スポーツ基本法の改正ポイント|2025年の変更点と企業の確認点

スポーツ基本法の改正ポイント|2025年の変更点と企業の確認点 スポーツビジネス

協賛先の競技団体から届いた案内に、「改正スポーツ基本法の趣旨を踏まえ」という一文が入っている。上司に「うちの協賛に関係があるのか」と聞かれても、何がどう変わったのかを説明できる資料が手元に見当たりません。検索しても、条文のどこが変わったのかまで書いたページは多くありません。

スポーツ基本法は2025年6月に改正され、一部を除いて同年9月1日に施行されました。基本理念に幸福や共生社会、地域振興が加わり、暑さへの対応、デジタル技術、部活動の地域展開、暴力や誹謗中傷の防止などの規定が新しく設けられています。新しい規定の主語は、国、地方公共団体、スポーツ団体が中心です。企業にとっては、協賛先の団体に求められることが増えた改正、と読めます。

この記事では、提出から施行までの日付、改正前と改正後の条文の違い、条文が誰に何を求めているかを、e-Gov法令検索、衆議院、スポーツ庁の資料で整理します。資料は、いずれも2026年10月12日に確認したものです。法律の一般的な内容の紹介であり、個別の判断は弁護士などの専門家に相談してください。

  1. スポーツ基本法とは国のスポーツ政策の土台になる法律
  2. スポーツ基本法の2025年改正は6月に成立し9月1日に施行された
    1. 提出から公布まで|委員長提出の法律案が6月13日に可決された
    2. 施行日|2025年9月1日と2031年1月1日の2段階
  3. スポーツ基本法の改正前と改正後の条文を並べて読む
  4. スポーツ基本法の改正ポイントは理念・施策・公正の確保の3つ
    1. 基本理念|幸福と共生社会と地域振興が加わった
    2. 基本的施策|暑さ・デジタル・部活動・産業の規定が新設された
    3. 公正の確保|暴力や誹謗中傷と不正な操作を防ぐ節ができた
  5. 改正スポーツ基本法の条文の主語は国と地方公共団体とスポーツ団体が中心
    1. 国と地方公共団体|暴力等の防止は講じなければならないと書かれた
    2. スポーツ団体|努めるものとするという規定が運営と安全で増えた
    3. 民間事業者|第7条で連携と協働に努める関係者として明記された
  6. スポーツ基本法の改正を受けた第4期スポーツ基本計画は2027年4月に始まる予定
    1. 策定の段階|2026年9月28日に答申素案が審議された
    2. 団体の運営の指針|施行通知はガバナンスコード等を踏まえるよう求めた
  7. スポーツ基本法の改正を受けて企業が確かめたい5つの点
    1. 協賛先の団体が運営の基準と取り組みを公表しているかを見る
    2. 暴力や誹謗中傷への方針と相談窓口を契約の前に聞く
    3. 大会やイベントの暑さへの備えを主催者に確かめる
    4. 広告の掲出先と協賛の相手先に違法な賭けのサイトが関わっていないかを見る
    5. 自社の事業と自治体のスポーツの計画が重なる場所を探す
  8. まとめ|スポーツ基本法の改正は協賛先を見る目安が増えた改正

スポーツ基本法とは国のスポーツ政策の土台になる法律

スポーツ基本法は、スポーツに関する基本理念と、国や地方公共団体の責務、スポーツ団体の努力などを定めた法律です。昭和36年(1961年)のスポーツ振興法を50年ぶりに全部改正する形で、平成23年(2011年)に作られました。2025年の改正を含めた全体像は、次の表のとおりです。

項目 内容
法律番号 平成23年法律第78号
制定 2011年6月24日に公布、同年8月24日に施行
2025年の改正法 スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和7年法律第71号)
提出 衆議院の文部科学委員長が提出(第217回国会・衆法第48号)。2025年6月6日に受理
可決 衆議院は2025年6月10日、参議院は2025年6月13日
公布 2025年6月20日
施行 2025年9月1日(令和7年政令第302号)。大会の名称を変える部分は2031年1月1日

