プロ野球の球団買収はいくらか|3社の開示で見る企業の条件

プロ野球の球団買収はいくらか|3社の開示で見る企業の条件 スポーツビジネス

球団買収の金額は、公式に開示された3件で見ると11.5億円から95億円です。DeNAは横浜ベイスターズの株式に65億円、NPBへの保証金等に30億円を用意しました。メルカリとMIXIは、いずれもスポンサーを経て買収に進んでおり、いきなり買うより段階を踏む形が参考になります。

スポーツビジネスに関心があり、経営会議で「球団を持てないのか」と話題に出た。報道の金額はあっても、何に払うお金なのか、誰の承認が要るのかまでは分からない。検討の入口で知りたいのは、こうした現実的な条件です。

この記事では、開示された3件の金額、参入の手続き、企業が狙うもの、引き受ける負担、段階の踏み方を整理します。

球団買収の金額は開示された3件で11.5億円から95億円

金額を公式に開示した3件を並べると、競技や取引の形で大きく差があります。DeNAはプロ野球の球団、メルカリとMIXIはJリーグのクラブで、Jリーグでは「クラブ」と呼びますが、企業が運営会社を傘下に入れる点は同じです。

企業 対象 発表 金額 取得後の割合
DeNA 横浜ベイスターズ 2011年11月 株式65億円、総額95億円 66.92%
メルカリ 鹿島アントラーズ 2019年7月 15億8,800万円 61.6%
MIXI(当時ミクシィ) FC東京 2021年11月 11.5億円 51.3%

出典:各社の開示資料をもとに本記事が作成。

DeNAは株式65億円と保証金等30億円の95億円

DeNAの発表によると、TBSホールディングスとBS-TBSから66.92%の株式を65億円で取得し、NPBへの保証金等30億円を合わせて総額95億円としました。株式だけで100%に換算すると約97億円です(本記事の計算)。

(参考)プロ野球への参入について(2011年11月4日) – 株式会社ディー・エヌ・エー

メルカリは鹿島アントラーズの61.6%を15億8,800万円で取得

メルカリの開示によると、取得価額は1,588百万円です。100%に換算すると約25.8億円で、同じ資料にある2019年1月期の売上高7,330百万円の約0.35倍です(本記事の計算)。主力クラブでも、売上高より低い水準で取引された例です。ただし、持分の比率や契約の条件で価格は変わるので、相場として一般化はできません。

(参考)株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シーの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ(2019年7月30日) – 株式会社メルカリ

MIXIは増資の引き受け11.5億円でFC東京を子会社にした

MIXIは第三者割当増資を11.5億円で引き受け、議決権の割合を4.2%から51.3%に高めました。株主から買う形ではなく、新しい株の代金がクラブに入る形です。発表では、新型コロナウイルスの影響で入場料収入が大きく減ったことも背景に挙げています。

(参考)FC東京を運営する東京フットボールクラブ株式会社の第三者割当増資引受(子会社化)に関するお知らせ(2021年11月22日) – 株式会社ミクシィ

Q. 球団買収にはいくらかかりますか?

決まった金額はなく、競技、持分の割合、取引の形で変わります。公式に開示された例では、DeNAが横浜ベイスターズに総額95億円、メルカリが鹿島アントラーズの61.6%に15億8,800万円、MIXIがFC東京への増資に11.5億円でした。買収後の運営資金は別に考える必要があります。

株式の代金のほかにリーグの承認と加盟の手続きが要る

DeNAの球団取得は総額95億円|球団の買収

球団の買収は、売り手と合意しただけでは完了せず、リーグ側の手続きが必要です。プロ野球ではDeNAの例のように、株式の代金とは別の費用もかかります。

プロ野球はオーナー会議の承認と保証金等を確かめる

DeNAの発表では保証金等が30億円とされています。2018年のデイリースポーツの報道によると、内訳は預かり保証金25億円、野球振興協力金4億円、加入手数料1億円で、預かり保証金は10年の球団保有で返還され、参加したい年の前年11月30日までにオーナー会議の承認が必要とされています。現在の規定はNPBの協約で確かめます。

(参考)プロ野球への参入について(2011年11月4日) – 株式会社ディー・エヌ・エー

(参考)ZOZO前澤氏が球団所有へ意欲 買収、譲渡条件とは(2018年7月17日) – デイリースポーツ

Jリーグはクラブの株主総会とリーグの手続きを確かめる

MIXIの発表では、取締役会の決議のあと、Jリーグ理事会と臨時株主総会を経て決定する流れが示されています。地域の自治体や他の企業が株主に入っているクラブもあり、メルカリの例では日本製鉄から株式を取得しました。売り手だけでなく、地域の関係者への説明も考えておきます。

(参考)FC東京を運営する東京フットボールクラブ株式会社の第三者割当増資引受(子会社化)に関するお知らせ(2021年11月22日) – 株式会社ミクシィ

(参考)株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シーの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ(2019年7月30日) – 株式会社メルカリ

