サラリーキャップとは|Bリーグの上限8億円と企業への影響

サラリーキャップとは|Bリーグの上限8億円と企業への影響 スポーツビジネス

協賛しているBリーグのクラブの担当者から、「今季からサラリーキャップが始まったので、選手にかけられるお金に上限ができました」と聞いた。協賛金を増やしても補強には回らないということなのか。親会社としてクラブを支えている立場では、何が変わるのか。

サラリーキャップとは、1つのチームが選手に払う報酬の総額に上限を設ける制度です。Bリーグは2026-27シーズンから、最上位のB.PREMIERで上限8億円・下限5億円の制度を始めました。上限を超えたクラブには、降格を含む重い制裁があります。この記事では、言葉の意味、Bリーグの金額と対象、スター選手条項、違反したときの扱い、クラブの人件費の実績、海外のリーグとの違い、そして親会社やスポンサー企業への影響を、リーグの規程と公式の資料をもとに整理します。

サラリーキャップとはチームの選手報酬の総額に上限を設ける制度

Bリーグは、サラリーキャップを「チーム間の戦力均衡を保つために選手給与の上限を設定する制度」と説明しています。リーグの規程も、目的を「競技力の均衡を図ること」と定めています。資金のあるクラブに選手が集まりすぎるのを防ぎ、接戦を増やすねらいです。

関連する言葉を整理しておきます。

  • ハードキャップ:上限を超えることを原則として認めない方式
  • ソフトキャップ:決められた例外を使えば、上限を超えて契約できる方式
  • ぜいたく税:基準の額を超えた分に応じて、リーグにお金を納める仕組み
  • サラリーフロア:最低でも払わなければならない総額。下限のこと

Bリーグの制度は、上限と下限の両方があり、上限を超えると降格になる厳しい型です。島田慎二チェアマンはインタビューで、ソフトキャップにする議論もあったなかでハードキャップを選んだのは、戦力の均衡をできる限り実現したかったからだと話しています。

(参考)B.革新 よくある質問 – B.LEAGUE

(参考)選手契約および登録に関する規程 – B.LEAGUE

(参考)島田慎二チェアマン インタビュー 前編(2025年8月23日) – B.LEAGUE公式サイト掲載

Q. サラリーキャップとは何ですか?

1つのチームが選手に払う報酬の総額に上限を設ける制度です。資金のあるチームに選手が集まりすぎるのを防ぎ、チームの力の差を小さくするねらいがあります。Bリーグは「チーム間の戦力均衡を保つために選手給与の上限を設定する制度」と説明しています。上限を超えられない方式をハードキャップ、例外つきで超えられる方式をソフトキャップと呼びます。

Bリーグのサラリーキャップはいくらでいつから|上限8億円・下限5億円

Bリーグのサラリーキャップは、2026-27シーズンから始まりました。金額は、リーグの階層ごとに次のとおりです。

階層 上限(キャップ) 下限(フロア)
B.PREMIER 8億円 5億円
B.ONE(B.ONEライセンス) 4億円 1億5,000万円
B.ONE(B.NEXTライセンス) 4億円 1億円

Bリーグのサラリーキャップの金額(2026-27シーズン。消費税は含まない。出典:B.LEAGUE「選手契約および登録に関する規程」第15条)

金額には消費税を含みません。所得税などの税金と、代理人への手数料は含みます。2024年2月に制度の概要が発表されたときは「税込」と書かれていましたが、現在の公式のページと規程は、消費税を除くと定めています。

上限に数えられるのは、基本の報酬だけではありません。契約金、住居や自動車などの手当、出場給や勝利給、肖像の使用料、イベントやメディアへの出演料など、クラブが選手に払うお金のほぼすべてです。住居の手当は月8万円または10万円といった形で、金額に換算する表も決められています。

最低の年俸も決まっています。B.PREMIERは800万円です。上限と下限の金額は理事会の判断で改定でき、リーグは2026年12月の理事会で見直しを検討するとしています。

