スポーツ協賛の広告換算値は、看板やユニフォームがメディアに出た量を、同じ量の広告を買った場合の料金に置き換えた数字です。計算は「露出の量×広告の単価」が基本ですが、統一された計算式はありません。国際的な効果測定の団体AMECは、広告換算値はコミュニケーションの価値ではないとしているため、露出の目安として使い、認知や好感、事業の成果を測る指標と組み合わせて報告するのが基本です。
協賛先から「今季の露出は広告換算で◯億円でした」という報告が届いた。数字は大きいけれど、それを上司にどう説明すればよいのか、本当に効果があったと言ってよいのか迷う。ここではそんな担当者に向けて、広告換算値の意味と計算方法、使うときの注意点を整理します。
広告換算値とは|露出を広告の料金に置き換えた数字
広告換算値は、メディアで報道された記事や映像の面積・時間を、同じ枠を広告として買った場合の料金に置き換えたものです。電通PRは2017年の発表で、日本の多くの企業やPR会社がPR活動の成果をこの方法で評価するのが主流だったと説明しています。
スポーツ協賛では、試合の中継に映った看板の秒数、新聞やWebの記事に載ったロゴの大きさ、SNSで社名が出た回数などが換算の対象になります。協賛先のクラブや代理店が、シーズンの報告書で示すことが多い数字です。
注意したいのは、計算の仕方がそろっていないことです。統一された計算式やルールはなく、会社ごとに方法が違うため、目安として見る必要があります。別の会社が出した広告換算値どうしを、そのまま比べることはできません。
(参考)PR効果測定の脱広告換算 電通PRが「レピュテーションマトリックス」を提供開始(2017年7月4日) – 株式会社電通パブリックリレーションズ
(参考)広告換算値とは?効果測定と算出方法を解説 – 共同通信PRワイヤー
Q. 広告換算値と広告換算価値・広告換算額は違うものですか?
多くの場合、同じ考え方を指す呼び方の違いです。どれも、メディアに出た露出の量を、同じ量の広告を買った場合の料金に置き換えた数字を指します。ただし計算の仕方は会社ごとに違うので、報告を受けたときは何を何の単価で換算したかを確認します。
広告換算値の計算方法|露出の量×広告の単価

広告換算値の計算は、露出の量を数える、単価を決める、映り方で調整する、の3段階に分けられます。どの段階でどんな前提を置いたかで結果が大きく変わるので、報告を受けたら3つの前提を必ず確認します。
露出の量を数える
テレビや配信の中継なら看板やロゴが映った秒数、新聞や雑誌なら掲載された面積、Webなら掲載された記事の数を数えます。中継の秒数は、専用のツールで映像から自動で数える方法と、人が映像を見て数える方法があります。
数える範囲も確認します。地上波だけか、配信やハイライト動画まで含めるかで、量は何倍も変わります。
広告の単価を決める
数えた量に、同じ媒体で広告を買った場合の単価をかけます。中継なら同じ番組の15秒CMの料金、新聞なら同じ面の広告の料金が基準になります。たとえば看板が中継に合計120秒映り、同じ番組の15秒CMの料金が100万円なら、120秒は15秒枠の8つ分なので800万円になります(数値は説明のための例です)。
単価に定価を使うか、実際の取引の値引き後の額を使うかでも結果は変わります。定価を使うと数字は大きく出やすくなります。
映り方で調整する
看板が画面の端に小さく映った1秒と、画面の中央に大きく映った1秒は、同じ価値ではありません。そこで、映った大きさや見えやすさに応じて割り引く係数をかける会社もあります。係数をかけるかどうか、いくらにするかも会社ごとに違います。
中継の映像に広告を合成する方式なら、映った時間と位置がはっきりしているので数えやすくなります。仕組みはスポーツのバーチャル広告で解説しています。
Q. スポーツ協賛の広告換算値はどう計算しますか?
露出の量に広告の単価をかけて計算します。たとえば看板が中継に合計120秒映り、同じ番組の15秒CMの料金が100万円だとすると、120秒を15秒で割った8枠分で800万円になります(数値は説明のための例)。映り方によって割り引く係数をかける会社もあります。
広告換算値を使うときの注意点|国際基準は価値の指標と認めていない

広報やコミュニケーションの効果測定の国際団体AMECは、2010年にまとめた「バルセロナ原則」の中で、広告換算値を成果の指標として使わないよう求めてきました。2015年の改訂版では、広告換算値はコミュニケーションの価値ではないと明記しています。2020年7月には第3版を公表し、同じ考え方を続けています。
AMECは2017年から、広告換算値の利用をやめるよう呼びかける活動も続けています。協賛の効果を広告換算値だけで説明するのが難しい理由は、次の3つに整理できます。
(参考)Barcelona Principles 3.0 – AMEC
広告換算値は費用の目安として読む
広告換算値が示すのは、同じ露出を広告で買ったらいくらかかるかという費用の目安です。AMECの活動に賛同する会社からも、価値に見せかけた費用の指標だという指摘が出ています。露出にいくら相当の価値があったかは言えても、それで何が変わったかは言えません。
見た人の反応がわからない
看板が何秒映っても、見た人が社名を覚えたか、好きになったかは広告換算値からは分かりません。協賛の目的が認知や採用、取引の拡大であれば、見た人の側の変化を別に測る必要があります。
計算の前提で数字が大きく変わる
数える範囲、単価、係数の取り方しだいで、同じ協賛でも広告換算値は何倍にも変わります。報告する側が大きく見せやすい数字でもあるので、受け取る側は前提を確認せずに使わないことが大切です。
