合宿最終日の朝、ミーティングルームに集まった選手たちの中に、明らかに息が上がりやすくなっている一人がいる。走行距離も練習強度も他のメンバーと変わらないのに、終盤だけ呼吸が乱れて集中力が切れる。原因を探っていくと、脚や心肺機能ではなく「呼吸筋」という見落とされがちな筋肉の疲労に行き着くことがあります。
結論から言うと、呼吸トレーニングは「意識呼吸で整える」「呼吸筋そのものを鍛える」「数値で呼吸機能を管理する」という3段階の目的に分けて製品を選ぶと失敗しません。本記事では、この3段階の分類軸をもとに、公式サイトで機能を確認できた国内外10製品を比較しながら紹介します。
- 呼吸トレーニングアプリ・デバイスは目的の階層で選ぶとうまくいく
- 呼吸筋トレーニングが持久力パフォーマンスに効くという研究知見
- 健康経営の視点から呼吸トレーニングを導入する意味
- 呼吸トレーニングアプリ・デバイス10選|比較表と特徴
- MIR Smart One|アプリ連動の個人用スパイロメーター
- NuvoAir Air Next|在宅利用向けFDA承認スパイロメーター
- Wing|携帯型スパイロメーターで信号灯表示
- Vitalograph Lung Monitor|臨床グレードの肺機能モニター
- Airofit|アプリ連動のレジスタンス調整式トレーナー
- POWERbreathe|吸気筋を鍛える固定負荷式トレーナー
- Breathwrk|50種類以上の呼吸法エクササイズ
- Prana Breath|Pranayama由来の呼吸パターンを多数収録
- iBreathe|サブスクなしのシンプルな呼吸ガイド
- Breathing Zone|医師推奨とされるコヒーレント呼吸ガイド
- 導入前に確認したいチェックポイントと始め方
- まとめ|呼吸トレーニングは目的を決めてから製品を選ぶ
呼吸トレーニングアプリ・デバイスは目的の階層で選ぶとうまくいく
呼吸トレーニング関連の製品は「リラックスのための呼吸法アプリ」から「医療グレードの肺機能測定器」まで幅の広いジャンルです。用途を混同したまま製品を選ぶと、ストレス緩和がしたいだけなのに高価な医療機器を検討してしまったり、逆に本格的な呼吸筋強化をしたいのに呼吸法アプリだけで満足してしまったりというミスマッチが起こります。

土台にあたるのは、深呼吸や呼吸法のリズムを整える「意識呼吸」の習慣化です。ここは道具を使わずアプリだけで完結する製品が中心になります。中段は、呼吸筋そのものに機械的な負荷をかけて鍛える「呼吸筋トレーニング」で、専用デバイスが必要になります。頂点にあたるのが、FEV1(1秒量)やPEF(ピークフロー)といった数値を記録し、呼吸機能を継続的に管理する「医療計測」の領域です。自分がどの段階を求めているかを先に決めてから製品を見ると、比較検討にかかる時間を大きく短縮できます。
Q. 呼吸トレーニングは運動経験がなくても始められますか?
はい、始められます。土台の「意識呼吸」の段階はアプリの音声ガイドに合わせて座ったまま呼吸するだけなので、運動習慣の有無を問いません。呼吸筋トレーニングデバイスも多くが低負荷から設定できるため、まずは土台から試すのがおすすめです。
呼吸筋トレーニングが持久力パフォーマンスに効くという研究知見
呼吸筋トレーニングの効果は、学術的にも「呼吸筋機能は向上するが持久性運動パフォーマンスまでは向上しない」という報告と、「持久性運動パフォーマンスそのものが向上した」という報告の両方が存在し、一致した結論には至っていません。この整理は、理学療法科学学会が発行する学術誌『理学療法科学』に掲載された総説論文で示されています。
同論文では、呼吸筋トレーニングによって心拍数や血中乳酸濃度(筋肉疲労の指標)が低下し、運動中の呼吸を楽に感じさせるメカニズムが報告されている一方、持久系競技選手を対象にした研究では効果の有無が分かれることも指摘されています。つまり「誰にでも確実に記録が伸びる」とまでは言い切れないものの、呼吸の負担感を下げる効果は複数の研究で確認されているということです。この特性を理解したうえで導入すれば、過度な期待による失望を避けられます。
