部活動の地域展開とは|スポーツで企業が関わる5つの方法と補助金

部活動の地域展開とは|スポーツで企業が関わる5つの方法と補助金 スポーツ教育

地元の中学校で、土日の部活動が「地域クラブ」に変わったと聞いた。指導する人が足りず、市が企業にも協力を呼びかけているらしい。社員に競技の経験者はいるし、会社のグラウンドも週末は空いている。ただ、何をどこに申し出ればよいのかがわからない。

部活動の地域展開とは、中学校の部活動を、学校以外の団体が運営する「地域クラブ活動」へ広げていく国の改革です。休日は2031年度までに、原則としてすべての部活動で実現する目標が示されています。国のガイドラインは、企業に資金の支援、指導者の派遣、施設の提供、運営の担い手などの役割を期待しています。この記事では、言葉の意味、進め方の時期、進み具合、認定の仕組み、企業の関わり方と補助金を、文部科学省とスポーツ庁の資料で整理します。内容は2026年10月10日に確認したものです。

部活動の地域展開とは学校の部活動を地域クラブ活動へ広げる改革

部活動の地域展開と地域連携の違いを線で結んだ図。地域展開は地域クラブ活動へ広げ、市区町村や民間の事業者などが担う。地域連携は学校の部活動のまま、外部の指導員や合同の活動で進める

国が2025年12月に定めたガイドラインは、地域展開を「生徒のスポーツ・文化芸術活動を学校部活動から地域クラブ活動に展開すること」と定義しています。これとは別に、学校の部活動のまま、外部の指導員を置いたり、ほかの学校と合同で活動したりすることを「地域連携」と呼んでいます。

以前は「地域移行」と呼ばれていました。ガイドラインは、学校の中で運営されてきた活動を広く地域に開き、地域全体で支えるという考え方をより的確に表すために、名前を「地域展開」に改めたと説明しています。取り組みの中身が変わったわけではなく、学校と地域を対立するものとして捉えない、という意図を込めた呼び方です。

主な対象は、公立の中学校です。高校については、期限や目標は置かれていません。中学校での進み具合を踏まえて、今後検討するとされています。

地域クラブ活動を担うのは、市区町村、総合型の地域スポーツクラブ、競技団体、民間の事業者などです。これまでの経緯と現場の悩みは、部活動の地域移行はなぜ進まないのかで扱っています。

(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月) – 文部科学省

(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(掲載ページ) – スポーツ庁

Q. 部活動の地域展開と地域移行の違いは何ですか?

指している取り組みは同じで、呼び方が変わりました。国は2025年12月のガイドラインで、学校の中で運営されてきた活動を地域に開き、地域全体で支えるという考え方を表すために、従来の「地域移行」を「地域展開」に改めたと説明しています。学校の部活動に外部の指導員を置くなどの取り組みは「地域連携」と呼ばれます。

部活動の地域展開のロードマップ|休日は2031年度までに原則すべて

ガイドラインは、改革を進める期間を次のように区切っています。

期間 名前 内容
2023〜2025年度 改革推進期間 休日を中心に、各地で取り組みを始めた期間
2026〜2028年度 改革実行期間(前期) まだ始めていない自治体も、休日の取り組みに着手する
2029〜2031年度 改革実行期間(後期) 前期の終わりの中間評価を踏まえて進める

部活動の地域展開の期間(出典:文部科学省「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」令和7年12月。内容欄はHuman Soarが要約)

休日については、改革実行期間のうちに、原則としてすべての学校の部活動で地域展開を実現することを目指すとされています。期限は2031年度の終わりです。山あいの地域や離島など、難しい事情がある場合は、当面は外部の指導員を置く形で進めます。

平日については、いつまでに実現するという目標は示されていません。前期のあいだに国が課題と対応策を検証し、中間評価の段階で改めて方針を決めるとされています。企業が関わる機会は、まず休日から広がっていきます。

(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月) – 文部科学省

部活動の地域展開はなぜ必要か|運動部の中学生は10年で24%減った

背景にあるのは、子どもの数の減少です。スポーツ庁の資料によると、運動部に入っている中学生は、2015年度の約228万人から、2025年度には約174万人になりました。10年で23.7%の減少です。1つの学校ではチームを組めず、ほかの学校と合同で活動するチームは、748から3,232に増えています。

中学生の年代の人口は、2023年の約322万人から、2033年には約259万人に減ると推計されています。学校ごとに部活動を続けることが、難しくなっているわけです。

