スポーツMBAとは|日本と海外の講座の費用と企業の支援制度

スポーツMBAとは|日本と海外の講座の費用と企業の支援制度 スポーツビジネス

スポーツ事業の立ち上げを任せたい社員から、「スポーツMBAに通いたいので、会社で支援してもらえませんか」と相談を受けた。調べてみると、大学院もあれば半年ほどの講座もあり、費用も数十万円から300万円を超えるものまで幅がある。どれが「MBA」なのかも、会社としてどこまで支援できるのかも、すぐには判断がつかない。

「スポーツMBA」は正式な学位の名前ではなく、スポーツの経営を学ぶ大学院や社会人講座をまとめて呼ぶ通称です。日本でこの名前で知られる講座には、経営学の修士(MBA)が取れるもの、スポーツ科学の修士が取れるもの、学位は出ず修了証が出るものが混ざっています。この記事では、3つの型の違い、日本と海外の主な講座の期間と費用、国の動き、企業が費用を支援するときに使える制度と税の扱いを、各校の公式の情報と公的な資料をもとに整理します。助成金と税の部分は一般的な取扱いの紹介です。個別の判断は、労働局や税理士に確かめてください。

スポーツMBAとは通称|学位・修士・修了証の3つの型がある

MBAは、経営学の修士の学位です。日本では、専門職大学院(ビジネススクール)が出す学位にあたります。文部科学省の資料によると、専門職大学院の学位は「経営管理修士(専門職)」のように「○○修士(専門職)」という名前になります。「スポーツMBA」という名前の学位は、日本の制度にはありません。

「スポーツMBA」と呼ばれているものは、得られるものの違いで3つに分けられます。

型 得られるもの 例
ビジネススクールでスポーツも学ぶ 経営管理修士(専門職)。いわゆるMBA スポーツの科目を置くビジネススクール。海外ではMBAとスポーツの修士を両方取る課程
スポーツ系の大学院の修士課程 修士(スポーツ科学)など。MBAではない 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の1年制、筑波大学の社会人大学院
学位の出ない社会人講座 修了証 早稲田大学のスポーツMBA Essence、スポーツヒューマンキャピタルの講座

「スポーツMBA」と呼ばれる講座の3つの型(文部科学省の資料と各校の公式の情報をもとにHuman Soarが整理)

名前に「MBA」が入っていても、修了してMBAの学位が得られるとは限りません。社員から相談を受けたら、まず、どの型の講座なのかを確かめることが出発点になります。学位が要るのか、知識と人脈が得られれば足りるのかで、選ぶ講座も費用も大きく変わります。

(参考)専門職大学院制度の概要(令和7年12月) – 文部科学省

(参考)大学等の履修証明制度について – 文部科学省

Q. スポーツMBAとは何ですか?

スポーツの経営を学ぶ大学院や社会人講座をまとめて呼ぶ通称で、正式な学位の名前ではありません。日本の制度では、MBAはビジネススクールが出す「経営管理修士(専門職)」などの学位です。スポーツMBAと呼ばれる講座には、この学位が取れるもの、スポーツ科学の修士が取れるもの、学位は出ず修了証が出るものの3つの型があります。

日本でスポーツMBAを学べる主な講座の期間と費用

社会人が働きながら通える国内の講座を、各校の公式の情報で確かめられた範囲で並べます。

講座 得られるもの 期間 費用 通い方
早稲田大学大学院スポーツ科学研究科 修士課程1年制(2027年度入学) 修士(スポーツ科学) 1年 初年度の合計168万6,000円 夜間と土曜が中心
早稲田大学 スポーツMBA Essence(2026年度・第10期) 修了証 2026年8月〜2027年3月。25回の予定 60万円(消費税込) 月曜の19時〜22時
筑波大学 スポーツウエルネス学学位プログラム 修士(スポーツウエルネス学) 博士前期課程 入学料28万2,000円。授業料は半期26万7,900円(2023年度の入学者の例) 平日の夜間と土曜
スポーツヒューマンキャピタル スポーツビジネスマスターコース(2026年度・第19期) 修了証明書 2026年8月〜2027年3月。全36日の予定 55万円(消費税込) オンラインが中心。原則月曜の20時から
グロービス経営大学院 経営学の修士(MBA)の課程の1科目 — — 科目「スポーツ・マネジメント」がある

