「愛媛FC スポンサー」の検索候補には「撤退」が並びます。2025年10月26日にJ3降格が決まったクラブですから、気になるのは自然です。
ただ、決算を2年分そろえて比べると、スポンサー収入は前年から4,300万円増えていました。数えたスポンサーは3つの一覧で316社。法人会員は5万5,000円から入れます。
愛媛FCのスポンサーは、3つの一覧で延べ362枠・実数316社

クラブ公式サイトの3つの一覧を2026年9月24日に取得して集計しました。愛媛FCは協賛企業を「スポンサー」と呼んでいます。
スポンサー一覧(2026/27)が170枠、2026/27法人会員一覧が161枠、愛媛FCレディース2026法人会員一覧が31枠。合わせて延べ362枠です。
法人格の表記ゆれを揃えて重ねると、22社が複数の一覧に載っていました。和気クリニックのようにスポンサー一覧・法人会員・レディース法人会員の3つすべてに出てくる企業もあります。したがって実数は316社になります。
スポンサー一覧のなかだけでも、16社が複数の区分に重複しています。最多は株式会社ヒカリの5枠(トレーニングウェア2枠、レディーストレーニングウェア2枠、アカデミー1枠)、次いでベネフィット・ワンの4枠です。
Q. 集計で迷ったところはありますか。
2点あります。ひとつはユニフォームの掲出部位を示すラベル画像(胸部・背中・鎖骨・そで・パンツなど9点)がロゴと同じ並びに混ざっていたこと。企業ではないので除きました。もうひとつはリンク先ドメインの重なりです。lexus.jpにはネッツトヨタ愛媛とレクサス松山城北の2件がぶら下がっていましたが、これはメーカーの共有ドメイン。yonden.co.jpの四国電力と四国電力送配電は分社化された別法人。どちらも統合していません。
ユニフォームの胸はニンジニアネットワーク、背中は伊予銀行
スポンサー一覧は、掲出部位ごとに区切られています。
| 区分 | 枠数 | 掲載企業 |
|---|---|---|
| 愛媛FCユニフォームスポンサー | 6 | ニンジニアネットワーク(胸部)/伊予銀行(背中)/MIURA(鎖骨)/ベネフィット・ワン(そで)/小林有吾STUDIO・1846/FUJI |
| 愛媛FCトレーニングウェアスポンサー | 4 | ヒカリ(2枠)/ベネフィット・ワン/オオノ開發 |
| 愛媛FCレディースユニフォーム/トレーニングウェア | 12 | 大王製紙/愛媛ダイハツ販売/愛媛新聞社/奥島観光 ほか |
| 愛媛FC・愛媛FCレディーススポンサー | 128 | 県内の製造・建設・医療・サービス業が中心 |
| サプライヤー(3区分) | 11 | ジョガボーラ(ユニフォーム)/ニンジニアネットワーク(オフィシャルスーツ)/えひめ飲料/日本航空/ダイドードリンコ/ニチバン/マルコメ ほか |
| 愛媛FCアカデミースポンサー | 9 | プラスワン/小林有吾STUDIO・1846/ワンズファクトリー/小野建/名鉄観光サービス ほか |
出典:愛媛FC「スポンサー一覧」(2026年9月24日取得)より筆者集計。掲出部位を示すラベル画像9点は除外
ユニフォームの胸部はニンジニアネットワーク、背中は伊予銀行、鎖骨はMIURA(三浦工業)、そではベネフィット・ワン。いずれも愛媛県に縁の深い企業か、全国企業です。
この一覧で特徴的なのは、レディース向けの区分が独立して2つあることです。レディースのユニフォームとトレーニングウェアで12枠。さらに法人会員もレディース専用の一覧が別に用意されています。
もうひとつ、アカデミースポンサーが9枠あります。育成年代に絞った区分を持つクラブは、この連載では信州ブレイブウォリアーズ、バンビシャス奈良に続いて3例目でした。
Q. ニンジニアネットワークはどういう企業ですか。
松山市のインターネット接続事業者です。愛媛FCではユニフォームの胸部スポンサーとオフィシャルスーツサプライヤーの2枠を持ち、さらにホームスタジアムの命名権者でもあります。愛媛県総合運動公園陸上競技場の愛称「ニンジニアスタジアム」は同社の社名から来ています。詳しくは後の見出しで触れます。
法人会員は5万5,000円から。金額も特典も公開されている
3つの一覧のうち2つは「法人会員」です。こちらは金額が公表されています。
| 項目 | ゴールド会員 | シルバー会員 |
|---|---|---|
| 入会費(税込) | 110,000円 | 55,000円 |
| S自由席チケット | 20枚 | 10枚 |
| メンバーズボードへの社名掲出 | ホームゲーム開催時にスタジアムへ掲出。社名の大きさが会員カテゴリーで変わる | |
