1on1の枠は予定表にあるのに、話すのは上司ばかりで、いつの間にか開かれなくなる。スポーツ指導で使われている「目標と課題を選手自身に決めさせる」考え方で、部下が議題を持ち込む1on1に作り替えます。
対象となるお客さま
- 1on1を制度にしたものの、実施が止まりがちな企業の経営者・人事担当者
- 部下との面談のやり方に迷っている部長・課長
- 若手・中堅の悩みを早めにつかみたい人材開発の担当者
よくあるお悩み
- 「何か困っていることは?」と聞いても「特にないです」で終わる
- 忙しい月になると、1on1の予定から先に消えていく
- 1on1を続けて何が変わったのか、人事も説明できない
課題|1on1が途切れた部下は26.9%。続いていても月0.8回
1on1は多くの企業で制度になりましたが、続いていません。パーソル総合研究所の調査(2024年6月実施、2025年2月公表)では、1on1を直近半年で経験した部下は55.7%でした。以前は実施していたのに直近半年はない部下が26.9%、一度も経験していない部下が17.5%です。
続いている1on1も、回数は多くありません。直近半年に経験した部下の実施頻度は、ひと月あたり平均0.8回でした。話す内容を決めているのも多くは上司で、直近半年に1on1を経験した部下1,500人のうち、上司がテーマを決めていると答えたのは919人で、約6割にあたります。
原因|会社の義務で始めた1on1は、月0.5回にとどまる
部下のやる気や上司の熱意の問題ではありません。同じ調査から、原因は次の3つに絞れます。
- 議題の持ち主が部下ではない:部下が提案して始めた1on1はひと月2.8回、上司の提案では1.8回でした。会社の方針・義務で始めた場合は0.5回と、最も少なくなっています。
- 上司が面談のやり方を学ぶ仕組みがない:上司が困っていることの1位で35.4%。部下でも2位(28.3%)に入っています。
- 上司が忙しく、日程が組めない:上司の35.3%、部下の26.3%が困りごとに挙げています。
つまり、会社が枠だけを決めて上司に任せても、回数は増えません。誰が議題を持ち込むか、上司がどこで聞き方を学ぶか、忙しい月にどう続けるか。この3つを決めないまま回数の目標だけを置くと、1on1は予定表の上にしか残りません。
(参考)「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」を発表 – 株式会社パーソル総合研究所(PR TIMES)
スポーツ知見|スポーツ指導は、目標と課題を選手自身に決めさせる
文部科学省の「運動部活動での指導のガイドライン」(平成25年5月)は、顧問が一方的な方針で活動するのではなく、生徒との意見交換を通じてニーズや意見をつかみ、生徒の主体性を尊重して目標や方針を決めるよう求めています。生徒が自分の目標や課題を自ら設定し、必要な方法を考えて実践につなげる力を育てることも、指導者の役割としています。
進め方も具体的です。試合後のミーティングで生徒に練習への取り組み方や練習方法の工夫を考えさせ、今後の取組内容を自分たちで導き出させることを、通常のスポーツ指導の例に挙げています。練習計画をつくるときは、一週間の中に活動を休む日や、活動を振り返ったり考えたりする日を設けることを考慮するよう求めています。
日本スポーツ協会の「スポーツ指導者のための倫理ガイドライン」も、スポーツの主役はプレーヤーだとしています。指導者は自分の考えを一方的に伝えるのではなく気づきを促すこと、そのために学び続けることを求めています。
(参考)運動部活動での指導のガイドライン(平成25年5月) – 文部科学省
(参考)スポーツ指導者のための倫理ガイドライン – 公益財団法人日本スポーツ協会
ただし、部活動と仕事は同じではありません。部活動の顧問は生徒の給与や昇進を決めませんが、上司は部下の評価に関わります。評価する相手には本音の議題を出しにくいため、1on1で話した内容は人事評価に使わないことを、社内のルールとして文書にします。
解決策|議題・聞き方・間隔・上司の学び方の4つを変える
回数の目標を上げる前に、1on1の作り方を4か所変えます。新しい会議を増やすのではなく、いまの枠の中身を入れ替えます。
- 議題:部下が前日までに「いま一番引っかかっていること」「次の1か月で試したいこと」を3行で書いて上司に渡す
- 聞き方:上司は答えを先に出さず、部下が自分で整理できる質問を返す。質問は5つの型に絞って渡す
