スポーツ経営人材の育成プログラム|企業が導入する視点

スポーツ経営人材育成プログラムについて議論する経営層 スポーツ人材

スポーツ経営人材の育成プログラムは、単発のセミナーではなく「外部人材の受け入れ」「実務課題への配置」「評価指標の設定」を組み合わせて設計することで初めて機能します。本記事はスポーツ団体・企業の経営層や人事担当者に向けて、設計に必要な4要素と導入ステップを解説します。

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スポーツ経営人材が不足している背景と企業への影響

スポーツ団体の多くは競技運営の専門家は豊富でも、事業計画・財務・マーケティングといった経営スキルを持つ人材が慢性的に不足しています。この課題を受けて、スポーツ庁は経済界のスキルを持つ外部人材とスポーツ団体をマッチングする事業を実施し、団体の経営力強化を後押ししてきました。

企業側にとっても、この人材不足は無関係ではありません。スポーツ団体との協業やスポンサー関係を深めようとしても、相手方に経営視点の意思決定者がいなければ、事業提案が競技運営の担当者止まりで終わってしまうことがあります。スポーツ経営人材の育成は、スポーツ団体単独の課題ではなく、協業する企業側の事業機会にも直結する論点です。

Q. なぜスポーツ団体で経営人材が不足しやすいのですか?

競技運営や強化のノウハウを持つ人材は豊富でも、事業計画・財務・マーケティングといった経営スキルを持つ人材の採用・育成ルートが確立していない団体が多いためです。外部人材の受け入れが解決策の一つとされています。

育成プログラムの設計に必要な4つの要素

スポーツ経営人材を育てるプログラムは、座学だけでは機能しません。実務課題への配置や評価の仕組みまで含めて設計して初めて、人材が定着し成果を出せるようになります。ここでは設計時に外せない4つの要素に整理します。

要素 内容
外部人材の受け入れ窓口 経済界等の外部人材を受け入れるポストと権限を明確化する
実務課題への配置 座学ではなく実際の経営課題を任せて経験を積ませる
現場との橋渡し役 競技運営側と経営人材の間に立つ調整担当を置く
評価指標の設定 育成の成果を定量・定性の両面で測る基準を用意する

表:スポーツ経営人材の育成プログラム設計に必要な4つの要素

外部人材の受け入れ窓口|権限を明確化したポストを用意する

外部から経営人材を招いても、既存組織の中で権限が曖昧なままでは、提案が現場の合意形成の段階で止まってしまいます。予算執行権や意思決定の範囲をあらかじめ明文化したポストとして受け入れ窓口を設計することが、最初の要素になります。

実務課題への配置|座学より実際の経営課題を任せる

経営人材の育成は、研修という名目の座学だけでは進みません。スポンサー営業の新規開拓や、興行の収支改善といった実際の経営課題を早い段階で任せ、成功・失敗の両方を経験させることで、実践的な判断力が身についていきます。

現場との橋渡し役|競技運営側との調整担当を置く

競技運営に長く携わってきた現場スタッフと、外部から来た経営人材の間には、価値観や優先順位の違いが生まれやすいものです。両者の間に立って翻訳・調整を行う橋渡し役を置くことで、経営人材の提案が現場で実行に移されやすくなります。

評価指標の設定|定量・定性の両面で育成の成果を測る

育成の成果を「なんとなく良くなった」で終わらせず、売上・観客動員数といった定量指標と、現場スタッフからの信頼度といった定性指標の両方をあらかじめ設定しておくことが必要です。評価基準がないと、育成プログラム自体の継続可否を判断できません。

スポーツ庁「経営人材育成・活用推進事業」に見る官民マッチングの枠組み

国もこの課題を認識し、経済界のスキルを持つ外部人材とスポーツ団体を結びつける事業を実施してきました。実際の公募内容を見ると、対象団体や規模の考え方が具体的に分かります。

項目 内容
事業目的 経済界等の外部人材とスポーツ団体のマッチング支援による経営力強化
募集対象 中央競技団体・プロスポーツクラブ・プロリーグ等(10団体程度)
実施時期 令和2年度(第2回募集:令和2年9月28日開始)