| ホームページへの社名掲出 | あり | |
| 呼称権 | 「私たちは愛媛FCを応援しています。」 | |
| エンブレム・ロゴ・キャラクター使用 | 名刺・HP・チラシ等に使用可(要承認/営利目的は不可) | |
| オフィシャルイヤーブック | 1冊進呈 | |
出典:愛媛FC「2026/27 法人会員のご案内」より筆者作成。会員有効期間は2026年7月1日から2027年6月30日まで
ゴールド11万円、シルバー5万5,000円(いずれも税込)。差は入会費とチケット枚数、そしてメンバーズボードに出る社名の大きさだけで、ほかの特典は共通です。
この連載で価格を公開していたクラブと並べると、京都サンガF.C.が10万円から、信州ブレイブウォリアーズが10万円から、バンビシャス奈良の電柱広告が年33,000円。愛媛の5万5,000円は、その中間にあたります。
もうひとつ、一覧を見ていて気づいたことがあります。ゴールド会員の並びに「たびのレシピ(3口)」「日本ガスライン株式会社(2口)」といった表記があり、複数口での加入ができることが分かります。11万円を1口として、2口なら22万円という組み立てです。
Q. 協賛金は経費としてどう扱われますか。
国税庁は、不特定多数への宣伝的効果を意図した費用は広告宣伝費、特定の取引先などを接待・供応する費用は交際費等にあたるという区分を示しています。法人会員の特典は社名掲出・呼称権・ロゴ使用が中心で、前者に寄ります。ただしS自由席チケットが20枚または10枚付くため、それを取引先に配る場合は扱いが変わりえます。エンブレム等の使用は事前承認が必要で営利目的は不可、という条件も付いています。実際の処理は顧問税理士に確認してください。
(参考)2026/27 法人会員のご案内 – 愛媛FC公式サイト
(参考)No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分 – 国税庁
スポンサー収入は、前年から4,300万円増えている
冒頭の「撤退」に戻ります。Jリーグの決算一覧を2年分そろえて比べました。
| 項目 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|
| 売上高 | 11億1900万円 | 12億6700万円 |
| スポンサー収入 | 5億4000万円 | 5億8300万円 |
| 入場料収入 | 7800万円 | 8000万円 |
| 営業利益 | 6100万円 | 700万円 |
| 当期純利益 | 5800万円 | 1100万円 |
| 純資産 | 3億900万円 | 3億2000万円 |
出典:公益社団法人日本プロサッカーリーグ「2024年度/2025年度 J2 クラブ決算一覧」より筆者作成。2025年度の対象期間は2025年2月から2026年1月。金額は万円未満を四捨五入
スポンサー収入は5億4000万円から5億8300万円へ、4,300万円(8.0%)増えています。売上高も1億4800万円増。少なくとも2025年度の決算数値には、スポンサーが大きく離れた形跡はありません。
一方で営業利益は6100万円から700万円へ、5,400万円減っています。売上が増えたのに利益が縮んだ、という形です。費用側が売上を上回るペースで増えたことになります。
そして2025年10月26日、J2第34節でJ3降格が決定しました。16年ぶりの降格です。決算期間は2026年1月までなので、降格の影響が協賛にどう出るかは次の年度の決算を待つ必要があります。
クラブからスポンサー撤退を伝える発表は出ていません。この記事では、「2025年度までの数字では減っていない」という事実だけを書きます。
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Q. 降格でスポンサー料は下がるものですか。
一概には言えません。この連載では、J3のツエーゲン金沢が387社・約146万円、J2のレノファ山口FCが308社・約218万円、J1の名古屋グランパスが142社・約2,104万円という幅を見てきました。カテゴリーと金額に相関はありますが、社数はむしろ下位カテゴリーのほうが多いこともあります。愛媛は法人会員が5万5,000円からという設計なので、社数で支える形に近いクラブです。
(参考)2025年度 J2 クラブ決算一覧(PDF) – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ
2025年度の決算をJ2平均と並べる
J3降格が決まった2025シーズンの決算を、J2の20クラブ平均と並べます。
| 項目 | 愛媛FC | J2平均 |
