スポーツ協賛のブランドリフト調査は、協賛に接した人と接していない人に同じ質問をして、回答の差から効果を測る調査です。広告換算値のような露出の量ではなく、見た人の頭の中で何が変わったかを数字にできます。やり方は、広告の測定ツールを使う、調査会社のパネルで調べる、クラブの観戦者調査に設問を足すの3つがあり、協賛の目的に合わせて2〜3問に絞って聞くのが基本です。
協賛を続けるか決める時期になって、上司から「で、効果はあったの?」と聞かれた。露出の秒数は報告書にあるけれど、社名を覚えてもらえたのかは分からない。ここではそんな担当者に向けて、ブランドリフト調査の仕組みと、スポーツ協賛での測り方、設問の作り方を整理します。
ブランドリフト調査とは|見た人と見ていない人の差を測る

ブランドリフト調査は、協賛や広告に接した人のグループと、接していない人のグループに同じ質問をし、肯定的な回答の割合の差を効果とみなす調査です。差そのものを「絶対リフト」、接していない人の割合に対して何%増えたかを「相対リフト」と呼びます。たとえば社名を知っている人が、接した人で60%、接していない人で45%なら、絶対リフトは15ポイント、相対リフトは約33%です(数値は説明のための例)。
Googleの動画広告向けの測定ツールも、広告を見たグループと、広告の対象だったが見なかったグループの回答の違いから影響を判断する仕組みです。測る指標として、広告想起、ブランド認知、比較検討を挙げています。
スポーツ協賛にこの考え方を当てはめると、試合を見た人と見ていない人、来場した人としていない人を比べることになります。協賛によって何が変わったかを、露出の量ではなく受け手の側の変化で示せるのが特徴です。
(参考)ブランド効果測定について – Google 広告 ヘルプ
Q. ブランドリフト調査とは何ですか?
広告や協賛に接した人と接していない人に同じ質問をして、回答の差から効果を測る調査です。Googleの動画広告向けの測定ツールでも、広告を見たグループと見なかったグループの回答の違いから、広告の影響を判断する仕組みになっています。
スポーツ協賛のブランドリフト調査で測る5つの指標
何を測るかは、協賛の目的で決まります。スポーツ協賛でよく使う指標は次の5つです。全部を聞く必要はなく、目的に合うものを2〜3つ選びます。
| 指標 | 何を聞くか | 向いている目的 |
|---|---|---|
| 想起 | 社名を見せずに協賛企業を思い出せるか | 認知を広げたい |
| 認知 | 社名を見せて知っているか | 認知を広げたい |
| 好感 | 企業に好感を持っているか | ブランドの印象を良くしたい |
| 利用の意向 | 商品やサービスを使いたいか | 販売を伸ばしたい |
| 働きたい気持ち | その企業で働いてみたいか | 採用の応募を増やしたい |
Human Soar 作成。広告や協賛の効果を「受け手がどう受け取ったか」「態度がどう変わったか」の段階で測る考え方は、AMECの統合評価フレームワークに沿っている
想起|社名を見せずに思い出せるか
「このクラブを応援している企業として、思い浮かぶ会社名を挙げてください」のように、社名を見せずに聞きます。協賛がどれだけ記憶に残ったかを最も厳しく測れる指標です。看板やユニフォームで社名を出す協賛では、まずこれを測ります。
認知|社名を見せて知っているか
社名の一覧を見せて、知っている会社を選んでもらいます。想起より答えやすいので数字は高く出ます。地域での知名度がまだ低い企業が、協賛で名前を知ってもらえたかを見るのに向いています。
好感|企業の印象が良くなったか
企業に好感を持っているかを、5段階などで聞きます。ソフトバンクは、2023年の福岡ソフトバンクホークスの試合をもとに視聴者と非視聴者の約600人を調べた第三者の調査で、企業の認知度が37%、好感度が44%高かったと紹介しています。認知と好感を並べて測ると、協賛が名前だけでなく印象にも届いたかが分かります。
利用の意向|商品やサービスを使いたいか
販売を伸ばすことが目的なら、商品を使ってみたいか、次に買うときに候補に入れるかを聞きます。実際の購買は天候や価格など協賛以外の要因でも動くので、まず意向の変化を確かめるのが現実的です。
働きたい気持ち|採用の目的なら必ず聞く
採用の応募を増やすために協賛するなら、その企業で働いてみたいかを聞きます。学生や若い世代の来場者が多いクラブでは、とくに測る意味がある指標です。採用説明会の参加者に、知ったきっかけを聞く方法と組み合わせると説得力が増します。
(参考)AMEC Integrated Evaluation Framework – AMEC
ブランドリフト調査の方法|スポーツ協賛で使える3つのやり方

ブランドリフト調査のやり方は、協賛の形と予算に合わせて3つから選べます。どの方法でも、接した人と接していない人をできるだけ同じ条件でそろえることが、正しく比べるための前提です。