(参考)呼吸筋トレーニングによる持久性能力の向上の可能性(理学療法科学 24巻5号・2009年) – 理学療法科学学会
Q. 呼吸筋トレーニングの効果はどのくらいで実感できますか?
4〜6週間の継続で「呼吸が楽になった」と感じやすいという報告が複数あります。ただし記録やタイムの向上まで確実に得られるとは限らないため、まずは呼吸のしやすさという体感の変化を目安にするのが現実的です。
健康経営の視点から呼吸トレーニングを導入する意味
呼吸は自律神経と直結しているため、企業の健康経営やメンタルヘルスケアの文脈でも呼吸法アプリが取り入れられ始めています。デスクワーク中心の従業員は浅い胸式呼吸になりやすく、慢性的な肩こりや集中力低下につながるケースがあります。休憩時間に数分の呼吸エクササイズを挟む運用であれば、大掛かりな設備投資をせずに導入できる点も企業にとっての利点です。
スポーツ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)という大きな枠組みで見ると、呼吸トレーニングアプリはウェアラブル・センサー計測と並ぶ「個人の身体データを可視化する技術」の一領域に位置づけられます。スポーツDXの全体像を押さえておくと、こうした個別カテゴリの製品がどのフェーズの取り組みに当たるかを社内で説明しやすくなります。
Q. 健康経営の施策として呼吸トレーニングを導入するメリットは何ですか?
初期投資が小さく、休憩時間内で完結できる点が最大のメリットです。アプリ単体なら1人あたりの導入コストがほぼかからず、ストレスチェックやメンタルヘルス研修と組み合わせやすいため、既存の健康経営施策に上乗せしやすい取り組みといえます。
呼吸トレーニングアプリ・デバイス10選|比較表と特徴
ここからは、製品自体の公式サイトで機能や対応環境を確認できた国内外10製品を紹介します。選定条件は「製品公式サイト・公式ストアページで機能を確認できること」「医療計測型・呼吸筋トレーニング型・リラックス習慣型のいずれかで実際に利用されていること」の2点です。海外製品に偏らないよう、国内代理店を持つ製品も1つ含めています。
| 製品名 | 提供元 | 分類 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| MIR Smart One | MIR(イタリア) | 頂点|医療計測 | アプリ連動の個人用スパイロメーター |
| NuvoAir Air Next | NuvoAir Medical(米国) | 頂点|医療計測 | 在宅利用向けFDA承認スパイロメーター |
| Wing | Sparo Health(米国) | 頂点|医療計測 | 携帯型スパイロメーターで信号灯表示 |
| Vitalograph Lung Monitor | Vitalograph(英国) | 頂点|医療計測 | 臨床グレードの肺機能モニター |
| Airofit | Airofit A/S(デンマーク) | 中段|呼吸筋トレーニング | アプリ連動のレジスタンス調整式トレーナー |
| POWERbreathe | POWERbreathe(英国/国内代理店ENTry Japan) | 中段|呼吸筋トレーニング | 吸気筋を鍛える固定負荷式トレーナー |
| Breathwrk | Breathwrk Inc.(米国/Peloton傘下) | 土台|意識呼吸 | 50種類以上の呼吸法エクササイズ |
| Prana Breath | 個人開発者(Google Play配信) | 土台|意識呼吸 | Pranayama由来の呼吸パターンを多数収録 |
| iBreathe | Jade Lizard Software LLC(米国) | 土台|意識呼吸 | サブスクなしのシンプルな呼吸ガイド |
| Breathing Zone | 個人開発者(Google Play/App Store配信) | 土台|意識呼吸 | 医師推奨とされるコヒーレント呼吸ガイド |
各製品の公式サイト・公式ストアページで確認できる情報をもとにHuman Soarが作成(2026年9月時点)。
MIR Smart One|アプリ連動の個人用スパイロメーター
MIR Smart Oneは、イタリアの医療機器メーカーMIRが開発したポケットサイズのスパイロメーターです。Bluetoothでスマートフォンと接続し、PEF(ピークフロー)とFEV1(1秒量)を測定できます。ATS/ERS 2005の基準に準拠しており、5歳から93歳まで対応するとされています。喘息やCOPDの自己管理を目的に、医療現場でも紹介されている製品です。
NuvoAir Air Next|在宅利用向けFDA承認スパイロメーター
NuvoAir Air Nextは、米国NuvoAir Medicalが提供する在宅スパイロメーターです。2024年1月に米国FDAから在宅での本格的なスパイロメトリー実施に関する510(k)クリアランスを取得しており、COPDや喘息、ALSなどの慢性疾患を持つ利用者が通院せずに肺機能データを医療チームへ共有できる点が特徴です。臨床試験用途としてもATS 2019準拠の測定に対応しています。
(参考)NuvoAir’s Air Next Spirometer is FDA-approved for in-home use – NuvoAir Medical
Wing|携帯型スパイロメーターで信号灯表示
Wingは米国Sparo Health(現Wellinks)が開発した、ポケットサイズのアプリ連動型スパイロメーターです。呼気の速度と量を測定し、結果を青・黄・赤の信号灯で表示するため、専門知識がなくても状態の変化に気づきやすい設計になっています。米国では一般消費者向けの店頭販売が可能なOTC(一般用医療機器)としてFDAの認可を受けています。
Vitalograph Lung Monitor|臨床グレードの肺機能モニター
