地元のクラブに協賛して、スタジアムに看板が出た。ユニフォームにも社名が入った。ところが1年たって契約の更新を決める会議になると、「それで何が変わったのか」という問いに、誰も数字で答えられない。協賛の担当になった人が、いちばん困る場面です。
スポンサーシップ アクティベーションとは、協賛で得た権利を、自社の目的に合わせて実際に使う取り組みのことです。看板やロゴは協賛すれば自動で出ますが、選手の派遣、ブースの出展、冠試合、招待といった権利は、企業の側が企画しなければ使われずに終わります。
この記事では、国の資料と企業・クラブの公式発表をもとに、スポーツ協賛の権利の種類、地元企業を含む国内の事例、活用にかける予算の考え方、効果の測り方を整理します。内容は、いずれも2026年10月11日に原典を確認したものです。
スポンサーシップ アクティベーションとは協賛の権利を使う取り組み
アクティベーションは、協賛で得た権利を使って、自社の目的に合う成果を生み出す活動を指します。ただし、この言葉を定めた法律や業界団体の規程は、確かめた範囲では見つかりませんでした。国の資料、広告会社、調査会社、クラブが、それぞれの言葉で説明しています。
| 出どころ | 時点 | 説明 |
|---|---|---|
| スポーツ庁・経済産業省の会議の事務局資料 | 2024年5月 | スポーツ団体の保有するアセットを活用して価値を創出する「アクティベーション」 |
| 博報堂のニュースリリース | 2025年6月 | スポンサーシップにより得た権利を活用したキャンペーンやコラボレーションなど新たな価値を創出する「アクティベーション」 |
| 矢野経済研究所のプレスリリース | 2023年3月 | スポーツスポンサーシップを促進するために企業が行うマーケティング活動 |
| FC東京のパートナーページ | 2026年10月に確認 | パートナー アクティベーション(権利活用・オリジナルの展開) |
アクティベーションの説明を出どころ別に並べた表(出典:各資料の原文。スポーツ庁・経済産業省の資料は審議会の答申ではなく、会議の事務局資料)
4つの説明は、同じ方向を向いています。クラブやリーグが持っているものを、企業が自分の目的のために使う、という点です。経済産業省とスポーツ庁の会議資料は、近年は「スポンサーシップからパートナーシップへ」という流れに発展し、アクティベーションに注目が集まっていると説明しています。
同じ資料は、従来の協賛を「不特定多数への露出機会拡大」、近年の協賛を「単なる露出にとどまらず、より目的が具体化・拡大」したものと整理しています。近年の目的の例として挙げられているのは、社会課題の解決への関与、人材の育成と採用、新しいターゲットの獲得などです。なお、協賛の効果そのものについてはスポーツスポンサーシップ効果の記事で扱っています。
(参考)資料3 事務局資料 パートナー企業との共創(第二期スポーツ未来開拓会議「みる」スポーツ分科会 第2回、2024年5月10日) – スポーツ庁・経済産業省
(参考)博報堂と博報堂DYスポーツマーケティング、スポーツビジネスにおいて生活者・企業・スポーツが一体となり新たな価値創造を目指すプロジェクト「HAKUHODO DRIVE.」発足 – 博報堂
