売上予測が担当者の感覚で外れ、月末になって見込みが変わる。スポーツ統計学の確率の出し方を使い、商談段階ごとの過去の実績率から受注確度を出して、予測と実績の差を月次レビューで直す仕組みを整えます。
対象となるお客さま
- 売上の見通しを毎月まとめる営業部門長
- 予測をもとに計画を組む経営者・経営企画の担当者
- 営業管理ツールの入力を、予測に生かしきれていない営業企画の担当者
よくあるお悩み
- 見込みに入れた案件が、月末になって翌月以降へずれる
- 同じ「確度A」でも、担当者によって意味が違う
- 予測と実績がずれても、理由を確かめないまま次の月に入る
課題|担当者の感覚で付けた受注確度は、足しても予測にならない
受注確度は、商談が受注に至る見込みを示す目安です。A・B・Cのような区分や割合で付け、案件の金額と合わせて売上の見通しを出します。ところが、確度を担当者の印象で付けていると、同じ「A」でも人によって指しているものが違います。意味の違う数字をいくら足しても、合計は予測として読めません。
ずれに気づくのが月末や期末になると、そこから打てる対応は限られます。採用や仕入れ、投資の判断を売上の見通しに頼っている会社では、外れたときの影響が営業部門の外へ広がります。
原因|確度の基準が人ごとに違い、実績と照らしていない
担当者の能力や報告の姿勢だけの問題ではありません。確度の付け方そのものに、次の3つの原因があります。
- 基準が言葉になっていない:「感触が良い」「前向きだった」は、聞いた人によって受け取り方が変わります。決裁者に会ったか、見積を出したかのような事実で決めていなければ、そろえようがありません。
- 見通しと期待が混ざる:同じ人が案件を進め、確度を付け、その数字で説明を求められます。この形では、受注してほしいという期待と、受注できそうだという見通しを分けにくくなります。
- 実績と照らす場がない:「A」と付けた案件が実際に何割受注したのかを確かめなければ、付け方のずれに気づけません。外れた案件の話はしても、確度の基準そのものは直らないままです。
スポーツ知見|スポーツ統計学は、得点の確率を過去のシュート実績から出す
サッカーには、ゴール期待値(xG)という指標があります。1本のシュートが得点になる確率を、位置や状況が同じだった過去のシュートの実績から出すものです。選手本人や見ている人の印象ではなく、同じ条件の過去の結果で評価します。
最も単純な形は、Rathkeの研究(Journal of Human Sport and Exercise、2017年)に見られます。2012-13シーズンのプレミアリーグ380試合とブンデスリーガ306試合から、PKを除く18,218本のシュートをピッチの8区画に分け、区画ごとの得点率をそのまま確率としました。ゴール正面の最も近い区画はプレミアリーグ34%、ブンデスリーガ38%で、遠い区画はどちらも2%です。各クラブの区画ごとのシュート数にこの率を掛ければ、シーズンの期待得点が出ます。手元のデータでは回帰分析による統計モデルを実行できず、この区画ごとの計算を用いています。
結果を見ると、リーグ中位のクラブは期待得点と実際の得点が比較的近く、上位のクラブは上回り、下位のクラブは下回る傾向がありました。全体の平均から出した率は、力の差があるチームでは一方向にずれるということです。
Anzer と Bauer の研究(Frontiers in Sports and Active Living、2021年)は、ドイツ1部・2部の105,627本を、選手の位置データも加えてモデル化しました。作ったモデルを、学習に使っていない2020/21シーズン開幕3節の54試合で確かめたところ、1,357本のシュートから実際の得点は150点、モデルの合計は151.6点でした。論文は、1本ごとの結果を当てられるモデルはなく、確かめられるのは多くのシュートを集めたときに合計が近づくことだと述べています。また、記録員が人手で「決定機」と「チャンス」に分けた分類では得点率が54.8%と6.3%に分かれましたが、この分類はシュートの結果に影響されている可能性があるとして、モデルの入力には使っていません。
ただし、試合と仕事は同じではありません。どちらの研究もプロサッカーのシュートが対象で、企業の商談で確かめたものではありません。商談は件数がはるかに少なく、条件の記録もそろいません。受注まで時間がかかり、途中の働きかけで結果も変わります。そこで統計モデルは使わず、段階ごとの実績率で出します。1件ごとには当てようとせず合計で見て、ずれは月次レビューで直します。
