ベテランのコツが残らない。原因の多くは、書く人と届け先が決まっていないことにあります。サッカーの技術報告は、チームとは別の分析班が試合を読み解き、届け先まで決めて共有します。この形を参考に、編集担当が聞き取って必要な人へ届ける体制を整えます。

ナレッジ共有暗黙知技能継承組織開発

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対象となるお客さま

  • ナレッジ共有ツールを入れたものの、活用が進まない企業の経営者・事業責任者
  • ベテランの退職や異動を控えた部門の責任者
  • 技能継承や社内教育を担当する人事・人材開発の担当者

よくあるお悩み

  • 書くのはいつも同じ数人で、更新が止まっている
  • 文書はたまるのに、必要な場面で読まれていない
  • ベテランの判断の理由が、本人の頭の中にしか残っていない
ISSUE

課題|技能継承に問題がある事業所は44.2%、製造業では65.8%

ナレッジ編集体制プログラム|技能継承に問題がある事業所の割合を業種別に比べた順位と、製造業の企業が答えた重視の度合いと進み具合

ベテランの退職が来月に迫っている。後任が手順書を開いても、難しい注文をどこで断り、どこで引き受けてきたのかは書かれていない。ナレッジ共有(仕事で得た知識や経験を、組織で使える形にすること)が進まないとは、こうした場面で判断の材料が手元にないということです。

国の統計に「ナレッジ共有」という項目はありませんが、近いものに技能継承の調査があります。厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」(令和7年10月1日時点、常用労働者30人以上の事業所が対象)では、技能継承に問題があるとした事業所は44.2%でした。製造業は65.8%、建設業は59.2%、学術研究・専門・技術サービス業は56.2%です。情報通信業は27.9%で、業種によって差があります。

労働政策研究・研修機構が製造業を調べた調査(2025年10月1日時点、有効回収4,342社)では、技能継承を「重視している」「やや重視している」企業が合わせて9割を超えました。一方で、「うまくいっている」「ややうまくいっている」は合わせて33.3%です。大事だと分かっていても、思うように進んでいない企業のほうが多いのです。

(参考)令和7年度「能力開発基本調査」の結果を公表します – 厚生労働省

(参考)令和7年度「能力開発基本調査」調査結果の概要 – 厚生労働省

(参考)「ものづくり産業における人材確保・定着と技能継承に関する調査」結果(2026年5月27日) – 独立行政法人労働政策研究・研修機構

CAUSE

原因|忙しい本人に書いてもらい、読む場面を決めていない

ナレッジ編集体制プログラム|技能継承の取組の内容の順位と、ナレッジ共有が進まない3つの原因

ツールの機能だけの問題ではありません。厚生労働省の同じ調査で技能継承の取組の内容を見ると、「中途採用を増やしている」が56.2%、「退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」が54.7%で、人を増やす、残す方法が上位です。ノウハウ等の「文書化、データベース化、マニュアル化」は22.0%、「絞り込んで伝承している」は12.4%でした。

問題点では「技術・ノウハウ等の伝承に時間がかかり円滑に進まない」が60.6%なのに対し、「どのような手法を用いて技能を伝承すればよいかわからない」は10.5%です。製造業の調査でも、うまくいっていない理由に「時間的な余裕がないから」が50.0%挙がりました。やり方より、時間をどう確保するかが壁になっていると読めます。仕組みの面では、次の3つが欠けています。

  • 書く人が当事者のまま:本業の合間に書いてもらう形では、知見を持つ人ほど書く時間がありません。
  • 読む人と使う場面が決まっていない:保管場所に置くだけでは、探しに来た人にしか届きません。来週の案件で使うのか、新人の研修で使うのかを決めなければ、読まれる理由が生まれません。
  • 判断の理由が抜け落ちる:暗黙知(経験から身についた、言葉にしにくい知識)は、本人も意識していないことがあります。手順は書けても、なぜそう判断したのかは、聞かれて初めて言葉になります。