スポーツ基本法と2025年の改正の概要(出典:衆議院「議案審議経過情報」、スポーツ庁「スポーツ基本法について」、文部科学省「スポーツ基本法(制定までの経緯・制定当時の条文)」。2026年10月12日に確認)

法律の目的は第1条に書かれています。スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に進め、国民の心身の健全な発達や、活力ある社会の実現に寄与することです。章は、総則、スポーツ基本計画等、基本的施策、体制の整備、国の補助等の5つで、罰則を定めた章はありません。

この法律は、国のスポーツ政策の出発点にあたります。国のスポーツ基本計画(第9条)も、自治体の計画(第10条)も、団体向けの指針(第29条の5)も、この法律の条文にもとづいて作られます。スポーツ界が抱えてきた課題の全体像は、日本スポーツ業界の8つの課題の記事で整理しています。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

(参考)スポーツ基本法について – スポーツ庁

(参考)スポーツ基本法(制定までの経緯・制定当時の条文) – 文部科学省

(参考)議案審議経過情報 衆法 第217回国会 48 スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律案 – 衆議院

Q. スポーツ基本法とは何ですか?

スポーツに関する基本理念と、国や地方公共団体の責務、スポーツ団体の努力などを定めた法律です。昭和36年のスポーツ振興法を全部改正する形で、平成23年(2011年)6月24日に公布され、同年8月24日に施行されました。2025年6月に基本理念を含む改正が行われ、一部を除いて同年9月1日に施行されています。

スポーツ基本法の2025年改正は6月に成立し9月1日に施行された

スポーツ基本法の改正の年表。2011年の制定、2025年6月の提出・可決・公布、2025年9月1日の施行、2027年4月の第4期スポーツ基本計画の開始予定、2031年1月1日の大会名の変更までを並べた図解

2025年の改正は、国会への提出から公布までが2週間で進み、公布から2か月あまり後の9月1日に施行されました。日付は、衆議院の議案情報とスポーツ庁の資料で確かめられます。

提出から公布まで|委員長提出の法律案が6月13日に可決された

改正法の案は、内閣ではなく、衆議院の文部科学委員長が提出しました。議員の側から出された法律案で、いわゆる議員立法にあたります。衆議院の議案情報では、種類は「衆法」、第217回国会の48番です。

衆議院が案を受理したのは2025年6月6日です。6月10日に衆議院で可決され、参議院では文教科学委員会の審査をへて、6月13日に可決されました。公布は6月20日で、法律番号は令和7年法律第71号です。

改正法の名前は「スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律」です。スポーツ基本法と、ドーピング防止の法律の2本をまとめて直しています。よく似た名前の「スポーツ基本法の一部を改正する法律」は平成30年(2018年)の別の法律なので、資料を探すときは法律番号で確かめると確実です。

(参考)議案審議経過情報 衆法 第217回国会 48 スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律案 – 衆議院

(参考)スポーツ基本法について – スポーツ庁

施行日|2025年9月1日と2031年1月1日の2段階

改正法の附則は、施行日を「公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日」としていました。この日を決めたのが令和7年政令第302号で、施行期日は令和7年9月1日です。スポーツ庁は同じ日に、地方公共団体とスポーツ団体に向けて、施行を知らせる通知を出しています。

例外が1つあります。「全国障害者スポーツ大会」を「全国パラスポーツ大会」に改める部分は、令和13年(2031年)1月1日の施行です。協会の名前を「公益財団法人日本パラスポーツ協会」に改める部分は、2025年9月1日に施行されています。大会の名称を資料に書くときは、いつの時点の話かを確かめてください。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

(参考)スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和7年政令第302号) – スポーツ庁

(参考)スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)(スポーツ団体向け・令和7年9月1日) – スポーツ庁

Q. スポーツ基本法の改正はいつ施行されましたか?

一部を除いて2025年(令和7年)9月1日に施行されました。改正法は2025年6月13日に参議院で可決され、6月20日に令和7年法律第71号として公布されています。「全国障害者スポーツ大会」を「全国パラスポーツ大会」に改める部分だけは、2031年(令和13年)1月1日の施行です。

