指示待ち部下の原因は任せ方にある|スポーツ心理学で見直す4手順

指示待ち部下の原因は任せ方にある|スポーツ心理学で見直す4手順 ソリューション
SOLUTION|人材育成 × スポーツ心理学

部下が指示を待ち、管理職が全部決めている。その原因を本人の性格ではなく、上司の関わり方と任せ方として扱います。スポーツ心理学が調べてきた指導者の関わり方をもとに、仕事ごとの決定範囲と任せる手順を決め、部下が自分で決めて動ける職場をつくります。

指示待ち管理職育成権限委譲人材育成

このプログラムについて相談する

対象となるお客さま

  • 部下の確認に追われ、自分の仕事に時間を使えない課長・チームリーダー
  • 管理職の育成を担当する人事・人材開発の担当者
  • 現場に判断を移したい経営者・事業責任者

よくあるお悩み

  • 「どうしましょう」と聞かれ、結局いつも自分が決めている
  • 「自分で考えて」と言うと、止まるか、勝手に進めて手戻りになる
  • 部下に注意しても、研修に出しても、動き方が変わらない
ISSUE

課題|「一人で仕事を進められる」と答えた日本の働き手は27.8%

任せ方設計プログラム|一人で仕事を進められるかの国際比較と、人材育成の問題点の割合

指示待ちは、部下一人の問題に見えます。ただ、国際調査で日本の働き手を見ると、自分で仕事を進める感覚そのものが低いことが分かります。

国際社会調査プログラム(ISSP)の1997年・2005年・2015年の調査を合わせて分析した論文によると、「一人で仕事を進められる」に肯定的に答えた人は、日本が27.8%、日本を含む10か国の平均が71.8%でした。計算すると約2.6倍の差です。否定的な答えも、日本は54.1%、10か国の平均は15.7%でした。

これは指示待ちそのものを数えた調査ではありません。日本の職場は同僚と協力して進める仕事が多いことも、論文は指摘しています。それでも、部下が自分の判断で進める場面をつくるには、職場の側で意識して設計する必要があると読み取れます。

(参考)An International Comparison of Japanese Jobs(Asuyama, 2025) – Japan Labor Issues vol.9 no.53, 労働政策研究・研修機構

育てる側にも余裕がありません。令和7年度の能力開発基本調査では、人材育成に問題があるとした事業所が80.1%で、その内訳は「指導する人材が不足している」が59.5%で最も多く、「人材育成を行う時間がない」も45.5%でした。

(参考)令和7年度 能力開発基本調査 調査結果の概要 – 厚生労働省

CAUSE

原因|上司が先に決めるほど、部下は自分で決める機会を失う

任せ方設計プログラム|上司が先に決めるほど指示待ちが続く流れと、任せ方に欠けている3つのこと

教える人も時間も足りないと、上司が自分で決めるほうが早く終わります。その積み重ねで、決定が上司に集まります。任せ方に欠けているのは次の3つです。

  • 決めてよい範囲が決まっていない:どこまで自分で決めてよいかが分からなければ、確認してから動くのが部下にとって安全な選択になります。
  • 条件と理由が伝わっていない:納期や予算、なぜその条件なのかを知らなければ、部下は判断の材料を持てません。
  • 上司が先に答えを言う:相談のたびに答えが返ってくると、自分で考えるより聞くほうが早くなります。

さらに、「あの部下は動かない」という見方が、上司の指示をいっそう細かくします。細かく指示されるほど部下は確認してから動くようになり、上司の見方が裏づけられたように見えます。こうして指示待ちは続きます。

決める余地を広げることは、働く側の受け止めとも関わります。令和元年版の労働経済の分析は2019年の調査をもとに、実施している企業と実施していない企業で働きやすいと感じる正社員の割合の差が大きい項目の一つとして、「業務遂行に伴う裁量権の拡大」を挙げています。

(参考)令和元年版 労働経済の分析(第2-(2)-13図) – 厚生労働省

SPORTS INSIGHT

スポーツ知見|スポーツ心理学では、重圧で強まる統制的な指導を訓練で抑えた実験がある

任せ方設計プログラム|スポーツ心理学が示す指導者の関わり方と、重圧の中で行われた実験の結果

スポーツ心理学には、指導者の関わり方が選手の意欲をどう左右するかを調べた研究があります。MageauとVallerandが2003年にJournal of Sports Sciencesで示した総説は、選手の自律を支える関わり方として7つを挙げました。決められた範囲と規則の中で選ばせる、課題や規則の理由を示す、選手の気持ちや見方を聞く、自分から動く機会をつくる、支配しない形で能力について伝える、といった内容です。放任とは違い、範囲は指導者が決めます。

