社員が辞めると決める前に、仕事の困りごとを聞けていますか。選手の自己申告が機能する条件を調べたスポーツ医科学の研究をもとに、短い申告と、見る人・使い道・返事のルールを設計します。個人を監視したり、離職の恐れを点数で判定したりはしません。
対象となるお客さま
- 突然の退職や、退職代行を通じた退職を経験した企業の経営者・人事責任者
- 部下の変化に気づくのが遅れて悩んでいる管理職がいる企業
- 従業員調査や離職予測のツールを、監視にならない形で使いたい人事担当者
よくあるお悩み
- 退職の連絡が来るまで、本人の不満にまったく気づけなかった
- 退職面談で聞いた理由が、本当の理由なのか分からない
- 調査を始めたいが、社員に見張られていると思われないか心配だ
課題|突然の退職は、本人が理由を言わないまま進む
ある朝、本人ではなく退職代行サービスから連絡が届く。上司が理由を尋ねようにも、本人とは話せない。引き継ぎも採用の準備もこれからです。困るのは人が抜けること以上に、何に困っていたのかを最後まで知らないまま、同じ職場が続くことです。
こうした退職は、すでに珍しくありません。マイナビの調査(2024年7月、中途採用を担当する人事1,600人)では、2024年1〜6月に退職代行サービスを使って退職した人がいた企業は23.2%でした。過去の実績は2021年16.3%、2022年19.5%、2023年19.9%です。2024年は半年分の数字であることに注意が必要です。
退職そのものも日常的に起きています。厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、年間の離職率は14.2%で、そのうち結婚・育児・介護なども含む個人的理由によるものが10.7%でした。退職を決めるのは本人であり、企業がなくせるものではありません。企業が変えられるのは、辞めると決める前に困りごとを聞けるかどうかです。
原因|本音を伝えても変わらないと思われている
気づけないのは、管理職の注意力だけの問題ではありません。原因は次の3つです。
- 言っても変わらないと思われている:働きがいのある会社研究所の調査(2026年8月、自分の意思で退職し転職した20〜30代の会社員330人)では、本当の退職理由をすべては伝えていない人が70.9%でした。伝えなかった理由で最も多いのは「本音を伝えても改善されないと思ったから」41.5%です。
- 日頃から上司に言いにくい:同じ調査で、直属の上司に意見や悩みを率直に伝えることが「できていなかった」「どちらかといえばできていなかった」人は合わせて61.5%でした。率直に伝えられていた層は本当の理由をすべて伝えた割合が52.3%、伝えられていなかった層は18.2%です。
- 記録からは理由が分からない:残業や休みの変化は、仕事量にも家庭の事情にも体調にも左右されます。数字の変化だけで「辞めそうな人」と決めると、理由を外すうえ、本人には見張られていると受け取られかねません。
つまり、必要なのは見張る仕組みではなく、言っても不利にならず、言えば何かが変わると社員が思える仕組みです。
スポーツ知見|スポーツ医科学では、誰が見るか分からない申告に本音は書かれにくい
競技の現場では、疲れや体調、気分を選手自身が毎日短く記録する「自己申告」が広く使われています。血液や成績などの測定より変化をよくとらえる可能性を示す研究が増えている一方で、効果は運用のしかたに左右されます。オーストラリアのSaw氏らは、この運用の条件を2本の論文で調べました(Journal of Sports Science and Medicine、2015年)。
1本目は、ある国立スポーツ機関の選手8人、指導者7人、スポーツ医科学の専門スタッフ15人へのインタビューです。入力しない選手に罰を与える現場では、罰を避けるための雑な入力が増えました。インタビューに応じた選手の半数は、やる気がないと思われたくないなどの理由で本当のことを書かなかった経験があると答えています。誰が見るのかを気にして書かない選手や、誰が見ているのかを知らない選手もいました。インタビューで挙がった対策は、なぜ使うのか、誰が見るのか、本人の不利にならないかを先に伝えること、そして「あなたの申告を見ました」という一言や実際の対応で返すことです。
2本目は、競技も水準もさまざまな選手131人を16週間追いました。実際に使い始めたのは70人です。入力率の平均は、指導者やチームの支援があるチーム競技の選手で約84%、自分だけで取り組むチーム競技の選手で約8%、個人競技の選手で約28%と大きく差が開きました。道具を用意するだけでは続かないことが分かります。また1本目は、異常の基準が現場ごとにばらばらで、基準を決めても見逃しや空振りが起きることも指摘しています。
ただし、試合と仕事は同じではありません。対象は選手と指導者で、会社員で確かめた研究ではなく、離職を予測できるかを調べたものでもありません。選手は自分の成績のために記録しますが、社員は評価や異動への影響を心配します。そのため、申告は評価に使わないと先に決め、体調や気分は聞かず、仕事の困りごとに絞って運用します。
解決策|短い申告と、見る人・使い道・返事を先に決める
新しい監視の道具を足すのではなく、社員が困りごとを書ける理由を、運用の決まりとして先に用意します。
- 短く聞く:月2回、3〜5問から試します。仕事の量と質、人間関係、労働時間と休み、今後の仕事への見通しに絞り、一言だけ書ける欄を添えます
- 見る人を決める:見る人の名前か役割を公開します。上司に言いにくいときは、人事を申告先に選べるようにします
- 必ず返す:受け取ったら期限を決めて返事をし、変えられること、変えられないことを伝えます
- 使い道を限る:評価・異動・退職勧奨には使いません。未回答を責めず、他の人と比べず、点数で自動判定もしません
