メンタルを測る4製品比較|アスリート視点のコンディション管理

ストレス・メンタルを測る製品比較のアイキャッチ スポーツ心理学

月曜の朝、会議室に集まったメンバーの表情が心なしか重い。発言は普段より少なく、資料をめくる手も心なしか遅い。上司は「最近ちょっと元気ないかも」と感じつつも、本人に聞けば「大丈夫です」としか返ってこない——そんな場面に覚えのある人事担当者は少なくないはずです。

年に1度のアンケート形式のストレスチェックだけでは、こうした日々の小さな変化まではなかなか拾いきれません。この記事では、企業がストレスやメンタルの状態を「測る」ために実際に使われている4つの製品・サービスを、各社の公式サイトに掲載されている情報にもとづいて比較します。アスリートのコンディション管理でも「体調の変化を早期に数値でとらえる」という発想は共通しており、ビジネスパーソンの健康管理にも応用できる視点として紹介します。

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なぜ「年1回のストレスチェック」だけでは足りないのか

労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場では年1回のストレスチェックが義務づけられています。ただし、これはあくまで年1回の「点」の調査であり、日々のコンディションの変化を追い続けるものではありません。

厚生労働省が実施した「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.2%、そのうち「ストレスチェックの実施」に取り組んでいる事業所は65.3%にのぼります。一方、個人調査では、現在の仕事や職業生活で強い不安・悩み・ストレスを感じる事柄があると答えた労働者は68.3%と、半数を大きく超える結果が示されています。

また、ストレスチェックを実施した事業所のうち、結果を部署などの集団ごとに分析した事業所は75.4%にのぼり、多くの企業がすでに「チェックして終わり」ではなく、結果を組織改善につなげようとしていることも読み取れます。こうした背景から、年1回のアンケートを補完する形で、日常的にストレスやメンタルの状態を可視化するツールへの関心が高まっています。

あわせて読みたいストレスチェック義務化で何が変わる?50人未満企業の実務対応と導入手順【法改正対応】

(参考)令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況 – 厚生労働省

ストレス・メンタルを測る4製品を比較する

ここでは、企業のストレス・メンタルケアの現場で実際に使われている4つの製品を取り上げます。いずれも公式サイトで機能・特徴を確認できるサービスに絞りました。まずは全体像を表で比較します。

製品名 提供企業・提供元 主な機能・特徴 対応プラットフォーム等
Carely(ケアリィ) 株式会社iCARE 健康診断・ストレスチェック結果の一元管理、産業医紹介、専門職による伴走支援 クラウド(PC・スマホ対応の管理画面)
WELSA(ウェルサ) 運営元(産業保健向け健康管理システム) 57問・80問の職業性ストレス簡易調査票、結果の自動判定、労基署への報告書作成支援 クラウド(Web管理画面)
ラフールサーベイ 株式会社ラフール 短時間で回答できる組織サーベイ、コンディション入力、ウェルビーイングタイプ診断 Web・スマホアプリ
ANBAI(アンバイ) 株式会社DUMSCO スマホカメラで指先を撮影し心拍変動(HRV)を計測、1日60秒のセルフコンディショニング スマホアプリ(管理者向けダッシュボードあり)

各社公式サイトの記載内容にもとづく比較(2026年8月時点)。価格・仕様は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトを確認してください。

Carely(ケアリィ)|健診とストレスチェックを一気通貫で管理

Carelyは株式会社iCAREが提供する健康管理クラウドです。公式サイトによると、健康管理クラウドを軸に、産業医紹介や健診業務支援、各種コンサルティングまでを一気通貫で提供し、法令遵守と健康情報の一元管理、専門職による伴走支援を通じて、企業主体の健康づくり(同社が「カンパニーケア」と呼ぶ考え方)を実現するとしています。

ストレスチェックの実施から結果の管理までをクラウド上で完結できる点が特徴で、健康診断データとあわせて従業員の健康情報を一箇所にまとめたい企業に向いています。

(参考)Carely(ケアリィ) 公式サイト

WELSA(ウェルサ)|ストレスチェックの実施から報告書作成まで自動化

WELSAは産業保健業務をかんたんに行える健康管理システムです。公式サイトの情報によると、ストレスチェックは職業性ストレス簡易調査票57問と新職業性ストレス簡易調査票80問の2種類を用意し、受検結果は自動で判定されるため人による集計は不要としています。

未受検者への受検勧奨通知の送信や、労働基準監督署への報告書作成支援まで対応しており、ストレスチェック結果と健康診断結果を一元管理できる点も特徴です。産業保健担当者の実務負担を減らしたい企業に向いています。

(参考)WELSA(ウェルサ) 公式サイト

ラフールサーベイ|組織のコンディションを定点観測するサーベイ

ラフールサーベイは株式会社ラフールが提供する組織改善サーベイです。公式サイトでは「個人が変われば、組織が変わる」を掲げ、従業員の回答負荷を抑えた設問設計により、19問のショートサーベイと144問のディープサーベイを使い分けて組織の「強みと課題」を見つけられるとしています。

従業員自身がマイページで自分のコンディションを日々入力できる仕組みや、回答結果に応じたセルフケアコンテンツの配信も備えており、ストレスチェックそのものというより、組織のカルチャー・エンゲージメント面まで含めて可視化したい企業に向いています。

(参考)ラフールサーベイ 公式サイト

ANBAI(アンバイ)|スマホカメラで心拍変動を測るセルフケアアプリ

ANBAIは株式会社DUMSCOが提供するセルフコンディショニングアプリです。公式サイトによると、スマートフォンのカメラに指先を60秒かざすだけで、心拍変動(HRV)解析という手法をもとに自律神経の状態を測定し、その日のコンディションを表示する仕組みになっています。ウェアラブル端末などの特別な機器は不要です。