(参考)令和7年度「能力開発基本調査」調査結果の概要 – 厚生労働省

(参考)「ものづくり産業における人材確保・定着と技能継承に関する調査」結果(2026年5月27日) – 独立行政法人労働政策研究・研修機構

SPORTS INSIGHT

スポーツ知見|サッカーは別の分析班が試合を読み解き、届け先まで決める

ナレッジ編集体制プログラム|日本サッカー協会のテクニカルスタディの流れと、短期・中期・長期の反映先

サッカーでは、大会の分析をテクニカルスタディグループ(TSG)が担います。戦うチームとは別に編成する分析班です。国際サッカー連盟(FIFA)は、1966年のワールドカップからTSGの報告書を作っています。2026年大会のTSGは、元選手や指導者ら10人のメンバーをデータの分析担当が支える体制で、全104試合を分析しました。2026年10月2日に公表した報告書は、専門家の知見とデータ・映像の分析を組み合わせ、9つの戦術研究を収めています。

日本サッカー協会(JFA)では、技術委員会がTSGを編成し、日本が出場していない大会も含めて各年代の世界大会を視察し、レポートを作っています。カタール大会では現地で各試合を分析し、大会全般、技術・戦術、日本の闘い、育成への示唆までをまとめ、2023年6月からJFA公認指導者資格を持つ人に電子版で販売しました。2023年1月のフットボールカンファレンスはこのレポートをテーマに開かれ、会場に約500名、オンラインに約1000名の指導者が参加しました。

JFAは、報告して終わりでは意味がないとしています。課題を取り出し、解決の道筋を作り、必要なところへ伝えて実施してもらう流れです。反映先も時間で分けていて、短期のものは代表チーム、中期のものはユース育成と指導者養成、長期のものは普及の現場へ送ります。書く人と届け先が先に決まっている。職場のナレッジ共有に足りないのは、この形です。

(参考)FIFA Technical Study Group publishes 2018 FIFA World Cup Russia report – FIFA

(参考)FIFA unveils Technical Study Group for FIFA World Cup 2026 – FIFA

(参考)FIFA publishes comprehensive post-tournament report on FIFA World Cup 2026 – FIFA

(参考)選手育成のコンセプト – 公益財団法人日本サッカー協会

(参考)FIFAワールドカップカタール2022テクニカルレポート JFA公認指導者資格保有者に向けて販売開始 – 公益財団法人日本サッカー協会

(参考)「第13回フットボールカンファレンス」が開会 – 公益財団法人日本サッカー協会

ただし、試合と仕事は同じではありません。試合は映像とデータが残り、同じ場面を何人でも見直せます。仕事の判断は記録に残らないことが多く、顧客情報や機密も含みます。そのため、映像の代わりに本人への聞き取りと書類で補い、公開する範囲を知見ごとに決めます。大会のような区切りもないので、四半期ごとに区切ってまとめます。

SOLUTION

解決策|本人に書かせず、編集担当が聞き取って届け先別にまとめる

ナレッジ編集体制プログラム|編集担当の任命、テーマの絞り込み、聞き取りと知見カード、届け先別の共有の4つの変更

新しいツールは前提にしません。いまのツールを使ったまま、書く人と届け方を次の4つに変えます。

  • 編集担当を置く:現場を知る人と、文章をまとめる人を組み合わせ、期間を決めて任命します。兼務でかまいません。
  • テーマを絞る:全部を残そうとせず、間違えたときの損失が大きい判断や、特定の人に集中している判断から3つ選びます。
  • 聞き取って1枚にまとめる:編集担当が本人に聞き、見積書や報告書などの書類で裏付けます。どの条件で、何を見て、どう判断し、なぜそうしたかを「知見カード」1枚に書きます。
  • 届け先を分ける:今の案件の担当者へすぐ届けるもの、育成の教材に入れるもの、全社の標準を見直す材料にするものに分け、四半期ごとの共有会で説明します。

いちばん変わるのは、ベテランの役割です。書く人から話す人に変わるので、本業の合間に文章を作る必要がなくなります。そのかわり、聞き取りの時間を業務として工数に入れ、知見カードは本人の確認を受けてから共有します。

