部活動の地域移行のデメリット|81%の自治体が平日の指導者不足

部活動の地域移行のデメリット|81%の自治体が平日の指導者不足 スポーツ教育

部活動の地域移行のデメリットは、保護者には参加費と送迎の負担、受け皿のクラブには指導者の確保と収支の負担が生じることです。一方でメリットは、生徒が学校にない種目や専門的な指導を選べること、教員の土日の勤務が減ることにあります。どちらが大きく出るかは地域の条件で変わり、平日も指導できる人材や通える活動場所があるかどうかで、進めやすさがはっきり分かれます。

中学校の休日の部活動を地域のクラブに任せる動きは、2026年度から全国で本格化しています。ここでは、生徒・保護者、教員、地域の受け皿という3つの立場ごとにメリットとデメリットを同じ数だけ並べ、それぞれを国や自治体の調査の数字で確かめます。最後に、どんな地域・学校なら進めやすいかを判断表にまとめました。

部活動の地域移行は2025年に地域展開へ|呼び方の違いと進み具合

部活動の地域移行から地域展開への呼び方の変化を、活動の場と支え方の違いで比べた図

「地域移行」と「地域展開」は同じ改革を指す言葉です。2025年5月16日、文部科学省が設けた「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」の最終とりまとめで、呼び方が「地域展開」に改められました。

それまでの「地域移行」は、生徒の活動の場を学校部活動から地域クラブ活動へ、実施主体を学校から地域へ転換することを指していました。最終とりまとめは、学校と地域を二項対立で捉えるのではなく、学校の施設も含めた地域の資源を使って地域全体で支え、新しい価値を生むという意図を込めて名前を変えたと説明しています。なお、学校部活動のまま部活動指導員を置いたり、複数校で合同部活動を行ったりする取り組みは「地域連携」と呼び、地域展開とは区別されます。

進み具合は休日と平日で大きく違います。2026年のスポーツ庁・文化庁の調査では、全国の部活動のうち地域展開した割合は、休日が2025年度実績で17.5%、2027年度の予定で38.2%です。平日は2025年度実績で4.7%にとどまります。国は2026年度から2031年度までを「改革実行期間」とし、その間に休日の学校部活動を原則すべて地域展開することを目指しています。スケジュールや補助金の仕組みは部活動の地域展開とはで詳しく解説しています。

(参考)地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議 最終とりまとめ(令和7年5月) – スポーツ庁・文化庁

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(令和8年度調査) – スポーツ庁・文化庁

Q. 部活動の地域移行と地域展開の違いは何ですか?

同じ改革の呼び方が変わったもので、2025年5月の実行会議の最終とりまとめで「地域移行」が「地域展開」に改められました。学校と地域を対立させず、地域全体で支えて新しい価値を生むという考え方を名前に表したものです。学校部活動のまま部活動指導員を置いたり合同部活動を行ったりする取り組みは、別に「地域連携」と呼びます。

部活動の地域移行のメリットとデメリットを立場別に比べる

地域移行のメリットとデメリットは、誰の立場から見るかで中身が変わります。生徒には選択肢が増える一方で、保護者には費用と送迎が加わります。教員の負担が軽くなる分、その仕事の一部は地域の受け皿が引き受けることになります。立場ごとに2つずつ並べると次のとおりです。

立場 メリット デメリット 根拠になる数字
生徒・保護者 学校にない種目や専門的な指導を選べる/学校の垣根を越えて活動を続けられる 参加費と保険料が家計の負担になる/活動場所までの送迎が増える 大野市の調査で地域クラブの活動が「充実している」計96%、送迎に「負担を感じる」計62%
教員 土日の部活動の時間が減る/指導したい人は兼職兼業で続けられる 兼職兼業は勤務時間の管理が複雑になる/平日の部活動は学校に残りやすい 中学校教諭の土日の部活動は1日1時間29分(2022年度)。平日の地域展開は4.7%(2025年度)
地域・受け皿(クラブ・企業) 学校施設を使い会員を広げられる/認定を受けると公的支援を受けやすい 指導者の確保と待遇が難しい/収支・安全・責任の負担を負う 「平日に対応可能な指導者が少ない」81.2%、「十分な待遇が用意できない」59.7%の自治体