国内の主な講座(出典:各校・各団体の公式サイトと募集要項。2026年10月10日に確認。大学の学費の表には消費税の表記がない)

早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の1年制は、実務の経験がある人を対象に、1年で修士の学位を取る課程です。トップスポーツマネジメントなど6つのコースがあり、修士論文の審査に合格すると「修士(スポーツ科学)」の学位が授与されます。初年度に払う合計は168万6,000円で、うち入学金が30万円、授業料が130万6,000円です。

同じ早稲田大学でも、ビジネススクール(経営管理研究科)で取れる学位は「経営管理修士(専門職)」で、こちらがMBAにあたります。初年度の合計は、夜間が中心の2年制で188万円、全日制の1年制で328万1,000円です。スポーツの専攻は、公式のページでは確認できませんでした。

筑波大学の社会人大学院は、東京のキャンパスで平日の夜と土曜に開講しています。スポーツヒューマンキャピタルは公益財団法人で、プロスポーツクラブの経営を題材にした講座を開いています。資格として学ぶ方法は、下の記事で扱っています。

あわせて読みたいスポーツビジネスに役立つ資格とは?取得方法を解説›

(参考)カリキュラム – 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科

(参考)大学院の学費(2027年度 修士課程・専門職学位課程 入学金・学費・諸会費一覧) – 早稲田大学入学センター

(参考)早稲田大学ビジネススクール 概要 – 早稲田大学大学院経営管理研究科

(参考)スポーツウエルネス学学位プログラム(博士前期課程) – 筑波大学 東京キャンパス社会人大学院

(参考)スポーツビジネスマスターコース – 公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル

(参考)カリキュラム – グロービス経営大学院

Q. 日本でスポーツMBAを学べるのはどこですか?

代表的なものに、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の修士課程1年制、早稲田大学のスポーツMBA Essence、筑波大学の社会人大学院、スポーツヒューマンキャピタルの講座があります。早稲田の1年制と筑波は修士の学位が取れますが、学位の名前はMBAではありません。スポーツMBA Essenceとスポーツヒューマンキャピタルは、学位ではなく修了証が出る講座です。

早稲田のスポーツMBA Essenceは学位の出ない社会人講座

スポーツMBAの講座を学位が要るかどうかで分けた図解。修了証の講座はスポーツMBA Essenceが60万円、スポーツヒューマンキャピタルが55万円。修士の大学院は初年度の合計168万6,000円から328万1,000円

「スポーツMBA エッセンス」で調べる人が多い早稲田大学のスポーツMBA Essenceは、公式サイトが「学位取得を求めないノンディグリーのプログラム」と説明している社会人向けの講座です。修了すると修了証が発行されますが、MBAの学位が得られるわけではありません。

主催は早稲田大学のスポーツ科学研究センターで、ビジネス・ファイナンス研究センターが共催しています。2026年度は第10期で、2026年8月31日から2027年3月22日までの月曜のうち、25回が予定されています。1回は75分の講義が2コマで、計算すると全体で約62時間です。受講料は60万円(消費税込)、定員は20名ほどです。

出願の資格は、原則として4年制の大学を卒業し、社会人として一定の期間の実務の経験があることです。内容は、スポーツを取り巻く環境、ビジネスとマネジメント、応用の3つの科目群に分かれ、マーケティング、会計とファイナンス、スポーツビジネスと法などを学びます。

費用を比べると、修了証の講座は50万円から60万円ほど、修士の学位が取れる大学院は初年度で170万円前後から、という差があります。学位そのものが要るかどうかが、選ぶときの分かれ目です。

(参考)スポーツMBA Essence 2026年度募集要項 – 早稲田大学スポーツ科学研究センター

(参考)スポーツMBA Essence カリキュラム – 早稲田大学スポーツ科学研究センター

Q. 早稲田のスポーツMBA EssenceでMBAは取れますか?

取れません。公式サイトが「学位取得を求めないノンディグリーのプログラム」と説明しており、修了すると修了証が発行されます。2026年度は第10期で、2026年8月から2027年3月まで月曜の夜に25回の予定、受講料は60万円(消費税込)です。早稲田大学でMBAにあたる学位が取れるのは、ビジネススクール(経営管理研究科)です。

