ファントークンとは|スポーツクラブの国内事例と企業の確認点

ファントークンとは|スポーツクラブの国内事例と企業の確認点 スポーツマーケティング

協賛しているクラブから「ファントークンを始めるので、保有者向けの特典を一緒に出しませんか」と声をかけられた。ファンとの距離が近づきそうだとは思うが、仮想通貨の一種なのか、自社の名前を出して問題ないのかがわからない。

ファントークンとは、スポーツクラブなどが発行するデジタルの「応援の証」で、持っている人は投票や限定イベントなどに参加できます。日本のクラブの多くは、暗号資産(仮想通貨)ではない形で発行していますが、買ったあとに値段が動く点はどれも同じです。この記事では、言葉の意味、日本にある2つの型と法律上の扱い、国内のクラブの事例、海外で問題になった点、企業の関わり方と確かめることを、公的な資料と各社の公式の発表をもとに整理します。購入を勧めるものではありません。法律上の判断は、弁護士などの専門家に確かめてください。

ファントークンとはスポーツクラブが発行するデジタルの応援の証

経済産業省とスポーツ庁が2022年12月にまとめた「スポーツDXレポート」は、クラブなどがブロックチェーンの技術を使って発行するトークンを「スポーツトークン」と呼んでいます。持っている人にはノベルティやイベントへの参加の権利などが提供され、「いわゆるファンクラブに近い性質を持つ」と説明しています。ファントークンは、このうち海外のサービスで使われている呼び名が広まったものです。

似た仕組みとの違いを、表にまとめました。

仕組み お金を払うと得られるもの 買ったあとの売買
ファンクラブ 会員の特典。年会費を払う できない
クラウドファンディング(購入型) あらかじめ決まった返礼品 できない
NFT 1点ごとに区別されるデジタルの品(動画や画像など) できるものが多い
ファントークン 投票や抽選に参加する権利。同じものが数多く発行される できるものが多く、値段が動く

ファントークンと似た仕組みの違い(出典:経済産業省・スポーツ庁「スポーツDXレポート」と各社の公式の説明をもとにHuman Soarが整理)

いちばんの違いは、買ったあとに売り買いができ、値段が上がり下がりする点です。湘南ベルマーレは発行のときに、トークンは「サポーター(購入者)の売買に応じて、価格が上下します」と説明しています。返礼品を受け取って終わるクラウドファンディングとは、ここが違います。クラウドファンディングの使い方は、下の記事で扱っています。

あわせて読みたいスポーツのクラウドファンディング活用法2026|成功事例と企業協賛との組み合わせ戦略›

(参考)スポーツのDX化推進(スポーツDXレポート 2022年12月の掲載ページ) – スポーツ庁

(参考)「スポーツDXレポート」を取りまとめました – 経済産業省

Q. ファントークンとは何ですか?

スポーツクラブなどが発行するデジタルの「応援の証」です。持っている人は、イベントの名前やグッズのデザインを決める投票、限定イベントの抽選などに参加できます。経済産業省とスポーツ庁の「スポーツDXレポート」は、ファンクラブに近い性質を持つと説明しています。ファンクラブとの違いは、買ったあとに売り買いができ、値段が動くものが多い点です。

ファントークンは仮想通貨とは限らない|日本には2つの型がある

日本のファントークンの2つの型を示す重なりの図。暗号資産の型は登録業者を通じて売買し、サービスの中だけで使う型は外に持ち出せない。どちらの型も買ったあとに値段が動く

日本で発行されているファントークンは、暗号資産(仮想通貨)にあたる型と、あたらないと事業者が説明している型の2つに分かれます。国内のクラブの事例の多くは、後者です。

暗号資産として登録業者が扱う型

暗号資産は、資金決済法の第2条第14項で定義されています。不特定の人に対して代金の支払いに使え、不特定の人と売り買いができる財産的な価値、というのが要点です。暗号資産の売買を仕事として行うには、国への登録が必要です。金融庁の一覧によると、登録を受けた業者は2026年9月1日の時点で27社あります。

この型の国内の例が、FC琉球の「FCRコイン」です。海外のクラブのファントークンを買うために使う「チリーズ(CHZ)」も、国内の登録業者が扱っています。金融庁は一覧に、掲載された暗号資産の価値を保証したり推奨したりするものではない、と明記しています。