進み具合を見ると、休日に地域展開をしている部活動は、2025年度の実績で17.5%でした。取り組んでいる市区町村は55.5%です。自治体の半数あまりが始めていますが、部活動の数で見るとまだ2割に届いていません。国の調査では、2027年度に約38%まで増える予定です。

(参考)部活動を取り巻く現状(改革の必要性) – スポーツ庁

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(令和8年度) – スポーツ庁・文化庁

部活動の地域展開のガイドラインは認定制度で活動の質を確かめる

2025年12月のガイドラインは、新しく「認定制度」を設けました。国が示す要件にもとづいて、市区町村が地域クラブ活動を認定する仕組みです。競技力の向上を主な目的とするチームやスクールと区別し、質を保つためのものです。

認定を受けるには、活動時間、参加費、指導の体制、安全の確保などの要件を満たす必要があります。主な内容は次のとおりです。

  • 休養日を週2日以上とり、活動は週11時間程度までにする
  • 選抜をせず、希望する生徒を広く受け入れる
  • 参加費は、運営に必要な範囲で、できるだけ安くする
  • 市区町村の研修を受けて登録された指導者が、原則として複数で関わる
  • 参加者と指導者が、けがや賠償に備える保険に入る
  • 営利を主な目的とせずに運営する

参加費について、国は休日に週1日ほど活動する場合のイメージを、月1,000円から3,000円程度と示しています。地域の事情で、これより安い場合も高い場合もありうるとしています。

株式会社も、活動の担い手になれます。その場合、市区町村は収支の計画を確かめ、営利が主な目的でないことを確認します。認定を受けた活動は、自治体からの財政の支援や、学校の施設を優先して使えるといった扱いを受けられます。指導者の制度は部活動指導員とはで整理しています。

(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月) – 文部科学省

(参考)令和8年度当初予算(案)及び令和7年度補正予算 補足資料 – スポーツ庁・文化庁

Q. 部活動の地域展開のガイドラインはどんな内容ですか?

文部科学省が2025年12月に定めた「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」です。2026年度から2031年度を改革実行期間とし、休日は原則すべての部活動で地域展開を目指すとしています。市区町村が地域クラブ活動を認定する制度を設け、休養日は週2日以上、活動は週11時間程度までといった要件を示しています。

企業が部活動の地域展開に関わる5つの方法

ガイドラインは、行政だけで課題を解決するのは難しく、民間企業の協力が欠かせないと書いています。企業に期待する役割として挙げられているのは、次の5つです。

地域クラブ活動の運営や実施を担う

自治体から委託を受けて、クラブの運営や指導を担う方法です。千葉市は、事業者を公募するとき、1つの事業者が最低1種目を担当すればよいという条件にしました。小さな規模でも参加できるようにして、地元の企業が入りやすくしたと説明されています。沖縄県の渡嘉敷村では、旅行会社が指導者や活動場所の調整、保護者との連絡までを担っています。

(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月) – 文部科学省

(参考)令和6年度 地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業 事例集(令和7年8月) – スポーツ庁

(参考)令和5年度 運動部活動の地域移行等に向けた実証事業 事例集(令和6年8月) – スポーツ庁

社員を指導者や運営の人材として出す

競技の経験がある社員を、指導者として出す方法です。福岡県では、大学と企業が組んで、アスリートの社員を地域クラブ活動に派遣しています。国の調査では、自治体が挙げる指導者確保の課題で最も多かったのは「平日に対応できる指導者が少ない」で、81.2%でした。短時間の勤務や副業を認める社内の制度があれば、平日の指導にも協力できます。

施設や用具を提供する

会社の体育館やグラウンドを貸したり、用具を提供したりする方法です。富山県は、指導者の派遣や施設の使用料の支援に協力する企業を登録する制度を設けています。いまは活動場所の9割以上が中学校の施設なので、企業の施設が加わると、選べる場所が広がります。

寄附や協賛で資金を支える

資金で支える方法です。長崎県の長与町は、企業と連携の協定を結び、保険会社から企業版ふるさと納税として200万円の寄附を受けました。北海道の安平町では、売り上げの一部が運営団体に寄附される自動販売機を、飲料メーカーなどと連携して学校に置いています。熊本県の玉東町のサッカークラブは、練習着に企業の名前を入れて協賛を集めました。寄附の仕組みは企業版ふるさと納税でスポーツ支援で紹介しています。

あわせて読みたい高校サッカーのスポンサー一覧|企業の協賛の金額と決まり›

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(運動部・確定値) – スポーツ庁

運営のノウハウやシステムを提供する

出欠の確認や会費の集金、連絡といった運営の事務を、アプリなどで支える方法です。事例集には、運営を支えるアプリを使って、1か月あたりの事務の時間を2時間50分減らした例が載っています。本業の技術やサービスを、そのまま役立てられる関わり方です。