出典:大野市教育委員会、文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)」、スポーツ庁・文化庁「部活動改革の取組状況に関する調査」をもとに Human Soar 作成

表を横に読むと、ある立場のメリットが別の立場のデメリットと裏表になっていることが分かります。教員の土日の勤務が減ることと、受け皿が指導者を探さなければならないことは、同じ変化の両面です。そのため、どこか1つの立場の不満だけを見て「地域移行はうまくいかない」と判断すると、ほかの立場が得ているものを見落とします。現場で起きている課題の全体像は部活動の地域移行はなぜ進まないのかにまとめています。

部活動の地域移行は、子どもの発育や非認知能力の育ち方、学校体育の制度改革とも結びついたテーマです。教育の側から見た全体像はスポーツ教育とはで整理しています。

生徒・保護者のメリットとデメリット|充実度96%の一方で送迎負担は62%

生徒にとってのメリットは選べる活動が増えることで、保護者にとってのデメリットは費用と送迎です。費用は地域によって幅があるため、まず公表されている市の設定を並べます。各市の資料から、参加費・保険料・経済的に困窮する世帯への支援を集めると次のようになります。

自治体 参加費 保険料 経済的に困窮する世帯への支援
千葉市 月額1,000円(2026年9月〜2027年3月のモデル事業) 月会費を保険料と指導者謝金の一部に充てる 生活保護受給世帯・就学援助受給世帯は月会費を免除
新潟県三条市 1回500円を目安とする月額(月4回で2,000円) 年額800円を初月に別途徴収 就学援助受給世帯は月1,000円を上限に減免
奈良県生駒市 月1,500円(種目により月2,000円) 年1,000円を別途負担 教育扶助・就学援助を受ける生徒に保険料や会費等を助成
静岡県富士市 認定地域クラブごとに設定 補助の対象(年800円まで) 就学援助世帯等に参加費を年36,000円(月3,000円)まで補助

出典:千葉市「部活動地域展開に関する令和8年度の取組み」、三条市「部活動の地域展開」説明会資料(令和8年2月)、生駒市「生駒市新たな地域クラブ活動」、富士市「富士市認定地域クラブ活動参加支援補助金交付要綱」(令和8年6月)をもとに Human Soar 作成

メリット|学校にない種目や専門的な指導を選べる

地域クラブでは、生徒が学校の部の顔ぶれに縛られずに活動を選べます。福井県大野市が2024年度に行ったアンケートでは、地域クラブに加入している生徒177人のうち、活動が「とても充実している」と答えた生徒が56%、「まあまあ充実している」が40%で、合わせて96%でした。加入した理由は「技術を向上させたかったから」が142人ともっとも多く、専門的な指導への期待がうかがえます。

奈良県生駒市は2026年4月から、土日の部活動に代わる地域クラブを始め、これまで学校になかった種目にも参加できるようにしています。野球や卓球を生駒市スポーツ協会、水泳を民間のスポーツクラブが受け持つなど、学校単位では用意しにくかった選択肢が生まれています。

(参考)休日部活動の地域移行に関する生徒・保護者アンケート結果(令和6年度) – 大野市教育委員会

(参考)生駒市新たな地域クラブ活動(上中学校)2026 – 生駒市

メリット|学校の垣根を越えて活動を続けられる

部員が足りずにチームが組めない部が増えていることも、地域クラブが生まれる背景です。最終とりまとめは、15歳未満の子どもの数が43年連続で減っている(2024年4月1日現在)ことを挙げ、学校単位での部活動の維持が難しくなっていると指摘しています。地域クラブなら複数校の生徒が集まるので、少人数の学校の生徒も団体競技を続けられます。

最終とりまとめは、地域クラブ活動が生む新しい価値として、複数の種目を体験すること、学校の垣根を越えた仲間とのつながり、幅広い世代との交流、学校段階にとらわれない「引退のない継続的な活動」を挙げています。学年や学校段階で区切られやすい部活動と違い、進学しても同じクラブで続けやすい点は、生徒の側から見た大きな違いです。

(参考)地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議 最終とりまとめ(令和7年5月) – スポーツ庁・文化庁