(参考)暗号資産交換業者登録一覧(令和8年9月1日現在) – 金融庁

(参考)第221回国会における金融庁関連法律案 – 金融庁

発行するサービスの中だけで使う型

もう1つは、発行するサービスやアプリの中だけで使う型です。多くのクラブが利用する「FiNANCiE」の利用規約は、コミュニティトークンは「株式を含む有価証券、前払式支払手段、法定通貨または暗号資産(仮想通貨)いずれでもありません」と書いています。売り買いは同じサービスの中の市場に限られ、外には持ち出せません。

ここで注意したいのは、「暗号資産ではない」というのは事業者の説明であって、国がそう認定したわけではない点です。金融庁のガイドラインは、暗号資産にあたるかどうかは「最終的には個別具体的に判断する」としています。スポーツDXレポートも、スポーツトークンが暗号資産にあたるかどうかは、NFTと比べて「より慎重な検討が求められる」と書いています。

制度も動いています。2026年7月15日に、暗号資産の規制を資金決済法から金融商品取引法に移す改正法が成立しました。移す部分は、この記事を書いた2026年10月10日の時点ではまだ施行されていません。金融審議会の報告は、暗号資産にあたらないトークンを一律に金融の規制の対象にすることには慎重な検討が要るとしており、サービスの中だけで使う型は今回の規制の外に置かれています。

(参考)FiNANCiE 利用規約 – 株式会社フィナンシェ

(参考)事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)16 暗号資産交換業者関係 – 金融庁

(参考)暗号資産制度に関するワーキング・グループ 報告(2025年12月10日) – 金融審議会

(参考)資金決済に関する法律 – e-Gov法令検索

Q. ファントークンは仮想通貨ですか?

仮想通貨(暗号資産)にあたるものと、あたらないと事業者が説明しているものの2つの型があります。日本のクラブの多くは、発行するサービスの中だけで使う後者の型です。ただし「暗号資産ではない」は事業者の説明で、金融庁のガイドラインは、あたるかどうかを最終的には個別に判断するとしています。どちらの型も、買ったあとに値段が動く点は同じです。

日本のスポーツクラブのファントークン事例一覧

クラブや発行する会社の公式の発表で確かめられた、国内の事例を並べます。

クラブ 始めた時期 仕組み 公表されている内容
湘南ベルマーレ(Jリーグ) 2021年1月 FiNANCiE 初回の販売で約500万円以上を集めた。投票の企画や特典の抽選
仙台89ERS(Bリーグ) 2021年3月 FiNANCiE 売上は県内のバスケットボールの振興の企画に使う。投票や観戦の抽選
アビスパ福岡(Jリーグ) 2021年8月 FiNANCiE 初回の販売で約950万円。イベントの名前や記念Tシャツを投票で決めた
FC琉球(Jリーグ) 2022年 暗号資産「FCRコイン」 登録業者を通じて販売。払込みの総額は約10億3,950万円(手数料と消費税を含む)
サガン鳥栖(Jリーグ) 2022年9月 スポンサーのジャスミーが提供 初年度1万円。投票の権利など。2025年9月に1口500円の形に改めた
東京ヴェルディ(Jリーグ) 2026年4月に発表 SBI Chilizと基本合意 発行ではなく、導入に向けた共同の検討

国内のスポーツクラブのファントークンの事例(出典:各クラブ、フィナンシェ、ジャスミー、GMOコインの公式の発表。2026年10月10日に確認)

サッカーのクラブが目立ちますが、仕組みは1つではありません。湘南ベルマーレとアビスパ福岡はFiNANCiEを使い、FC琉球は暗号資産として発行しました。サガン鳥栖のファントークンは、ユニフォームのスポンサーであるジャスミーが提供し、運営しています。同じ「ファントークン」という名前でも、法律上の扱いも、運営する会社も違います。

集まった金額は、公表されている範囲では1回あたり数百万円から1,000万円ほどで、暗号資産として販売したFC琉球だけ桁が違います。売上の使い道は、クラブの運営費、特定の試合のイベントの費用、選手の獲得や育成などと発表されています。

投票で決められる内容は、イベントの名前、記念グッズのデザインなどです。クラブの経営に関わる事項を決める仕組みではありません。Jリーグのクラブと協賛の全体像は、サッカーのスポンサー一覧でまとめています。

