職場で昼の短い仮眠(パワーナップ)を認めたいのに、時間も場所も決め方が分からない。スポーツ医学の研究が分けて考える長さ・時間帯・起きた後の時間を手がかりに、厚生労働省の目安に沿って、御社の仮眠の運用ルールと場所を決めます。
対象となるお客さま
- 健康経営や働き方の施策を進める人事・総務の担当者
- 午後の生産性やミスが気になる経営者・事業責任者
- 休憩スペースや社内規程を見直している担当者
よくあるお悩み
- 仮眠を認めたいが、時間と場所の決め方が分からない
- 寝ていると怠けて見えそうで、使ってもらえるか不安だ
- 夜勤や運転の社員を同じ扱いにしてよいのか迷う
課題|日中の眠気は、およそ3人に1人が週3回以上感じている
昼食後の会議で、資料を追う目が重くなる。午後の入力や点検で、いつもなら気づく間違いを見落としそうになる。こうした眠気は、一部の人だけの話ではありません。
厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査」(20歳以上、5,702人が回答)では、この1か月に週3回以上「日中、眠気を感じた」人が34.8%でした。働く世代に多い年齢層では、30〜39歳で40.4%、40〜49歳で37.5%、50〜59歳で35.7%です。なお、この調査は会社員に限ったものではありません。
「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、良い睡眠が、眠気や疲労が原因の労働災害や自動車事故などのリスク低減にも役立つとしています。眠気は生産性と安全の両方に関わるのに、会社として決めていなければ、社員は我慢するか、黙って休むしかありません。
原因|仮眠の時間、夜の睡眠、労務の扱いが整理されていない
仮眠を認めるかどうかで止まってしまうのは、決める項目が分かれていないからです。主な原因は次の3つです。
- 時間の基準がない:厚生労働省の資料は、午後の早い時刻(解説書では午後3時前まで)に30分以内の昼寝を効果的としています。この目安が社内で共有されていないと、長さも時間帯も人によって変わります。
- 夜の睡眠の不足と混ざっている:同じ調査で、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は男性37.5%、女性40.6%でした。ガイド2023は成人に6時間以上を目安としています。仮眠は夜の睡眠の代わりにはなりません。
- 労務と場所の扱いが決まっていない:労働基準法は休憩時間を自由に利用させるよう定めています。労働安全衛生規則は、就業の途中に仮眠できる機会があるときは、適当な仮眠の場所を男性用と女性用に区別して設けるよう定めています。自社にどう当たるかを確かめないと、担当者は決めきれません。
(参考)令和元年 国民健康・栄養調査報告(第79表・第80表) – 厚生労働省
(参考)健康づくりのための睡眠ガイド2023 – 厚生労働省
スポーツ知見|スポーツ医学の研究は、仮眠の長さ・時間帯・起きた後の時間を分けて扱う
アスリートの回復の方法として、仮眠は系統的レビュー(複数の研究を一定の手順で集めて評価する研究)で調べられています。Lastella らのレビュー(Nature and Science of Sleep、2021年)は、11競技のアスリートを対象にした37研究(3,489人、平均23歳)を調べました。眠気を調べた4研究はいずれも仮眠で改善し、認知機能を調べた5研究のうち4研究で良い結果が出ています。
著者らは、20〜90分、13時〜16時の仮眠を選手が検討する目安として示しました。起きてから練習や試合までは、多くの場合で少なくとも30分あけるよう勧めています。起きた直後のぼんやりした状態(睡眠慣性)は、通常15〜30分で消えていくもので、カフェインや光などの対策を使っても、最初の15分では確実には消せないためです。
効き方は前夜の睡眠でも変わります。同じレビューには、前夜の睡眠が7時間未満だったランナーで効果が大きかった研究と、十分に眠っていた選手では覚醒度に差がなかった研究が含まれています。Souabni らのレビュー(Sports Medicine、2021年)は18研究(運動習慣のある158人とアスリート168人)をまとめ、15研究で良い効果、2研究で有意な差なし、1研究でスプリントの低下を報告しました。90分ほどの長い仮眠で改善が大きいとしつつ、根拠の質などから慎重に見るべきだと述べています。
ただし、試合と仕事は同じではありません。研究の対象者はアスリートや運動習慣のある人で、会社員ではありません。効果も運動の成績や競技に関わる検査で確かめたものが多く、仕事の成果では確かめていません。また、ガイド2023が紹介する夜勤中の仮眠の研究では、60分と長めにすると、かえって仕事の効率が下がった報告があります。そこで、研究から借りるのは決める項目だけにし、数字は厚生労働省の目安である午後3時前まで・30分以内に合わせます。効果は自社の調査で確かめます。
解決策|長さ・時間帯・場所・再開の手順を1枚の運用ルールに決める
大きな設備を先に入れることはしません。まず次の4つを決め、小さく試します。利用は本人の任意とし、使わない人を評価で不利にしません。