(参考)スポーツスポンサーシップに関する調査を実施(2022年) – 矢野経済研究所
Q. スポンサーシップ アクティベーションとは何ですか?
協賛で得た権利を、自社の目的に合わせて実際に使う取り組みのことです。スポーツ庁と経済産業省の会議の事務局資料(2024年5月)は、スポーツ団体の保有するアセットを活用して価値を創出することと説明しています。法律や業界団体の規程による定義は、確かめた範囲では見つかっていません。
アクティベーションは協賛の権利と自社の持ち物が重なる部分で起きる

アクティベーションは、クラブから得た権利と、自社がもともと持っているものを掛け合わせたところに生まれます。権利だけでは露出で終わり、自社の製品や顧客だけではスポーツの力を借りられません。図の2つの円を、順に見ていきます。
協賛で得られる権利は露出の権利と活用の権利に分かれる
協賛で得られる権利は、クラブによって「権益」や「メリット」とも呼ばれます。FC東京は、権利を「広告媒体」「観戦チケット」「プロモーション」「その他」の4つに分けて示しています。広告媒体は、大型映像機でのCM放映やロゴの掲出です。プロモーションには、選手とマスコットのイベント派遣、キャンペーンの実施権、会員向けのプロモーションの実施権が入っています。
広告媒体は、協賛すれば出る「露出の権利」です。一方、選手の派遣やキャンペーンの実施権は、企業が企画を立てて初めて形になる「活用の権利」です。千葉ジェッツも、1試合につき1社が冠協賛でき、来場者へのサンプリングやハーフタイムを使ったPRができると案内しています。
FC東京のページには、協賛金額に応じて提供できる権利は異なる、という注記があります。同業の他社が協賛に入らない「競合排除権」のように、施策ではなく状態を得る権利もあります。クラブごとの協賛の金額はスポーツスポンサー料の相場で一覧にしています。
掛け合わせる自社の持ち物は製品・アプリ・顧客・社員
もう一方の円は、自社の側にあるものです。次の章で紹介する事例では、自社の製品、自社のアプリ、すでに契約している顧客、そして社員が、権利と組み合わされていました。たとえば、ブースの出展という権利は、見せたいアプリがあって初めて使い道が決まります。
経済産業省が2026年2月に公表した事例集は、同じ構図を「企業の課題」と「クラブの価値」の掛け合わせとして整理し、「課題解決型」のパートナーシップと呼んでいます。この記事では、それを協賛の権利の使い方として読み替えています。事例集には資金の拠出を前提としない取り組みも含まれる、と断り書きがある点には注意してください。
クラブの価値は、目に見えるものだけではありません。経済産業省の委託事業の報告書(2026年2月)は、スタジアム、グッズやユニフォーム、選手やコーチといった有形の価値のほかに、ファンコミュニティ、地域とのネットワーク、デジタルコンテンツ、ブランド力などの無形の価値を挙げています。
(参考)スポーツクラブと企業による「課題解決型」パートナーシップの11の事例集(令和8年2月) – 経済産業省 スポーツ産業室
(参考)令和7年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(スポーツリーグ・クラブのパートナーシップ形成促進のための広報事業)事業報告書 – 経済産業省
スポーツ協賛のアクティベーション事例|権利を施策に変えた国内企業

国内の事例を、企業やクラブの公式発表と、経済産業省の事例集で確かめられたものに絞って紹介します。図は、どの権利がどの施策になり、どんな数字が公表されたかを線で結んだものです。地元のクラブと組んだ地方銀行やケーブルテレビ、資本金1億円のメーカーの例も含めています。
中野製薬は選手の派遣とビジョンのCMを1つの企画でつないだ
京都市に本社を置くヘアケアメーカーの中野製薬(資本金1億円)は、2024年12月に、Bリーグの京都ハンナリーズと2024-2025シーズンのパートナーシップを結びました。2025年2月16日には、地元のミニバスケットボールクラブの小中学生15名を対象に、自社のスタイリング剤を使う体験会と、京都ハンナリーズによるバスケットボール教室を開いています。
同社の発表によると、この様子は30秒のCMになり、3月19日からホーム試合のスクリーンで放映されました。クラブの協力で開いた体験会を、ビジョンのCMという別の権利の素材にした形です。参加した15名という数字は、実施後に公表された結果です。
