体操の代表合宿や国際大会が続くと、選手の頭の中は次の演技のことでいっぱいになります。練習の後半、着地の一瞬にわずかな迷いが出て、本人は「いつも通りできている」つもりでも、コーチの目には小さなブレとして映る。そんな緊張の糸を、どこでどう緩めるか。体操の谷川航選手が実践してきたのは、特別な道具もメソッド名も必要としない、きわめてシンプルな「心身をゼロに戻す」習慣でした。
谷川航はどんな選手か|東京五輪団体銀・世界選手権個人総合銅
谷川航選手は千葉県船橋市出身の体操選手です。小学校1年から体操を始め、順天堂大学3年だった2017年に世界選手権で初めて日本代表入りを果たしました。2021年の東京オリンピックでは男子団体総合で銀メダルを獲得し、2022年の世界選手権では男子個人総合で銅メダルに輝いています。
得意種目はゆか・跳馬・平行棒で、抜群の跳躍力を武器とする選手です。2017年から毎年代表入りを続け、世代を代表する体操選手としてパリオリンピックでの金メダルを目標に掲げてきました。
「心身をゼロに戻す」谷川航のリラックス法とは
谷川選手がインタビューで繰り返し語っているのが、リラックスとは「何かをする」ことではなく「何もしない」ことだという考え方です。派手な気分転換ではなく、あえて刺激を減らす方向で心身を休めているのが特徴です。
家で「ごろん」とする、何も考えない時間
谷川選手は自身のリラックス方法について「一人で家でごろんとすること。何も考えずに中でゆっくりすること。寝ること」と述べています。予定や目標から一度完全に離れ、思考そのものを止める時間を意識的に作っているのです。
これは単なる休憩ではなく、練習や試合で高まり続けた緊張を「ゼロ地点」まで戻す作業だと捉えられます。オンとオフの振れ幅を大きく持つことで、次の練習に向けた集中力を立て直しているといえるでしょう。
「楽しい体操」という座右の銘が支える継続力
谷川選手の座右の銘は「楽しい体操」です。本人は「楽しくなかったら継続していけないし、何のためにやっているのかなと思ってしまう」と語っており、リラックスの土台には競技そのものへの前向きな感情を保つ工夫があることが分かります。
休息の技術と同じくらい、競技への向き合い方そのものをポジティブに保つ姿勢が、長期的なコンディション維持につながっていると考えられます。
Q. 谷川航選手のリラックス方法は何ですか?
自宅で一人になり、何も考えずにゆっくり過ごす、あるいは眠ることだと本人が語っています。特別な道具やメソッドではなく、刺激を減らして思考を止める時間を意識的に作る点が特徴です。
好調と不調の波をどう乗り越えるか|谷川航の切り替え術
体操はわずかなミスが得点に直結する競技のため、調子の波との付き合い方が成績を左右します。谷川選手は「調子が悪くても、そういう日もあるよねという軽い気持ちになる」ことの大切さを語っています。
不調を否定せず受け入れたうえで、「その分は明日しっかりやろう」と気持ちを次に向ける。コンディションはメンタルの状態に左右されやすいため、感情をコントロールする意識そのものが回復の一部になっているのです。
(参考)プロアスリートを支える食事に迫る。第42回 体操競技・谷川航選手インタビュー – きのこらぼ(Hokto)
Q. スランプのときはどう気持ちを切り替えればよいですか?
不調を否定せず「そういう日もある」と受け止めたうえで、翌日に向けて意識を切り替えることが有効です。谷川選手はこの考え方によってメンタルの波を大きくしないようにしていると語っています。
トップアスリートの睡眠は足りているか|自己申告と実測のギャップ
谷川選手が「寝ること」をリラックス法の中心に置いているのは、偶然ではありません。スポーツ庁所管の国立スポーツ科学センター(JISS)が公開する情報によると、トップアスリートの睡眠には自覚と実態のあいだに大きなギャップがあることが分かっています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| トップアスリートが「必要」と感じる平均睡眠時間 | 8.3時間 |
| 実際の平均睡眠時間 | 6.7時間 |
※スポーツ庁所管・国立スポーツ科学センター(JISS)「アスリート育成パスウェイ」掲載情報をもとに筆者が整理・集計。
「必要な睡眠」と「実際の睡眠」の差が生む慢性的な睡眠不足
この調査結果が示しているのは、多くのアスリートが自分に必要な睡眠時間を感じ取れていながら、実際にはその時間を確保できていないという構造的な問題です。代表合宿のように環境が変わる場面では、このギャップがさらに広がりやすくなります。
睡眠時間の延長がパフォーマンスに直結した実証データ
学生バスケットボール選手を対象にした調査では、普段より2時間弱睡眠を延長する生活を3週間続けたところ、フリースローや3ポイントシュートの成功率が改善したことが分かっています。谷川選手が「寝ること」をリラックス法の第一に挙げるのは、感覚的な習慣であると同時に、科学的にも裏付けのある選択だといえるでしょう。
(参考)睡眠は、リカバリーの重要な手段の一つ – Athlete Pathway(スポーツ庁・国立スポーツ科学センター)