APPROACH

進め方|1部門の3テーマで、聞き取りから届けるまでを1周する

ナレッジ編集体制プログラム|診断・設計と試行・定着の3つのフェーズで、やること・役割分担・期間の目安

全部門で一斉に始めると、聞き取りの負担が読めないまま広がります。まず1部門の3テーマで、聞き取りから届けるまでを1周し、どれだけ時間がかかるかを確かめます。

診断では、いまのツールの利用状況と文書の更新状況を確かめ、ベテランへの聞き取りで、どの判断が特定の人に集中しているかを洗い出します。設計・試行では、編集担当を決めて3テーマの知見カードを作り、届け先で実際に使ってもらいます。定着では対象の部門を広げ、四半期の共有会を社内の担当者だけで回せるようにします。

期間は目安です。診断だけ、1部門だけといった始め方もご提案します。Human Soarは様式の用意、聞き取りの同席と進め方の指導、共有会の進行を担い、御社には編集担当の任命、話してくれるベテランの時間の確保、公開範囲の判断をお願いします。

OUTPUT

成果物|ベテランが異動しても聞き取りを続けられる4つの道具

ナレッジ編集体制プログラム|4つの成果物がつながる流れと、いつ誰が使うか

成果物は、ひな形を渡して終わりにはしません。どれも御社の実際の判断をもとに、一緒に作ります。

最初に作るのが「テーマ選定表」です。部門の責任者が半期に一度使い、どの判断を次に残すかを、間違えたときの損失と、担当できる人の数で決めます。次に、編集担当が聞き取りのたびに使う「聞き取り表」を整えます。手順ではなく判断の理由を引き出す質問をまとめたものです。

聞いた内容は「知見カード」の様式で1枚にまとめ、本人の確認を受けます。最後に「届け先表と共有会の手順」で、どのカードを誰に届けるか、四半期の共有会をどう進めるかを決めます。編集担当が交代しても、この4つがあれば同じ進め方を続けられます。

VALUE

期待できる効果|判断の理由が、必要な人へ届く状態になる

ナレッジ編集体制プログラム|見る数字の変更と、経営・部門の責任者・ベテラン・後任の変化

経営にとっては、誰の退職や異動でどの判断が失われそうかを、事前に一覧で見られます。部門の責任者は、特定の人に集中している判断を減らす順番を決められます。ベテランは文章を書く負担が減り、話した内容がどう使われたかを知ることができます。後任や若手は、手順だけでなく判断の理由を読めます。

見る数字は、投稿数やページの閲覧数ではありません。1つ目は「知見カードが届け先で使われた件数」で、研修や案件の準備で使われたかを確かめます。2つ目は「担当できる人が1人だけの判断の数」で、減っていれば属人的な判断が分散しています。投稿数は、中身が薄くても増やせるため、目標にしません。

COMMENT

Human Soarからのコメント

サッカーの世界では、大会が終わるたびに分析班が試合を読み解き、指導者たちへ届けることを続けてきました。戦っている本人に報告書まで任せない点に、学ぶところがあります。ナレッジ共有も、忙しい本人の善意に頼らずに進められます。御社の判断の現場に合わせて、聞き取りから届け先までの流れを一緒につくります。

FAQ

よくあるご質問

Q. ナレッジ共有ツールはすでに入れています。買い替えが必要ですか?

買い替えは前提にしません。ツールはそのまま使い、書く人、まとめ方、届け先を変えます。使い方を変えたあとで、検索や権限に不足が見えた場合にだけ、見直しを検討します。

Q. 暗黙知はどこまで形式知にできますか?

すべてを文書にはできません。言葉にできるのは、どの条件で、何を見て、なぜそう判断したかです。手の感覚や間合いのように文章で伝わりにくい部分は、動画や同行で補います。

Q. 編集担当を置く余裕がありません。小さな会社でも依頼できますか?

できます。編集担当は専任でなくてかまいません。まず1部門の3テーマに絞り、兼務の担当者が聞き取りとまとめを試します。負担を確かめてから、テーマの数と頻度を決めます。

元気な社員が、いちばんのマーケティングになる。

社員のウェルビーイングを高め、
その元気が自然と外に伝わる仕組みをつくります。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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