(参考)B.LEAGUE所属のプロバスケットボールチーム「京都ハンナリーズ」と協業 – 中野製薬
秋田銀行はブースを自社アプリの入口にした
秋田銀行は、Bリーグの秋田ノーザンハピネッツのオフィシャルパートナーです。2024年10月19日の試合ではゲームスポンサーを務め、ブースで「あきぎんアプリ」をインストールした画面を見せた人に、限定のアクリルキーホルダーを贈りました。配った数は公表されていません。
経済産業省の事例集は、同行がクラブの発足時から16年間支援を続けてきたと紹介しています。成果としては、子どものいる家庭など、普段の営業時間では接することのできない層と接点が持てたことを挙げています。これは事例集がヒアリングをもとに書いた記述で、人数などの数字は示されていません。
(参考)【試合情報】10/19(土)20(日)秋田ノーザンハピネッツ vs 佐賀バルーナーズ – 秋田ノーザンハピネッツ
(参考)スポーツクラブと企業による「課題解決型」パートナーシップの11の事例集(令和8年2月) – 経済産業省 スポーツ産業室
シーシーエヌは冠試合を加入者への感謝の場にした
岐阜市のケーブルテレビ会社シーシーエヌは、2025年11月9日のFC岐阜の試合を「シーシーエヌ株式会社サンクスマッチ」として開きました。自社サービスの加入者へ感謝を伝える企画で、事前の抽選で当選した100名を招待すると発表しています。スタジアムの見学ツアー、エスコートキッズ、VIPルームでの観戦が用意されました。
新しい客を集めるのではなく、すでに契約している顧客をもてなすために権利を使った例です。100名は実施前の発表にある招待の数で、当日に来場した人数ではありません。招待や観戦席を使ったもてなしの考え方は、スポーツホスピタリティの記事で扱っています。
(参考)FC岐阜「シーシーエヌ株式会社サンクスマッチ」開催(プレスリリース、2025年10月30日) – シーシーエヌ
ゼンリンはクラブのマスコットを自社アプリの案内役にした
ゼンリンは、JリーグのクラブであるV・ファーレン長崎と組み、自社の観光アプリ「STLOCAL」で、クラブのマスコットが長崎の特産物や名店を日記形式で紹介する企画を行いました。Jリーグの社会連携活動「シャレン!」のページでは、ゼンリンが協働者として紹介されています。
経済産業省の事例集によると、SNSでの発信にマスコットを起用したことで、通常の10倍以上のインプレッション(表示された回数)を得ました。事例集は、当初はスタジアムでのロゴの露出という一般的な提案が検討されていた、とも書いています。看板ではなく、キャラクターを使う権利を選んだことが成果につながった例です。
(参考)V・ファーレン長崎:2024シャレン!アウォーズ – Jリーグ
(参考)スポーツクラブと企業による「課題解決型」パートナーシップの11の事例集(令和8年2月) – 経済産業省 スポーツ産業室
カネカは冠試合とマラソンの協賛を自社素材を見せる場にした
大手の例も見ておきます。カネカは、鹿島アントラーズのオフィシャルパートナーとして、2024年7月20日の試合を冠試合にしました。自社の生分解性素材を使った紙コップをスタジアム場外の一部の飲食店に初めて導入し、使い終えた製品をコンポスターに入れる参加型のイベントや、自社製品のサンプリングを行っています。
同社は、北海道マラソン2026にも特別協賛しています。発表によると、ランナーが着けるアスリートビブス(登録・一般男子の約3,350名)や完走者に配るタオルに社名のロゴを掲示し、グループから過去最多の約130名がランナーとしてエントリーしました。社員の参加も、協賛の権利の使い方の1つです。
(参考)カネカ 鹿島アントラーズオフィシャルパートナー冠試合を開催(News Release、2024年7月19日) – カネカ
(参考)北海道マラソン2026への特別協賛のお知らせ(2026年8月7日) – カネカ
冠試合の先着◯名は配る予定の数として読む
冠試合の発表には、数字がよく出てきます。北日本銀行は、2022年6月22日の東北楽天ゴールデンイーグルスの公式戦を「80周年記念ナイター」として、来場者の先着5,000名にロゴ入りのエコバッグを贈ると発表しました。タニタは、2024年6月30日の浦和レッズの試合で、当日5,000歩を達成した来場者の先着2,000名に、クリアファイルと売店の100円割引券を用意しました。