Q. 球団買収には誰の承認が必要ですか?

売り手との合意に加えて、リーグ側の手続きが必要です。DeNAの例ではプロ野球への新規参入としてNPBの承認を受けました。MIXIの例ではJリーグ理事会と臨時株主総会を経る流れが示されています。手続きはリーグや時期で変わるので、最新の規約を確かめてください。

企業が球団買収で狙うメリットは知名度と顧客と地域の3つ

開示資料に書かれた理由を読むと、企業が狙うメリットは、知名度の向上、顧客との接点、地域への貢献に分けられます。分け方は本記事の整理です。

知名度の向上はDeNAが理由に挙げた

DeNAは参入の理由に、企業のブランド価値と知名度の向上を挙げました。球団名に社名が入り、試合のたびに名前が伝わります。当時のDeNAはモバイルゲームを中心とする会社で、一般の人に広く社名を知ってもらう効果を見込んだといえます。

(参考)プロ野球への参入について(2011年11月4日) – 株式会社ディー・エヌ・エー

顧客との接点は自社のサービスと組み合わせる

DeNAはMobageの利用者をプロ野球ファンにする取り組みを掲げ、MIXIはDXやファンコミュニティ、プロモーションのノウハウをクラブに加える狙いを示しました。買って終わりではなく、自社の強みをクラブの運営に持ち込む考え方です。業種を越えた参入の例は次の記事でも紹介しています。

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(参考)FC東京を運営する東京フットボールクラブ株式会社の第三者割当増資引受(子会社化)に関するお知らせ(2021年11月22日) – 株式会社ミクシィ

地域への貢献は発表の中心に置かれている

DeNAは横浜市と神奈川県の地域社会への貢献を、MIXIはFC東京の地域密着型の活動への共感を挙げています。球団は地域の公共財に近い面があるので、地域の理解を得られるかが、買収後の運営にも影響します。

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(参考)FC東京を運営する東京フットボールクラブ株式会社の第三者割当増資引受(子会社化)に関するお知らせ(2021年11月22日) – 株式会社ミクシィ

(参考)プロ野球への参入について(2011年11月4日) – 株式会社ディー・エヌ・エー

買収後は赤字と成績の変動を引き受ける

買収で引き受けるのは、買収額だけではありません。MIXIの開示によると、FC東京の2021年1月期の営業収益は45億8,700万円、営業損失は4億1,900万円でした。メルカリの開示でも、鹿島アントラーズは2018年1月期に138百万円の営業損失を計上しています。

チームの成績や感染症のような外部の出来事で、入場料やスポンサー収入は変わります。買収額に加えて、数年間の赤字を受け止める余力があるかを試算します。収益の組み立てはスポーツビジネスの収益化、業界全体の動きは日本スポーツ業界の課題で説明しています。観戦の市場を見るなら、笹川スポーツ財団の2024年の速報で直接スポーツ観戦率は26.2%でした。

(参考)FC東京を運営する東京フットボールクラブ株式会社の第三者割当増資引受(子会社化)に関するお知らせ(2021年11月22日) – 株式会社ミクシィ

(参考)株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シーの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ(2019年7月30日) – 株式会社メルカリ

(参考)スポーツライフ・データ2024 速報 – 公益財団法人笹川スポーツ財団

いきなり買わずスポンサーから段階を踏む

スポンサーから段階を踏む|球団の買収

3件のうち2件は、スポンサーから関係を始めています。メルカリは2017年からスポンサーを務め、2019年に子会社化を決めました。MIXIは2018年からスポンサー兼少額株主、2019年からマーケティングパートナーとなり、2021年に子会社化を決めました。

協賛の段階で、自社の強みがクラブの役に立つか、地域やファンとの相性はどうかを確かめられます。まずはスポーツスポンサーの流れを見て、小さな協賛から検討すると進めやすくなります。スポーツ庁も第3期スポーツ基本計画で、スポーツ市場の拡大と他産業との連携を掲げています。

(参考)株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シーの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ(2019年7月30日) – 株式会社メルカリ

(参考)FC東京を運営する東京フットボールクラブ株式会社の第三者割当増資引受(子会社化)に関するお知らせ(2021年11月22日) – 株式会社ミクシィ

(参考)スポーツの成長産業化 – スポーツ庁

Q. 中小企業でも球団やクラブの経営に関われますか?

買収でなくても関われます。スポンサーや少額の出資から始める方法があり、MIXIもFC東京のスポンサー兼少額株主から関係を始めました。地域のチームなら、協賛の金額も抑えられます。出資の条件は各クラブに確かめてください。

球団買収の要点

  • 公式に開示された3件の金額は11.5億円から95億円
  • プロ野球は株式の代金のほかに保証金等を確かめる
  • 狙いは知名度、顧客との接点、地域への貢献
  • 買収後の赤字を受け止める余力を試算する
  • メルカリとMIXIはスポンサーから段階を踏んだ

まずは関心のある競技で、自社の強みが生かせるチームを3つ書き出し、協賛資料を取り寄せてみてください。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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