次世代リーダーの候補を選んでいるのに、いつも同じような経歴の人ばかりが残る。そんな状態を変えます。スポーツの発育発達学で確かめられた「早く始めた人が選ばれやすい偏り」とその防ぎ方を手本に、いまの成果と伸びしろを分けて見る選抜の仕組みをつくり、毎年見直せる形で社内に残します。
対象となるお客さま
- 次世代リーダーの選抜型研修や後継者計画を運用している人事部門の担当者
- 候補者の顔ぶれが毎年ほとんど変わらないと感じている経営者
- 中途入社や異動の多い部署から、候補者が上がってこない事業部門の責任者
よくあるお悩み
- 候補者は上司の推薦と直近の評価で決まり、選んだ理由を説明しにくい
- 一度候補から外れた人が、あとから選ばれることがほとんどない
- 中途入社の人や育休から復帰した人が、候補の一覧に入りにくい
課題|後継者候補の選び方は、取締役会が監督する対象になった
次世代リーダーをどう選ぶかは、人事部門の中だけで決めればよい話ではなくなっています。東京証券取引所が上場会社に向けて定めるコーポレートガバナンス・コード(2026年7月21日付)は、取締役会がCEOの後継者計画の策定・運用に主体的に関わり、後継者候補の育成とCEOの選任が「十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう」監督することを求めています(原則4-3)。
同じコードは、ジェンダーや国際性、経歴(中途採用を含む)、年齢などの観点から、中核人材への登用における多様性の考え方と、測定できる目標を決めて開示することも求めています(原則2-2)。候補者の顔ぶれが偏っていれば、その理由を説明できなければなりません。
候補者を上司の推薦と直近の評価だけで決めていると、この説明ができません。選んだ人を育てる計画とは別に、選び方そのものを点検する仕組みが要ります。
原因|いまの成果で選ぶと、早く経験を積んだ人が残る
上司の見る目が悪いわけではありません。いまの成果で比べるという選び方そのものに、偏りを生む仕組みがあります。原因は次の3つです。
- 入社年次で区切って比べている:同じ年次でも、前職の経験がある人、大きな案件のある部署に配属された人は、早くから成果を出せます。年次で並べると、その差が「能力の差」に見えます。
- いまの成果と伸びしろを分けていない:年度の評価が直近1年の成果を中心にしていると、経験を積み始めたばかりの人がどれだけ速く伸びているかは記録に残りません。
- 一度選んだら固定している:選ばれた人には難しい仕事と研修の機会が集まり、差はさらに広がります。外れた人には挽回の機会がないため、翌年も同じ顔ぶれになります。
こうして、入社したときの条件や最初の配属の違いが、数年後には「リーダーに向いているかどうか」の違いとして固まってしまいます。
スポーツ知見|発育発達学では、選抜の偏りは見せ方を変えると消えた
スポーツの発育発達学では、同じ学年の中で早く生まれた選手ほど選ばれやすい現象を「相対年齢効果」と呼びます。生まれが数か月早いだけで体が大きく、いまの試合で目立つため、才能があると見なされやすいのです。
イギリスのCobleyらは、1984〜2007年の38本の研究(14競技・16か国、253の集団)をまとめて分析し、2009年に学術誌「Sports Medicine」に発表しました。相対年齢効果は一貫して見られ、効果の大きさ自体は小さいものの、学年内の生まれの差が大きいほど強くなりました。特に強く出やすいのは、人気の高い競技で、15〜18歳の男子の地域や国の代表を選ぶ段階でした。
防ぎ方を確かめた研究もあります。オランダ・アムステルダム自由大学のMannとvan Ginnekenは、トップレベルのサッカークラブのスカウトに育成年代の試合を見せて、将来性の順位を付けてもらいました(Journal of Sports Sciences、2017年)。年齢の情報がないと偏りが出て、生年月日を渡しても偏りは残りました。ところが「背番号が学年内の生まれの順になっている」と知らせて見てもらうと、偏りは消えました。情報を渡すだけでなく、評価しているその場で差が見える形にすることが効いたのです。
イングランドでは、プレミアリーグのクラブの育成組織で、年齢ではなく体の成熟度で組を分ける「バイオバンディング」も試されています。Cummingらが4クラブの11〜14歳の選手66人の大会を調べた研究(Journal of Sports Sciences、2018年)では、成熟の遅い選手は、技術・体力・心の力を使い、伸ばし、見せる機会が増えたと答えました。
ただし、試合と仕事は同じではありません。これらの研究の対象は10代の選手で、会社員の選抜で確かめたものではありません。また、体の成熟の差は成長すれば縮まりますが、仕事の経験の差は放っておいても縮まりません。そのため、比べ方を変えるだけでなく、外れた人にも経験を積む機会を割り当て、毎年選び直す仕組みを合わせて入れます。
解決策|比べる集団・見せ方・評価の軸・見直しの4つを変える