(参考)選手契約および登録に関する規程 – B.LEAGUE

(参考)B.革新 サラリーキャップ制度 – B.LEAGUE

Q. Bリーグのサラリーキャップはいくらで、いつからですか?

2026-27シーズンから始まりました。最上位のB.PREMIERは上限8億円・下限5億円、B.ONEは上限4億円です。金額に消費税は含みません。基本の報酬に加えて、契約金、住居などの手当、出場給、肖像の使用料なども上限に数えられます。金額は理事会の判断で改定でき、2026年12月の理事会で見直しが検討されます。

スター選手条項は最高額の1人を1億5,000万円として数える

例外として設けられたのが、スター選手条項です。報酬が1億5,000万円を超える選手がいる場合、クラブが求めれば、そのうち最高額の1人を1億5,000万円として総額を計算できます。国籍は問いません。

「1人だけ上限なし」という意味ではありません。1億5,000万円までは総額に数えられ、それを超えた部分だけが計算の外に出ます。たとえば報酬が3億円の選手にこの条項を使うと、上限の計算では1億5,000万円として扱われます。

使い方には歯止めがあります。条項を使った選手と翌シーズンも契約し、条項を外す場合、基本の報酬は前のシーズンの70%を超えていなければなりません。リーグは、基本の報酬が3億円の選手であれば、翌シーズンに2億1,000万円を下回る契約はできないと例を示しています。1年だけ高い報酬を払って、翌年に大きく下げるやり方を防ぐためです。

(参考)選手契約および登録に関する規程 – B.LEAGUE

(参考)B.革新の競技に関する各レギュレーション決定のお知らせ(2026年1月13日) – B.LEAGUE

サラリーキャップを超えたクラブは降格・勝ち数15減・5倍の制裁金

Bリーグのサラリーキャップを超えた場合の扱いを線で結んだ対応図。通常の超過は5倍の制裁金と降格、勝ち数15減になり、けが人の代わりの契約などは納付で制裁の対象外になる

上限を超えたクラブには、3つの制裁が同時に科されます。B.PREMIERのクラブであれば、次のとおりです。

  • 翌々シーズンの終了後に、1つ下のB.ONEへ降格する
  • 翌シーズンの勝率の計算で、勝ち数を15減らす
  • 上限を超えた金額の5倍の制裁金を払う

島田チェアマンは、お金で解決するのではなく、クラブにとって本当に厳しいペナルティにしたと説明しています。下限に届かなかった場合も降格です。新しいBリーグは成績による昇格と降格をなくしたため、サラリーキャップの違反は、数少ない降格の入口になりました。

ただし、すべての超過が制裁になるわけではありません。けが人の代わりの選手を追加で契約した場合や、出場給などの変動する報酬がふくらんだ場合は、超えた額の100%または50%をリーグに納めれば、制裁の対象から外れます。

2026年7月には、2027-28シーズンからの見直しが決まりました。B.PREMIERでは3,000万円までの超過であれば、超えた額と同じ金額をリーグに納めることで制裁の対象外になります。リーグは、故意ではない少額の計算の誤りで降格になることが、担当者への過度な重圧になっていると理由を説明しています。この枠は、2026-27シーズンにはありません。

(参考)選手契約および登録に関する規程 – B.LEAGUE

(参考)2月12日 理事会に関するメディアブリーフィング レポート – B.LEAGUE

(参考)B.革新 サラリーキャップ制度 – B.LEAGUE

(参考)競技に関する各レギュレーション決定のお知らせ(2026年7月14日) – B.LEAGUE

Q. サラリーキャップを超えるとどうなりますか?

Bリーグでは、降格、翌シーズンの勝ち数を15減らす、超えた金額の5倍の制裁金、の3つが同時に科されます。下限に届かない場合も降格です。ただし、けが人の代わりの選手の報酬などで超えた場合は、超えた額の100%または50%をリーグに納めれば制裁の対象外になります。2027-28シーズンからは、3,000万円までの超過にも同じ扱いが設けられます。

Bリーグのクラブ人件費ランキング|制度の前は11クラブが8億円を超えていた

制度が始まる前、クラブはどれくらいの人件費を使っていたのでしょうか。Bリーグが公表している2024-25シーズンの決算によると、B1の24クラブのトップチーム人件費は平均8億3,000万円でした。最も多いのは千葉ジェッツの約15億3,000万円で、アルバルク東京の約14億5,000万円、宇都宮ブレックスの約12億7,000万円が続きます。8億円を超えていたのは11クラブです。