海外のスポーツMBAはMBAとスポーツ修士の二重学位が多い

海外でも、事情は似ています。「スポーツMBA」と紹介される課程は、MBAとスポーツの修士を両方取る二重学位の課程と、MBAではないスポーツの修士の課程に分かれます。学費は発表されている通貨のまま書きます。

米国のマサチューセッツ大学アマースト校は、MBAとスポーツマネジメントの修士を合わせて70単位で取る課程を置いています。オハイオ大学も、MBAとスポーツ管理学の修士を2年で取る課程があり、費用の合計は州外の学生で5万7,000ドル未満と案内されています。50年前に始まった、この種の課程で最も古いものだと同大学は説明しています。

一方、国際サッカー連盟(FIFA)の関連機関が運営する「FIFAマスター」は、英国・イタリア・スイスの3つの大学を回る課程で、学位は文学修士(M.A.)です。授業料は2万5,000スイスフランです。運営元は、英国の専門誌の2026年のランキングで欧州1位、世界2位だったと公表しています。コロンビア大学のスポーツマネジメントの課程も、学位は理学修士(M.S.)で、1単位あたり2,850ドルです。

海外の課程に社員を送る場合は、学位の名前に加えて、期間、英語の要件、休職の扱いを先に確かめる必要があります。

(参考)MBA/MS Sport Management Curriculum – UMass Amherst Isenberg School of Management

(参考)Business Administration & Sport Administration Dual Degree – Ohio University

(参考)About the FIFA Master – CIES

(参考)FIFA Master FAQs – CIES

(参考)Sports Management Tuition and Financing – Columbia University School of Professional Studies

国は企業の人材をスポーツクラブへ出向させる事業を要求している

学校に通うほかにも、経営の人材を育てる道があります。スポーツ庁は、2027年度の予算の概算要求に「スポーツ・ビジネス人材越境活性化事業」を新しく盛り込みました。要求額は2億4,000万円です。

内容は、民間企業のビジネス人材を、出向などの形でプロスポーツクラブに送り、クラブの事業や組織の見直しを進めるというものです。資料の図では、企業の側が得るものとして、スポーツビジネスの立ち上げや社会課題の解決の実践経験が挙げられています。ただし、これは要求の段階の金額で、予算が決まったわけではありません。募集の方法もまだ示されていません。

国は以前から、この分野の人材を課題としてきました。2022年の第3期スポーツ基本計画は、スポーツ団体の収益力を高めるため、スポーツ経営人材の育成や団体の経営力の強化を支援するとしています。企業の中で育てる方法は、スポーツ経営人材の育成プログラムで整理しています。

(参考)令和9年度 概算要求主要事項 – スポーツ庁

(参考)第3期スポーツ基本計画(令和4年3月25日) – 文部科学省

企業が社員のスポーツMBAの費用を支援するときの3つの制度

企業が社員のスポーツMBAの費用を支援するときに関わる3つの制度を、受ける人と内容で結んだ図。人材開発支援助成金は会社に経費の75%、教育訓練給付は本人に費用の50%が支給される

会社が費用を出す場合に関わる公的な制度は、3つあります。いずれも細かい要件があるので、申し込む前に窓口に確かめてください。

人材開発支援助成金は大学院の課程が対象になる

厚生労働省の人材開発支援助成金には、社員を大学院で学ばせる会社への助成があります。「人への投資促進コース」では、国内の大学院の正規の課程、科目等履修生の制度、履修証明の制度による訓練が対象で、経費の75%が助成されます。国内の大学院の場合、1人あたり1年度150万円が上限です。訓練を始める1か月前までに、計画を労働局に出す必要があります。手続きは、計画の提出、訓練の実施、支給の申請の順です。申請は訓練が終わった日の翌日から2か月以内で、それまでに会社が経費を全額払っておく必要があります。助成金が入るまでは、会社が費用を立て替える形です。

注意点が2つあります。1つは、このコースが2022年度から2026年度までの期間限定とされていることです。2027年4月に始まる通学に使えるかどうかは、確認した資料からはわかりませんでした。もう1つは、対象が大学院の課程であることです。学位の出ない講座がこれにあたるかどうかは、資料からは読み取れません。どちらも、管轄の労働局に確かめる必要があります。