部活動の地域展開の補助金は自治体に交付される

部活動の地域展開の補助金の流れを示す関係図。国の補助金は都道府県と市区町村に交付され、企業には自治体からの委託費、認定を受けたクラブには活動費の支援として届く

国の補助金を受け取るのは、都道府県や市区町村です。企業が国に直接申請できるメニューは、確認した資料の範囲では見当たりませんでした。企業には、自治体からの委託費や、認定を受けたクラブへの活動費の支援という形でお金が流れます。

2026年度の予算は、スポーツと文化芸術を合わせて57億円です。休日の地域クラブ活動の指導者への謝金や事務局の人件費、コーディネーターの配置などが対象で、国、都道府県、市区町村が3分の1ずつ負担します。経済的に苦しい家庭の生徒の参加費を支える仕組みもあり、生徒1人あたり年2万4,800円が上限です。

平日も含めた取り組みを進めるための実証事業は、国が全額を出します。重点の課題として「民間活力の活用等による持続可能な運営モデルの構築」が挙げられています。2027年度に向けた概算要求では、運動部の分だけで約120億円が要求されました。2026年度の約50億円から大きく増えていますが、要求の段階の金額です。

(参考)部活動の地域展開等の全国的な実施(令和8年度当初予算) – スポーツ庁・文化庁

(参考)令和8年度当初予算(案)及び令和7年度補正予算 補足資料 – スポーツ庁・文化庁

(参考)令和9年度概算要求主要事項 – スポーツ庁

Q. 部活動の地域展開に補助金はありますか?

国の補助金がありますが、交付先は都道府県と市区町村です。2026年度の予算はスポーツと文化芸術を合わせて57億円で、休日の地域クラブ活動の指導者への謝金などを、国・都道府県・市区町村が3分の1ずつ負担します。企業が国に直接申請できるメニューは確認できず、企業には自治体からの委託費などの形でお金が流れます。

部活動の地域展開の課題と企業が最初に相談する窓口

国の調査で、自治体が挙げた課題の上位は、続けられる収支の仕組みづくり、指導者の数の確保、保護者や生徒の理解でした。これまでの部活動より参加費が上がることに、保護者から意見が出た例も、事例集に載っています。

企業が運営を受託する場合の注意点もあります。茨城県の神栖市は、運営を民間の事業者に委託していることについて、行政の中に運営のノウハウが残らない点を課題に挙げ、地域の団体が主体になる形への移行も検討するとしています。受託するときは、地域の団体や指導者を育てることまで含めて提案すると、長く続く関係になります。

最初の相談先は、市区町村の教育委員会です。国の調査では、関係者が集まる協議会を置いている自治体は約73%でした。協議会に企業が加わることも、ガイドラインは勧めています。都道府県に企業の登録制度や人材バンクがあれば、そこも入口になります。

ガイドラインは、企業にとっての利点として、地域への貢献、地域での信頼の向上、自社の認知の拡大、採用や定着へのよい影響、社員の活躍の場づくりを挙げています。学校教育とスポーツの関係はスポーツ教育とはでも扱っています。

あわせて読みたいスポーツ基本計画とは|第4期の内容と企業が備える3つのこと›

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(運動部・確定値) – スポーツ庁

(参考)令和6年度 地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業 事例集(令和7年8月) – スポーツ庁

(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月) – 文部科学省

(参考)部活動改革ポータルサイト – スポーツ庁

まとめ|部活動の地域展開は休日から企業の出番が広がる

部活動の地域展開は、学校だけの話ではなくなっています。要点を振り返ります。

  • 部活動の地域展開は、中学校の部活動を地域クラブ活動へ広げる改革で、以前は地域移行と呼ばれていた
  • 休日は2031年度までに原則すべての部活動で実現する目標。平日の時期は示されていない
  • 休日に地域展開をしている部活動は2025年度で17.5%、取り組む市区町村は55.5%
  • 企業に期待される役割は、運営、人材、施設、資金、ノウハウの5つ
  • 国の補助金は自治体に交付され、企業には委託費などの形で流れる

まずは、自社のある市区町村の教育委員会のサイトで、部活動の改革の方針や協議会の情報を確かめてみてください。自社が出せるものが5つのうちどれかを決めてから相談すると、話が具体的に進みます。

元気な社員が、いちばんのマーケティングになる。

社員のウェルビーイングを高め、
その元気が自然と外に伝わる仕組みをつくります。

インナーマーケティングを知る →

About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

コメント

タイトルとURLをコピーしました