候補者を増やすのでも、評価項目を細かくするのでもありません。いまの選抜の手順を土台に、次の4つを変えます。
- 比べる集団を経験年数で組む:入社年次ではなく、その職務・その役割に就いてからの年数が近い人どうしで比べます
- 選抜会議の資料に経験の差を並べる:候補者一覧に、その役割での経験年数と担当してきた仕事の規模を、成果と同じ表に並べて示します
- いまの成果と伸び幅を別の欄で評価する:直近の成果に加えて、前年からどれだけ伸びたか、新しい仕事をどれだけ早く覚えたかを別に記録します
- 毎年選び直す:候補者は1年ごとに見直し、外れた人のうち伸び幅の大きい人には、次の1年で難しい仕事を割り当てます
評価する人の感覚を否定するのではなく、感覚が働く場面で差が見えるように資料と手順を整えます。選ぶ人が同じでも、何と比べているかが分かれば判断は変わります。
進め方|過去の選抜を点検してから、1つの階層で試す
いきなり選抜の制度を作り替えると、何が変わったのかが分からなくなります。まず過去の選抜を数字で点検し、偏りがどこにあるかを確かめてから、1つの階層で新しい選び方を試します。
診断では、過去3〜5年に選ばれた人と選ばれなかった人を、入社年次・入社経路(新卒か中途か)・最初の配属先・休職や育休の有無で集計し、母集団との違いを見ます。設計・試行では、課長候補など1つの階層を対象に、経験年数で組んだ比較表と2つの軸の評価シートを作り、実際の選抜会議で使います。定着では、年に1回の選び直しと、外れた人への仕事の割り当てまでを運用ルールにまとめます。
期間は目安です。診断だけ、1つの階層だけといった始め方もご提案します。Human Soarは集計の様式づくり・分析・選抜会議の資料づくりと進行を担い、御社には人事データの共有と、試す階層と会議の参加者の決定をお願いします。
成果物|毎年の選抜を社内で回せる4つの道具
成果物は、ひな形を渡して終わりにはしません。どれも御社の人事データと実際の選抜会議をもとに、一緒に作ります。
最初にできるのが「選抜の偏り点検シート」です。選ばれた人の入社年次・入社経路・配属先などの構成を母集団と並べるもので、毎年の選抜のあとに人事部門が更新し、取締役会への報告にも使えます。次に、候補者を経験年数の近い人どうしで並べた「経験年数別の候補者一覧」を作ります。選抜会議の資料として、成果と経験の差を同じ表で見られるようにします。
評価の場では「2つの軸の評価シート」を使います。推薦する上司が、いまの成果と前年からの伸び幅を別々の欄に書き、その根拠となる仕事を添えます。最後に、年1回の選び直しの時期、外れた人に割り当てる仕事の決め方、会議の進め方をまとめた「年次見直しの運用ルール」を整えます。支援が終わった後も、社内だけで毎年の選抜を回せます。
期待できる効果|候補者を選んだ理由を、数字で説明できるようになる
経営にとっては、後継者候補をどう選び、顔ぶれがどう変わったかを、取締役会や開示の場で数字を添えて説明できるようになります。人事部門は、選んだ理由と外れた理由を本人に伝える根拠を持てます。推薦する管理職は、同じ条件の人と比べたうえで推薦できるので、迷いが減ります。
見る数字は2つです。1つは「選ばれた人の構成と母集団の構成の差」で、入社経路や入社年次ごとに毎年確かめます。もう1つは「前年に外れた人のうち、翌年以降に選ばれた人の数」です。この数がゼロのままなら、選抜が固定しているということです。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、選び方を見直す時期です。
Human Soarからのコメント
スポーツの育成年代では、早く生まれたというだけで選ばれ、指導の機会が集まり、差が広がっていくことが長く問題にされてきました。会社の次世代リーダー選抜でも、入社の時期や最初の配属の違いが同じ形で効いていることがあります。選ぶ人の目を変えるのではなく、比べる相手と見せ方を変える。いまの選抜の手順を土台に、御社の人事データに合わせて一緒に組み立てます。
よくあるご質問
Q. 若手の早期選抜はやめたほうがよいですか?
やめる必要はありません。変えるのは、早く選んだ候補者を固定しないことです。候補者を毎年選び直し、外れた人のうち伸び幅の大きい人にも難しい仕事を割り当てれば、早く始める利点を残したまま偏りを減らせます。
Q. 中途入社の社員が多い会社でも使えますか?
使えます。中途入社の多い会社ほど、入社年次で比べると前職での経験の差が見えにくくなります。その職務・その役割に就いてからの年数で比べる集団を組むので、新卒と中途を同じ物差しで並べられます。
Q. 候補者が数人しかいない中小企業でも依頼できますか?
できます。候補者が少ない場合は、経験年数で組を分ける代わりに、候補者一覧に経験年数と担当してきた仕事の規模を並べて示す方法から始めます。1回の診断と、次の選抜会議の資料づくりだけをお手伝いする形もご提案できます。
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