(参考)国内・海外の大学院で訓練を受講した場合も訓練経費等の助成が受けられます(人材開発支援助成金) – 厚生労働省

(参考)令和8年度版 人への投資促進コースのご案内 – 厚生労働省

教育訓練給付は本人が受け取る

教育訓練給付は、会社ではなく、受講した本人が受け取る給付です。国が指定した講座が対象で、最も手厚い専門実践教育訓練では、費用の50%(年間の上限40万円)が支給されます。修了後に賃金が上がるなどの条件を満たすと、最大で80%になります。通いたい講座が指定を受けているかは、厚生労働省の検索システムで調べられます。筑波大学の社会人大学院は、公式のページにこの制度の名前を載せています。

(参考)教育訓練給付制度 – 厚生労働省

会社が払った学費は条件を満たせば給与にならない

会社が社員の学費を払うと、その分が社員の給与として課税されるかどうかが問題になります。国税庁は、会社の仕事に直接必要な技術や知識を身につけさせるための費用は、適正な金額であれば、給与として課税しなくてよいとしています。修士の学位を取るための1年から2年分の学費がこれにあたるかは、仕事との関係によって判断が分かれます。税理士や税務署に確かめてください。

(参考)国内・海外の大学院で訓練を受講した場合も訓練経費等の助成が受けられます(人材開発支援助成金) – 厚生労働省

(参考)令和8年度版 人への投資促進コースのご案内 – 厚生労働省

(参考)No.2601 使用人等に技術や知識を習得させる費用を支出したとき – 国税庁

Q. 会社が社員のスポーツMBAの学費を出すときに使える制度はありますか?

厚生労働省の人材開発支援助成金に、社員を大学院で学ばせる会社への助成があります。「人への投資促進コース」では、国内の大学院の課程が対象で、経費の75%が助成されます。ただし2026年度までの期間限定とされ、学位の出ない講座が対象になるかは資料からは読み取れません。利用できるかどうかは、管轄の労働局に確かめてください。

企業がスポーツMBAを選ぶ前に確かめる4つのこと

社員から相談を受けたとき、会社として先に決めておきたい点を4つにまとめました。

学位が要るのか知識と人脈で足りるのか

修士の学位が要るなら大学院、体系的な知識と業界の人とのつながりが目的なら修了証の講座が候補になります。費用は3倍近く違います。

働きながら通える曜日と場所か

夜間と土曜が中心の課程でも、週に何日通うのか、オンラインで受けられるのかは講座によって違います。繁忙期と重なる時期も確かめます。

費用をだれがどこまで負担するか

会社が全額を出すのか、一部を補助するのか、本人が払って給付を受けるのか。助成金を使うなら、始める前の届け出が要ります。途中で退職した場合の扱いも、先に決めておきます。

学んだあとにどの仕事を任せるか

スポーツヒューマンキャピタルは、修了生がスポーツ業界に移った実績を延べ206名、コースの参加者を735名と公表しています。学んだ人が外に出ていくこともあります。会社に残って力を発揮してもらうには、修了後に任せる事業や役割を、通う前に本人と話しておくことが大切です。経営を担う人材の育て方は、下の記事で扱っています。

あわせて読みたいスポーツGM人材の育成プログラム設計|3能力と実践手順›

スポーツビジネスの全体像はスポーツビジネスとはで、業界が抱える課題は日本スポーツ業界の8つの課題で整理しています。

(参考)キャリアサポート – 公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル

まとめ|スポーツMBAは得られるものを確かめてから選ぶ

スポーツMBAは、名前が同じでも中身が大きく違います。要点を振り返ります。

  • スポーツMBAは通称で、MBAの学位、スポーツ系の修士、修了証の3つの型がある
  • 早稲田のスポーツMBA Essenceは学位の出ない講座で、受講料は60万円(消費税込)
  • 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の1年制は、初年度の合計が168万6,000円で、学位は修士(スポーツ科学)
  • 海外は、MBAとスポーツ修士の二重学位と、MBAではないスポーツ修士に分かれる
  • 会社が費用を出すときは、助成金の対象と期限、学費の税の扱いを先に確かめる

社員から相談を受けたら、まず講座の募集要項を一緒に読み、得られるものが学位なのか修了証なのかを確かめてみてください。そのうえで、修了後に任せたい仕事を話し合うと、会社としてどこまで支援するかを決めやすくなります。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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