大会中継の華やかさばかりが目立つeスポーツ業界ですが、実際にビジネスとして関わっている企業を分解すると、性格の異なる3つの事業レイヤーが見えてきます。プロチームを運営する会社、大会・イベントを興行する会社、そして専用施設を運営する会社です。結論から言うと、2024年の国内eスポーツ市場規模は前年比9.9%増の約161億円で、2026年には200億円超えが視野に入っています。本記事ではこの3レイヤーを支える主要12社を一覧化し、企業がスポンサーシップ・人材育成・地域活性化の切り口で関わる際に押さえるべき視点まで解説します。
eスポーツ業界の市場規模はどこまで拡大しているか
国内eスポーツ市場は、2020年以降ほぼ毎年二桁近い成長を続けています。一般社団法人日本eスポーツ協会(JESU)が発行する「日本eスポーツ白書2025」によると、2024年の市場規模は前年比9.9%増の推計約161億円でした。市場を構成する内訳では、イベント運営とスポンサー費用がそれぞれ全体の35%以上を占めており、この2つが業界の収益構造の柱になっています。
過去の白書の発表内容をさかのぼると、2023年の市場規模は前年比117%の146.85億円でした。この伸び率から逆算すると、2022年の市場規模はおよそ125億円前後だったと推定できます。3年分の推移を並べてみると、成長ペースそのものは緩やかに落ち着きつつも、着実に拡大を続けていることが分かります。

eスポーツファン数(試合観戦や配信視聴の経験者)は2024年時点でおよそ967万人と推定され、そのうち419万人が競技者人口にあたるとJESUは分析しています。ファン層の拡大は、後述するスポンサー企業や専門施設への追い風にもなっています。
Q. eスポーツ業界の市場規模はどのくらいですか?
一般社団法人日本eスポーツ協会(JESU)の集計によると、2024年の国内eスポーツ市場規模は前年比9.9%増の約161億円です。内訳ではイベント運営とスポンサー費用がそれぞれ全体の35%以上を占めており、2026年には200億円を超えると予測されています。
(参考)データ年鑑「日本eスポーツ白書2025」発売に関するニュースリリース – 一般社団法人日本eスポーツ協会
eスポーツ業界の全体像|3つの事業レイヤーで整理する12社
eスポーツ業界に関わる企業は数多くありますが、事業内容で整理すると「チーム運営」「大会運営・興行」「専門施設運営」の3つに大別できます。ここでは、それぞれのレイヤーを代表する主要12社を一覧表にまとめました。掲載企業は各社の公式サイトで事業内容が確認できる国内企業のうち、チーム運営・大会興行・施設運営のいずれかを主力事業としている企業から選定しています。
| 事業レイヤー | 企業名 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| チーム運営 | 株式会社DetonatioN | 「DetonatioN FocusMe」運営。GameWithが子会社化 |
| チーム運営 | 株式会社Samurai工房 | 「Crazy Raccoon」運営。実店舗のゲーミングスペースも展開 |
| チーム運営 | 株式会社REJECT | 累計賞金獲得額国内トップクラス。伊藤忠商事と資本業務提携 |
| チーム運営 | 株式会社XENOZ | 「SCARZ」運営。J.フロントリテイリングの子会社 |
| チーム運営 | 株式会社QTnet | 「QT DIG∞」運営。九州電力グループの通信会社 |
| チーム運営 | GANYMEDE株式会社 | 「ZETA DIVISION」運営。100名超の選手・クリエイターを管理 |
| 大会・興行 | GLOE株式会社 | 旧ウェルプレイド・ライゼスト。国内初のeスポーツ株として上場 |
| 大会・興行 | 株式会社CyberZ | 国内最大級イベント「RAGE」を統括するサイバーエージェント子会社 |
| 大会・興行 | 株式会社CyberE | 「RAGE」の企画・運営・制作を担うイベント制作専業会社 |
| 専門施設運営 | 株式会社NTTe-Sports | 秋葉原「eXeField Akiba」運営。施設構築コンサルも展開 |
| 専門施設運営 | レッドブル・ジャパン | 中野「Red Bull Gaming Sphere Tokyo」を運営 |
| 専門施設運営 | 株式会社QTnet | 福岡「esports Challenger’s Park」を運営。自社チームの拠点も兼ねる |