この数字を、上限の8億円とそのまま比べることはできません。決算の「トップチーム人件費」に何が含まれるかは、リーグの資料に定義が書かれていません。サラリーキャップは選手だけが対象で、スター選手条項があり、消費税も含みません。「千葉ジェッツは7億円を減らす必要がある」といった計算は成り立ちません。

読み取れるのは、制度の前の時点で、B1の平均が上限とほぼ同じ水準にあり、上位のクラブはそれを大きく上回っていたという点です。なお、千葉ジェッツは人件費が最も多い一方で、営業収入は約51億7,000万円あり、収入に対する人件費の割合は約30%です。金額の大きさと、経営の無理は別の話です。

新しい制度のもとでの各クラブの総額は、毎シーズン11月と翌年9月の理事会で公表されます。初回は2026年11月の予定で、選手の個人名は出さず、報酬の額ごとの人数が6段階で示されます。千葉ジェッツの協賛の内訳は千葉ジェッツのスポンサーで扱っています。

(参考)2024-25シーズン(2024年度)クラブ決算概要 B1クラブ – B.LEAGUE

(参考)2024-25シーズン(2024年度)クラブ決算概要 発表資料 – B.LEAGUE

(参考)B.革新の競技に関する各レギュレーション決定のお知らせ(2026年1月13日) – B.LEAGUE

NBA・MLB・サッカーのサラリーキャップとBリーグの違い

海外や他の競技の仕組みを、各リーグの公式の発表で確かめられた範囲で並べます。金額は発表された通貨のままです。

リーグ 仕組み 金額など
NBA(2026-27シーズン) 上限に例外があるソフトキャップ。ぜいたく税と下限もある 上限は約1億6,496万ドル。ぜいたく税の基準は約2億43万ドル
NFL(2026年) ハードキャップ 1チーム3億120万ドル
MLB 上限はなく、ぜいたく税だけ 2026年の基準は2億4,400万ドル
ラ・リーガ(2026/27) クラブごとに違う上限をリーグが承認する 収入などをもとにクラブが案を出し、リーグが認める
Jリーグ チームの総額の上限は発表されていない 初年度の報酬の上限と、基本報酬の下限がある

主なリーグの選手報酬の制限(出典:各リーグの公式の発表。2026年10月10日に確認)

NBAは上限を超えて契約できる例外が多く、そのかわりに、ぜいたく税やさらに上の基準で支出を抑えます。NFLは全チームが同じ上限を守ります。Bリーグの制度は、超えると降格になる点で、NFLの型に近い厳しさです。

MLBにはサラリーキャップがなく、基準を超えた球団がぜいたく税を払います。ただし2026年6月、機構の側が上限と下限の導入を選手会に提案したとMLBの公式サイトが伝えています。選手会は受け入れない立場で、いまの労使協定は2026年12月1日に期限を迎えます。この記事を書いた10月10日の時点では、結論は出ていません。

スペインのラ・リーガは考え方が違います。全クラブ同じ額ではなく、収入に応じてクラブごとに上限が決まります。力の差を小さくするというより、身の丈を超えた支出を防いで経営を安定させるための制度です。Jリーグは2024年9月に契約の制度を改め、2026年から新人の報酬の上限をゆるめ、基本報酬の下限を新しく設けました。

(参考)NBA sets Salary Cap for 2026-27 season at $164.961 million – NBA Communications

(参考)NFL announces 2026 salary cap set at $301.2 million per team – NFL.com

(参考)Competitive Balance Tax – MLB.com

(参考)MLB Commissioner Rob Manfred on initial CBA proposals(2026年6月3日) – MLB.com

(参考)Squad Cost Limit – LALIGA

(参考)選手契約制度の改定について(2024年9月24日) – Jリーグ

サラリーキャップが親会社とスポンサー企業に与える4つの影響

サラリーキャップのもとでのクラブのお金の出入りを示す関係図。親会社やスポンサー企業からの収入が増えても選手への報酬は上限で止まり、増えた分はアリーナや育成に向かう