スポーツ基本法の改正前と改正後の条文を並べて読む

改正の中身は、同じ条の改正前と改正後を並べると、どの言葉が足されたかが分かります。企業に関わりの深い6か所を取り出したのが次の表です。「 」の中は条文のままで、長い条は要旨にしています。

条 改正前 改正後 変わった点(本記事の整理)
第2条第1項(基本理念) (要旨)国民が生涯にわたり、あらゆる機会とあらゆる場所で、自主的かつ自律的にスポーツを行えるようにすることを旨として推進する (要旨)左に「人種、性別、年齢、障害の有無等にかかわらず」と、「多様な国民一人一人が生きがいを持ち幸福を享受できるようにするとともに、豊かさを実感できる社会を実現すること」を追加 機会の確保に加えて、幸福と豊かさの実感が理念に入った
第7条(関係者相互の連携及び協働) 「国、独立行政法人、地方公共団体、学校、スポーツ団体及び民間事業者その他の関係者は、基本理念の実現を図るため、相互に連携を図りながら協働するよう努めなければならない。」 「民間事業者」が「スポーツ、文化芸術その他の分野の民間事業者」に変わった。ほかは同じ スポーツ以外の分野の事業者も、連携の相手として書かれた
第14条(スポーツ事故の防止等) 第1項のみ 第2項を新設。「国及び地方公共団体は、前項の措置を講ずるに当たっては、気候の変動への対応に特に留意しなければならない。」 事故を防ぐ措置に、気候の変動への対応が加わった
第28条(企業等によるスポーツへの支援) 「国は、スポーツの普及又は競技水準の向上を図る上で企業のスポーツチーム等が果たす役割の重要性に鑑み、企業、大学等によるスポーツへの支援に必要な施策を講ずるものとする。」 「国は、スポーツの普及、競技水準の向上、スポーツへの国民の参加の促進及びスポーツを通じた地域振興を図る上で企業等が果たす役割の重要性に鑑み、企業等によるスポーツへの支援に必要な施策を講ずるものとする。」 企業の役割に、国民の参加の促進と地域振興が加わった
第29条 ドーピング防止活動の推進(改正後は第29条の3) 暴力等の防止を新設。国及び地方公共団体は「必要な措置を講じなければならない。」、スポーツ団体は「害されることのないよう努めるものとする。」 暴力、ハラスメントにあたる言動、ネット上の誹謗中傷を防ぐ規定ができた
スポーツ団体の基準づくり 第5条第2項「スポーツ団体は、スポーツの振興のための事業を適正に行うため、その運営の透明性の確保を図るとともに、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成するよう努めるものとする。」 第29条の5第2項(要旨)スポーツ庁長官が定める指針に基づき、「自らが遵守すべき基準を作成し、当該指針に従って講じた措置の状況等を公表すること等により、その運営の公正性及び透明性の確保を図るよう努めるものとする。」 条の場所が移り、指針にもとづくことと公表が書き加えられた

スポーツ基本法の主な条文の改正前と改正後(出典:e-Gov法令検索「スポーツ基本法」の2023年1月1日施行版と2025年9月1日施行版。「変わった点」の列は本記事の整理)

表から読み取れることは2つあります。1つは、理念が広がったことです。第2条は、スポーツを行う機会の確保に加えて、一人一人の幸福と、豊かさを実感できる社会を目的に置きました。スポーツ庁の概要資料は、これを「ウェルビーイングの向上」という言葉で説明しています。

もう1つは、条の場所が動いたことです。スポーツ団体が自ら基準を作るという規定は、第5条第2項から第29条の5第2項に移りました。古い資料には「第5条第2項」と書かれたものが残っているので、団体の規程や提案書で条番号を見かけたら、現行の条文と照らすと安心です。

第28条の見出しも変わっています。改正前は「企業、大学等によるスポーツへの支援」で、改正後は「企業等によるスポーツへの支援」です。大学については、第17条の4が新しく設けられました。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