eスポーツ業界の主要12社(事業レイヤー別)。各社公式サイトの公開情報をもとにHuman Soarが一覧化
eスポーツ業界を動かす3つの事業モデル|チーム運営・大会興行・専用施設の違い
先ほどの一覧表を、事業構造としてもう一段整理すると、下の図のような3層構造になります。頂点にあるのは「eスポーツ業界」という大きな括りではなく、実務としては独立した3つの事業モデルであり、それぞれ収益源も投資回収の考え方も異なります。チーム運営はスポンサー収入と選手の活躍が資産、大会興行はイベント動員数と配信視聴数が資産、専門施設運営は稼働率と法人利用が資産になります。

興味深いのは、同じ企業が複数のレイヤーを兼ねるケースがある点です。たとえば株式会社QTnetは、プロチーム「QT DIG∞」の運営元であると同時に、そのホームスタジアムでもある「esports Challenger’s Park」の運営会社でもあります。九州電力グループの通信会社が地域活性化の一環としてチームと施設の両方を垂直統合した事例であり、単なるスポンサー協賛にとどまらない関与の仕方として注目に値します。事業のDX化という観点では、こうした業界構造の整理はスポーツDX全体の3階層構造(競技・興行・基盤)とも重なる部分が多く、スポーツDXとは|3階層構造・事例・課題を解説で解説している考え方がそのまま応用できます。
Q. eスポーツ業界にはどんな種類の企業がありますか?
大きく分けて、プロチームを運営する「チーム運営会社」、大会やイベントを企画・興行する「大会運営・興行会社」、eスポーツ専用の施設を運営する「専門施設運営会社」の3種類があります。同じ企業グループがチームと施設を両方手がけるケースも見られます。
eスポーツチームを運営する6社|プロゲーミングチームのビジネスモデル
チーム運営会社は、選手のマネジメントとスポンサー営業を軸に、グッズ販売やイベント出演など周辺事業で収益を積み上げるビジネスモデルが一般的です。近年は異業種の大手企業が資本参加・子会社化する動きが相次いでおり、eスポーツチームが単独のファンビジネスから、大企業のマーケティング資産へと位置づけを変えつつあります。
株式会社DetonatioN|国内最古参のプロチーム運営会社
2015年設立の株式会社DetonatioNは、プロeスポーツチーム「DetonatioN FocusMe」を運営する国内最古参クラスの企業です。選手・ゲーマータレントのマネジメントに加え、eスポーツコンサルティングやイベント企画・運営、クリエイティブ制作まで事業を広げています。KDDIや電通など大手企業との取引実績も多く、主要取引先の顔ぶれからも業界内での信頼度の高さがうかがえます。
株式会社Samurai工房|「Crazy Raccoon」で若年層を掴む
2018年発足の「Crazy Raccoon」を運営する株式会社Samurai工房は、Fortnite・APEX・Valorantなど複数タイトルの選手部門に加え、ストリーマー・クリエイター部門も抱える複合型のチームです。渋谷に実店舗のゲーミングスペースを構え、ファンがオフラインで集まれる場を提供している点も特徴で、YouTubeやX(旧Twitter)のフォロワー数は合算で数百万人規模に達します。
(参考)Crazy Raccoon 公式サイト(運営:株式会社Samurai工房)
株式会社REJECT|賞金獲得額トップクラスと異業種提携
2018年発足のプロeスポーツチーム「REJECT」を運営する株式会社REJECTは、累計賞金獲得額で国内トップクラスの実績を持ちます。ゲーミングギアの企画・販売やVTuberを含む配信者マネジメント、メタバース関連事業まで幅広く展開しており、2024年11月には伊藤忠商事と資本・業務提携を結び、約10億円規模の資金調達を実施しました。異業種の大手商社が出資するという事例は、eスポーツチームが単なるファンビジネスを超えた投資対象になっていることを示しています。
株式会社XENOZ|百貨店グループ傘下で地域密着を強化
プロeスポーツチーム「SCARZ」を運営する株式会社XENOZは、2022年10月にJ.フロントリテイリング(大丸松坂屋百貨店・パルコ等を運営)の子会社となりました。神奈川県川崎市をホームタウンに制定するなど地域密着の姿勢を打ち出しており、チームマネジメントに加え大会・イベント運営、企業・地域活性化コンサルティングも手がけています。小売大手が地域貢献とブランディングを兼ねてeスポーツチームを傘下に収めた事例です。