|---|---|---|
| 売上高 | 12億6700万円 | 23億3400万円 |
| スポンサー収入 | 5億8300万円 | 11億9300万円 |
| 入場料収入 | 8000万円 | 3億3100万円 |
| 物販収入 | 8200万円 | 1億9400万円 |
| Jリーグ配分金 | 1億600万円 | 1億1600万円 |
| 移籍補償金等収入 | 1億3000万円 | — |
| アカデミー関連収入 | 1億1200万円 | 6500万円 |
| 女子チーム関連収入 | 9000万円 | — |
| トップチーム人件費 | 4億2900万円 | 7億8000万円 |
| アカデミー関連経費 | 1億5900万円 | — |
| 販売費および一般管理費 | 2億9300万円 | 5億4700万円 |
| 営業利益 | 700万円 | ▲3000万円 |
出典:公益社団法人日本プロサッカーリーグ「2025年度 J2 クラブ決算一覧」より筆者作成。J2平均は20クラブの平均。移籍補償金等・女子チーム関連は平均の算出対象が限られるため「—」とした
売上高はJ2平均の54.3%。ほとんどの項目が平均を下回るなかで、営業利益700万円はプラスです。J2平均が営業損失▲3000万円ですから、規模は小さくても収支は保っています。
費用側を見ると、トップチーム人件費4億2900万円はJ2平均の55.0%、販管費2億9300万円は53.6%。収入の水準に合わせて抑えられているのが分かります。
そのなかで大きいのがアカデミー関連経費1億5900万円と女子チーム関連経費6800万円。売上12億6700万円のクラブが、この2つに2億2700万円を投じていることになります。
Q. 移籍補償金等収入1億3000万円は何ですか。
選手の移籍に伴ってクラブが受け取った金額です。Jリーグの資料は内訳を示していないため、どの選手の移籍によるものかは分かりません。売上12億6700万円に対して10.3%にあたり、単年で大きく振れる項目です。育成に厚く投じているクラブの収入としては、この項目が持つ意味は小さくありません。
(参考)2025年度 J2 クラブ決算一覧(PDF) – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ
入場料はJ2で2番目に低い。アカデミーと女子は3番目に高い

2025年度の内訳をJ2平均と比べると、偏りがはっきり出ます。
売上高12億6700万円はJ2平均の54.3%。そのなかで入場料収入8000万円はJ2平均の24.2%で、20クラブのうち2番目に低い数字でした(最も低いのはブラウブリッツ秋田の7000万円)。物販8200万円も42.3%です。
逆に平均を大きく超えているのがアカデミー関連収入1億1200万円(172.3%)。大宮アルディージャ、ジュビロ磐田に次いでJ2で3番目です。さらに女子チーム関連収入9000万円も、大宮、ジェフユナイテッド千葉に次ぐ3番目。J2で女子チーム関連を計上したのは6クラブだけですから、そのなかでの上位です。
つまりトップチームの試合で稼ぐ部分が細く、育成と女子が太いクラブです。実際、費用側もアカデミー関連経費1億5900万円、女子チーム関連経費6800万円と大きく、アカデミーは4,700万円の持ち出しになっています。
スポンサー依存度は46.0%。J2平均は51.1%ですから、協賛に寄りかかりすぎてはいません。
Q. 財務の余裕はどのくらいありますか。
純資産は3億2000万円で、2024年度の3億900万円から増えています。ただし中身を見ると資本金4億800万円に対して利益剰余金は▲8800万円。過去の累積赤字が残っている状態です。流動資産2億7100万円に対して流動負債1億2100万円なので、当面の支払いに詰まる水準ではありません。
(参考)2025年度 J2 クラブ決算一覧(PDF) – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ
スポンサー1社あたりは約184万円

スポンサー収入5億8300万円を実数316社で割ると、単純平均で1社あたり約184万円です。
この連載で調べた34クラブのなかでは、滋賀レイクスと並んで21番目。レノファ山口FCの約218万円と徳島ヴォルティスの約168万円のあいだに入ります。
316社という数は、売上12億6700万円のクラブとしては多いほうです。レノファ山口FCが売上13億8500万円で308社、ツエーゲン金沢が売上12億4000万円で387社。同じ規模帯のクラブが、そろって300社前後を集めていることになります。
