ストレスチェックの面接指導|産業医面談の期限と面談後の運動

ストレスチェックの面接指導|産業医面談の期限と面談後の運動 スポーツウェルビーイング

ストレスチェックの面接指導とは、高ストレスと判定され、実施者が「医師の面接が必要」と認めた労働者が申し出たときに、事業者が医師に行わせる面談です。申出から概ね1か月以内に実施し、医師の意見を聴いて就業上の措置を決め、記録を5年間保存します。費用は全額が事業者の負担です。

ただ、厚生労働省の委託調査では、高ストレスと判定された人のうち医師の面接を受けたのは14.7%にとどまります。この記事では、対象者と産業医面談との違い、申出から措置までの期限、面接指導結果報告書と意見書の記入欄、費用・オンライン・産業医がいない場合の扱いを、法令と厚生労働省の資料で整理します。あわせて、面接の後に運動の機会をどう用意するかも、国の身体活動ガイドの目安とともに紹介します。

  1. ストレスチェックの面接指導とは|対象者と長時間労働の面接との違い
    1. 面接指導の対象者は高ストレス者の中から実施者が選ぶ
    2. 面接をするのは医師だけで産業医以外の医師にも頼める
  2. ストレスチェックの面接指導の流れ|申出から措置までの期限と記録
    1. 結果の通知と申出の勧奨|通知から概ね1か月以内
    2. 面接指導の日程と医師への情報提供|申出から概ね1か月以内
    3. 医師の意見聴取と就業上の措置|面接から遅くとも概ね1か月以内
    4. 記録の5年保存と労働基準監督署への報告
  3. 面接指導の内容と結果報告書・意見書|医師が確かめることと就業区分
    1. 面接で医師が聞くことは残業時間と睡眠と職場の支え
    2. 面接指導結果報告書の記入欄|ストレスの点数と指導区分
    3. 就業上の措置に係る意見書の記入欄|就業区分と職場環境の意見
  4. 産業医面談の費用とオンライン|事業者負担と産業医がいない場合の頼み先
    1. 面接指導の費用は事業者が負担し受けた時間の賃金は労使で決める
    2. オンラインの面接指導は映像と音声と緊急時の体制が条件
    3. 産業医がいない事業場は地域産業保健センターに無料で頼める
  5. 面接指導を受けるのは高ストレス者の1割|申出が少ない理由と勧め方
    1. 面接を受けない理由は役立つか分からないと時間がない
    2. 申出を増やす勧奨と受けない人の受け皿
  6. 面接指導の後に運動の機会を用意する|医師の助言と職場の運動施策
    1. 医師は睡眠の改善に軽い運動を勧めることがある
    2. 職場の運動施策は国の身体活動ガイドの目安で組み立てる
  7. ストレスチェックの面接指導のまとめ

ストレスチェックの面接指導とは|対象者と長時間労働の面接との違い

ストレスチェックの面接指導は、労働安全衛生法第66条の10第3項にもとづく医師の面談で、長時間労働者に対する面接指導(第66条の8)とは別の制度です。どちらも医師が勤務の状況を確かめて事業者に意見を述べる点は同じですが、対象者の決まり方と、労働者に受ける義務があるかどうかが違います。2つの制度の違いは次の表のとおりです。

項目 高ストレス者の面接指導 長時間労働者の面接指導
根拠 労働安全衛生法第66条の10第3項、安衛則第52条の15〜19 労働安全衛生法第66条の8、安衛則第52条の2〜7
対象者 ストレスチェックで高ストレスとされ、面接指導が必要と実施者が認めた人 時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる人
始まり方 本人の申出 本人の申出
本人が受ける義務 なし(受けるかは本人の選択) あり(会社が指定した医師以外の面接で代えることも可)
医師が確かめること 勤務の状況、心理的な負担の状況、その他の心身の状況 勤務の状況、疲労の蓄積の状況、その他の心身の状況
記録の保存 5年間 5年間

出典:労働安全衛生法、労働安全衛生規則(e-Gov、2026年10月1日施行版)、厚生労働省「ストレスチェック制度関係Q&A」をもとに Human Soar 作成

両方の要件に当てはまる人から申出があった場合は、確認すべき事項を両方確かめれば面接指導は1回で足ります。その場合も、結果の記録や意見書には両方の確認事項を書く必要があります。厚生労働省は、2つを兼ねるときに使える報告書・意見書の「兼用」の様式例も示しています。