広告の測定ツールを使う
協賛と合わせて動画広告を配信しているなら、配信先の測定ツールを使えます。Googleのブランド効果測定は無料のツールで、YouTubeの再生前に調査が表示されます。対象はオークションで購入したインストリーム広告とバンパー広告で、一部のアカウントでは担当者への問い合わせが必要です。
試合の中継に広告を合成する方式の協賛なら、配信の視聴者を対象に調べやすくなります。仕組みはスポーツのバーチャル広告で解説しています。
調査会社のパネルで調べる
調査会社が持つ回答者のパネルから、試合を見た人と見ていない人を集めて同じ質問をします。年代や地域をそろえて比べられるので、偏りの少ない結果が得られます。費用は回答者の数と設問の数で決まるので、見積もりを取ってから設問を絞ります。
クラブの観戦者調査に設問を足す
クラブやリーグが行う観戦者調査に、自社の設問を入れてもらう方法です。Jリーグは2025シーズン、全60クラブのホームゲームから1クラブ年4試合を選んで観戦者調査を行い、2025年3月〜11月にのべ191,686人が回答しました。こうした調査の仕組みがあるリーグやクラブなら、少ない負担で来場者の声を集められます。
ただし来場者だけを調べると、接していない人との比較ができません。来場者の回答と、同じ地域の一般の人の回答を並べるなど、比べる相手を別に用意します。協賛の権利に設問の追加を含められるかは、契約の前に相談しておくと進めやすくなります。
(参考)Jリーグが提供する2025シーズン観戦者調査レポート(2026年7月) – KPMGコンサルティング株式会社
Q. ブランドリフト調査の費用はどのくらいかかりますか?
方法によって大きく変わります。Googleの動画広告の測定ツールは無料ですが、広告を配信していることが前提です。調査会社に頼む場合は、回答者の数と設問の数で見積もりが決まります。クラブが行う観戦者調査に設問を足してもらえれば、費用を抑えられることがあります。
ブランドリフト調査の設問の作り方|比べられる形で聞く
設問は、聞く順番と聞き方で結果が変わります。スポーツ協賛で押さえたい作り方を3つ挙げます。
想起を最初に聞く
社名を見せる質問を先にすると、そのあとの想起の質問で社名を思い出しやすくなり、数字が実態より高く出ます。社名を見せない想起の質問を必ず最初に置き、その後に認知、好感、意向の順で聞きます。
選択肢に競合や協賛していない企業を混ぜる
認知を聞く一覧に自社だけを並べると、誰でも選びやすくなります。同じ業種のほかの企業や、そのクラブに協賛していない企業も混ぜて、差が出る形にします。協賛していない企業の数字は、比べる基準としても使えます。
同じ設問を毎年続ける
設問の文言を年ごとに変えると、数字が動いた理由が協賛なのか聞き方なのか分からなくなります。一度決めた設問は続けて使い、協賛を始める前の年にも同じ設問で調べておくと、変化をはっきり示せます。
回答者の年代や連絡先などを集める場合は、個人情報保護法に沿って利用目的を示し、目的の範囲で使います。調査会社やクラブに頼む場合も、誰が情報を持ち、どこまで共有するかを決めておきます。
あわせて読みたいスポーツ協賛の広告換算値とは|担当者が知る計算方法と注意点›
Q. スポーツ協賛のブランドリフト調査では何を聞けばよいですか?
協賛の目的に合わせて、想起、認知、好感、利用の意向、働きたい気持ちなどから2〜3問に絞って聞きます。社名を見せずに協賛企業を思い出してもらう質問を最初に置き、そのあとで社名を示して認知や好感を聞く順にすると、答えが前の質問に引っぱられにくくなります。
Q. 協賛の前に調査をしていなくても効果は測れますか?
測れます。協賛に接した人と接していない人を同じ時期に比べれば、事前の調査がなくても差を見られます。ただし、もともと自社を知っている人が観戦者に多いなどの偏りが入りやすいので、年代や地域をそろえて比べることが大切です。
スポーツ協賛のブランドリフト調査のまとめ
ブランドリフト調査は、協賛が受け手の頭の中で何を変えたかを数字にする方法です。測った結果は、翌年の協賛の稟議書で見直しの根拠として使えます。指標全体の選び方はスポーツスポンサーシップの効果測定の方法、スポーツを使った販促の全体像はスポーツマーケティングの定義と事例にまとめています。
- 接した人と接していない人に同じ質問をし、肯定的な回答の差を効果とみなす
- 想起・認知・好感・利用の意向・働きたい気持ちから、目的に合う2〜3問を選ぶ
- 方法は、広告の測定ツール、調査会社のパネル、クラブの観戦者調査への設問追加の3つ
- 想起を最初に聞き、競合を選択肢に混ぜ、同じ設問を毎年続ける
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