(参考)スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律の概要 – スポーツ庁

スポーツ基本法の改正ポイントは理念・施策・公正の確保の3つ

改正の項目は多く、スポーツ庁の概要資料は、前文、基本理念、スポーツ団体の努力等、地方スポーツ推進計画、基本的施策、資金等の6つの柱に分けています。ここでは、企業に関わる内容を、理念、施策、公正の確保の3つにまとめます。3つに分けたのは本記事の整理です。

基本理念|幸福と共生社会と地域振興が加わった

前文と第2条には、スポーツが何のためにあるかを示す言葉が足されました。前文は、スポーツに親しみ、楽しみ、支える活動に参画する機会に加えて、「スポーツに関し集う機会、スポーツを通じてつながる機会」を挙げています。衆議院の要綱は、この部分を、いわゆる「する」「見る」「支える」「集まる」「つながる」の明示と呼んでいます。

第2条では、第3項に「地域振興に資するよう」、第4項に「健康で活力に満ちた長寿社会の実現に資するよう」、第5項に「共生社会の実現に資することを旨として」が加わりました。国際競技大会の例には、デフリンピック競技大会とスペシャルオリンピックス世界大会が足されています。企業の協賛や地域での活動を説明するときに、根拠として引ける言葉が増えたことになります。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

(参考)スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律案要綱 – 衆議院

基本的施策|暑さ・デジタル・部活動・産業の規定が新設された

施策の章には、いまの課題に合わせた条が並びました。第14条第2項は気候の変動への対応です。スポーツ庁の施行通知は、熱中症などの健康被害が喫緊の課題になっていることを踏まえた規定だと説明しています。

デジタルに関する条は2つあります。第16条の2は、スポーツの推進に役立つ情報通信技術の活用で、国、地方公共団体、スポーツ団体のそれぞれに向けて書かれています。第24条の2は「情報通信技術を活用したスポーツの機会の充実」です。施行通知は、これがいわゆる「eスポーツ」を指すとしています。市場の動きはeスポーツの世界市場規模の記事で扱っています。

第17条の2は、中学校の生徒が地域でスポーツに親しむ機会の確保です。施行通知は、部活動の地域展開をいっそう進めることを意図した規定だとしています。制度の進み方と企業の関わり方は、部活動の地域展開の記事にまとめました。

産業に関する条も加わりました。第12条第3項は、スポーツ施設の整備と活用を、まちづくりと一体で進めるよう国と地方公共団体に求めています。第21条の2は、スポーツを楽しむ機会に関連する「良質かつ付加価値の高いサービス」の環境整備です。施行通知は、前者をいわゆる「スポーツコンプレックス」、後者をいわゆる「スポーツホスピタリティ」の推進としています。関連する政策は、スタジアム・アリーナ改革とスポーツホスピタリティの記事で読めます。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

(参考)スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)(スポーツ団体向け・令和7年9月1日) – スポーツ庁

公正の確保|暴力や誹謗中傷と不正な操作を防ぐ節ができた

第3章には「スポーツの公正及び公平の確保等」という第4節が新しくできました。第29条から第29条の5までの5つの条です。施行通知は、この節がスポーツ・インテグリティの確保等を指すと説明しています。

第29条は暴力等の防止です。対象は、スポーツを行う者に対する暴力、「優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」、性的な言動、インターネット上の誹謗中傷等と書かれています。第29条の2は、「スポーツに係る競技の不正な操作その他これに関連する違法行為又は不正行為」を防ぐための規定です。

賭けについては、条文に「賭博」という語はありません。施行通知の留意事項が、選手や指導者などがオンラインカジノを含む違法賭博に関わることがないよう、団体にコンプライアンス意識の徹底を求めています。日本でのスポーツの賭けの扱いは、スポーツベッティングと日本の法律の記事で整理しています。

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(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

(参考)スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)(スポーツ団体向け・令和7年9月1日) – スポーツ庁