株式会社QTnet|通信会社が地域創生としてチームを運営
プロeスポーツチーム「QT DIG∞」(旧Sengoku Gaming)を運営するのは、九州電力グループの通信会社である株式会社QTnetです。もともとは2019年設立の株式会社戦国が運営していましたが、2020年にQTnetが資本提携、2026年4月には吸収合併によって株式会社戦国は解散し、チーム運営を含む事業一切がQTnetに継承されました。福岡市を拠点に、eスポーツを活用した地域のデジタル化を掲げている点が特徴です。
(参考)QT DIG∞ 公式サイト(運営:株式会社QTnet)
GANYMEDE株式会社|国内最大規模のマネジメント体制
プロeスポーツチーム「ZETA DIVISION」を運営するGANYMEDE株式会社は、100名を超える選手・クリエイターをマネジメントする国内最大規模の体制を持っています。選手マネジメントに加え、コンテンツ制作、アパレル・グッズ開発、企業とのマーケティング協業まで一気通貫で手がけており、東京大学の研究室との共同研究など、eスポーツを学術領域と接続する取り組みも進めています。
Q. eスポーツチームはどうやって収益を得ていますか?
スポンサー契約による協賛金収入が中心で、大会賞金、ゲーミングギアや配信者マネジメントなどの周辺事業、グッズ販売も収益源になっています。近年は伊藤忠商事やJ.フロントリテイリングなど異業種の出資・子会社化も増えています。
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大会・興行を仕掛ける3社|RAGEとGLOEが作るエンタメ市場
大会運営・興行会社は、企業のスポンサー費用とチケット・配信収益を組み合わせてイベントを成立させるビジネスモデルです。単発のイベント制作にとどまらず、年間を通じたリーグ戦の運営やIP(知的財産)としてのブランド育成まで手がける企業が中心になっています。
GLOE株式会社|旧ウェルプレイド・ライゼストが上場企業として牽引
GLOE株式会社は、2021年にウェルプレイドとライゼストが合併して誕生し、2024年2月に現在の商号に変更した企業です。2022年11月には国内初のeスポーツ専門株として東京証券取引所グロース市場に上場しました。イベントの企画・運営・映像制作・配信からプロゲーマーのキャスティング、地方創生プロジェクトへの参画まで、eスポーツの総合商社としての立ち位置を確立しています。
株式会社CyberZ|国内最大級イベント「RAGE」のブランドオーナー
株式会社CyberZは、サイバーエージェントグループの子会社として2015年にeスポーツイベント「RAGE」を立ち上げました。オンライン配信では最高同時接続数41万人超を記録し、さいたまスーパーアリーナで約26,000人を動員するなど、国内eスポーツイベントとして数々の記録を更新しています。2017年にはエイベックス・エンタテインメント、2019年にはテレビ朝日も運営に参画し、複数企業が共同でブランドを育てる体制を取っています。
株式会社CyberE|「RAGE」の制作実務を担う専業会社
株式会社CyberEは2018年12月に設立された、サイバーエージェントグループ唯一のイベント制作会社です。「RAGE」の企画・運営・制作を実務面で担うほか、サイバーエージェント興行本部が手がけるイベントの実制作、都心の大型eスポーツスタジオの自社運営まで行っています。ブランドを統括するCyberZと、現場の制作を担うCyberEという役割分担は、興行ビジネスが規模拡大するほど専門化が進むことを示す好例です。
eスポーツ専用施設を運営する3社|体験型ビジネスの最前線
専門施設運営会社は、高精細な大画面や安定した通信環境、多数のゲーミングPCといった設備投資を行い、施設のレンタル収益とイベント誘致で採算を取るビジネスモデルです。大会・対戦会の会場としてだけでなく、企業研修や周年イベントなど法人利用の受け皿としての需要も伸びています。
株式会社NTTe-Sports|秋葉原「eXeField Akiba」と施設構築コンサル
株式会社NTTe-Sportsが2020年に開業した「eXeField Akiba」は、秋葉原駅から徒歩約2分という好立地にある施設面積175平方メートルのeスポーツ施設です。NTTグループならではの高速・安定した通信環境と300インチのLEDビジョンを備え、ゲームメーカー主催の公式大会からセミナー配信、企業研修まで幅広く利用されています。同社はこの施設で培ったノウハウをもとに、eスポーツ専門高校や地方自治体施設の構築コンサルティングも展開しています。