質問の範囲を仕事の話題に絞るのは、聞く必要のない情報を持たないためです。厚生労働省の令和6年労働安全衛生調査でも、強い不安やストレスの内容(主なもの3つ以内)は「仕事の量」43.2%、「仕事の失敗、責任の発生等」36.2%、「仕事の質」26.4%、「対人関係」26.1%と、仕事そのものと人間関係に集まっています。
個人情報の扱いは、始める前に決めます。社員の情報でも利用目的はできる限り特定する必要があり、労働組合などへ事前に通知して必要に応じて協議することが望ましいとされています。入力画面で本人から直接集めるときは、あらかじめ利用目的を明示します(個人情報保護法第21条第2項)。行動や関心を分析する場合は、分析すること自体を含めて利用目的を特定します。
体調や気分、通院などは質問に入れません。厚生労働省の指針は、健康管理を通じて得た心身の状態の情報のほとんどが要配慮個人情報に当たるとし、取扱いの規程を定めて労使で共有するよう求めています。本人が健康の不調を書いた場合、管理職も人事も判断せず、産業医・保健師や社内の相談窓口を案内します。この仕組みは診断をせず、医師や産業医の判断を置き換えるものでもありません。なお、実際の規程は各社の状況によるため、最終確認は御社の顧問弁護士や社会保険労務士にお願いしています。
(参考)「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(Q2-1、Q2-2) – 個人情報保護委員会
(参考)個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)3-3-4 – 個人情報保護委員会
進め方|1〜2部門で試し、返事まで回ることを確かめて広げる
最初から全社で始めると、返事が追いつかないまま「書いても変わらない」という印象だけが残りかねません。まず1〜2部門で、申告から返事までが回るかを確かめます。
診断では、過去の退職面談の記録や従業員調査、勤怠の情報について、誰が何の目的で見ているかを整理します。あわせて、管理職と社員に聞き取りを行い、言いにくいことと、言えば変えられることを分けます。設計・試行では、質問と取扱いのルールを決め、労働組合または従業員の代表に説明したうえで、3か月使います。定着では他の部門へ広げ、四半期ごとに質問とルールを見直す会議を社内で回せるようにします。
期間は目安です。診断だけ、1部門だけといった始め方もご提案します。Human Soarは聞き取り、質問とルールの案づくり、管理職向けの説明、月次レビューの進行を担い、御社には記録の共有、試す部門の決定、社内規程の確認と従業員への説明をお願いします。
成果物|申告から返事までを社内で回す4つの道具
成果物は、ひな形を渡して終わりにはしません。どれも御社の職場の話をもとに、一緒に作ります。
最初に作るのが「自己申告シート」です。社員が月2回、数分で入力する質問票で、質問の意図も添えます。次に「情報の取扱いルール」で、目的、見る人、保管の期間、使わない用途、健康の情報が書かれた場合の案内先を定めます。社員への説明と社内規程の検討に使います。
管理職と人事が使うのが「受け取り後の対応手順」です。誰がいつまでに返事をするか、話し方の例、人事や産業医につなぐ場面をまとめます。最後の「月次レビュー表」では、回答率と返事の状況をチーム単位で確かめ、職場で変えることを決めます。個人の一覧にはせず、人数の少ないチームは部門でまとめて見ます。支援が終わった後も社内だけで回せるようにします。
期待できる効果|辞めると決める前に、仕事の困りごとを話せる
経営にとっては、退職が起きてから理由を推測するのではなく、仕事量や役割の問題を早めに直す材料が得られます。管理職は、部下の様子を勘だけで読まなくて済み、書かれた困りごとから話を始められます。社員は、評価に使われないと分かったうえで困りごとを伝え、対応や変えられない理由を聞けます。人事は、職場ごとの傾向から、手を入れる順番を決められます。
見る数字は、個人の点数ではなく「申告に期限内で返事をした割合」です。これが下がると、言っても変わらないという印象がまた広がります。もう1つは、退職面談で「退職を決める前に上司や人事へ相談していた」と答えた人の割合です。退職者が減るかどうかは他の要因にも左右されるため、この2つで仕組みが働いているかを確かめます。
Human Soarからのコメント
選手の自己申告の研究が教えてくれるのは、質問のうまさより先に、誰が見て、何に使い、どう返すかで本音の量が変わるということです。職場も同じではないかと考えています。辞めそうな人を当てるのではなく、困りごとを言っても大丈夫な職場をつくる。そのためのルールを、御社の実情に合わせて一緒に決めます。
よくあるご質問
Q. 社員の監視になりませんか?
勤怠やメール、チャットの内容を分析して離職の恐れを点数にすることはしません。使うのは本人が自分で書いた申告だけで、見る人と使い道を先に公開し、評価や異動、退職勧奨には使いません。回答しない人を責めることもありません。
Q. 離職しそうな人を当てられますか?
当てることを目的にしていません。もとにした研究も離職の予測を調べたものではなく、申告の基準を決めても見逃しや空振りは起こりえます。申告は話を始めるきっかけとして使い、退職するかどうかは本人が決めることとして尊重します。
Q. すでに従業員調査やツールを使っていても依頼できますか?
できます。今ある調査やツールで、誰が何を見て、何に使っているかを整理し、足りない部分だけを設計します。新しいツールの導入は前提にしません。行動の情報を分析しているツールは、利用目的の定め方や社員への説明もあわせて確認します。
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