サプライヤー契約とは|スポーツで製品を提供する企業の確認点

サプライヤー契約とは|スポーツで製品を提供する企業の確認点 スポーツマーケティング

自社の製品を、地元のクラブや大会に使ってもらえないか。現金で協賛するほどの予算はないが、製品なら出せる。そう考えて調べると、「サプライヤー契約」という言葉に行き当たります。スポンサー契約と何が違うのか。提供した製品は、いくら分の協賛として扱われるのか。税務では、どう処理するのか。

サプライヤー契約とは、企業が製品やサービスを提供し、見返りに「オフィシャルサプライヤー」といった呼称やロゴの表示、チームでの使用を得る協賛の契約です。法律に定義はなく、主催者ごとの区分の呼び名です。物品だけを出す協賛を指す場合と、協賛の階層の名前として使われる場合があります。提供した物は「相当額」に直して区分が決まり、公開されている要項では、消費税込みの市価で換算する例があります。

この記事では、競技団体やリーグ、企業の公式の発表と、自治体の大会の要項、国税庁と消費者庁の資料をもとに整理します。契約書は弁護士に、税務は税理士に確かめてください。

サプライヤー契約とは製品やサービスを提供する協賛の契約

サプライヤー契約は、お金の代わりに、または、お金と合わせて、製品やサービスを提供する協賛です。ユニフォーム、公式の試合球、飲み物、パソコンなど、提供する物はさまざまです。貸し出す形もあります。

「サプライヤー契約」を定義した法律や公的な文書は、見当たりません。Jリーグの規約にもBリーグの規約にも、この言葉は出てきません。中身は、主催者が決める区分と、当事者が結ぶ契約書で決まります。

企業が得るものは、大きく3つです。「オフィシャルサプライヤー」と名乗れる呼称、製品や会場でのロゴの表示、そしてチームや大会で実際に使われることです。使われている場面そのものが、製品の品質を伝える広告になります。協賛の全体像はスポーツマーケティングとはで整理しています。

(参考)Jリーグ規約 – Jリーグ

Q. サプライヤー契約とは何ですか?

企業が製品やサービスを提供し、見返りに「オフィシャルサプライヤー」などの呼称、ロゴの表示、チームや大会での使用を得る協賛の契約です。法律に定義はなく、主催者ごとの区分の呼び名です。ユニフォームや公式の試合球のほか、飲み物やパソコンなどの例があります。

サプライヤーという呼び名には2つの使われ方がある

サプライヤー契約の「サプライヤー」という呼び名の2つの使われ方を、主催者の例と線で結んだ対応図。青森の国民スポーツ大会は物品だけを出す協賛、日本サッカー協会とアジア競技大会は協賛の階層の名前

「サプライヤー」という言葉は、主催者によって意味が違います。大きく2つの使われ方があるので、提案を受けたときは、どちらの意味かを確かめてください。

物品だけを出す協賛を指す場合

1つめは、現金ではなく物品だけを出す協賛を指す使い方です。2026年に青森県で開かれる国民スポーツ大会の要項は、「オフィシャルサプライヤー」を、実行委員会が必要と認めた100万円相当額以上の物品等(協賛金を含まない)を提供または貸与する企業や団体、と定めています。現金の協賛は「スポンサー」や「サポーター」と呼ばれ、区分が分かれています。

(参考)青の煌めきあおもり国スポ・障スポ 募金・企業協賛推進要項 – 青の煌めきあおもり国スポ・障スポ実行委員会

協賛の階層の名前として使われる場合

2つめは、協賛の階層の名前として使う場合です。日本サッカー協会は2015年の発表で、オフィシャルサプライヤーのアディダス ジャパンを、日本代表チームの最上位のスポンサーだと説明しています。物を出す協賛だから下の階層、というわけではありません。

2026年に愛知と名古屋で開かれたアジア競技大会では、協賛の階層の1つが「Tier4 オフィシャルサプライヤー」と呼ばれました。ここには、郵便の日本郵政のように、製品の提供と直接は結びつかない業種の企業も入っています。