改正スポーツ基本法の条文の主語は国と地方公共団体とスポーツ団体が中心

スポーツ基本法の改正で加わった規定と、条文の主語、企業が確かめる点の対応を示した図解。気候の変動への留意と暴力等の防止は国・地方公共団体とスポーツ団体、運営の公正性と透明性はスポーツ団体、連携と協働は民間事業者につながる

改正で新しく設けられた規定の主語は、国、地方公共団体、スポーツ団体が中心で、民間事業者が主語に入るのは第7条です。法律の条文は、主語と語尾で、誰にどの程度のことを求めているかが変わります。「しなければならない」と「努めるものとする」では重さが違うので、分けて読みます。

国と地方公共団体|暴力等の防止は講じなければならないと書かれた

語尾がもっとも強いのは、国と地方公共団体に向けた2つの規定です。第29条第1項は、暴力等によってスポーツを行う者の環境が害されることのないよう、「必要な措置を講じなければならない」と書いています。第14条第2項は、気候の変動への対応に「特に留意しなければならない」です。

施行通知は、第29条について、相談体制の構築など、暴力等の防止に必要な措置を講じるよう国と地方公共団体に求めています。ほかの新設規定の多くは、「講ずるものとする」か、「努めなければならない」「努めるものとする」という語尾です。施設とまちづくりの第12条第3項、付加価値の高いサービスの第21条の2がこれにあたります。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

(参考)スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)(スポーツ団体向け・令和7年9月1日) – スポーツ庁

スポーツ団体|努めるものとするという規定が運営と安全で増えた

スポーツ団体に向けた規定は、いずれも努力を求める語尾です。第5条第2項は、運営基盤を強化し、健全な運営の確保を図るよう「努めるものとする」と書いています。第29条第2項は、団体が行う事業について、暴力等によって環境が害されることのないよう「努めるものとする」です。

第29条の5第2項は、指針にもとづいて自らの基準を作り、講じた措置の状況などを公表することで、運営の公正性と透明性の確保を図るよう求めています。第16条の2第3項は、事業に役立つ情報通信技術の活用です。なお、この法律でいうスポーツ団体は、「スポーツの振興のための事業を行うことを主たる目的とする団体」と定義されています。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

民間事業者|第7条で連携と協働に努める関係者として明記された

企業が主語に入るのは、第7条です。国、独立行政法人、地方公共団体、学校、スポーツ団体と並んで、「スポーツ、文化芸術その他の分野の民間事業者その他の関係者」が、基本理念の実現のために連携し、協働するよう「努めなければならない」と書かれています。改正前は「民間事業者」だけでした。

ほかの条では、企業は主語ではなく、国や地方公共団体の施策の相手として出てきます。第18条はスポーツ産業の事業者とスポーツ団体の連携と協力の促進、第21条の2は「スポーツ産業の事業者その他の事業者の事業機会の増大」、第28条は企業等によるスポーツへの支援に必要な施策です。施行通知は、第21条の2の事業者に、観光、飲食、文化、健康医療などの他産業も含まれるとしています。

図は、条文の主語と、企業が確かめる点の対応を本記事で整理したものです。自社や、自社が運営する団体に特定の条が当てはまるかどうかは、事業の内容によって変わります。判断が要る場面では、弁護士などの専門家に相談してください。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

(参考)スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)(スポーツ団体向け・令和7年9月1日) – スポーツ庁

Q. スポーツ基本法の改正で企業に新しい義務は生じますか?

改正で新しく設けられた規定の主語は、国、地方公共団体、スポーツ団体が中心です。民間事業者が主語に入るのは第7条で、関係者が相互に連携し、協働するよう「努めなければならない」と書かれています。スポーツ基本法に罰則を定めた章はありません。個別の事業に条文が当てはまるかどうかは、弁護士などの専門家に確認してください。

スポーツ基本法の改正を受けた第4期スポーツ基本計画は2027年4月に始まる予定

改正された法律は、これから計画と指針に落とし込まれます。スポーツ基本法の第9条は、文部科学大臣がスポーツ基本計画を定めると書いています。次の第4期は、改正のあとに作られる最初の計画です。