表:スポーツ庁「スポーツ経営人材育成・活用推進事業」第2回募集の概要

10団体程度という規模の意味|量より質のマッチングを重視

この事業が一度に募集した団体数は「10団体程度」と、全国のスポーツ団体数からすると小規模です。これは量を追う事業ではなく、マッチングの質を重視し、成功モデルを積み上げていく設計であることを示しています。企業がスポーツ団体と協業する際も、多くの団体に一律の提案をするより、経営課題が明確な団体を絞り込んで深く関わる方が成果につながりやすいことを示唆しています。

(参考)スポーツ産業の成長促進事業「スポーツ経営人材育成・活用推進事業」に参加するスポーツ団体の募集について【第2回】 – スポーツ庁

自社でスポーツ経営人材育成プログラムを導入する3つのステップ

国の事業に応募する以外にも、企業が自社の人材やスポーツ団体との協業を通じてスポーツ経営人材を育成する方法があります。ここでは自社完結で始められる3つのステップに整理します。

①社内でスポーツ領域の事業機会を担当者に割り当てる

まずは新規事業扱いではなく、既存の事業開発担当者にスポーツ団体との協業案件を一つ割り当てることから始めます。専任部署を新設するより、まず1案件を通じて経営視点の意思決定を経験させる方が早く動き出せます。

②スポーツ団体側の経営課題を共同で言語化する

協業先のスポーツ団体と、収支構造や観客動員数の課題を共同で言語化する場を設けます。この過程自体が、担当者にとってスポーツ経営の実務課題に触れる育成機会になります。

③半年単位で成果と学びを振り返る

単年度の成果だけで判断せず、半年単位で「何が実行でき、何が机上の提案で終わったか」を振り返ります。この振り返りの積み重ねが、次に任せる経営人材候補の選定材料にもなります。

育成プログラムを継続させるための評価指標の運用方法

プログラムを1回実施して終わらせず、複数年にわたって継続させるには、評価指標を形骸化させない運用が欠かせません。ここでは前章の「評価指標の設定」をさらに一歩進め、継続運用の観点から扱います。

定量指標は「事業成果」と「人材の定着」の2軸で見る

売上や観客動員数といった事業成果だけを見ていると、無理な短期成果を追って人材が疲弊し、離職につながることがあります。事業成果と、育成対象者自身の定着率・満足度の両方を定量指標として並べて追うことが、プログラムの持続可能性を左右します。

定性指標は現場スタッフへのヒアリングで補う

数値だけでは見えない「現場からの信頼度」は、定期的なヒアリングで補います。競技運営側のスタッフが経営人材の提案をどう受け止めているかを継続的に確認することで、橋渡し役の配置が機能しているかを判断できます。

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Q. 経営人材育成プログラムはどのくらいの期間で成果が見えますか?

半年単位での振り返りを複数回重ねる中で見えてくるケースが多く、単年度の数値だけで判断すると短期的な成果を追いすぎて人材が疲弊するリスクがあります。

スポーツ経営人材の育成とスポーツ団体M&Aの接点

近年は経営基盤を強化したスポーツ団体・リーグが、他団体との統合や事業提携に踏み出す動きも見られます。経営人材の育成は、こうした事業再編を担える人材を社内に確保しておくという意味でも重要性を増しています。

企業がスポーツ団体とのM&Aや資本提携を検討する場合も、相手方に経営視点で対話できる人材がいるかどうかで、交渉のスピードと精度が大きく変わります。育成プログラムは自社の事業機会を広げる先行投資としても位置づけられます。

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あわせて、体育会系人材の高パフォーマー採用や、アスリートの転職市場の動向も、経営人材の候補層を広げる観点で参考になります。

Q. 経営人材の育成は中小規模のスポーツ団体でもできますか?

可能です。専任部署を新設せず、既存の事業開発担当者に協業案件を一つ割り当てるところから始められます。規模が小さいほど、意思決定の権限を明確にしやすい利点もあります。

まとめ|スポーツ経営人材の育成プログラムを機能させる視点

  • スポーツ団体の経営人材不足は、協業する企業側の事業機会にも直結する課題である
  • 育成プログラムは「受け入れ窓口」「実務課題への配置」「橋渡し役」「評価指標」の4要素で設計する
  • 国の事業は10団体程度という小規模で質を重視したマッチングを行っており、企業の協業戦略にも示唆がある
  • 自社完結でも、事業開発担当者への案件割り当てから始める3ステップで育成を開始できる
  • 評価指標は事業成果と人材の定着の両面で継続的に運用することが持続可能性を左右する

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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