月経の乱れは本人の努力不足ではなく、コンディション管理の対象です。国内トップレベルの女性アスリート683名の調査では、無月経を含む月経周期異常が約40%に見られ、3か月以上月経がない場合は産婦人科への相談が目安になります。
練習量を増やし、体重を絞っていく時期に、気づけば月経が数か月来ていない。本人は「競技の代償だから仕方ない」と思い込み、指導者も確認しにくいまま、疲労骨折で初めて問題が表面化する。そんな流れが、現場では繰り返されてきました。
この記事では、国立スポーツ科学センター(JISS)の資料と東京大学医学部附属病院の資料、経済産業省の試算をもとに、月経と三主徴の基本、指導者と企業が取れる対応3ステップ、働く女性の月経随伴症状の損失までを整理します。スポーツ科学全体の枠組みは、スポーツ科学とは|定義・6領域・最新テクノロジーを解説も参考になります。
女性アスリートの月経周期異常は約4割|国内トップ683名の調査

国内トップレベルの女性アスリート683名の調査(能瀬ら、2014)では、無月経を含む月経周期異常のあるアスリートが約40%を占めました。無月経の割合は、体操、新体操、フィギュアスケートなどで高く、次いで陸上の長距離、トライアスロンの順だったと報告されています。
影響は骨に現れやすくなります。同じ調査の10代アスリート239名では、疲労骨折を経験した割合が、正常な月経周期の群で11%、原発性・続発性の無月経の群で38%でした。
東京大学医学部附属病院の資料も、10代アスリートの疲労骨折リスクが、無月経で約12.9倍、低骨量で約4.5倍、低体重で約1.1倍と示しています(Nose-Ogura et al.、2019)。月経が止まっているかどうかは、骨の状態を知る早期のサインになります。
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(参考)5.女性アスリートの三主徴 – 日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター(国立スポーツ科学センター)
Q. 月経周期の異常は、どのくらいのアスリートに起きますか?
国内トップレベルの女性アスリート683名の調査では、無月経を含む月経周期異常のある選手が約40%でした。無月経の割合は体操、新体操、フィギュアスケートなどで高く、次いで陸上の長距離とトライアスロンの順です(能瀬ら、2014)。
女性アスリートの三主徴|エネルギー不足・無月経・骨粗鬆症が連なる仕組み

三主徴とは、利用可能エネルギー不足(low energy availability)、無月経、骨粗鬆症の3つが連なって起きる状態です。米国スポーツ医学会が1997年に提唱し、2007年の改訂で、当初含まれていた摂食障害は「摂食障害の有無にかかわらないlow energy availability」に置き換わりました。
三主徴①|利用可能エネルギー不足は食事が運動に追いついていない状態
利用可能エネルギーとは、食事から摂った摂取エネルギーから、運動で使ったエネルギーを引いた残りです。この状態が続くと、卵巣を刺激する脳からのホルモン分泌が下がり、骨代謝などの機能に影響すると考えられています。
練習が増える時期ほど、食事量が運動量に追いつかなくなりがちです。食事戦略の具体例は、岩渕麗楽の食事戦略も参考になります。
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三主徴②|無月経は3か月以上の停止が1つの区切り
三主徴でいう無月経は、運動が原因と考えられる続発性無月経で、3か月以上月経が止まった状態を指します。エネルギー不足の結果として現れるため、月経が止まっていること自体が、栄養と練習量のバランスが崩れているサインです。
三主徴③|骨粗鬆症は若くても進み疲労骨折の危険を高める
3つ目の骨粗鬆症は、骨量が減ってもろくなった状態です。若い女性でも、無月経でエストロゲンが下がると骨量の低下が進み、疲労骨折の危険性が高まるとされています。
骨は成長期にしっかり蓄える時期があるため、10代での無月経は特に見逃したくない点です。
(参考)5.女性アスリートの三主徴 – 日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター(国立スポーツ科学センター)