公式サイトでは、年1回のアンケート式ストレスチェックだけでは把握しきれない従業員の状態を、日々の生体データで補うツールと位置づけられています。管理者向けにはダッシュボードも用意されており、歩数・睡眠・自律神経などのデータを全体集計できるとされています。

(参考)ANBAI 公式サイト

4製品を「対象」と「アプローチ」で分類する

4製品は同じ「ストレス・メンタルを測る」領域のサービスですが、誰が使うか(個人か組織か)と、どう測るか(アンケートかセンシングか)で性格が異なります。Human Soarでは、公式サイトの情報をもとに次のように分類しました。

ストレス・メンタルを測る4製品を『個人のセルフケア型』『組織の健康データ管理型』『組織カルチャー・サーベイ型』に分類した図

ANBAIは個人が毎日短時間で使うセルフケア型、CarelyとWELSAは健診・ストレスチェックのデータを一元管理し法令対応を支援する組織の健康データ管理型、ラフールサーベイは組織のカルチャーやエンゲージメントを定点観測するサーベイ型、というのがおおまかな位置づけです。同じ計測領域の記事として、睡眠計測アプリ・デバイスの比較記事もあわせて参考にしてみてください。

アンケートだけでは見えない「隠れストレス」とは

従来のアンケート式ストレスチェックには、本人の自覚や回答時の心理状態に結果が左右されるという構造的な限界があります。ANBAIの公式サイトでは、こうした「本人が自覚していても遠慮して回答しない」ケースや「本人も自覚していない」ケースをまとめて、同社が「隠れストレス負債」と呼ぶ考え方を紹介しています(同社独自の呼称であり、学術的に統一された用語ではない点に留意してください)。

この考え方自体の妥当性は個々の企業が判断すべきものですが、「年1回・自己申告」だけに頼らず、心拍変動などの客観的な生体データも組み合わせて状態を把握しようという発想は、アンケート型のサービスとは異なるアプローチとして押さえておく価値があります。

アンケートのみのストレスチェックと、生体データ計測を組み合わせる場合の違いを比較した図

実際の運用では、どちらか一方だけを使うのではなく、法令で定められたアンケート式のストレスチェックを土台にしつつ、日々のコンディション把握には別のツールを組み合わせる企業も増えています。前述のHRVを使った計測手法は、スポーツの現場でアスリートのコンディション管理に使われてきた技術と近く、下記の記事でも紹介しています。

あわせて読みたい心拍変動(HRV)を測る4製品|アスリートも使う自律神経チェック

導入を検討する際に押さえておきたい3つのポイント

4製品はいずれも「ストレス・メンタルを測る」という目的は共通していますが、実際に導入を検討する際は、次の3つの観点で自社に合うかを整理すると選びやすくなります。

①目的を「法令対応」か「日常のセルフケア」かで整理する

50人以上の事業場での年1回のストレスチェック実施や、労基署への報告書作成が主目的であれば、CarelyやWELSAのように法令対応を前提に設計されたサービスが軸になります。一方で、日々のコンディション管理や従業員の主体的なセルフケアを重視するなら、ANBAIのような個人向けアプリが候補になります。

②対象範囲を個人か組織かで決める

組織全体の傾向を部署ごとに分析し、職場環境の改善につなげたい場合は、集団分析の機能を備えたサービスが適しています。ラフールサーベイのように組織のカルチャー面まで含めて可視化したいのか、健診データも含めて一元管理したいのかによって、選ぶべきサービスの性格は変わります。

③データの粒度|年1回のアンケートか毎日の計測かを確認する

年1回のアンケートで法令要件を満たすことがゴールなのか、日々の変化を追い続けることがゴールなのかによって、必要なデータの粒度は大きく異なります。導入前に「何をどのくらいの頻度で把握したいのか」を整理しておくと、比較検討がスムーズになります。外部委託も含めた選択肢はストレスチェック義務化はいつから|50人未満2028年4月施行で、日々の活動量の計測は活動量計の比較記事でそれぞれ解説しています。

よくある質問

個人でも導入できますか?

製品によります。ANBAIは個人利用も想定したセルフコンディショニングアプリとして案内されていますが、CarelyやWELSA、ラフールサーベイは主に企業・組織単位での導入を前提としたサービスです。個人利用を検討する場合は、各社公式サイトの案内を確認してください。

無料で試せますか?

ANBAIの公式サイトでは、最大5名まで1ヵ月無料で試せるトライアルが案内されています。他の3製品についても、資料請求やデモ体験の窓口が公式サイトに用意されているため、詳細な条件は各社に直接問い合わせることをおすすめします。

どのくらいの費用がかかりますか?

価格は企業規模や契約条件によって変動するため、この記事では具体的な金額の明記を控えます。各社とも公式サイトの問い合わせフォームや資料請求から見積もりを確認できます。掲載している機能・特徴は公式サイト記載時点の情報であり、変更される場合があります。

まとめ

ストレス・メンタルを測る仕組みは、年1回のアンケート式ストレスチェックだけでなく、日々のセルフケアや組織のカルチャー分析まで含めて多様化しています。

  • Carely・WELSAは健診・ストレスチェックデータの一元管理と法令対応を支援する組織向けサービス
  • ラフールサーベイは短時間の設問で組織のコンディションを定点観測するサーベイ型サービス
  • ANBAIはスマホカメラでHRVを計測する個人向けのセルフコンディショニングアプリ
  • 「法令対応か日常把握か」「個人か組織か」「アンケートか生体データか」の3つの軸で自社に合うサービスを選ぶことが重要
  • いずれのサービスも公式サイトで最新の機能・料金を確認したうえで比較検討することをおすすめします

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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