(参考)クラブトークン販売に関するお知らせ – 湘南ベルマーレ

(参考)仙台89ERSのクラブトークン発行に関する発表 – フィナンシェ

(参考)アビスパ福岡 トークンに関するお知らせ – アビスパ福岡

(参考)FCRコインの販売結果 – GMOコイン

(参考)サガン鳥栖ファントークン 販売開始日変更のお知らせ – サガン鳥栖

(参考)サガン鳥栖公認応援ファントークンに関する発表(2025年9月19日) – ジャスミー

(参考)SBI Chilizとのファントークン導入に向けた共同検討に関する基本合意のお知らせ – 東京ヴェルディ

Q. Jリーグのクラブはファントークンを発行していますか?

発行しているクラブがあります。公式の発表で確かめられる例では、湘南ベルマーレが2021年1月、アビスパ福岡が2021年8月にFiNANCiEで発行しました。FC琉球は2022年に暗号資産として発行し、サガン鳥栖は2022年9月からスポンサーのジャスミーが提供しています。東京ヴェルディは2026年4月に、導入に向けた共同の検討を発表しました。

海外のファントークン|アーセナルの広告は英国で違反とされた

海外では、Socios.comというサービスが、欧州のサッカークラブなどのファントークンを扱っています。こちらは暗号資産の型で、取引所で売り買いされます。日本との関わりでは、2024年5月にSBIグループと運営元のChilizが基本合意を発表しています。

企業が知っておきたいのは、広告で問題になった例です。英国の広告基準機構(ASA)は、アーセナルが2021年8月に出したファントークンの広告について、違反と判断しました。現在公表されている裁定は2022年8月10日付で、2021年12月の最初の裁定を差し替えたものです。

違反とされた点は3つあります。投資のリスクを示していなかったこと、暗号資産であることや別の暗号資産を買う必要があることを明示していなかったこと、経験の少ない消費者に対して暗号資産への投資を軽く扱ったことです。クラブは、投資の手段としてではなくファンが参加する機会として知らせたと主張しましたが、認められませんでした。

英国の下院の委員会も、2023年10月の報告書で、ファントークンへの投機はファンに金銭的な損害を、クラブに評判の損害を与えるおそれがあると指摘しました。ファンとの関わりの度合いを測るときに、ファントークンの利用を含めないよう勧告しています。英国の制度の話なので日本にそのまま当てはまるわけではありませんが、広告に名前を出す企業にとっては参考になります。

(参考)ASA Ruling on Arsenal Football Club plc(2022年8月10日) – 英国広告基準機構

(参考)NFTs and the Blockchain: the risks to sport and culture(2023年10月11日) – 英国下院 文化・メディア・スポーツ委員会

企業がファントークンに関わる4つの方法

クラブのファントークンを中心に、企業の4つの関わり方を示した関係図。スポンサーが自ら提供して運営する、発行会社がパートナーになる、保有者と共同の企画をする、保有者に特典を出す

企業の関わり方は、公式の発表で確かめられる範囲で4つあります。

スポンサーが自ら提供して運営する

サガン鳥栖のファントークンは、ユニフォームのスポンサーであるジャスミーが提供しています。2025年9月の発表では、同社が「スポンサーとして運営する」アプリの中で1口500円で買え、収益はチームへの支援やファンを増やすために使うとしています。自社の技術を、協賛の中身そのものにした例です。

(参考)サガン鳥栖公認応援ファントークンに関する発表(2025年9月19日) – ジャスミー

発行するサービスの会社がクラブのパートナーになる

FiNANCiEを運営するフィナンシェは、2021年に湘南ベルマーレとパートナーの契約を結び、そのうえでクラブのトークンを発行しました。仕組みを提供する会社が、同時に協賛する立場にもなる形です。

(参考)クラブトークン販売に関するお知らせ – 湘南ベルマーレ

保有者のコミュニティと共同の企画をする

三井住友銀行は2025年3月、アビスパ福岡と「Web3コミュニティ共創パートナー」の契約を結びました。同年6月には、トークンを持つ人たちと一緒に、育成組織の選手を奨学金などで支える企画を始めています。

(参考)アビスパ福岡との「Web3コミュニティ共創パートナー」契約の締結について – 三井住友銀行

保有者に向けた特典を提供する

自社の商品やサービスを、保有者への特典として出す方法です。冒頭のような誘いは、この形にあたります。費用を抑えて始めやすい一方で、自社の名前がトークンの販売の案内に並ぶことになります。協賛の考え方はスポーツマーケティングとはで整理しています。

(参考)アビスパDAO アカデミー共育プログラムの開始について – 三井住友銀行

企業がファントークンに関わる前に確かめる7つのこと

共同の企画や特典の提供を持ちかけられたときに、確かめておきたい点を7つにまとめました。

トークンの法律上の扱い

暗号資産にあたるのか、あたらないのか。あたらないとしたら、だれがそう説明しているのかを確かめます。規約や商品の説明を読み、判断がつかなければ弁護士に相談します。

値動きと損失の表示

FiNANCiEの規約は、値動きによって損失が出るおそれがあること、運営会社は買い取りや払い戻しの義務を負わないことを書いています。自社の名前が入る案内に、この説明が目立つ形で入っているかを見ます。アーセナルの例では、注意書きがあっても不十分とされました。

