佐藤拳太郎の柔軟性向上法|企業も学ぶ可動域改善の手順

佐藤拳太郎の柔軟性向上トレーニングと可動域改善を示す陸上トラックの写真 スポーツアスリート

400mのゴール前、腕の振り方にわずかなブレが出た瞬間、タイムは0.01秒単位で変わってしまう。佐藤拳太郎はこの「わずかな差」を経験と勘だけに頼らず、大学院で学んだ動作解析によって埋め、2023年に32年ぶりとなる日本記録44秒77を打ち立てた選手です。

本記事では、高校時代は天文部に所属していた異色のスプリンターが、どのようにデータに基づく体づくりへと考え方を変えていったのかを解説します。陸上に関心がある人はもちろん、社員のコンディション管理に悩む企業の担当者にとっても、感覚に頼らない体づくりのヒントになるはずです。

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佐藤拳太郎はなぜ32年ぶりに400m日本記録を更新できたのか

2023年の世界陸上選手権ブダペスト大会で、佐藤拳太郎は400mで44秒77を記録し、高野進が1991年に出した44秒78を0秒01更新しました。トラックの五輪種目としては32年ぶりの日本記録更新という、歴史的な偉業です。

1994年埼玉県所沢市生まれの佐藤は、城西大学を経て2017年に富士通へ入社。2016年リオデジャネイロ、2021年東京と2度の五輪で男子1600mリレー代表を務め、個人でも2023年世界選手権で準決勝に進出するなど、日本の男子400mを牽引してきました。パリ五輪では個人参加標準記録を突破し、日本選手権を経てリレーでも代表出場枠を獲得しています。

天文部からマイル侍へ|偶然が導いた陸上競技との出会い

格闘技好きの父から「拳太郎」と名付けられた佐藤ですが、幼少期は父のミット目がけてパンチを繰り出す日々を過ごし、小学校では野球を始めたものののめり込むことはありませんでした。星空を見ることが好きだった佐藤は、天文部があるという理由だけで地元・埼玉の豊岡高校へ進学します。

陸上競技との接点は、クラスメートから「このままだとリレーに出られない」と頼まれたことがきっかけでした。人数合わせの兼部からスタートしたにもかかわらず、3年生では200m・400mで全国大会に出場するまでに成長。城西大学3年の2015年には日本代表合宿に初めて呼ばれ、200mへの未練を断ち切って400mへ専門種目を一本化しています。人材育成の視点で見ても、環境との偶然の出会いが才能を引き出す例は珍しくありません。柔道からサンボへ転向し金メダルをつかんだ浜田尚里のケースにも通じる構図です。

Q. 佐藤拳太郎はなぜ400mに専念するようになったのですか?

200mと400mの両方を試すなかで「いろいろ試行錯誤してレース中も修正できる」ことに気づき、400mに面白さを感じたためです。城西大学3年の2015年に専門種目として一本化し、以降は日本代表の常連となりました。

400mを3つの局面に分けて動作を捉え直した佐藤拳太郎

佐藤は早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にも通い、2022年度には400mの走りをテーマにした修士論文を提出しています。「自分の経験に頼っていることに限界がきた」と語るように、感覚だけに頼っていた走りを、10mごとの速度・ストライド・ピッチのデータで捉え直しました。

局面 経験に頼っていた頃 動作解析を導入した後
スタート〜200m 感覚頼みの入り方 10m区間ごとの速度・ピッチを数値で管理
200〜300mのコーナー区間 記録が伸び悩む局面という認識のみ 自身が最も記録を伸ばす区間と特定し動作分析
残り100mのフィニッシュ 迷いながらの走り方の調整 「出した答えは迷いなく行える」形に固定

表:佐藤拳太郎自身の証言をもとに、400mの3局面における走りの捉え方の変化をHuman Soarが整理

①スタート〜200m|数値で入りのペースを管理する

以前は感覚に任せていた序盤の入り方を、10m区間ごとの速度・ストライド・ピッチのデータで管理するようになりました。数字で自分の走りを確認できるようになったことで、レースごとの再現性が高まっています。

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②200〜300mのコーナー区間|最も記録が伸びる局面を分析する