(参考)労働安全衛生法 – e-Gov法令検索(デジタル庁)

(参考)労働安全衛生規則 – e-Gov法令検索(デジタル庁)

面接指導の対象者は高ストレス者の中から実施者が選ぶ

対象者は、ストレスチェックの結果、心理的な負担の程度が高い人で、面接指導を受ける必要があると実施者(ストレスチェックを行った医師や保健師など)が認めた人です(安衛則第52条の15)。プログラムが自動で高ストレスと判定するのは構いませんが、面接指導が必要かどうかは実施者が改めて判断しなければならず、判定結果だけで対象者を決めて通知するやり方は不適当とされています。

対象者に選ばれなかった人が面接指導を申し出た場合、法令上の実施義務はありません。受けるかどうかの扱いは、事業場ごとに決めておきます。高ストレス者を選ぶ基準そのものは、別の記事で扱う予定の「高ストレス者の選定」の範囲です。

(参考)ストレスチェック制度関係Q&A(令和3年改訂) – 厚生労働省

面接をするのは医師だけで産業医以外の医師にも頼める

面接指導を行えるのは医師に限られます。ストレスチェックの実施者には保健師や研修を修了した看護師・公認心理師などもなれますが、面接指導の担い手にはなれません。実施者と面接指導の医師が別の人でも構いません。

施行通達は、事業場の状況を日頃から知っている産業医などが行うのが望ましいとしています。外部の医師が面接をした場合は、事業場の産業医からも、その医師の意見を踏まえた意見を聴くのが望ましいとされます。

あわせて読みたいストレスチェック実施者の要件|企業が選ぶ6職種とチーム分析›

(参考)労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(令和3年2月改訂) – 厚生労働省

(参考)ストレスチェック制度関係Q&A(令和3年改訂) – 厚生労働省

Q. ストレスチェック後の面接指導は会社の義務ですか?

高ストレス者として選ばれ、実施者が面接指導を必要と認めた労働者から申出があれば、事業者は医師による面接指導を行う義務があります(労働安全衛生法第66条の10第3項)。対象者に選ばれなかった人からの申出には法令上の義務はなく、扱いは事業場ごとに決めます。一方で、労働者本人に受ける義務はなく、受けるかどうかは本人の選択です。

ストレスチェックの面接指導の流れ|申出から措置までの期限と記録

ストレスチェックの面接指導の流れ。結果の通知から申出、面接指導、医師の意見聴取、就業上の措置と記録の保存まで、それぞれ概ね1か月以内という期限を時期ごとに並べた図

面接指導の流れは、結果の通知、申出、面接指導、医師の意見聴取、就業上の措置の5段階で、通知から申出、申出から面接、面接から意見聴取の3か所に「概ね1か月以内」という目安があります。規則の条文は「遅滞なく」とだけ書いており、その中身を厚生労働省の施行通達(平成27年5月1日付け基発0501第3号)が示しています。

(参考)労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(令和3年2月改訂) – 厚生労働省

結果の通知と申出の勧奨|通知から概ね1か月以内

労働者の申出は、結果の通知を受けた後、遅滞なく行うものとされ(安衛則第52条の16第1項)、通達はこれを概ね1か月以内としています。実施者は対象者に申出を勧めることができ、指針は結果の通知に申出の窓口と方法を書き添えるよう求めています。申出は書面や電子メールで受け、その記録を5年間保存するのが望ましいとされます。

申出をした人は、ストレスチェックの結果を事業者に提供することに同意したものとして扱ってよく、その扱いは前もって労働者に知らせておく必要があります。小規模事業場向けのマニュアルは、対象者だけに封書を配ると周りに知られるおそれがあるため、電子メールで知らせるなどの工夫を挙げています。

(参考)労働安全衛生規則 – e-Gov法令検索(デジタル庁)

(参考)小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月) – 厚生労働省

面接指導の日程と医師への情報提供|申出から概ね1か月以内

申出があったら、事業者は遅滞なく、通達の目安では申出から概ね1か月以内に面接指導を行います(安衛則第52条の16第2項)。実施マニュアルは、面接を原則として就業時間内に設定し、曜日や時間帯を柔軟にして受けやすくするよう求めています。1回で終わらないこともあるため、複数回になったときの労務管理上の扱いも前もって決めておきます。