(参考)日本代表チーム スポンサー決定について(2015年4月1日) – 日本サッカー協会

(参考)愛知・名古屋2026大会のパートナーシップ契約に関するお知らせ(2026年6月30日) – 日本郵政

サプライヤー契約とスポンサー契約の違いは出すものにある

似た契約との違いを、企業が出すものと得るもので整理しました。公的な定義ではなく、公式の資料をもとにした整理です。

呼び名 企業が出すもの 企業が得るもの
スポンサー契約(パートナー契約) 主に協賛金 広告の掲出、呼称、ロゴなどの使用
サプライヤー契約 製品やサービス(提供または貸与)。協賛金と組み合わせる例もある 呼称、製品へのロゴ表示、チームでの使用
アンバサダー契約、用具の契約 個人への報酬や用具 肖像の使用、本人の発信、製品の使用
ライセンス契約(商品化) 使用料など チームのロゴなどを付けた商品を作って売る権利

サプライヤー契約と似た契約の違い(出典:Jリーグの規約と公式サイト、国民スポーツ大会の要項をもとにHuman Soarが整理)

1つの会社が、複数を兼ねることもあります。マウスコンピューターは2019年、浦和レッズとオフィシャルPCサプライヤー契約を結び、チームとスタッフにパソコンを提供すると同時に、ホームゲームの看板にロゴを出すと発表しました。

相手が個人の選手なのか、クラブなのかでも変わります。個人と結ぶ契約はこの章の後半で紹介する記事で、名称に社名を付ける協賛は冠スポンサーとはの記事で扱っています。

(参考)Jリーグ規約 – Jリーグ

(参考)青の煌めきあおもり国スポ・障スポ 募金・企業協賛推進要項 – 青の煌めきあおもり国スポ・障スポ実行委員会

(参考)浦和レッズとのオフィシャルPCサプライヤー契約に関するニュースリリース(2019年5月24日) – マウスコンピューター

Q. サプライヤー契約とスポンサー契約の違いは何ですか?

企業が出すものが違います。スポンサー契約は主に協賛金を出し、サプライヤー契約は製品やサービスを出します。国民スポーツ大会の要項のように、現金の協賛を「スポンサー」、物品だけの協賛を「サプライヤー」と呼び分けている例があります。ただし、日本サッカー協会のように、サプライヤーを最上位のスポンサーと説明している例もあり、呼び名だけでは上下は決まりません。

サプライヤー契約の国内の実例は期間と提供する物で比べる

公式の発表で確かめられた例を並べます。契約の金額を書いた発表は、1つもありませんでした。

発表 企業 相手 提供するもの 期間
2014年11月 アディダス ジャパン 日本サッカー協会 日本代表チームのユニフォーム 2015年から8年間
2026年6月 モルテン Jリーグ 公式の試合球 記載なし
2026年7月 ミズノ 川崎ブレイブサンダース ユニフォームなどチームが着るウェア 記載なし
2019年5月 マウスコンピューター 浦和レッズ チームとスタッフが使うパソコン 記載なし
2026年6月 マウスコンピューター 第20回アジア競技大会 eスポーツ用のパソコンと周辺機器100セット 2026年12月31日まで
2026年6月 日本郵政 アジア競技大会、アジアパラ競技大会 協賛の区分は郵便 2026年12月31日まで

サプライヤー契約の国内の例(出典:各団体と企業の公式の発表。2026年10月10日に確認。金額はいずれも記載なし)

期間の決め方は、3つに分かれます。年数をはっきり書く形、大会の終わりに合わせる形、そしてシーズンごとに結び直す形です。日本サッカー協会とアディダス ジャパンの関係は1999年から続いていますが、2025年の延長の発表では、年数は書かれていません。

提供した物を誰が使うのかにも、違いがあります。選手が使うユニフォームや試合球、スタッフが使うパソコン、大会の運営に使う機器。自社の製品が、どの場面で、誰に使われると伝わりやすいのかを考えると、組む相手が見えてきます。