佐藤自身が「記録を伸ばす重要区間」と位置づけるのが200〜300mのコーナー区間です。この局面の動作分析を重ねたことで、遠心力がかかるカーブでも失速しにくい体の使い方を、感覚ではなくデータの裏付けを持って再現できるようになりました。

③残り100mのフィニッシュ|迷いのない走りに固定する

分析を通じて「こうやって走りたい」というものが築き上げられると、「出したものは迷いなく行える」と佐藤は語ります。終盤の走りを毎回考え直すのではなく、事前に固めた形を再現するという発想への転換です。

(参考)高校は天文部。マイル侍・佐藤拳太郎が、陸上の日本記録保持者になれた理由 – GOETHE(幻冬舎)

Q. 佐藤拳太郎が動作解析を始めたきっかけは何ですか?

自分の経験だけに頼ることに限界を感じたためです。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に進み、2022年度に400mの走りをテーマにした修士論文をまとめ、10m区間ごとの速度・ストライド・ピッチを解析するようになりました。

動作解析を支えた3つの環境

佐藤の走りを支えているのは本人の分析力だけではありません。所属先である富士通のコーチ陣、学びの場となった大学院、そして代表として重ねてきた国際レースの経験という3つの環境が、データに基づく体づくりを後押ししてきました。

佐藤拳太郎の動作解析を支えた3つの環境を示す図解

図:佐藤拳太郎の走りを支えた3つの環境

①富士通・高平慎士コーチとの伴走

富士通の高平慎士コーチは佐藤について「本当に日本記録保持者かと思うほど謙虚」と証言しています。日本記録を持つ選手であっても現状に満足せず、コーチとともに走りを検証し続ける姿勢が、記録更新の土台になっています。

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②早稲田大学大学院での学術研究

早大大学院への進学は、現役トップ選手としては異例の選択です。ここで得た「走りを数値で語る」姿勢が、10mごとの区間分析やコーナー区間の動作研究という具体的な手法につながりました。

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③日本代表として重ねた国際レース経験

2015年の世界選手権北京大会以降、2019年、2023年と代表を重ねてきた経験も、分析結果を実戦で検証する機会になっています。すでに個人ではパリ五輪参加標準記録を突破し、リレーでも代表出場枠を獲得しました。

Q. 佐藤拳太郎の身体データを教えてください。

身長173cm、体重63kgです(GOETHE掲載時点)。趣味は星空鑑賞で、好きな星座はオリオン座と語っています。

怪我を防ぐ体づくりが、企業のコンディション管理に示す視点

佐藤の事例が企業にとって示唆的なのは、「経験則だけに頼らず、区間ごとのデータで振り返る」という発想そのものです。社員のコンディション管理でも、疲労やパフォーマンスの変化を感覚的に判断するのではなく、定点で記録し続けることで初めて再現性のある改善につながります。

体重管理やコンディションの記録を続けている樋口新葉の体重管理の事例や、本番で崩れないための五十嵐カノアのメンタル集中法も、感覚と数値の両輪で自分を管理する点で佐藤のアプローチと重なります。企業の健康経営担当者にとっても、「まず記録し、区間ごとに振り返る」という手順は転用しやすい考え方です。

Q. 佐藤拳太郎の取り組みは企業の健康管理にどう応用できますか?

感覚的な自己申告に頼らず、区間や期間を区切って数値を記録する仕組みをつくることが応用点です。佐藤が10m区間ごとに走りを分析したように、体調や業務負荷を定期的に定点観測することで、変化に早く気づけるようになります。

まとめ|佐藤拳太郎の走りに学ぶデータ起点の体づくり

  • 佐藤拳太郎は2023年世界陸上で400m日本記録44秒77をマークし、32年ぶりの更新を達成した
  • 天文部出身という異色の経歴から、偶然の出会いを経て陸上競技に専念するようになった
  • 早稲田大学大学院で400mの走りを研究し、10m区間ごとの速度・ストライド・ピッチを解析するようになった
  • 200〜300mのコーナー区間を自身が最も記録を伸ばす局面と位置づけ、動作分析を重ねている
  • 感覚だけに頼らずデータで振り返る発想は、企業のコンディション管理にも応用できる視点である

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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