Q. アスリートの睡眠不足はどれくらい深刻なのですか?
国立スポーツ科学センターの情報によると、トップアスリートは平均8.3時間の睡眠が必要と感じながら、実際の睡眠は平均6.7時間にとどまっています。慢性的な睡眠不足に陥りやすい構造があるといえます。
図解|谷川航の「ゼロに戻す」リカバリーサイクル
谷川選手が語る内容を整理すると、緊張を溜め込んでから一気に発散するのではなく、日々のサイクルの中でこまめに「ゼロ地点」へ戻す発想であることが見えてきます。次の図は、その考え方をHuman Soarが4つの局面に整理したものです。

図:谷川航選手のリカバリー習慣を、練習後の緊張から翌日の集中までの循環として整理した図解。
睡眠を軸にコンディションを整える発想は他競技の選手にも共通しています。Jリーグの水沼宏太選手が語る7〜8時間睡眠と食事管理の考え方や、スペイン移籍を経験した柴崎岳選手が続けるマットレスと睡眠データ管理法も、それぞれの環境でコンディションを保つ工夫として参考になります。
企業のコンディション管理・健康経営にこの発想をどう活かせるか
「刺激を減らして思考を止める時間を意識的につくる」という谷川選手の習慣は、企業の人材育成や健康経営の担当者にとっても応用しやすい考え方です。長時間労働や繁忙期のストレスを、休日にまとめて発散しようとしても、緊張の蓄積そのものは解消されにくいためです。
経済産業省が推進する健康経営の取り組みでも、従業員のプレゼンティーズム(心身の不調による生産性低下)対策として、日常的な休養の質を高めることが重視されています。トップアスリートが実践する「こまめにゼロへ戻す」発想は、日々の業務サイクルに短い休息時間を組み込む工夫として、社内の休憩制度や1on1の設計にそのまま応用できます。
Q. 企業の健康経営に取り入れられる工夫はありますか?
休日にまとめて休むのではなく、日々の業務サイクルの中に短い「思考を止める時間」を組み込む発想が応用できます。1on1や休憩制度の設計に、こまめな回復のタイミングを取り入れることが有効です。
あわせて読みたい谷川萌々子が愛犬との散歩で整えるオフの心と体›あわせて読みたい17歳成田実生が家族との時間で保つ等身大の強さ›
体操以外の競技でも、休養と競技への向き合い方を大切にする選手は少なくありません。たとえば加藤優選手が選んだ女子野球普及にかける第二の人生のように、競技と向き合う姿勢そのものを見つめ直す選手のストーリーも参考になります。
まとめ
- 谷川航選手は東京五輪団体銀・世界選手権個人総合銅を獲得した体操選手
- リラックス法は「家で何も考えずゆっくりする」「寝る」という刺激を減らす習慣
- 不調を否定せず受け入れたうえで翌日へ気持ちを切り替える考え方を持つ
- トップアスリートは自覚する睡眠時間と実際の睡眠時間に大きなギャップがある
- 「こまめにゼロへ戻す」発想は企業の健康経営・休養設計にも応用できる
Q. 谷川航選手の得意種目は何ですか?
ゆか・跳馬・平行棒を得意とし、抜群の跳躍力を武器とする選手です。2021年東京オリンピックの男子団体総合で銀メダル、2022年世界選手権の男子個人総合で銅メダルを獲得しています。
FREE DOCUMENT
関連する資料を無料でダウンロード
ご質問・ご相談はお気軽にどうぞ
お問い合わせはこちら →




コメント