策定の段階|2026年9月28日に答申素案が審議された

スポーツ庁長官は、2025年11月21日に、第4期スポーツ基本計画の策定をスポーツ審議会に諮問しました。諮問の理由には、スポーツ基本法が同年6月に改正されたことと、基本理念等に関わる大きな改正は制定から14年ぶりであること、国、地方公共団体、スポーツ団体、民間事業者等の連携と協力のもとで施策を進める必要があることが書かれています。

スポーツ庁は2026年7月27日付で、審議会がまとめた中間報告を公表しました。意見の公募をへて、9月28日のスポーツ基本計画部会で答申素案が審議されています。素案の概要は、対象期間を令和9年度から令和13年度とし、3つの重点課題を挙げています。その中に、スポーツ・インテグリティの強化と、スポーツの成長産業化が入っています。

スポーツ庁のスケジュールのイメージでは、このあと審議会の答申、文部科学大臣の決定と官報での告示をへて、令和9年(2027年)4月に運用が始まります。2026年10月12日の時点で確認できた最新の資料は、9月28日の答申素案です。数値目標などの中身は、決定までに変わることがあります。

あわせて読みたいスポーツ基本計画とは|第4期の内容と企業が備える3つのこと›

(参考)第4期スポーツ基本計画の策定について(諮問)(令和7年11月21日) – スポーツ庁

(参考)第4期スポーツ基本計画(中間報告) – スポーツ庁

(参考)スポーツ審議会スポーツ基本計画部会(第3期)(第13回) 配布資料 – スポーツ庁

(参考)第4期スポーツ基本計画の策定について(答申素案)(概要) – スポーツ庁

(参考)第4期スポーツ基本計画の策定に係るスケジュールイメージ – スポーツ庁

団体の運営の指針|施行通知はガバナンスコード等を踏まえるよう求めた

第29条の5第2項は、スポーツ団体の基準づくりの土台を、スポーツ庁長官が定める「スポーツ団体の適正な運営に関する指針」と書いています。スポーツ庁の施行通知は、スポーツ団体に対し、「スポーツ団体ガバナンスコード」等を踏まえて、ガバナンスの確保等に努めるよう求めました。

同じ条の第1項は、国が、日本スポーツ協会、日本オリンピック委員会、日本パラスポーツ協会に対し、加盟する全国規模の団体への指導等の状況について報告を求め、必要に応じて助言を行うと定めています。団体の運営を外から確かめる流れが、法律の条文に書き込まれた形です。コードの13の原則と審査の読み方は、スポーツ団体ガバナンスコードの記事で解説しています。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

(参考)スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)(スポーツ団体向け・令和7年9月1日) – スポーツ庁

スポーツ基本法の改正を受けて企業が確かめたい5つの点

スポーツ基本法の改正を受けて企業が確かめる点の分岐。協賛するなら団体の公表資料と誹謗中傷への方針、大会に関わるなら暑さへの備え、広告を出すなら違法な賭けのサイト、事業を持つなら自治体の計画を確かめる図解

改正を受けて企業が確かめる点は、スポーツとの関わり方によって変わります。協賛しているのか、大会に関わるのか、広告を出すのか、スポーツに関わる事業を持つのかで分けると、見る場所がはっきりします。次の5つは、条文と施行通知の内容をもとにした本記事の整理です。

協賛先の団体が運営の基準と取り組みを公表しているかを見る

協賛している団体があるなら、その団体が運営の基準と、取り組みの状況を公表しているかを確かめます。第29条の5第2項が、基準を作り、講じた措置の状況などを公表するよう団体に求めているためです。

見る場所は、団体の公式サイトの「情報公開」や「ガバナンス」のページです。中央競技団体であれば、ガバナンスコードへの自己説明と、統括団体による審査の結果が公開されています。更新の日付が古いままになっていないかも、あわせて見ておきます。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