クラブを支える企業の側から見ると、変わる点は4つあります。

親会社の資金で戦力の差をつけにくくなる

島田チェアマンは、選手の報酬の総額が高いクラブほど、オーナー企業への依存の度合いが高い関係にあると述べています。上限ができると、親会社が赤字を埋めて選手を集める勝ち方は取りにくくなります。親会社にとっては、クラブへの支出を株主に説明しやすくなる面もあります。例外は、1人に限って上限の外で払えるスター選手条項です。

スポンサーから選手への支払いも総額に数えられることがある

規程の第16条は、クラブの株主やクラブパートナーなどの第三者が、選手やその親族、選手が役員を務める法人に渡した経済的な利益についても定めています。契約の実態がない場合や、不相当に高額だとリーグが判断した場合は、クラブから選手への支払いとみなして総額に加えます。選手個人と広告などの契約を結ぶ企業は、活動の実態と金額の根拠を残しておく必要があります。契約で確かめる点は、下の記事で整理しています。

あわせて読みたいスポーツスポンサー契約とは|企業が確かめる6項目と印紙・法律›

協賛の成果を順位以外でも測るようになる

クラブの収入が増えても、選手に回せる額は上限で止まります。増えた分は、アリーナ、集客、スタッフ、育成に向かいます。2024-25シーズンの決算でも、B1の人件費は前年より14.7%増えたのに対し、人件費以外の費用は24.0%増えていました。協賛の見返りを、順位だけでなく、来場者数や地域での露出で確かめる設計が合うようになります。

(参考)2024-25シーズン(2024年度)クラブ決算概要 発表資料 – B.LEAGUE

自社の賃金の設計にそのまま持ち込めない

企業が同業の他社と、賃金の上限を申し合わせることはできません。公正取引委員会の検討会の報告書は、複数の使用者が共同で対価を取り決めることは、原則として独占禁止法上の問題になると整理しています。スポーツの報酬の総額の制限については、同じ報告書が、移籍の制限と同様の考え方で判断されると注記しています。適法とも違法とも言い切っていません。自社の中での配分の考え方として参考にするのと、他社と取り決めるのとは別の話です。

Bリーグのクラブと協賛の全体像は、下の記事でまとめています。

あわせて読みたいBリーグのスポンサー一覧|各チームの料金と企業の選び方›

スポーツ業界のお金の流れは日本スポーツ業界の8つの課題で、協賛先の信頼性の確かめ方はスポーツインテグリティとはで扱っています。

(参考)選手契約および登録に関する規程 – B.LEAGUE

(参考)人材と競争政策に関する検討会 報告書(平成30年2月15日) – 公正取引委員会 競争政策研究センター

(参考)スポーツ事業分野における移籍制限ルールに関する独占禁止法上の考え方について – 公正取引委員会

(参考)島田慎二チェアマン インタビュー 前編(2025年8月23日) – B.LEAGUE公式サイト掲載

Q. サラリーキャップはスポンサー企業にどんな影響がありますか?

協賛金が増えても、クラブが選手に回せる額は上限で止まります。増えた分はアリーナや集客、育成に向かうため、協賛の成果を順位だけでなく来場者数や地域での露出で測る設計が合うようになります。また、Bリーグの規程では、スポンサーが選手個人に渡した利益も、契約の実態がない場合などはクラブの人件費に数えられます。

まとめ|サラリーキャップはクラブのお金の使い道を変える

サラリーキャップは、選手の報酬の話であると同時に、クラブの経営と企業との関係を変える制度です。要点を振り返ります。

  • サラリーキャップは、チームが選手に払う報酬の総額に上限を設ける制度
  • Bリーグは2026-27シーズンから、B.PREMIERで上限8億円・下限5億円(消費税を除く)
  • スター選手条項は、最高額の1人を1億5,000万円として数える例外
  • 上限を超えると、降格、勝ち数15の減、5倍の制裁金が同時に科される
  • スポンサーから選手への支払いも、実態がなければクラブの人件費に数えられる

協賛や出資をしているクラブがあれば、2026年11月に公表される総額と、クラブが人件費以外の何に投資しているかを確かめてみてください。協賛の見返りを何で測るかを、クラブと話し合う材料になります。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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