事業者は面接の前に、対象者の労働時間、深夜業の回数、業務の内容、職場環境などの情報を医師に渡します。小規模事業場向けのマニュアルは、ストレスチェックの直前1か月間の労働時間や、実施時期が繁忙期だったかどうかも例に挙げています。個人の結果は封をした状態で取り寄せるなど、本人以外に見られない方法で医師に届けます。

(参考)労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(令和3年2月改訂) – 厚生労働省

(参考)小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月) – 厚生労働省

医師の意見聴取と就業上の措置|面接から遅くとも概ね1か月以内

面接指導の後、事業者は就業上の措置について医師の意見を聴きます(法第66条の10第5項、安衛則第52条の19)。通達は遅くとも概ね1か月以内とし、緊急に措置が要る状態ならできるだけ早く聴くよう求めています。意見は、面接をした医師から聴くのが適当です。

措置を決めるときは、あらかじめ本人の意見を聴き、話し合って了解を得るよう努めます。措置の例は、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などです。Q&Aは、ここでいう労働時間の短縮は、主に時間外労働や休日労働を減らすことを指すと説明しています。

(参考)労働安全衛生法 – e-Gov法令検索(デジタル庁)

(参考)ストレスチェック制度関係Q&A(令和3年改訂) – 厚生労働省

記録の5年保存と労働基準監督署への報告

事業者は面接指導の結果の記録を作り、5年間保存します(安衛則第52条の18)。記録には、医師が確かめた事項に加えて、実施年月日、労働者の氏名、面接をした医師の氏名、医師の意見を書きます。医師から受け取った報告書に必要事項がそろっていれば、それをそのまま保存すれば足ります。

常時50人以上の労働者を使う事業者は、1年以内ごとに1回、面接指導を受けた労働者の数や、面接をした医師が選任の産業医か委託先の医師かなどを、電子申請で労働基準監督署に報告します(安衛則第52条の21)。報告の詳しい手順は、別の記事で扱う予定です。

(参考)労働安全衛生規則 – e-Gov法令検索(デジタル庁)

Q. ストレスチェックの面接指導はいつまでに行いますか?

申出があってから概ね1か月以内に行います。労働者の申出は結果の通知から概ね1か月以内、医師からの意見聴取は面接指導から遅くとも概ね1か月以内が目安で、いずれも厚生労働省の施行通達が「遅滞なく」の中身として示しています。緊急に就業上の措置が要るときは、意見聴取をできるだけ早く行います。

面接指導の内容と結果報告書・意見書|医師が確かめることと就業区分

医師の就業上の措置に係る意見書の就業区分。通常勤務、就業制限・配慮、要休業の3つに分かれ、就業制限では時間外労働の制限、就業場所の変更、作業の転換などを選ぶことを示した図

面接指導で医師が確かめるのは、勤務の状況、心理的な負担の状況、その他の心身の状況の3項目です(安衛則第52条の17)。医師はその結果を「面接指導結果報告書」と「就業上の措置に係る意見書」にまとめ、意見書の就業区分は通常勤務、就業制限・配慮、要休業の3つから選びます。様式は法令で決まっていませんが、厚生労働省が様式例と記載例を示しています。

(参考)労働安全衛生規則 – e-Gov法令検索(デジタル庁)

(参考)長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル(平成27年11月) – 厚生労働省

面接で医師が聞くことは残業時間と睡眠と職場の支え

勤務の状況には、職場での心理的な負担の原因と、周りの人からの支援の状況が含まれます。ストレスチェックの3つの領域(ストレスの原因、心身の自覚症状、周囲の支援)は、本人の結果を見れば確かめたことになります。

厚生労働省が掲載する高ストレス者向けの面接マニュアルは、医師が聞き落としなく面接できるよう手順を示しています。残業時間は高ストレスの主な原因として必ず確かめること、通勤時間、睡眠、飲酒や喫煙の習慣などを聞くことが挙げられています。面接の冒頭で、話した内容は本人の同意がなければ上司や人事に伝えないことを説明する例も載っています。

(参考)労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(令和3年2月改訂) – 厚生労働省

(参考)ストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル(2021年9月版) – 労災疾病臨床研究事業 研究班(厚生労働省掲載)

面接指導結果報告書の記入欄|ストレスの点数と指導区分

高ストレス者用の結果報告書の様式例には、勤務の状況(労働時間と、それ以外の要因)、心理的な負担の状況、その他の心身の状況、面接医師判定の欄があります。心理的な負担の状況には、ストレスチェックの「ストレスの要因」「心身の自覚症状」「周囲の支援」の点数を書き込みます。