サーラグループは、2026年1月17日の静岡ブルーレヴズ(ラグビー)の試合で、グループ会社が扱う電気自動車を展示し、先着450名にクリアファイルを贈ると発表しています。これらはすべて、実施前の告知に書かれた予定の数です。実際に何人が受け取ったかは、公表された資料では確かめられませんでした。
他社の事例を社内の説明に使うときは、「配る予定だった数」と「起きた結果」を分けて読んでください。冠試合の仕組みと費用は、下の記事でくわしく扱っています。
あわせて読みたい冠スポンサーとは|スポーツ大会に企業名を付ける費用と実例›
(参考)北日本銀行80周年記念ナイター開催のお知らせ(2022年5月2日) – 北日本銀行
(参考)6/30(日)磐田戦 今年もタニタマッチパートナー記念「5,000歩チャレンジ」を実施! – 浦和レッズ
(参考)静岡ブルーレヴズ サーラグループ冠試合のお知らせ(2026年1月7日) – サーラコーポレーション
アクティベーションの予算|協賛金1に活用費0.4は大企業42社の平均
活用にかける費用は、協賛金とは別に見込みます。よく引かれる「協賛金1に対して活用費0.4」という数字は、売上高100億円以上の企業が答えた調査の平均で、中小企業の数字ではありません。もとになった2つの調査を並べます。
| 調査 | 対象と時期 | 協賛金1に対する活用費 | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|
| ニールセン スポーツ ジャパン「スポーツ・スポンサーシップ実施企業調査2019」 | 国内57社。2019年11月末から2020年1月24日 | 0.4(「わからない」を除く42社の平均) | 回答企業の売上高は100億円以上(非公表の1社を除く) |
| IEG/ESP Properties の意思決定者調査 | オンラインで102回答。2016年12月 | 2.2(回答の平均) | 最も多い回答は「1対1」の37%。回答者の国の内訳は書かれていない |
協賛金に対する活用費の比率を調べた2つの調査(出典:ニールセン スポーツ ジャパンのニュースリリース〈2020年3月9日〉、IEG「WHAT SPONSORS WANT AND WHERE DOLLARS WILL GO IN 2017」。調査の年・対象・設問が違う)
日本の0.4は売上高100億円以上の企業が答えた数字
ニールセン スポーツ ジャパンは、2020年3月に公表した調査で、協賛の基本権利料を1としたときの権利活用(アクティベーション)のためのコストは、「わからない」を除く42社の平均で0.4だったとしています。リリースは、この比率を海外と比べて「1/5未満」と表現しました。
回答した57社の売上高は、1兆円以上が25社、5000億円から1兆円未満が10社、1000億円から5000億円が15社、100億円から500億円未満が6社、非公表が1社です。100億円未満の企業は0社でした。同社が保有するスポンサーシップ実施企業に依頼して集めた回答で、中小企業の実態は、この調査からは分かりません。
経済産業省の委託調査の報告書(令和6年3月)は、この0.4と海外の2.2を並べ、日本企業ではアクティベーションの費用が十分に確保できていない状況が推測されるとしています。先に挙げた会議の事務局資料も、同じ2つの数字を引いています。どちらも民間の調査を引用したもので、国が自分で調べた数字ではありません。
(参考)スポーツ・スポンサーシップ実施企業調査2019 発表(2020年3月9日) – ニールセン スポーツ ジャパン
(参考)令和5年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(国内外のスポーツリーグ・クラブの経営実態等の調査事業)調査報告書(令和6年3月) – 経済産業省
(参考)資料3 事務局資料 パートナー企業との共創(第二期スポーツ未来開拓会議「みる」スポーツ分科会 第2回、2024年5月10日) – スポーツ庁・経済産業省
海外の2.2は平均の値で最も多い回答は1対1
海外の数字として引かれる2.2は、調査会社のIEGなどが2016年12月にオンラインで行い、102の回答を得た調査の平均です。冊子には、権利料1ドルにつき平均2.20ドルを活用に使っている、と書かれています。
ただし、回答の分布を見ると、最も多いのは「1対1」の37%です。「4対1以上」が24%、「2対1」が14%、「3対1」が12%で、活用費がゼロの「0対1」も12%ありました。平均を引き上げているのは「4対1以上」と答えた企業で、「協賛金の2倍をかけるのが正解」と示した資料は、この冊子にも国の資料にもありません。