デメリット|参加費と保険料が家計の負担になる

地域クラブでは、参加費と保険料を保護者が負担するのが基本です。文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」では、公立中学校の部活動などにかかる教科外活動費は月額換算で2,276円でした。これに対し、2025年の国の調査では、運動部の地域クラブの参加費(休日・月額)を答えた360件のうち、月3,000円未満が87%を占めています。国は参加者の保険料を参加費とは別に自己負担してもらうことを想定しています。

金額そのものより大きいのは、家庭の経済力で参加できるかどうかが分かれるおそれです。片岡栄美氏の論文(年報体育社会学、2025年)は、東京都の母親調査のデータから子どものスポーツ参加が家庭の経済力に強く影響されることを示し、地域移行で保護者の負担が増えると格差が広がるおそれがあると指摘しています。2025年12月のガイドラインは、家庭の経済格差が生徒の体験格差につながらないよう、経済的に困窮する世帯の生徒への支援を確実に行うよう求めています。上の表のとおり、千葉市は月会費の免除、三条市は月1,000円を上限とする減免、生駒市と富士市は参加費や保険料の助成・補助を用意しています。入会を決める前に、住んでいる市町村の減免制度を確かめておくと安心です。

(参考)部活動の地域展開・地域クラブ活動の推進等に関する調査研究協力者会議(第6回)資料2 費用負担の在り方等について – スポーツ庁

(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月) – スポーツ庁・文化庁

(参考)部活動地域展開に関する令和8年度の取組み – 千葉市

(参考)「部活動の地域展開」説明会資料(令和8年2月8日) – 三条市

(参考)富士市認定地域クラブ活動参加支援補助金交付要綱 – 富士市

(参考)生駒市新たな地域クラブ活動 – 生駒市

(参考)学校外教育空間における子どものスポーツと格差:経済資本・文化資本・地域要因を中心に(片岡栄美、年報体育社会学 6巻) – J-STAGE

デメリット|活動場所までの送迎が増える

学校の外や他校で活動する日が増えると、移動の手間が保護者にかかります。大野市のアンケートで、子どもが地域クラブに加入している保護者に送迎について聞くと(108件の回答)、「負担を感じる」が19%、「少し負担を感じる」が43%で、合わせて62%が負担を感じていました。費用については「適当である」が49%、「高いと思う」が21%でした。

移動の負担は自治体側でも課題として意識されています。2025年の国の調査で、地域クラブ活動の課題を複数回答で尋ねた質問では、「移動手段の確保」が回答全体の6.7%を占めました。千葉市は自校以外で活動する場合、公共交通機関・自転車・保護者の送迎のいずれでも通えるとし、自転車の場合は損害賠償責任保険への加入とヘルメットの着用を求めています。

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(令和7年度調査) – スポーツ庁・文化庁

Q. 部活動の地域移行で保護者の費用はどのくらいかかりますか?

地域によって違いますが、休日の地域クラブの参加費は月3,000円未満が多数です。2025年の国の調査では、運動部の地域クラブの参加費(休日・月額)を答えた360件のうち87%が月3,000円未満でした。これとは別に保険料がかかる地域があり、経済的に困窮する世帯には参加費を免除・補助する市もあります。

教員のメリットとデメリット|土日の部活動は1日1時間29分

教員にとってのメリットは土日の勤務が減ることで、デメリットは指導を続ける場合の手続きの複雑さと、平日の部活動が学校に残りやすいことです。2つずつ、調査の数字で確かめます。

メリット|土日の勤務時間が減る

文部科学省の「教員勤務実態調査(令和4年度)」の確定値では、中学校教諭の土日1日あたりの在校等時間は2時間18分で、そのうち「部活動・クラブ活動」が1時間29分を占めていました。2016年度の2時間9分からは減っていますが、計算すると土日の在校等時間の約64%が部活動に使われています。休日の部活動を地域クラブに任せれば、この時間がもっとも大きく減ることになります。

同じ調査の分析では、担当する部活動の活動日数が多い教諭ほど在校等時間が長く、平日に部活動へ使う時間が長いほど授業準備などの教科等指導や生徒指導の時間が短いことも示されています。部活動の負担が減れば、本来の授業の準備に時間を回しやすくなります。