面接医師判定の「本人への指導区分」は、措置不要、要保健指導、要経過観察、要再面接、現病治療継続または医療機関紹介の5つから選び、複数を選ぶこともできます。施行通達は、診断名や検査値、具体的な訴えの内容といった詳しい医学情報を記録に書く趣旨ではないとし、事業者にも提供してはならないとしています。

(参考)長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル(平成27年11月) – 厚生労働省

(参考)労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(令和3年2月改訂) – 厚生労働省

就業上の措置に係る意見書の記入欄|就業区分と職場環境の意見

意見書の様式例では、まず就業区分を通常勤務、就業制限・配慮、要休業から選びます。ストレスチェック指針の区分では、通常勤務は通常の勤務でよい場合、就業制限は勤務に制限を加える必要がある場合、要休業は勤務を休む必要がある場合です。就業制限・配慮のときは、時間外労働の制限(月何時間まで)、時間外労働の禁止、就業時間の制限などの労働時間の短縮と、就業場所の変更、作業の転換、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換などの労働時間以外の措置を選び、措置期間を書きます。

高ストレス者用の意見書には、長時間労働者用にはない「職場環境の改善に関する意見」の欄があります。実施マニュアルは、職場環境の改善に関する意見は人事労務管理に関わるものが多いため、人事労務担当者や管理監督者と連携して対応するよう求めています。小規模事業場向けのマニュアルも、意見書を個人への措置で終わらせず、組織の課題に気づくきっかけとして受け止めることを勧めています。

(参考)長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル(平成27年11月) – 厚生労働省

(参考)小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月) – 厚生労働省

Q. 面接指導を申し出ると、ストレスチェックの結果は会社に伝わりますか?

伝わります。ストレスチェック指針は、面接指導の申出をもって結果の事業者への提供に同意したとみなしてよいとしており、その扱いはあらかじめ労働者に知らせておく必要があります。ただし、医師から会社に渡るのは就業上の措置に必要な情報に限られ、診断名や検査値、具体的な訴えの内容などは提供しないことになっています。

産業医面談の費用とオンライン|事業者負担と産業医がいない場合の頼み先

面接指導の費用は全額を事業者が負担し、保険診療として扱うことはできません。条件を満たせばオンラインでも行えますが、電話による面接指導は認められていません。産業医がいない50人未満の事業場は、地域産業保健センターに無料で頼めます。

(参考)ストレスチェック制度関係Q&A(令和3年改訂) – 厚生労働省

面接指導の費用は事業者が負担し受けた時間の賃金は労使で決める

法律が事業者に面接指導の実施を義務づけている以上、費用は事業者が負担すべきもので、外部の医療機関の医師に頼んでも保険診療扱いにはできない、というのが厚生労働省の見解です。オンラインで行う場合の通信料などにも注意が必要です。

面接を受けた時間の賃金は労使で話し合って決めますが、健康の確保は事業の運営に欠かせない条件であることから、一般の健康診断と同じく支払うのが望ましいとされています。外部委託サービスでは、面接指導が料金に含まれるか、実施した分だけ払う形かが契約によって違うため、ストレスチェック外部委託の比較と費用を参考に見積もりの内訳を確かめてください。

(参考)ストレスチェック制度関係Q&A(令和3年改訂) – 厚生労働省

(参考)小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月) – 厚生労働省

オンラインの面接指導は映像と音声と緊急時の体制が条件

情報通信機器を使った面接指導は、厚生労働省の通達(平成27年9月15日付け基発0915第5号、令和2年11月19日一部改正)に沿えば行えます。医師と労働者が互いに表情や顔色、声、しぐさを確かめられ、映像と音声が安定していることが条件で、医師が必要と認めた場合は対面で行います。

このほか、医師が事業場の産業医であるか、過去1年以内に事業場を巡視したことがあるなど事業場を知っていることが望ましく、実施方法を衛生委員会などで審議して周知すること、面接の内容が第三者に聞かれない環境を用意すること、緊急時に近くの医師などと連携できる体制を整えることが求められます。委託調査では、事業場が用意している面接指導の形態は対面が71.1%、対面とオンラインの併用が21.5%、オンラインのみが2.8%でした。

(参考)労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(令和3年2月改訂) – 厚生労働省

(参考)令和3年度 ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業 報告書(2022年3月) – みずほリサーチ&テクノロジーズ(厚生労働省委託事業)