(参考)FiNANCiE 利用規約 – 株式会社フィナンシェ

値上がりを期待させる表現

「値上がりが期待できる」といった表現が、自社の名前とともに出ないかを確かめます。応援のための仕組みとして案内するのか、もうけの手段として案内するのかで、受け取られ方が大きく変わります。

収益の分配をうたっていないか

スポーツDXレポートは、保有者に興行の収益の分配などがありうる場合、有価証券にあたり金融商品取引法の規制の対象になると指摘しています。移籍金や売上の一部を保有者に戻すような企画は、最初に法律上の整理を確かめる必要があります。

投票で決められる範囲

国内の事例では、投票の対象はイベントの名前やグッズのデザインなどです。「クラブの運営に参加できる」といった表現が、実際の中身より大きくなっていないかを見ます。

未成年の扱い

FiNANCiEの規約は、未成年が有料のサービスを使うには保護者などの同意が必要だとしています。子どものファンが多いクラブでは、とくに確かめておきたい点です。

(参考)FiNANCiE 利用規約 – 株式会社フィナンシェ

特典と運営が続くか

規約には、特典が設定のとおりに提供されない場合があること、発行者がやめるとトークンが消えることが書かれています。サガン鳥栖のように、数年で仕組みが改められた例もあります。企画が終わったときに、自社が出した特典をどう扱うかを先に決めておきます。協賛の契約で確かめる点は、下の記事で整理しています。

あわせて読みたいスポーツスポンサー契約とは|企業が確かめる6項目と印紙・法律›

協賛先の信頼性を公開情報で確かめる方法は、スポーツインテグリティとはで扱っています。

(参考)スポーツのDX化推進(スポーツDXレポート 2022年12月の掲載ページ) – スポーツ庁

(参考)ASA Ruling on Arsenal Football Club plc(2022年8月10日) – 英国広告基準機構

ファントークンの買い方は型で違う|公的な注意点

買い方は、2つの型で違います。暗号資産の型は、金融庁に登録された業者を通じて売り買いします。サービスの中だけで使う型は、発行するサービスや公式のアプリの中で買い、外には持ち出せません。

国民生活センターには、暗号資産に関する相談が2025年度に8,132件寄せられました。2024年度は7,261件です。これは暗号資産の全体についての件数で、ファントークンだけの数ではありません。同センターや金融庁は、登録を受けた業者かどうかを確かめること、内容やリスクを理解できなければ契約しないことを呼びかけています。

社員やファンに案内する立場になる場合は、どちらの型なのか、どこで買うものなのかを、最初に正確に伝えることが大切です。

(参考)暗号資産(仮想通貨) – 国民生活センター

(参考)暗号資産交換業者登録一覧(令和8年9月1日現在) – 金融庁

Q. ファントークンはどこで買えますか?

型によって違います。暗号資産にあたるものは、金融庁に登録された暗号資産交換業者を通じて売り買いします。日本のクラブに多い、暗号資産ではないと説明されている型は、発行するサービスや公式のアプリの中で買い、外には持ち出せません。どちらも値段が動き、損失が出ることがあります。登録業者かどうかは金融庁の一覧で確かめられます。

まとめ|ファントークンは型と表示を確かめてから関わる

ファントークンは、ファンとの関係を深める手段になる一方で、お金と値動きが関わる仕組みです。要点を振り返ります。

  • ファントークンは、クラブが発行するデジタルの応援の証で、投票や限定イベントに参加できる
  • 日本には、暗号資産の型と、サービスの中だけで使う型がある。国内のクラブの多くは後者
  • 「暗号資産ではない」は事業者の説明で、国は個別に判断するとしている
  • 国内では湘南ベルマーレ、アビスパ福岡、サガン鳥栖、FC琉球などが発行している
  • 英国ではアーセナルの広告が、リスクの表示が不十分として違反とされた

クラブから共同の企画を持ちかけられたら、まず規約と販売の案内を取り寄せて、どちらの型か、損失の説明がどう書かれているかを読んでみてください。そのうえで、自社の名前がどこに出るのかを確かめると、判断の材料がそろいます。

元気な社員が、いちばんのマーケティングになる。

社員のウェルビーイングを高め、
その元気が自然と外に伝わる仕組みをつくります。

インナーマーケティングを知る →

About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

コメント

タイトルとURLをコピーしました