解決策|商談段階を事実で定義し、段階ごとの実績率を受注確度にする
新しい予測システムは前提にしません。いま使っている営業管理ツールや表計算の記録から、次の3つを順に整えます。
- 商談段階を事実で定義する:「決裁者と面談した」「見積を提出した」のように、担当者以外でも確かめられる事実で区切ります。段階が進む条件も1行で決めます。
- 段階ごとの実績率を出す:過去の商談のうち、その段階まで進んだ案件が最終的に何割受注したかを数えます。この率を、そのまま受注確度にします。
- 金額に掛けて合計し、実績と比べる:案件の金額に段階の実績率を掛けて足すと、売上予測になります。毎月、予測と実績を比べ、差の理由を確かめます。
データが少ない前提で、3つの扱いを決めておきます。商談が少ない段階は集計の期間を延ばすか、隣の段階とまとめます。全社の率がなじまない商材やチームは、件数がそろうまで差の傾向として記録します。合計を大きく動かす大型案件は率で薄めず、別枠で個別に確認します。
進め方|過去の商談を集計し、2四半期の予測で試してから広げる
最初に確かめるのは、いま付けている確度が実際の受注とどれだけ合っているかです。合っていない程度が数字で分かると、定義を変える理由を現場と共有できます。
診断では、過去の商談の記録を集め、付けていた確度と受注の結果を突き合わせます。設計・試行では、1つの営業部門で定義表と算出シートを作り、これまでの予測と並べながら2四半期のあいだ試します。定着では、ほかの部門へ広げ、実績率の更新と月次レビューを社内の担当に移します。
期間は目安です。診断だけ、1部門だけといった始め方もご提案します。Human Soarは集計の様式づくり・聞き取り・実績率の算出・レビューの進行を担い、御社には商談データの共有と、試す部門・レビューの責任者の決定をお願いします。
成果物|支援が終わっても社内で予測を更新できる4つの道具
どれも御社の商談データをもとに一緒に作り、支援が終わったあとは営業企画や営業部門の担当者だけで更新できる形にします。
営業担当者が日々の案件に使うのが「商談段階の定義表」です。段階の名前と、進んだと判断する事実を一覧にします。この定義に沿った記録から、営業企画の担当者が「受注確度の算出シート」で段階ごとの件数と実績率を出し、半期ごとに更新します。
毎月の締めのあとに作るのが「予測と実績の比較レポート」です。予測の合計と実績の差を、段階別・部門別に1枚にまとめます。営業部門長は「月次レビューの手順」に沿って、差の理由を分け、次の月に直すことを決めます。担当者が替わっても、同じ定義で見通しを出し続けられます。
期待できる効果|経営・営業部門長・担当者が同じ根拠で見通しを話せる
経営にとっては、売上の見通しの根拠が案件の段階と実績率で説明され、差が出たときも理由と一緒に報告を受けられるようになります。営業部門長は、確度の話し合いに使っていた時間を、案件を次の段階へ進めるための相談に回しやすくなります。担当者は、確度の説明に悩むことが減り、段階の事実を記録することに集中できます。
見る数字は「予測と実績の差の割合」です。1か月で判断せず、数か月の推移で確かめます。もう1つ「定義どおりに段階を記録した案件の割合」を見ると、予測のもとになるデータがそろっているかが分かります。
Human Soarからのコメント
予測を当てること自体より、なぜ外れたかを毎月言葉にできることが大切だと考えています。担当者の勘を否定するのではなく、勘と過去の実績を並べて確かめられる状態をつくる。御社の商談データを一緒に見ながら、社内で育てていける受注確度の仕組みを整えます。
よくあるご質問
Q. 受注確度は何段階に分ければよいですか?
決まった数はありません。第三者が事実で確かめられる区切りだけを段階にします。段階ごとの商談が少なくて実績率が安定しないときは、段階をまとめるか、集計の期間を延ばします。
Q. 過去の商談データが少なくても始められますか?
始められます。統計モデルは使わず、段階ごとの実績率で出すためです。段階の記録が残っていない場合は、まず定義表を決めて記録を始め、受注か失注かの結果がたまるまでは試算として扱います。
Q. 予測を受注確度で出せば、毎月当たるようになりますか?
毎月ぴたりと当たるとは言えません。1件ごとの結果は予測できず、件数が少ない月や大型案件のある月は差が大きくなります。そのため、差の理由を月次レビューで分け、定義と実績率を直していきます。
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