Q. 広告換算値は意味がないのですか?
意味がないわけではありませんが、成果の指標としては足りないので、ほかの指標と組み合わせて使います。広告換算値は露出を買ったら費用がいくらかかるかの目安で、見た人の反応や売上への影響は表していないからです。国際的な効果測定の団体AMECも、広告換算値はコミュニケーションの価値ではないとしています。
広告換算値と組み合わせる指標|露出から成果まで4段階で測る
AMECは代わりの考え方として、目的から成果までを段階で測る「統合評価フレームワーク」を示しています。これをスポーツ協賛に当てはめると、広告換算値は最初の段階である露出の量にあたり、その先に3つの段階が続きます。
| 段階 | 何を測るか | 測り方の例 |
|---|---|---|
| 露出 | 人の目に触れる機会の量 | 中継の秒数、記事数、広告換算値 |
| 認知 | 見た人が社名を覚えたか | 来場者・視聴者への想起の調査 |
| 態度 | 好感や利用の意向が変わったか | 見た人と見ていない人の比較調査 |
| 事業の成果 | 目的にした数字が動いたか | 売上、採用の応募者数、商談の件数 |
AMEC「Integrated Evaluation Framework」の段階をもとに、スポーツ協賛に当てはめて Human Soar 作成
(参考)AMEC Integrated Evaluation Framework – AMEC
露出|広告換算値はここで使う
看板が映った秒数、記事の数、SNSでの表示回数など、どれだけ人の目に触れる機会があったかを測る段階です。広告換算値はこの段階の数字で、露出の量を金額でそろえて見せる参考値として使えます。
認知|見た人が覚えているか
試合を見た人や来場者に、協賛している企業名を覚えているかを聞きます。AMECのフレームワークでは、注意や想起など、見た人がどう受け取ったかを測る段階にあたります。
態度|好感や利用の意向が変わったか
企業への好感度、商品を使ってみたい気持ち、働いてみたい気持ちなどの変化を測ります。ソフトバンクは、2023年の福岡ソフトバンクホークスの試合をもとに視聴者と非視聴者の約600人を調べた第三者の調査で、企業の認知度が37%、好感度が44%高かったと紹介しています。このように、見た人と見ていない人を比べる方法が使えます。
事業の成果|目的にした数字が動いたか
最後に、協賛の目的にした事業の数字を確かめます。売上、採用の応募者数、商談の件数など、目的によって測るものは変わります。ここまでつなげて初めて、協賛が事業に役立ったかどうかを判断できます。
国の第3期スポーツ基本計画も、スポーツと他の産業が組んで新しい価値を生むことを政策の柱に掲げています。協賛を露出の売り買いで終わらせず、何が生まれたかまで測る考え方は、この方向とも重なります。
(参考)スポーツの成長産業化(第3期スポーツ基本計画) – スポーツ庁
4つの段階の指標の選び方はスポーツスポンサーシップの効果測定の方法で、協賛の効果の全体像はスポーツスポンサーシップ効果で整理しています。
あわせて読みたいスポーツ協賛の稟議書の書き方|担当者が書く8項目と例文›
Q. 協賛の稟議や報告で広告換算値を使ってもよいですか?
露出の量を伝える参考値としてなら使えます。ただし、それだけで協賛の効果を説明すると、決裁者は事業にどうつながったかを判断できません。認知度や好感度の変化、目的に合わせた成果の指標と並べて報告するのが基本です。
スポーツ協賛の広告換算値のまとめ
広告換算値は、露出の量を伝える参考値としては便利ですが、協賛の成果そのものではありません。スポーツを使った販促の全体像はスポーツマーケティングの定義と事例にまとめています。この記事の要点を振り返ります。
- 広告換算値は、露出の量を同じ量の広告の料金に置き換えた数字
- 計算は露出の量×広告の単価が基本で、映り方の係数をかけることもある。統一された計算式はない
- AMECは、広告換算値はコミュニケーションの価値ではないとしている
- 露出・認知・態度・事業の成果の4段階で測り、広告換算値は露出の段階の参考値として使う
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