Q. 女性アスリートの三主徴とは何ですか?
利用可能エネルギー不足(low energy availability)、無月経、骨粗鬆症の3つを指します。米国スポーツ医学会が1997年に提唱し、2007年の改訂で摂食障害の有無にかかわらないlow energy availabilityへと整理されました。
指導者と企業ができる対応3ステップ|気づく・調整する・支える
対応は、月経の状況に気づき、練習と体重の目標を調整し、周囲が支えるという順に進めます。誰がどこまで関わるかを先に決めておくと、本人が1人で抱え込まずに済みます。
| ステップ | 主な担い手 | 具体的な動き | 判断の目安 |
|---|---|---|---|
| ① 気づく | 選手本人・指導者 | 月経の有無と周期を記録し、共有できる状態にする | 3か月以上月経がない、または15歳でも初経がない場合は産婦人科を受診 |
| ② 調整する | 指導者・チームスタッフ | トレーニングの強度・頻度と、体重コントロールの目標を見直す | 三主徴の予防対策への理解を深め、強度・頻度の調整に留意 |
| ③ 支える | 家族・周囲・企業の担当者 | 食事・受診・相談先を周りで支える | 日常の食生活は家族や周囲のサポートが必要 |
出典:国立スポーツ科学センター(JISS)の資料をもとにHuman Soar作成。
ステップ①|月経の記録を共有して3か月で受診を決める
まず、月経が来た日と周期、痛みの強さを、本人が記録できる状態にします。JISSの資料は、3か月以上月経がない場合や、15歳でも初経が来ない場合(遅発月経)は、産婦人科の受診をすすめています。
記録は手帳でもアプリでも構いません。続けやすい形を、選手本人が選ぶのがポイントです。
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ステップ②|練習の強度・頻度と体重の目標を見直す
JISSの資料は、成長期のトレーニングに関わる指導者に、三主徴の予防対策への理解を深め、トレーニング強度・頻度の調整や体重コントロールに留意することを求めています。体重の目標を立てる前に、月経の状況を確認する習慣をつけるのが第一歩です。
練習量を足す、体重を絞るといった判断の前に、「最近、月経は来ていますか」と聞ける関係づくりが土台になります。
ステップ③|食事・受診・相談先を周りで支える
食事は本人だけの努力では整いにくく、家族や周囲のサポートが必要とされています。実業団や部活動を運営する側は、婦人科への受診日を練習計画に組み込める運用を整えておきます。
アスリート社員を抱える企業では、人事や産業医が相談先の窓口を明確にしておくと、本人が声を上げやすくなります。
(参考)5.女性アスリートの三主徴 – 日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター(国立スポーツ科学センター)
月経随伴症状による経済損失は年間約5,700億円|企業が把握したい数字
経済産業省ヘルスケア産業課が2024年2月に公表した試算では、女性特有の健康課題による経済損失は年間約3.4兆円でした。このうち月経随伴症状は約5,700億円で、欠勤による損失が約1,200億円、出勤しながらパフォーマンスが低下する損失が約4,500億円です。
内訳を見ると、パフォーマンス低下が占める割合は約79%になります(本記事の計算値=4,500億円÷5,700億円)。休まずに働いている人の不調こそ、企業が見落としやすい損失だと分かります。
スポーツの現場と同じく、ここでも早く気づける環境づくりが効きます。相談しやすい窓口や休暇の運用の考え方は、健康経営で女性活躍を推進するスポーツ施策で詳しく扱っています。
(参考)女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について – 経済産業省 ヘルスケア産業課(令和6年2月)
Q. 月経随伴症状による経済損失はどのくらいですか?
経済産業省の試算(2024年2月)では、月経随伴症状による経済損失は年間約5,700億円です。内訳は、欠勤が約1,200億円、パフォーマンス低下が約4,500億円で、女性特有の健康課題全体では約3.4兆円と試算されています。
まとめ|月経を「個人の問題」から「チームと組織で扱う健康課題」へ
月経の状況は、トレーニングと栄養を調整するための大切な指標です。要点を5つにまとめます。
- 国内トップレベルの女性アスリート683名の調査では、無月経を含む月経周期異常が約40%に見られた
- 10代アスリートの疲労骨折は、正常な月経周期の群で11%、無月経の群で38%だった
- 三主徴は、利用可能エネルギー不足・無月経・骨粗鬆症の3つが連なる状態で、3か月以上月経がない場合は産婦人科の受診が目安になる
- 対応は、気づく・調整する・支えるの3ステップで、指導者と家族、企業の担当者が役割を分担する
- 月経随伴症状による経済損失は年間約5,700億円と試算され、約79%は出勤中のパフォーマンス低下が占める
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