産業医がいない事業場は地域産業保健センターに無料で頼める

産業医の選任義務がない50人未満の事業場は、全国350か所にある地域産業保健センターに、高ストレス者の面接指導を無料で頼めます。センターには登録産業医がいて、医師の手配と日程調整もセンターの窓口が行います。ストレスチェックそのものはセンターでは実施しておらず、大企業の営業所のように本社の産業医の協力を得られる事業場は利用できないことがあります。

50人未満の事業場のストレスチェックは今は努力義務ですが、2025年5月公布の改正労働安全衛生法により、令和10年(2028年)4月1日から義務になります。施行後は、50人未満でも対象者から申出があれば面接指導を行わなければなりません。施行までの準備はストレスチェック義務化はいつからでまとめています。

あわせて読みたい中小企業のメンタルヘルス対策|義務化・助成金とスポーツ活用›

(参考)小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月) – 厚生労働省

(参考)労働者数50人未満の小規模事業者の方(ストレスチェック制度) – 厚生労働省

面接指導を受けるのは高ストレス者の1割|申出が少ない理由と勧め方

厚生労働省の委託調査(2021年8〜9月)では、高ストレスと判定された労働者197人のうち、医師の面接を受けたのは14.7%でした。事業場側の回答でも、面接を受けた人の割合が「5%未満」という事業場が全体の76.8%を占め、規模による差は小さく、どの規模でも7割を超えています。

事業場の規模 回答した事業場 面接を受けた人が5%未満の事業場 選任の産業医が面接を担当した事業場
49人以下 329 77.5% 44.1%
50〜299人 1,119 80.7% 63.5%
300〜999人 988 76.1% 71.1%
1,000人以上 679 70.8% 87.3%
全体 3,115 76.8% 69.1%

出典:みずほリサーチ&テクノロジーズ「令和3年度 ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業 報告書」(厚生労働省委託事業、2022年3月)の図表49〜51をもとに Human Soar 作成。「面接を受けた人」は高ストレス者のうち本人の申出で医師の面接を受けた人。担当医師の所属は複数回答

規模が小さいほど選任の産業医が面接を担当する割合は下がり、49人以下では44.1%です。代わりに、選任されていない産業医が22.8%、外部委託先の医師が12.5%を担っています。面接の受けやすさは規模によらず低く、担い手は規模によって大きく違う、というのがこの2つの数字の組み合わせから読み取れることです。

(参考)令和3年度 ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業 報告書(2022年3月) – みずほリサーチ&テクノロジーズ(厚生労働省委託事業)

面接を受けない理由は役立つか分からないと時間がない

同じ報告書が紹介する、全国の労働者3,915人を2年間追った調査では、医師の面接を受けなかった理由(141人)は「面接指導がどのように役立つのかが分からなかった」が36%、「面接指導の必要性を感じなかった」が29%、「時間がなかった」が20%でした。面接を受けた29人に効果を聞くと、「高ストレス状態の解消に向けて適切な指摘を受けられた」が31.0%、「就業上の措置を講じてもらえた」が17.2%で、「特になし」も37.9%ありました。

高ストレス者向けの面接マニュアルも、受けなかった理由として、忙しくて時間が取れない、自分の状態を十分に認識していない、産業保健スタッフとの関わりに抵抗がある、面接の意義が分からない、の4つを挙げています。

(参考)令和3年度 ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業 報告書(2022年3月) – みずほリサーチ&テクノロジーズ(厚生労働省委託事業)

(参考)ストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル(2021年9月版) – 労災疾病臨床研究事業 研究班(厚生労働省掲載)

申出を増やす勧奨と受けない人の受け皿

同じマニュアルに載っている、面接指導の経験がある医師140人への調査(2019年2月)では、実施者などが高ストレス者に面接を勧めた回数は1回が52.1%、2回以上が20.7%で、勧めていないという回答も27.1%ありました。ストレスチェックから面接までの期間を短くする取り組みをしている事業場は26.4%、申出をした人以外の高ストレス者とも面接して申出を促している事業場は24.3%でした。

勧めるときは、申出をしても不利益な扱いを受けないこと、申出をすると結果が会社に伝わること、会社に伝わるのは措置に必要な情報だけであることを、先に説明しておくと迷いが減ります。それでも受けない人がいるため、小規模事業場向けのマニュアルは、厚生労働省の「こころの耳」の相談窓口など、面接指導以外に相談できる先を案内しておくよう勧めています。本人が会社に伝わることを強く拒む場合は、法にもとづく面接指導ではなく、通常の産業保健活動の相談として医師が応じる方法もQ&Aで示されています。