なお、IEGの公式サイトにあった原典のURLは、2026年10月11日の時点で開けませんでした。ここで確認したのは、別のサイトに置かれている同じ冊子です。
(参考)WHAT SPONSORS WANT AND WHERE DOLLARS WILL GO IN 2017 – IEG/ESP Properties
中小企業は施策の実費から活用費を積み上げる
中小企業に限った活用費の比率は、公的な資料にも民間の調査にも見つかりませんでした。そこで、比率から逆算するのではなく、やりたい施策の実費を積み上げる方法を勧めます。配る品物、ブースの設営、社員の交通費、撮影や制作の費用などです。
福岡ソフトバンクホークスは、冠協賛の費用について、来場者への配布物などの実費が含まれる場合もあると説明しています。協賛金に何が含まれ、何が別にかかるのかを、申し込みの前にクラブへ確かめてください。
目安がほしい場合は、調査の平均を当てはめて幅を見ることもできます。協賛金が100万円なら、0.4倍で活用費は40万円、1対1で100万円です。これは上の2つの調査の値を単純に当てはめた計算で、適正な額を示すものではありません。会議の事務局資料も、成功の要因として、アクティベーションの予算の確保と、目的と評価方法の明確化が重要との声があると紹介しています。
(参考)プロ野球のスポンサーになる方法と費用相場 – 福岡ソフトバンクホークス
(参考)資料3 事務局資料 パートナー企業との共創(第二期スポーツ未来開拓会議「みる」スポーツ分科会 第2回、2024年5月10日) – スポーツ庁・経済産業省
Q. アクティベーションの費用は協賛金の何倍が目安ですか?
決まった目安はありません。国内の調査(ニールセン スポーツ ジャパン、2019年11月末から2020年1月)では、協賛金1に対して活用費0.4が42社の平均でしたが、回答企業の売上高は100億円以上です。海外の調査(IEG、2016年12月、102回答)の平均は2.2で、最も多い回答は1対1の37%でした。中小企業は、やりたい施策の実費を積み上げて見積もる方法が現実的です。
アクティベーションの効果測定は目的ごとに数える指標を決める
効果は、協賛の目的ごとに、数えるものを決めて測ります。売上だけで測ろうとすると、認知や採用、地域貢献を目的にした施策の成果が見えなくなります。経済産業省の委託調査に載っている目的とKPI(成果を測る指標)の例を、この記事の言葉で組み直しました。
| 協賛の目的 | 権利を使って得るもの | 数える指標の例 |
|---|---|---|
| 会社や商品の認知とイメージを高める | メディアでの発信、イメージ向上の広告 | 広告換算額(円)、SNSの発信数とWebのアクセス数(件)、認知度(%) |
| 製品やサービスを試してもらう | 実証の場、ショーケースとしての活用 | 実証の実施件数(件)、製品化の割合(%) |
| 消費者への販売につなげる | 販売を目的とした広告 | 広告宣伝の活動件数(件)、アクセス件数(件) |
| 取引先との関係をつくる | 顧客との接点 | 関係を開拓した企業の数(件)、チケットの招待・配布数(枚) |
| 地域や社会に貢献する | 地域貢献のイベントの開催 | 開催数(回)、参加者数(人)、協賛の認知度(%) |
| 社内の一体感と採用に生かす | 社内広報、採用活動での活用 | 社内発信の件数(件)、参加者数(人)、採用での活用件数(件)、採用数(人) |
協賛の目的と数える指標の例(出典:経済産業省の委託調査報告書〈令和6年3月、PwCコンサルティング〉の表14「企業のスポーツ団体への投資目的及びKPIの一例」をもとに本記事が組み直したもの。原表は大崎企業スポーツ事業研究助成財団の報告書を基に作成)
前の章の事例の数字は、この表に当てはめられます。体験会の15名は「参加者数」、招待の100名は「招待・配布数」、インプレッションの10倍以上は「SNSの発信数とWebのアクセス数」にあたります。施策を決めるときに、どの行の数字を取るのかを先に決めておくと、契約の更新の場で説明しやすくなります。
配る予定の数と起きた結果を分けて記録する