(参考)アディダス ジャパン社と「サッカー日本代表オフィシャルサプライヤー」との契約に基本合意(2014年11月6日) – 日本サッカー協会

(参考)アディダス ジャパン株式会社と日本サッカー協会オフィシャルサプライヤー契約延長合意(2025年3月25日) – 日本サッカー協会

(参考)2026/27シーズンの公式試合球に関するプレスリリース(2026年6月23日) – Jリーグ

(参考)2026-27シーズン ユニフォームデザイン およびユニフォームスポンサー決定のお知らせ(2026年7月1日) – 川崎ブレイブサンダース

(参考)浦和レッズとのオフィシャルPCサプライヤー契約に関するニュースリリース(2019年5月24日) – マウスコンピューター

(参考)第20回アジア競技大会のオフィシャルサプライヤーに関するニュースリリース(2026年6月5日) – マウスコンピューター

(参考)愛知・名古屋2026大会のパートナーシップ契約に関するお知らせ(2026年6月30日) – 日本郵政

提供する物品は市価で金額に直して協賛の区分が決まる

サプライヤー契約で提供する物品の相当額の決まり方を示した関係図。消費税込みの市価に搬入、据え付け、撤去の費用が加わって相当額になり、その額で協賛の区分が決まる

物で協賛する場合、その物がいくら分にあたるのかを決める必要があります。公開されている要項では、次のように決められています。

青森県の国民スポーツ大会の案内は、協賛する物品の額を、消費税込みの市価で換算した額とし、搬入や据え付け、撤去にかかる費用も含むとしています。区分は、100万円相当額以上が「オフィシャルサプライヤー」、10万円相当額以上100万円相当額未満が「リージョナルサプライヤー」です。

2022年に栃木県で開かれた国民体育大会の冬季大会でも、30万円相当額以上の物品の提供を「冬季国体サプライヤー」とし、物品の額には搬入、据え付け、撤去の費用を含むとしていました。どちらも、すでに募集を終えた大会です。

プロのクラブが、物品の協賛をどう金額に直しているかを公開した資料は、見当たりませんでした。クラブに提案するときは、製品の市価と数量、届ける費用を自社で整理し、どの区分にあたるのかをクラブにたずねることになります。クラブが公表している協賛の料金は、スポーツスポンサー料の相場で一覧にしています。

(参考)企業協賛制度のご案内 – 青の煌めきあおもり国スポ・障スポ実行委員会

(参考)青の煌めきあおもり国スポ・障スポ 募金・企業協賛推進要項 – 青の煌めきあおもり国スポ・障スポ実行委員会

(参考)企業協賛について(第77回国民体育大会冬季大会) – 栃木県

サプライヤー契約の前に確かめる4つの点

製品を出せば名前が出る、とは限りません。リーグや大会の決まりと、法律の決まりから、確かめておく点を4つ挙げます。

メーカーの名前を出せる大きさ

ユニフォームに入れられるメーカーの名前やマークの大きさは、リーグが決めています。Jリーグのユニフォーム要項は、シャツは胸に1か所で20平方センチメートル以下、ショーツも1か所で20平方センチメートル以下としています。

高校野球は、さらに厳しい決まりです。日本高等学校野球連盟は、ユニフォームと帽子の表面には、いかなる商標もつけてはならないとしています。学校の部活動に製品を提供する場合は、名前が外から見えないことを前提に、目的を考えてください。

(参考)ユニフォーム要項 – Jリーグ

(参考)2026年度高校野球用具の使用制限 – 日本高等学校野球連盟

選手が着る義務とレプリカを売る権利

Jリーグの規約は、選手が試合とトレーニングで使う用具のうち、ユニフォーム一式とトレーニングウェアは、クラブが支給したものを使わなければならないと定めています。クラブのウェアのサプライヤーになると、所属する選手の全員が着ることになります。

一方、クラブのエンブレムを付けた商品を作って売る権利は、規約のうえで「商品化権」と呼ばれ、クラブやリーグが持っています。ウェアを提供することと、レプリカのユニフォームを作って売ることは、別の権利です。レプリカも扱いたいなら、その条件を契約で別に決めます。

(参考)Jリーグ規約 – Jリーグ

提供した製品を選手が紹介するときの表示

提供した製品を、選手がSNSで紹介することがあります。消費者庁は、特定の人を選んで商品を無償で提供し、感想の投稿を声かけする場合について、やり取りの内容や提供の目的などの事情によっては、本人の自主的な投稿とは認められず、企業の表示にあたると判断されることがあるとしています。その場合、企業の表示だとわかるようにしなければ、違反になります。