(参考)ストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル(2021年9月版) – 労災疾病臨床研究事業 研究班(厚生労働省掲載)

(参考)ストレスチェック制度関係Q&A(令和3年改訂) – 厚生労働省

Q. 高ストレスと判定されても面接指導を受けないことはできますか?

できます。面接指導を受けるかどうかは本人の選択で、申出をしないことも認められています。会社は、申出をしたことを理由に不利益な取扱いをしてはならず、受けなかった人が放置されないよう、面接指導以外の相談窓口を案内しておくことが望まれます。

面接指導の後に運動の機会を用意する|医師の助言と職場の運動施策

面接指導の後に会社が運動の機会を用意するときは、医師が本人に助言する「保健指導」と、意見書の「職場環境の改善に関する意見」の2つを入口にします。運動は、時間外労働の制限のような就業上の措置とは違い、本人が選んで取り組むものとして位置づけます。

医師は睡眠の改善に軽い運動を勧めることがある

高ストレス者向けの面接マニュアルには、医師が「薬に頼らずに睡眠を改善するには、軽い運動ができるとよい」と伝え、本人が自分でできる工夫を一緒に考える場面が例として載っています。医師が本人に行う指導の一つで、同じマニュアルは、受診などの勧めを本人が受け入れなくても、業務ができている状況であれば本人の決定を尊重するよう医師に求めています。

会社ができるのは、助言を受けた人がすぐ動けるよう、使える仕組みを前もって用意しておくことです。たとえば、法人契約のスポーツクラブや、昼休みに参加できる運動の時間を社内に案内しておきます。制度の選び方は福利厚生にスポーツクラブを導入するときの選び方と費用で解説しています。ただし、面接を受けた人だけを対象に運動を勧めると、誰が面接を受けたかが周りに分かってしまいます。案内は全員に向けて行います。

(参考)ストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル(2021年9月版) – 労災疾病臨床研究事業 研究班(厚生労働省掲載)

職場の運動施策は国の身体活動ガイドの目安で組み立てる

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人に、歩行かそれと同じ程度以上の身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上)、息が弾み汗をかく程度以上の運動を週60分以上行うことを勧めています。身体活動や運動の量が多い人は、うつ病などの発症リスクが低いことが報告されているとも書いています。

同じガイドは職場での取り組みの研究例も紹介しています。日本の労働者490人に1日1万歩を目標に4週間歩いてもらった研究では睡眠の質が改善し(対照群なし)、日本の11の職場の59人に昼休みの運動指導を週3回、10週間行った研究では、活力、対人ストレス、ソーシャルサポート、仕事の満足度に改善が見られました。いずれも研究例であり、ストレスチェックの点数が下がることを示したものではありません。

意見書で職場環境の改善を求められた部署全体に運動の時間を設けるかどうかは、集団分析の結果とあわせて衛生委員会などで話し合うと進めやすくなります。施策全体の組み立て方はウェルビーイング施策が失敗する理由と設計法にまとめています。

あわせて読みたいストレスチェックにスポーツ心理学|フォロー面談の4つの視点›

(参考)健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 – 厚生労働省

ストレスチェックの面接指導のまとめ

面接指導は、高ストレス者の申出を受けて医師が行い、その意見をもとに事業者が就業上の措置を決める仕組みです。数字の出典は本文の各セクションに記載しています。

  • 対象は高ストレスで、面接が必要と実施者が認めた人。申出があれば事業者に実施義務があり、本人に受ける義務はない
  • 申出・面接・意見聴取は、それぞれ概ね1か月以内が目安。結果の記録は5年間保存する
  • 医師の意見書は通常勤務・就業制限・要休業の3区分で、高ストレス者用には職場環境の改善に関する意見の欄がある
  • 費用は全額事業者負担で、50人未満は地域産業保健センターに無料で頼める。2028年4月からは50人未満も義務になる
  • 面接を受けるのは高ストレス者の1割台。勧め方の工夫と、全員に向けた運動の機会や相談窓口の案内を組み合わせる

まずは自社の実施規程に、申出の窓口と方法、面接を頼む医師、申出をすると結果が会社に伝わることが書かれているかを確かめてください。迷う点は、労働基準監督署や都道府県の産業保健総合支援センター、社会保険労務士に確認すると確実です。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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