- 間隔:1回を長くしすぎず、30分以上1時間未満で月2〜3回を目安に置く
- 上司の学び方:月1回、上司同士で集まり、うまくいった質問と詰まった場面を持ち寄る
いちばん効くのは、議題を部下に移すことです。同じ調査では、部下がテーマを決めている1on1を受けた部下の成長度(10点満点)は6.9点、上司が決めている場合は6.4点でした。間隔の目安も同じ調査によるもので、月2〜3回以上・1回30分以上1時間未満の1on1で成長度が最も高く(7.4点)、月2〜3回以上・1回1時間以上で最も低く(6.0点)なっています。
進め方|まず1部署の上司3〜5人で型をつくる
いきなり全社のルールを変えるのではなく、1部署で「議題シートが書かれるか」「上司が質問で返せるか」を確かめてから広げます。
診断では、人事が持つ1on1の実施記録と、上司・部下への短いアンケートで、実施回数・議題を決めている人・困りごとを確かめます。設計・試行では、1部署の上司3〜5人と部下で議題シートと質問の型を使い、月1回の上司の勉強会を始めます。定着では全部署向けの運用ルールにして、人事が毎月の数字を確認します。
期間は目安です。診断だけ、1部署だけといった始め方もご提案します。Human Soarは様式の用意・アンケートの設計と集計・上司の勉強会の進行・ルールの文書化を担い、御社には実施記録の共有と試す部署の決定、評価制度との線引きの社内調整をお願いします。
成果物|議題シートから上司の勉強会の手順まで4つを残す
成果物は、ひな形を渡して終わりにはしません。どれも試行した部署で実際に使い、直してから全社向けに仕上げます。
部下が使うのは「議題シート」です。1on1の前日までに3行で書き、上司に渡します。上司は「質問の型集」を手元に置き、議題に合わせて5つの型から質問を選びます。どちらも、1on1が始まる前と最中に使うものです。
人事が管理するのは「1on1運用ルール」です。間隔と時間の目安、話した内容を評価に使わないこと、毎月集計する数字を1枚にまとめます。最後に「上司勉強会の進行手順」を整え、支援が終わった後も上司同士で月1回の勉強会を回せるようにします。
期待できる効果|部下・上司・人事の3つが変わる
部下にとっては、1on1が上司の話を聞く時間から、自分の困りごとを持ち込む時間に変わります。上司は答えを用意する負担が減り、質問で返すことに集中できます。人事は、1on1が開かれたかどうかだけでなく、部下が議題を持ち込んだかどうかで運用を確かめられます。
見る数字は2つです。1つは「部下が議題を持ち込んだ1on1の割合」。実施回数だけを見ると、上司が議題を決める形に戻っても数字は高く見えてしまいます。もう1つは「ひと月あたりの実施回数」で、議題の持ち込みが増えたあとに回数が保てているかを確かめます。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、1on1を見直す時期です。
Human Soarからのコメント
部活動の指導のガイドラインを読むと、指導者に求められているのは答えを教えることより、選手が自分の課題を言葉にできるよう支えることだと分かります。1on1も同じで、上司がうまく話す技術より、部下が話したくなる段取りのほうが先に必要です。御社の面談の実態を見たうえで、無理なく続く形を一緒に考えます。
よくあるご質問
Q. 部下が議題を書いてこない場合はどうしますか?
書けない回は「特になし」でかまわない運用にします。提出率を評価に使うと、議題が形だけのものになるためです。そのうえで、書かれない部署は様式の書きやすさか上司の聞き方を、上司の勉強会で見直します。
Q. 評価面談と1on1は分けたほうがよいですか?
分けることをおすすめします。1on1で話した内容が評価に使われると、部下は無難な話題しか持ち込まなくなるためです。評価面談は評価の根拠を確かめる場、1on1は部下が自分の考えを整理する場と役割を分け、運用ルールに明記します。
Q. 上司が忙しくて時間が取れない部署でも始められますか?
始められます。新しい会議を足すのではなく、いまの1on1の枠の中身を入れ替える設計だからです。議題シートが先に届けば、上司は準備なしで質問から入れます。それでも枠が取れない部署は、上司の業務量そのものを診断で確かめます。
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