責任を問われるのは、選手ではなく企業です。契約書に、製品を紹介する投稿には提供を受けていることを書く、と入れておくと安全です。

あわせて読みたいアンバサダー契約とは|スポーツ選手と結ぶ企業の確認点と報酬›

同じ業種のほかの会社の扱い

同じ業種の会社が、すでに上の階層の協賛に入っている場合、契約できないことがあります。青森県の国民スポーツ大会の案内は、上位のパートナーと競合する業種や製品を扱う企業は、協賛の契約を結べない場合があるとしています。

反対に、自社がサプライヤーになったあとで、同じ業種の会社が入ってこないようにしたいなら、対象の製品の範囲を契約書に言葉で書いておきます。「スポーツウェア」「清涼飲料」のように、範囲を具体的にするほど、あとの食い違いを防げます。契約書の項目は下の記事で扱っています。

あわせて読みたいスポーツスポンサー契約とは|企業が確かめる6項目と印紙・法律›

(参考)ステルスマーケティングに関するQ&A – 消費者庁

(参考)企業協賛制度のご案内 – 青の煌めきあおもり国スポ・障スポ実行委員会

自社の製品を提供したときの税務は見返りの有無で変わる

製品を提供したときの税務も、先に確かめておきます。ここで紹介するのは一般的な取扱いで、個別の判断は税理士に確かめてください。国税庁が、スポーツの物品での協賛を名指しした文書は見当たりません。

法人税では、広告宣伝のための費用は、寄附金から除かれます。呼称やロゴの表示といった見返りが契約書に書かれていれば、提供した製品の費用を広告宣伝費として説明しやすくなります。見返りのない贈り物は、寄附金や交際費等と見られる余地があり、国税庁は、個々の実態をよく検討して判定するとしています。寄附金になった場合の額は、製造にかかった額ではなく、渡した時の時価で計算されます。

消費税では、無償で行われる取引は、課税の対象になりません。国税庁は、試供品や見本品の無償の提供を、対象にならない例に挙げています。例外は、法人が自社の製品を役員に贈った場合などです。

ただし、サプライヤー契約は、製品を渡す代わりに広告や呼称という見返りを受け取る契約です。この場合の消費税の扱いを、国税庁が直接示した資料は見つかりませんでした。契約書に、提供する物と受け取る見返りをはっきり書いたうえで、税理士に確かめてください。

(参考)No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算 – 国税庁

(参考)No.5262 交際費等と寄附金との区分 – 国税庁

(参考)No.6105 課税の対象 – 国税庁

(参考)No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例 – 国税庁

Q. 自社の製品を無償で提供すると消費税はかかりますか?

見返りのない無償の提供であれば、消費税の課税の対象になりません。国税庁は、無償で行われる取引は課税の対象にならないとし、試供品や見本品の無償の提供を例に挙げています。例外は、法人が自社の製品を役員に贈った場合などです。広告の掲出などの見返りを受け取る契約の場合は扱いが分かれるので、税理士に確かめてください。

まとめ|サプライヤー契約は提供する物と見返りを書面にする

サプライヤー契約は、現金がなくても始められる協賛です。要点を振り返ります。

  • サプライヤー契約は、製品やサービスを提供して、呼称やロゴの表示、チームでの使用を得る協賛
  • 法律に定義はなく、物品だけの協賛を指す場合と、協賛の階層の名前の場合がある
  • 公開されている要項では、物品を消費税込みの市価で金額に直し、搬入などの費用も含めて区分を決めている
  • メーカーの名前の大きさ、レプリカを売る権利、投稿の表示、競合の扱いを契約の前に確かめる
  • 税務は見返りがあるかどうかで変わり、寄附金になると時価で計算される

検討を始めるなら、まず、出せる製品の市価と数量、届ける費用を表にしてみてください。そのうえで、名前をどこに出したいのか、誰に使ってもらいたいのかを書き添えてクラブや主催者に相談すると、話が具体的になります。契約書の案は、弁護士に見てもらってください。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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