自社で数えられる数字は、3つの段階に分けて残します。用意した数(先着2,000名分など)、実際に配った数や参加した人数、その後に起きたこと(アプリのインストール数、問い合わせの件数など)です。公式発表の多くは1つ目で止まっていますが、社内の記録は3つ目まで取ります。
SNSや動画は、数字を取りやすい手段です。経済産業省の委託調査の報告書は、SNSや動画には、閲覧数やインプレッション数によって効果測定を実施しやすい利点があると書いています。横浜FCのように、クラブの側が調査会社と組んで、メディアでの露出の価値やスポンサーの満足度を測っている例もあるので、クラブが持っているデータを聞いてみてください。
(参考)令和5年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(国内外のスポーツリーグ・クラブの経営実態等の調査事業)調査報告書(令和6年3月) – 経済産業省
(参考)ニールセンスポーツがJ1横浜FCと2年間のマーケティングリサーチパートナー契約を締結(2020年7月1日) – ニールセン スポーツ
満足度が低い目的ほど指標を先に決めておく
目的によって、満足のしやすさには差があります。ニールセン スポーツ ジャパンの2019年の調査では、「新しいターゲット層の拡大」と「従業員エンゲージメント強化」への満足度が、それぞれ17%と19%にとどまりました。経済産業省の報告書は、同じ調査をもとに、国内スポーツに協賛する55社では、CSR・地域貢献を除くすべての目的で満足度が50%未満だったと整理しています。
これは2019年の調査で、その後の同じ調査の公表は確認できていません。それでも、新しい客層の獲得や社員の一体感のように、成果が見えにくい目的ほど、何を数えるかを先に決めておく必要があることは読み取れます。
(参考)スポーツ・スポンサーシップ実施企業調査2019 発表(2020年3月9日) – ニールセン スポーツ ジャパン
(参考)令和5年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(国内外のスポーツリーグ・クラブの経営実態等の調査事業)調査報告書(令和6年3月) – 経済産業省
Q. アクティベーションの効果はどう測ればよいですか?
協賛の目的ごとに数える指標を決めて測ります。経済産業省の委託調査報告書(令和6年3月)は、認知なら広告換算額やSNSの発信数、取引先との関係づくりなら招待・配布数、地域貢献ならイベントの参加者数などを指標の例に挙げています。用意した数と実際の結果を分けて記録し、協賛を始める前の数字と比べられるようにしておくことが大切です。
アクティベーションの進め方|目的から次の契約まで5つの段階で回す

アクティベーションは、目的を決める、権利を選ぶ、施策にして使う、測る、次の契約で見直す、という5つの段階を回して進めます。ニールセン スポーツ ジャパンは、権利の購入だけでなく、その先の活用・評価・改善のサイクル化が望まれるとしています。5つの段階の区切りは、国の資料の記述をもとにした本記事の整理です。
目的を決める
最初に、何のための協賛かを1つか2つに絞ります。経済産業省の委託調査の報告書は、スポーツ団体に協賛する目的を明確に設定し、投資対効果を検証することが重要だとしています。目的が「応援」だけだと、使う権利も測る数字も決まりません。
社内の合意も、この段階で取ります。国の会議の議事要旨には、スポンサーアクティベーションを企業に働きかけるには、企業の経営陣を巻き込むことが必要だという意見が載っています。企業が協賛を決める理由の内訳は、スポーツスポンサーになる理由の記事で紹介しています。
(参考)令和5年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(国内外のスポーツリーグ・クラブの経営実態等の調査事業)調査報告書(令和6年3月) – 経済産業省
(参考)第二期スポーツ未来開拓会議 「みる」スポーツ分科会(第2回) 議事要旨 – スポーツ庁・経済産業省
目的に合う権利を選ぶ
次に、目的に合う権利が入っている協賛の区分を選びます。認知が目的なら露出の権利、顧客との関係づくりなら招待、製品を試してもらいたいならブースや冠試合、というように、目的から逆に決めます。
ここで予算を使い切らないことが大切です。経済産業省の報告書には、プレミアリーグのクラブ関係者の発言として、権利の獲得に大半のリソースを割くと、その後のアクティベーションが限定的になり、宝の持ち腐れになるという指摘が載っています。国の見解ではなく、現場の声として読んでください。