(参考)教員勤務実態調査(令和4年度)集計【確定値】(令和6年4月) – 文部科学省

メリット|指導したい教員は兼職兼業で続けられる

部活動の指導にやりがいを感じている教員は、地域クラブの指導者として関わり続けられます。2025年12月のガイドラインは、教員が希望に応じて地域クラブの指導者になれるよう、兼職兼業の許可手続きを円滑にするよう求め、市区町村が認定した地域クラブ活動については学校運営に支障がない限り積極的に許可すべきだとしています。

実際に、2025年の国の調査で地域クラブ活動の指導者の属性を尋ねたところ、「教職員(兼職兼業)」と答えた自治体が55.5%で、選択肢の中でもっとも多くなりました。学校の仕事とは切り分けて、地域クラブの指導者として指導を続ける形です。

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(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月) – スポーツ庁・文化庁

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(令和7年度調査) – スポーツ庁・文化庁

デメリット|兼職兼業は勤務時間の管理が複雑になる

兼職兼業で指導する教員は、学校の教員としての身分と、地域クラブの指導者としての身分を持つことになります。ガイドラインは、服務を監督する教育委員会と、指導者としての勤務を管理する運営団体が連携し、勤務時間を全体として管理するよう求めています。管理する主体が2つになるため、学校だけで指導していたときより手続きは増えます。

ガイドラインは、指導を望んでいない教員が参加を強いられないよう本人の意思を確かめることや、勤務校の業務への影響、教員の健康への配慮も確認するよう求めています。地域クラブの指導を引き受ける前に、勤務校の管理職と土日の稼働の上限を決めておくと、働き過ぎを防ぎやすくなります。

(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月) – スポーツ庁・文化庁

デメリット|平日の部活動は学校に残りやすい

地域展開は休日から進んでおり、平日の部活動は学校に残るケースが多いのが現状です。2026年の国の調査では、平日に地域展開した部活動の割合は2025年度実績で4.7%と、休日の17.5%を大きく下回っています。最終とりまとめも、平日は指導者の確保をはじめ課題が多く、休日と比べて進みが緩やかだとしています。

平日の部活動が学校に残ると、休日は地域クラブ、平日は学校という二本立てになり、指導方針や生徒の様子を学校と地域クラブで共有する手間が生まれます。2025年の国の調査で地域クラブ活動の課題を尋ねた質問では、「学校と地域クラブ活動の運営団体・実施主体との役割分担や責任の所在」が回答全体の7.0%を占めました。

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(令和8年度調査) – スポーツ庁・文化庁

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(令和7年度調査) – スポーツ庁・文化庁

(参考)地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議 最終とりまとめ(令和7年5月) – スポーツ庁・文化庁

Q. 地域移行のあとも教員は部活動を指導できますか?

希望すれば、兼職兼業の許可を得て地域クラブの指導者になれます。2025年12月のガイドラインは、認定を受けた地域クラブ活動については、学校運営に支障がない限り積極的に許可するよう教育委員会に求めています。一方で、指導を望まない教員に参加を強いることがないよう確認することも求めています。

地域・受け皿のメリットとデメリット|平日の指導者不足は81.2%の自治体の課題

部活動の地域移行で地域クラブを支える担い手(生徒・保護者、市区町村、学校、企業、競技団体等)と、それぞれが地域クラブへ渡すものを示した図

受け皿となる地域クラブは、1つの主体だけでは成り立ちません。生徒・保護者が払う参加費や保険料、市区町村の認定と財政支援、学校の施設と生徒の情報の共有、企業の寄附や指導者、競技団体やスポーツ少年団などの指導者を組み合わせて運営されます。受け皿にとってのメリットは活動の場と支援が得られることで、デメリットは指導者と収支・責任の負担を負うことです。

メリット|学校施設を使い会員を広げられる

地域クラブは中学校の施設を使えることが多く、新たに場所を用意しなくても活動を始めやすい環境があります。2025年の国の調査では、地域クラブ活動の主な活動場所として「中学校の施設」を使っている自治体が94.2%にのぼりました。学校施設の優先利用や使用料減免の規程を整えた自治体も、それぞれ約4割あります。

受け皿の団体にとっては、中学生という新しい会員を迎える機会にもなります。全国の剣道の町道場の代表者171人を対象にした北村尚浩氏・林凜香氏の調査(生涯スポーツ学研究、2026年早期公開)では、規模の小さい道場ほど、生徒の確保を組織の存続にかかわる課題と捉えていました。