Vitalograph Lung Monitorは、英国Vitalographが手がける肺機能モニターです。FEV1・FEV6とその比率を測定し、内部メモリに最大200回分のセッションを記録できます。自宅・職場・臨床試験のいずれでも使える設計で、COPDや嚢胞性線維症、肺移植後の患者のモニタリング用途で紹介されています。Bluetooth対応の上位機種と組み合わせればアプリへのデータ連携も可能です。
(参考)Lung Monitor – Vitalograph
Airofit|アプリ連動のレジスタンス調整式トレーナー
Airofitはデンマークのメーカーが手がける呼吸筋トレーナーで、専用アプリと連動して吸気・呼気の抵抗(レジスタンス)を自動調整できるのが特徴です。公式サイトによると全世界18万人以上のユーザーが利用しており、8週間で吸気筋力が最大50%向上したという臨床研究の引用も掲載されています。サイクリングやランニング、水泳など競技別のトレーニングプログラムが用意されている点も、他の呼吸筋トレーナーとの違いです。
POWERbreathe|吸気筋を鍛える固定負荷式トレーナー
POWERbreatheは英国生まれの呼吸筋トレーニング器具で、日本国内ではENTry Japanが正規販売元となり日本語の公式サイトを運営しています。横隔膜や肋間筋といった呼吸に関わる筋肉を、1日30回×2セット程度の使用で鍛える設計です。アスリートだけでなく、声楽家や吹奏楽奏者、俳優など「息を使う職業」の利用者にも支持されている点が特徴で、国内で日本語サポートを受けられる数少ない呼吸筋トレーナーです。
(参考)パワーブリーズ – POWERbreathe Japan(ENTry Japan)
Breathwrk|50種類以上の呼吸法エクササイズ
Breathwrkは米国発の呼吸法アプリで、2023年にフィットネス大手Pelotonの傘下に入りました。落ち着き・集中・持久力向上・入眠の4つの目的別に50種類以上の呼吸エクササイズを収録し、インストラクターによるガイド付きクラスも提供しています。公式サイトによると累計200万人以上が利用しており、Peloton会員向けには無料開放される運用になっています。
(参考)Breathwrk – Breathwrk Inc.
Prana Breath|Pranayama由来の呼吸パターンを多数収録
Prana Breathは、ヨガの呼吸法(Pranayama)やスーフィー、チベット由来の呼吸パターンを取り入れたアプリです。Google Playでの配信ページによると200万件以上のインストール実績があり、あらかじめ用意された8種類の呼吸パターンに加えて、自分で吸う・吐く・保持する秒数をカスタマイズできる点が特徴です。
(参考)Prana Breath: Calm & Meditate – Google Play
iBreathe|サブスクなしのシンプルな呼吸ガイド
iBreatheは、米国の個人開発チームJade Lizard Software LLCが提供するiOS向け呼吸ガイドアプリです。サブスクリプションや広告を排除し、買い切りに近いシンプルな価格設計になっている点が特徴です。4-7-8呼吸法やボックスブリージングといった定番パターンに加え、自分で呼吸パターンを作成できる機能やApple Health連携も備えています。
(参考)iBreathe – Relax and Breathe – Jade Lizard Software LLC
Breathing Zone|医師推奨とされるコヒーレント呼吸ガイド
Breathing Zoneは、1日5分程度の「コヒーレント呼吸(ゆっくりとした一定リズムの呼吸)」を促すシンプルな呼吸ガイドアプリです。開発者によるとメディアで医師が推奨した実績があるとされ、視覚的な呼吸ガイドと音声プロンプトを選べる設計になっています。機能を絞り込んだ分、初めて呼吸法アプリに触れる人でも迷わず使える点が特徴です。
(参考)Breathing Zone: Breathwork – App Store
Q. 呼吸トレーニングアプリと医療用スパイロメーターの違いは何ですか?
呼吸トレーニングアプリは呼吸のリズムや呼吸筋への負荷を扱うのに対し、医療用スパイロメーターはFEV1やPEFといった肺機能そのものの数値を測定する機器です。トレーニング目的ならアプリやデバイス、疾患の経過観察が目的ならスパイロメーターというように、目的で選ぶ機器が変わります。
導入前に確認したいチェックポイントと始め方
製品を決める前に、安全面と継続のしやすさを確認しておくと導入後のミスマッチを防げます。特に呼吸器疾患がある場合や、負荷の強いデバイスを初めて使う場合は注意が必要です。

特に「デバイス系は数値の記録・エクスポート機能の有無を確認する」という点は見落とされがちです。個人で使う分には不要でも、健康経営の一環としてチームで導入する場合は、記録をまとめて確認できるかどうかが運用のしやすさを大きく左右します。まずは活動量計の比較記事やストレス・メンタルを測るアプリの比較記事もあわせて確認し、既に導入しているウェアラブル端末との重複がないかも見ておくとよいでしょう。
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まとめ|呼吸トレーニングは目的を決めてから製品を選ぶ
- 呼吸トレーニング関連の製品は「意識呼吸」「呼吸筋トレーニング」「医療計測」の3階層で整理すると選びやすい
- 呼吸筋トレーニングの効果には研究間でばらつきがあり、記録向上より呼吸の負担感軽減を目安にするのが現実的
- 健康経営の施策としては、初期投資が小さい意識呼吸のアプリから始めやすい
- 10製品はいずれも公式サイト・公式ストアページで機能を確認できるものに限定して紹介した
- チームで導入する場合は、数値の記録・エクスポート機能の有無を事前に確認しておく
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