金額の内訳も推し量れます。法人会員の一覧に載るのは192枠(愛媛FC 161+レディース31)。ゴールド80枠×11万円とシルバー112枠×5万5,000円を単純に積むと約1,496万円で、スポンサー収入5億8300万円の2.6%にしかなりません。金額の大半は、ユニフォームや看板を含むスポンサー契約から来ていることになります。
Q. 協賛を検討するなら、どこから入れますか。
金額が分かっているのは法人会員で、シルバー5万5,000円、ゴールド11万円(いずれも税込)。スタジアムのメンバーズボードとホームページに社名が載り、S自由席チケットが10枚または20枚付きます。複数口での加入もできます。レディースを支えたい場合はレディース専用の法人会員が別にあります。ユニフォームや看板への掲出を考えるなら、スポンサー契約の問い合わせになります。
(参考)2026/27 法人会員一覧 – 愛媛FC公式サイト
スタジアムの名前は年2,340万8,000円。胸スポンサーと同じ会社だった
ホームスタジアムはニンジニアスタジアム(愛媛県総合運動公園陸上競技場、略称ニンスタ)。愛媛県が契約内容を公表しています。
命名権者はニンジニアネットワーク株式会社。契約金額は年額23,408,000円(税込)で、契約期間は令和6年3月1日から令和11年2月28日までの5年間です。
そしてこの会社は、愛媛FCのユニフォーム胸部スポンサーであり、オフィシャルスーツサプライヤーでもあります。この連載では、名古屋グランパスのパロマ(命名権年6,000万円・CLUB PARTNER)、京都サンガF.C.の京セラ(年1億円・トップスポンサー)、バンビシャス奈良のロート製薬(年1,800万円・トップパートナー)と、命名権者がクラブのスポンサーでもある例を見てきました。ユニフォームの胸と施設名の両方を持っているのは、愛媛が初めてです。
金額を連載で確認したものと並べると、メルカリスタジアム(茨城県・年1億5000万円)、サンガスタジアム by KYOCERA(京都府・年1億円)、パロマ瑞穂スポーツパーク(名古屋市・年6000万円)、金沢ゴーゴーカレースタジアム(金沢市・年3111万円)に続く水準。ロート奈良鴻ノ池パーク(年1800万円)より上にあたります。
クラブの売上12億6700万円に対して、施設名に付いている額が年2,340万8,000円。売上の1.8%に相当する金額が、クラブではなく愛媛県に支払われていることになります。
Q. 1社が複数の枠を持つのは珍しいことですか。
愛媛では珍しくありません。スポンサー一覧のなかだけで16社が複数枠を持ち、株式会社ヒカリは5枠、ベネフィット・ワンは4枠。さらにリストをまたぐと22社が重複しています。少数の企業が複数の入口から支える構造で、ニンジニアネットワークはその極端な例といえます。
(参考)ニンジニアスタジアムのネーミングライツ契約の更新について – 愛媛県
顔ぶれから見えること
最後に、316社の顔ぶれから読めることを3つ書きます。
金融は伊予銀行1行が背中に
ユニフォームの背中は伊予銀行。愛媛県最大の地方銀行です。この連載では、ファジアーノ岡山や徳島ヴォルティスが地銀3行を上位区分に並べていました。愛媛は1行が最も目立つ位置を取っている形です。
全国企業はサプライヤー区分に集まる
日本航空、ダイドードリンコ、ニチバン、マルコメ、スリーボンド貿易。全国規模の企業はサプライヤー(物品提供)の区分に並んでいます。金銭ではなく現物で関わる形で、この連載ではツエーゲン金沢のサプライヤー12社と同じ設計です。
レディース専用の協賛窓口がある
愛媛FCレディースには、ユニフォーム・トレーニングウェアのスポンサー区分(12枠)と、専用の法人会員一覧(31枠)があります。女子チームの協賛を独立した窓口にしているクラブは、この連載では愛媛だけでした。決算でも女子チーム関連収入9000万円を計上しており、J2で3番目の規模です。
Q. 結局、愛媛FCの協賛構造はどう見ればよいですか。
3つの窓口で、小さく広く集めるクラブです。延べ362枠・実数316社。入口は法人会員のシルバー5万5,000円で、複数口も可能。決算では入場料がJ2で2番目に低い一方、アカデミーと女子チームの関連収入がともにJ2で3番目という偏りがあります。そして検索で並ぶ「撤退」については、2025年度のスポンサー収入は前年より4,300万円増えていました。ただし営業利益は6100万円から700万円に縮み、2025年10月にJ3降格が決まっています。影響が出るとすれば次の年度の決算です。
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