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(令和7年度調査) – スポーツ庁・文化庁

(参考)中学校運動部活動の地域移行における町道場の受け入れ条件:剣道道場を事例とした運営課題の検討(北村尚浩・林凜香、生涯スポーツ学研究) – J-STAGE

メリット|認定を受けると公的支援と企業の協力を得やすい

2025年12月のガイドラインは、国の要件に沿って市区町村が地域クラブ活動を認定する仕組みを示しました。認定を受けると、市区町村による生徒・保護者への情報提供、財政支援、学校施設の優先利用や使用料減免、学校備品の活用、教員の兼職兼業の積極的な許可といった効果が想定されています。

企業にとっても関わり方の選択肢が広がっています。千葉市は2026年度のモデル事業で、区ごとに株式会社オークスベストフィットネス、リーフラス株式会社、JR東日本スポーツ株式会社を地域クラブの運営事業者としています。2025年の国の調査では、地域クラブの運営団体に「民間事業者」がいると答えた自治体が11.2%でした。寄附の例では、長崎県長与町が地域スポーツ活動を支えるため、町内企業からの寄附30万円と、町外企業からの企業版ふるさと納税210万円を受けています。

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(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月) – スポーツ庁・文化庁

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(令和7年度調査) – スポーツ庁・文化庁

(参考)部活動地域展開に関する令和8年度の取組み – 千葉市

(参考)部活動の地域展開・地域クラブ活動の推進等に関する調査研究協力者会議(第6回)資料2 費用負担の在り方等について – スポーツ庁

デメリット|指導者の確保と待遇が難しい

受け皿にとって最大の壁は指導者です。2025年の国の調査で指導者の確保に関する課題を尋ねると、「平日に対応可能な指導者が少ない」が81.2%、「域内の指導者の情報把握」が67.2%、「指導者に対する十分な待遇が用意できない」が59.7%、「休日に対応可能な指導者が少ない」が51.0%の自治体から挙がりました。

平日の夕方は、会社員の指導者が仕事を抜けにくい時間帯です。休日だけなら集まる指導者も、平日まで広げると足りなくなるため、平日の地域展開が進まない理由の1つになっています。指導者を探すときは、自治体の人材バンクや競技団体に登録を相談すると、域内の候補者を把握しやすくなります。

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(令和7年度調査) – スポーツ庁・文化庁

デメリット|収支と安全の責任を負う

地域クラブは、参加費を低く抑えながら指導者に謝金を払い、運営を続けなければなりません。2025年の国の調査で地域クラブ活動の課題を複数回答で尋ねた質問では、「持続可能な収支構造の構築」が回答全体の16.2%を占めてもっとも多く、「指導者の量の確保」15.9%、「保護者・生徒の普及啓発・理解(参加費用負担への理解含む)」14.1%が続きました。

安全と責任の負担も受け皿にかかります。ガイドラインの認定要件には、可能な限り低廉な参加費の設定、日本版DBSの活用を含む不適切な行為の防止、登録された指導者による指導、安全確保の体制などが並びます。運営団体の賠償責任保険や、生徒と指導者のけがを補償する保険への加入も求められています。保険の種類は企業向けスポーツ保険10社比較で比べています。

前述の町道場の調査でも、指導者が担う文化的な使命と、安全面や法的責任といった実務上のリスクとの間で板挟みになる状況が報告されています。受け入れの条件としてもっとも大きかったのは「学校との連携と情報共有」で、個人の善意に頼らず、学校と地域の団体の役割分担を決めておく仕組みが必要だと結論づけています。

(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月) – スポーツ庁・文化庁

(参考)中学校運動部活動の地域移行における町道場の受け入れ条件:剣道道場を事例とした運営課題の検討(北村尚浩・林凜香、生涯スポーツ学研究) – J-STAGE

Q. 部活動の地域移行のメリット・デメリットを扱った論文はありますか?

あります。J-STAGEで公開されている片岡栄美氏の論文(年報体育社会学、2025年)は、子どものスポーツ参加が家庭の経済力に強く影響されることを示し、地域移行で保護者の負担が増えると格差が広がるおそれを指摘しています。北村尚浩氏・林凜香氏の論文(生涯スポーツ学研究、2026年早期公開)は、剣道の町道場が中学生を受け入れる条件として、学校との連携と情報共有がもっとも重要な要因だったと報告しています。