- 長さと時間帯:午後3時前までに30分以内を上限にし、タイマーを使います。
- 場所:人数、空きスペース、勤務の形から、専用室・空き会議室・席で目を閉じる、のどれにするかを決定表で選びます。法令の場所の決まりに当たるかも確かめます。事務所衛生基準規則は、休憩の設備を設けるよう努めることや、常時50人以上または常時女性30人以上を使用するときに、横になれる休養室を男性用と女性用に分けて設けることを定めています。
- 使い方:予約の要否、明るさと音、アイマスクなど用品の扱いを決めます。不眠の症状がある人は、解説書の案内に沿って、なるべく昼寝を避けるよう周知します。
- 仕事の再開:起きてすぐに重要な判断や危険を伴う作業を入れず、確認しやすい仕事から戻る順番を決めます。
勤務時間の中で認めるのか、休憩時間の中でとるのかは、就業規則と勤怠の扱いに関わります。個別の判断は社会保険労務士などの専門家に確認します。夜勤の人と運転など安全に直結する業務は、このルールに含めず、産業医や安全管理の専門家に確認して別に決めます。
眠気は、仮眠で解決するものばかりではありません。ガイド2023は、睡眠休養感が低い、日中の眠気が強いといった場合に、専門の医療機関で検査を受けることを勧めています。不調が続く人には、仮眠で済ませず医療機関への相談を案内します。
(参考)良い目覚めは良い眠りから 解説書(2026年9月版) – 厚生労働省
(参考)健康づくりのための睡眠ガイド2023 – 厚生労働省
進め方|調査と規程の確認から始め、1部署で試してから広げる
全社で一斉に始めると、使われない理由も、続けるべきかどうかも見えにくくなります。まず現状を調べ、日中に働く1部署か1拠点で試します。
診断では、眠気と夜の睡眠についての短い調査を行い、勤務の形を日勤・夜勤・運転などに分け、場所の候補と就業規則を確かめます。設計・試行では、運用ルールと場所を決め、周知文を出して試し、調査で変化を見ます。定着では、対象を広げ、半年ごとに調査と見直しを行います。
期間は目安です。診断だけ、ルールづくりだけといった始め方もご提案します。Human Soarは調査の設計と集計、ルール案と決定表の作成、周知文の作成を担い、御社には勤務の情報と就業規則の共有、試す部署の決定、産業医・社会保険労務士との確認をお願いします。
成果物|運用ルールと決定表など、社内で回せる4つの仕組み
成果物は、御社の勤務の形と建物に合わせて作ります。どれも支援が終わった後に、担当者だけで更新できる形にします。
中心になるのが「仮眠の運用ルール」です。長さ、時間帯、対象、再開の手順を1枚にまとめ、人事・総務の担当者が管理します。新しい拠点や部署に広げるときは「場所と時間の決定表」を使います。人数と空きスペース、勤務の形から、どの場所でいつ認めるかを選べます。
社員には「利用の周知文」を届けます。任意であること、使い方、使わないほうがよい場合、不調が続くときの相談先を書くので、管理職も同じ説明ができます。最後の「効果を見る調査の手順」は、質問項目、実施時期、集計の仕方をまとめたものです。半年ごとに担当者が実施し、続け方を判断する材料にします。
期待できる効果|眠気への対応が、個人の我慢から会社の決まりに変わる
経営にとっては、眠気という生産性と安全に関わる問題に、説明できる形で対応できるようになります。部門の責任者は、社員が仮眠をとっても、決まりに沿っているかで判断できます。社員は、周囲の目を気にせずに決まった範囲で休めるようになります。
見る数字は「日中の眠気を週3回以上感じる社員の割合」と「仮眠の利用者のうち、午後の仕事に戻りやすくなったと答えた割合」です。前者は全国の調査と同じ聞き方にすると目安にできますが、全国の調査には会社員以外も含まれます。仮眠だけで生産性が上がると決めつけず、夜の睡眠時間も一緒に見ます。
Human Soarからのコメント
仮眠は、認めると言うだけでは使われにくく、禁止しないだけでは人によって長さも場所もばらばらになります。スポーツ医学の研究が分けて考えてきた項目を借りると、社内で決めることがはっきりします。御社の勤務の形に合う範囲を、一緒に決めていきます。
よくあるご質問
Q. 勤務時間中に仮眠をとってもらってもよいですか?
会社として決めれば運用できますが、勤怠と就業規則での扱いを先に決める必要があります。休憩時間の中でとるなら、休憩は自由に利用させるものなので、仮眠を強制はできません。個別の判断は社会保険労務士などの専門家に確認していただきます。
Q. 専用の仮眠室がなくても始められますか?
始められます。空いている会議室や、席で椅子にもたれて目を閉じる形から試し、利用の様子を見て場所を見直します。ただし、仮眠の機会を設けるときの場所の決まりが御社に当たるかは、先に確かめます。
Q. 夜勤の社員や運転業務の社員にも同じルールを使えますか?
そのままでは使いません。昼の眠気を前提にしたルールなので、夜勤の時間帯や、運転などの安全に直結する業務には合わないためです。これらの業務は、産業医や安全管理の専門家に確認したうえで、別に決めます。
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