(参考)令和5年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(国内外のスポーツリーグ・クラブの経営実態等の調査事業)調査報告書(令和6年3月) – 経済産業省
権利を組み合わせて施策にする
権利は、1つずつ使うより、組み合わせると効きます。同じ報告書には、アクティベーションに成功する企業は、手にする権利を組み合わせて新しい取り組みに挑戦することが多い、という発言も載っています。選手の派遣とビジョンのCMをつないだ中野製薬の例が、これにあたります。
企画は、自社だけで考えなくてかまいません。報告書は、スポンサー企業とスポーツ団体が、協賛の目的に応じたアクティベーションを一緒に作り上げていくことが重要だとしています。自社の課題をクラブの担当者に伝え、使える権利を一緒に洗い出すところから始めます。
(参考)令和5年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(国内外のスポーツリーグ・クラブの経営実態等の調査事業)調査報告書(令和6年3月) – 経済産業省
始める前の数字を取ってから測る
測る段階で多い失敗は、協賛を始める前の状態を調べていないことです。報告書に載った発言は、ブランドの向上が目的なら前後を比べないと効果を検証できない、と指摘しています。認知度やアプリの利用者数など、目的に対応する数字を、契約の前に1度取っておきます。
測ることに費用をかけていない企業は、海外にも少なくありません。IEGの調査(2016年12月、102回答)では、測定に費用をまったく使っていないと答えた企業が27%ありました。自社で数えられる数字から始めれば、費用はほとんどかかりません。
(参考)令和5年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(国内外のスポーツリーグ・クラブの経営実態等の調査事業)調査報告書(令和6年3月) – 経済産業省
(参考)WHAT SPONSORS WANT AND WHERE DOLLARS WILL GO IN 2017 – IEG/ESP Properties
次の契約で権利と予算を見直す
最後に、測った結果をもって、次の契約の中身を見直します。使わなかった権利は外し、成果が出た施策に関わる権利を厚くする、という入れ替えをクラブに相談します。単年の契約を、数年かけて育てる形に組み替える考え方は、下の記事で扱っています。
国の会議の議事要旨には、スポンサーアクティベーションは手間がかかるが、その価値と成果が認知されづらい、という意見も載っています。だからこそ、数字を残して社内に示すことが、協賛を続ける根拠になります。
あわせて読みたい企業のスポーツ協賛|効果測定で単年契約を脱する共創プラン›
(参考)スポーツ・スポンサーシップ実施企業調査2019 発表(2020年3月9日) – ニールセン スポーツ ジャパン
(参考)第二期スポーツ未来開拓会議 「みる」スポーツ分科会(第2回) 議事要旨 – スポーツ庁・経済産業省
まとめ|スポーツ協賛の権利は施策にして数字で残す
協賛は、権利を買ったところが出発点です。要点を振り返ります。
- スポンサーシップ アクティベーションは、協賛で得た権利を自社の目的に合わせて使う取り組み。法律や規程による定義は見つかっておらず、国の会議資料や広告会社、クラブがそれぞれ説明している
- 権利には、協賛すれば出る露出の権利と、企業が企画して初めて形になる活用の権利がある
- 国内では、選手の派遣、ブース、招待、マスコットの使用を、自社の製品・アプリ・顧客と組み合わせた事例が公式に発表されている
- 「協賛金1に活用費0.4」は売上高100億円以上の企業42社の平均で、中小企業の数字ではない。活用費は施策の実費から積み上げる
- 公式発表の「先着◯名」は予定の数。自社の記録は、用意した数、実際の数、その後に起きたことを分けて残す
すでに協賛している場合は、契約書や協賛メニューを開き、付いている権利のうち、この1年で使ったものに丸を付けるところから始めてください。丸が付かなかった権利が、次に企画する施策の候補です。協賛を含むスポーツの活用の全体像は、スポーツマーケティングとはで整理しています。
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