部活動の地域移行を進めやすい地域・学校の判断表

ここまでのメリットとデメリットは、地域の条件によって大きさが変わります。受け皿の団体、指導者、移動、学校施設、費用、推進体制、地理条件の観点で、進めやすい地域と進めにくい地域を並べると次のようになります。

観点 進めやすい地域・学校 進めにくい地域・学校 根拠になる数字・方針
受け皿になる団体 スポーツ少年団・競技団体・総合型地域スポーツクラブ・民間事業者が域内にある 中学生を受け入れられる団体が少ない 実施主体の上位はスポーツ少年団33.8%、競技団体33.2%、総合型31.9%(2025年度)
指導者 平日も指導できる人材がいる。人材バンクで把握している 休日だけ、または特定の人に頼っている 「平日に対応可能な指導者が少ない」81.2%、「域内の指導者の情報把握」67.2%
移動 活動場所まで生徒が歩く・自転車・公共交通で通える 保護者の送迎が前提になる 大野市の保護者の62%が送迎に負担を感じる(2024年度)
学校施設 優先利用や使用料減免の規程がある 使うたびに一般の団体と同じ手続きが要る 優先利用・使用料減免の規程はそれぞれ約4割の自治体が整備(2025年度)
費用 参加費を月3,000円未満に抑える公的負担と困窮世帯の支援がある 費用をすべて参加費でまかなう 参加費の実態・保護者が妥当と思う水準とも月3,000円未満が8割以上
推進体制 協議会・推進計画・コーディネーターがそろう 担当部署が決まっていない 協議会の設置は約73%、推進計画の策定は約43%、市区町村のコーディネーター配置は約31%
地理条件 生徒数がまとまる市街地 中山間地域や離島 国は特殊な事情がある地域では当面、部活動指導員の配置等も考えられるとしている

出典:スポーツ庁・文化庁「部活動改革の取組状況に関する調査(令和7年度調査)」、大野市教育委員会、同会議(第6回)資料2、実行会議 最終とりまとめをもとに Human Soar 作成

「進めにくい」欄に当てはまる項目が多い地域では、休日の地域展開を急ぐより、まず部活動指導員の配置や近隣自治体との広域連携で指導者を確保するのが現実的です。最終とりまとめも、中山間地域や離島など特殊な事情がある場合は、当面、部活動指導員の配置などを適切に行うことも考えられるとしています。また、指導者が足りない地域では、対面の指導とデジタル技術を使った遠隔指導を組み合わせることも示されています。

企業の側から見ると、この表は協力先を選ぶ手がかりになります。指導者や移動の欄が「進めにくい」地域ほど、社員の指導者としての派遣や施設の貸し出しが求められやすく、費用の欄が課題の地域では寄附や企業版ふるさと納税が役立ちます。千葉市のように運営そのものを民間事業者に委ねる自治体もあり、関わり方は協賛から運営受託まで幅があります。

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(参考)地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議 最終とりまとめ(令和7年5月) – スポーツ庁・文化庁

部活動の地域移行のデメリットとメリットのまとめ

部活動の地域移行は、ある立場の負担が軽くなる分、別の立場に新しい負担が生まれる改革です。立場ごとの損得を並べ、地域の条件と照らし合わせることで、どこから手を付けるべきかが見えてきます。数値の出典は本文の各セクションに記載しています。

  • 2025年5月に「地域移行」は「地域展開」へ呼び方が変わり、休日の地域展開は2025年度実績で17.5%
  • 生徒は種目や指導を選べるようになる一方、保護者には参加費・保険料と送迎の負担が加わる
  • 教員は土日の部活動の時間が減り、指導を続けたい人は兼職兼業で関われるが、勤務管理は複雑になる
  • 受け皿は学校施設と公的支援を得られるが、平日の指導者不足と収支・安全の責任が重い
  • 受け皿の団体・指導者・移動・費用・推進体制がそろう地域ほど進めやすく、企業は不足している欄から関わり方を選べる

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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