暴力や誹謗中傷への方針と相談窓口を契約の前に聞く

協賛先には、暴力、ハラスメント、ネット上の誹謗中傷に対する方針と、相談窓口の有無を聞いておきます。第29条第2項は、団体の行う事業について、こうした行為で選手などの環境が害されることのないよう努めることを求めています。

企業の側でも準備ができます。協賛する選手やチームが誹謗中傷を受けたときに、自社のSNSアカウントでどう対応するか、誰が判断するかを決めておくことです。問題が起きたあとの契約上の扱いは、提案の段階で相手と話しておくと、判断が早くなります。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

大会やイベントの暑さへの備えを主催者に確かめる

冠協賛やブース出展をする大会では、暑さへの備えを主催者に確かめます。第14条が求めているのは国と地方公共団体の措置ですが、施行通知はスポーツ団体にも同じ内容を伝えています。

確かめる点は、暑さ指数にもとづく中止や中断の基準があるか、日程が変わったときに協賛の権利がどう扱われるか、の2つです。社員や取引先を招待する場合は、観客席の日よけや給水の用意も聞いておくと安心です。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

(参考)スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)(スポーツ団体向け・令和7年9月1日) – スポーツ庁

広告の掲出先と協賛の相手先に違法な賭けのサイトが関わっていないかを見る

広告を出す媒体や、同じ大会に並ぶ協賛社の中に、違法な賭けのサイトと関わるものがないかを確かめます。施行通知は、選手や指導者などがオンラインカジノを含む違法賭博に関わることがないよう、団体に対応を求めています。

違法なオンラインギャンブルのサイトへ誘導する情報の発信は、スポーツ基本法とは別の、ギャンブル等依存症対策基本法の第9条の2が禁じています。この規定は2025年9月25日に施行されました。対象になる行為の範囲は、先に挙げたスポーツベッティングの記事で確かめられます。自社の広告表現に不安があるときは、掲出の前に専門家へ相談してください。

(参考)スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)(スポーツ団体向け・令和7年9月1日) – スポーツ庁

(参考)ギャンブル等依存症対策基本法(平成三十年法律第七十四号) – e-Gov法令検索

自社の事業と自治体のスポーツの計画が重なる場所を探す

施設、用品、スクール、テクノロジー、イベントなどの事業を持つ企業は、自治体の計画に自社の事業と重なる項目がないかを探します。改正後の第10条は、地方スポーツ推進計画を、複数の自治体が共同で定めたり、関連するほかの計画と一体のものとして定めたりできると書いています。

重なりやすいのは3つの領域です。施設とまちづくり(第12条第3項)、デジタル技術の活用(第16条の2)、中学生が地域でスポーツに親しむ機会(第17条の2)です。自治体の計画の改定や公募の時期を調べておくと、提案の準備がしやすくなります。地域での進め方は、スポーツによるまちづくりの記事が参考になります。

(参考)スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号) – e-Gov法令検索

まとめ|スポーツ基本法の改正は協賛先を見る目安が増えた改正

2025年の改正は、企業に直接向けた規定よりも、協賛先や連携先の団体と自治体に向けた規定が中心です。要点を振り返ります。

  • 改正法は令和7年法律第71号。衆議院の文部科学委員長が提出し、2025年6月13日に参議院で可決、6月20日に公布、9月1日に施行された
  • 基本理念に、幸福と豊かさの実感、地域振興、長寿社会、共生社会が加わった
  • 気候の変動への対応、情報通信技術の活用、中学生の地域でのスポーツ、暴力等の防止、不正な操作の防止などの規定が新設された
  • 新しい規定の主語は国、地方公共団体、スポーツ団体が中心。民間事業者は第7条で、連携と協働に努める関係者として書かれている
  • 第4期スポーツ基本計画は、2026年9月28日に答申素案が審議され、2027年4月に始まる予定

まずは、協賛先の団体の公式サイトを開き、運営の基準と取り組みの公表、暴力や誹謗中傷への方針の2つを探してみてください。見つからない項目は、次の打ち合わせで聞く質問になります。条文は、e-Gov法令検索で誰でも読めます。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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