同じ総説は、必要のない場面で手を貸し、指示に従わせる指導を「統制的な支援」と呼び、選手が自分から動く機会を狭めるとしています。また、結果への重圧やストレスが強いほど指導者は統制的(特定の考え方や行動をするよう圧力をかけること)になりやすいこと、指導者の自己評価は観察者の評価と結びつかず、自分の行動に気づきにくいことも、先行研究を引いて整理しています。

重圧の中で実際に確かめた研究もあります。Cheonらは2015年にPsychology of Sport and Exerciseで、2012年ロンドン・パラリンピックの準備期間に、10競技のコーチ33人と選手64人を2群に無作為に分けた実験を報告しました。関わり方の訓練を受けなかった群は、選手もコーチも意欲や取り組みが下がりました。訓練を受けた群はおおむね保たれ、選手のメダルも有意に多い結果でした。

2026年にInternational Journal of Sports Science & Coachingに掲載された系統的レビュー・メタ分析(複数の研究結果を統合する分析)は、102件の研究、のべ43,675人をまとめました。コーチの支援と選手の心理的な欲求の充足には相関があり(r=.47。rは相関の強さで、1に近いほど強い)、欲求の充足は自律的な意欲とも結びついていました(r=.37)。

(参考)The coach-athlete relationship: a motivational model(Mageau & Vallerand, 2003) – Journal of Sports Sciences

(参考)Giving and receiving autonomy support in a high-stakes sport context: A field-based experiment during the 2012 London Paralympic Games(Cheon et al., 2015) – Psychology of Sport and Exercise

(参考)Basic Psychological Need Support, Need Satisfaction, and Autonomous Motivation in Coach-Athlete Relationships: A Systematic Review and Meta-Analysis(Liu et al., 2026) – International Journal of Sports Science & Coaching

ただし、試合と仕事は同じではありません。これらの研究の対象は選手とコーチで、会社の上司と部下ではありません。実験も小規模な1件で、メタ分析の結果は相関のため、因果までは言い切れません。また、仕事には顧客や法令への責任があり、部下の判断の失敗を上司が引き受ける場面があります。

職場を調べた研究では、Slempらが2018年に72件の研究、のべ32,870人の従業員を統合し、上司の自律性支援(範囲の中で選ばせ、理由を示すなどの関わり方)と部下の主体的な行動に相関があると報告しました(ρ=.39、4件・1,146人)。ただし、対象の研究の多くは一時点の調査です。そのため、任せる範囲には上司が入る条件を必ず決め、1つのチームで試して確かめてから広げます。

(参考)Leader autonomy support in the workplace: A meta-analytic review(Slemp et al., 2018) – Motivation and Emotion

SOLUTION

解決策|決定範囲を仕事ごとに分け、4つの手順で任せる

任せ方設計プログラム|仕事を書き出して決定範囲を分ける作業と、任せ方の4つの手順

部下に「主体性を持て」と求めるのではなく、上司の任せ方を変えます。忙しいときでも同じように任せられるよう、次の4つを手順にします。

  • 決定範囲を仕分ける:上司が今決めていることを仕事ごとに書き出し、「部下が決める」「相談して部下が決める」「上司が決める」の3つに分ける。法令、安全、大きな損失に関わるものは上司が決める
  • 条件と理由を先に伝える:納期、予算、品質の条件と、その理由を伝える。範囲の中のやり方は部下が選ぶ
  • 部下の案を先に聞く:相談に来たら、上司の答えより先に「どうしたいですか」と聞く。案と理由をそろえて相談してもらう
  • 判断の中身を返す:結果だけでなく、何を見てどう判断したかについて具体的に伝え、人と比べない

最初の仕分けで、上司が入る条件まで決めておくことが要になります。これがないと、問題が起きるたびに上司が入り、部下は元の確認に戻ります。どの段階で相談するかを先に決めておけば、任せたあとの心配も小さくできます。

APPROACH

進め方|1つのチームで試してから、管理職全体に広げる

任せ方設計プログラム|診断・設計と試行・定着の3つのフェーズで、やること・役割分担・期間の目安

管理職研修だけで終えると、職場に戻ってから元の忙しさの中で続かないことがあります。まず1つのチームで、実際の仕事を使って試します。

診断では、上司が決めている仕事の棚卸しと、部下への短い調査を行います。上司の自己評価だけでは実態がつかめないことがあるので、部下の答えと並べて見ます。設計・試行では決定範囲表を作り、3か月実際の仕事で任せます。定着では管理職全体に広げ、月次レビューで範囲を見直します。

期間は目安です。診断だけ、1チームだけといった始め方もご提案します。Human Soarは調査の設計と集計、決定範囲表の案づくり、月次レビューの進行を担い、御社には対象チームの決定、管理職と部下の時間の確保、範囲の最終判断をお願いします。

OUTPUT

成果物|上司が替わっても任せ方が続く4つの道具

任せ方設計プログラム|決定範囲表・任せ方の確認シート・関わり方の調査票・月次レビュー手順の4つの成果物

成果物はどれも、御社の実際の仕事をもとに一緒に作ります。上司が異動しても、次の上司が同じ形で引き継げるものにします。

中心になるのが「決定範囲表」です。仕事ごとに誰が決めるかを1枚にまとめ、管理職が着任時や部下の異動時に更新します。仕事を任せるときは、上司が「任せ方の確認シート」で、条件、理由、相談する時点、上司が入る条件を部下と確かめます。

半年に1回は、部下が答える「関わり方の調査票」で、上司の自己評価との差を確かめます。これらの結果を「月次レビューの手順」に沿って管理職どうしで持ち寄り、任せる範囲を広げるか戻すかを決めます。支援が終わった後も社内で回せる形にして残します。

VALUE

期待できる効果|部下が決めた仕事の割合を数字で追える

任せ方設計プログラム|経営・管理職・部下・人事の変化と、任せ方を見直す時期かを確かめるセルフチェック

管理職は、確認に使っていた時間を、チームの方向づけや部下の育成に回しやすくなります。部下は、自分で決めてよい範囲が分かり、相談すべき場面も判断しやすくなります。人事は、管理職ごとの任せ方の違いを数字で見られます。経営は、現場に判断が移っているかを確かめられます。

見る数字は2つです。「決定範囲表のうち、部下が決める区分の仕事の割合」で任せる範囲を、「関わり方の調査票の結果」で部下の受け止めを確かめます。任せ始めの時期は、手戻りが増えることがあります。一時的な増減だけで判断せず、数か月の変化を月次レビューで見ます。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、任せ方を見直す時期です。

COMMENT

Human Soarからのコメント

大きな大会が近づくと、コーチの指導は統制的になりやすくなります。研究が示しているのは、それが指導者の性格だけで決まるのではなく、重圧という状況でも起こることです。忙しい管理職も、似た状況にいます。部下を責めるのでも、上司を責めるのでもなく、任せ方を仕組みにすることで、部下が自分で決められる職場を御社と一緒につくります。

FAQ

よくあるご質問

Q. 指示待ちの部下には、どう指導すればいいですか?

指示を減らす前に、部下が決めてよい範囲と守る条件を伝えます。そのうえで、相談に来たら上司の答えより先に部下の案を聞きます。手順を知らない仕事で止まっている場合は、先に手順を教えます。性格を直そうとするのではなく、仕事ごとの任せ方を変えます。

Q. 「指示待ちをするな」と「勝手に動くな」を、どう両立させますか?

決めてよい範囲を仕事ごとに書き出すことで両立させます。この2つの言葉がぶつかるのは、どこまで自分で決めてよいかが決まっていないからです。部下が決めること、相談して決めること、上司が決めることを分けておけば、部下は確認の要否を自分で判断できます。

Q. 経験の浅い部下にも任せてよいですか?

任せられます。ただし、最初は範囲を狭くします。やり方を知らない仕事を、説明なしに渡すことは任せることになりません。手順を教えたうえで、できるようになった仕事から決定範囲表の区分を一段ずつ移します。

元気な社員が、いちばんのマーケティングになる。

社員のウェルビーイングを高め、
その元気が自然と外に伝わる仕組みをつくります。

インナーマーケティングを知る →

About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

コメント

タイトルとURLをコピーしました