(参考)eXeField Akiba 公式サイト(運営:株式会社NTTe-Sports)
レッドブル・ジャパン|「Red Bull Gaming Sphere Tokyo」でコミュニティを育てる
レッドブル・ジャパンが2018年に東京・中野に開設した「Red Bull Gaming Sphere Tokyo」は、最大収容人数150名のゲーミングスペースです。個人・法人・団体を問わずイベントを開催でき、これまでに100件を超えるイベントを開催、視聴者数は累計500万人を超えています。自社製品の販促を目的としながらも、プレイヤーやゲームコミュニティが自由に交流できる「場」を提供することでブランドの好意度を高めるという、企業スポンサーシップの一つの型を示しています。
(参考)Red Bull Gaming Sphere Tokyo 公式サイト(運営:レッドブル・ジャパン)
株式会社QTnet|自社チームの拠点「esports Challenger’s Park」
株式会社QTnetは、2021年に福岡市天神に西日本最大級とされるeスポーツ総合施設「esports Challenger’s Park」を開業しました。自社が運営するプロチーム「QT DIG∞」のホームスタジアムを兼ねており、パブリックビューイングやeスポーツ体験会など地域住民向けのイベントも定期開催しています。チーム運営と施設運営を同一企業が垂直統合で手がけることで、チームの試合が施設の集客装置にもなるという相乗効果を生んでいます。
(参考)esports Challenger’s Park 公式サイト(運営:株式会社QTnet)
Q. 企業がeスポーツ施設を活用するメリットは何ですか?
高精細な大画面や安定した通信環境を備えた施設をレンタルすることで、社員研修や周年イベント、企業間交流をゲームを通じて演出できる点がメリットです。非日常感の演出と、若手社員が参加しやすい企画のしやすさが評価されています。
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企業がeスポーツ業界と関わる3つの視点|協賛・人材・地域活性化
ここまで見てきた12社は、いずれも単独のファン向けビジネスにとどまらず、異業種企業との接点を積極的に作っています。企業側から見たとき、eスポーツ業界との関わり方は大きく3つの視点に整理できます。目的を明確にしないまま「とりあえず協賛」に踏み出すと、期待した効果が得られないまま終わるケースも少なくありません。
協賛・スポンサーシップの視点|認知拡大とブランドの若返り
もっとも取り組みやすいのが、チームや大会へのスポンサーシップです。伊藤忠商事のREJECTへの出資や、KDDI・電通のDetonatioNへの取引参加のように、若年層への認知拡大やブランドイメージの刷新を狙う事例が目立ちます。スポンサー費用は市場全体の35%以上を占める主要な収益源であり、企業側にとっても投資対効果を測定しやすい領域です。まずは小規模なコミュニティ大会への協賛から始め、ファンの反応を見ながら関与度を高めていく進め方が現実的です。
人材育成・組織開発の視点|若手社員との共通言語づくり
専門施設を活用した企業研修や社内イベントは、若手社員とのコミュニケーションを活性化する手段として注目されています。NTTe-SportsのeXeField Akibaが企業のレクリエーション利用を用途の一つに挙げているように、非日常感のある空間でチームビルディングを行うことで、世代を超えた対話のきっかけを作れます。ゲームというテーマ設定自体が、若手社員にとって心理的なハードルの低いコミュニケーション手段になる点も見逃せません。
地域活性化・自治体連携の視点|通信インフラ企業の新たな役割
QTnetが福岡でチームと施設を運営する事例のように、地方の通信・インフラ企業がeスポーツを地域創生の手段として位置づける動きも広がっています。デジタル人材の育成拠点として施設を活用したり、パブリックビューイングで地域住民の交流機会を作ったりと、単発のイベント誘致にとどまらない継続的な取り組みが特徴です。地方自治体との連携を検討する企業にとって、こうした先行事例は具体的な設計の参考になります。
Q. 企業がeスポーツ業界と連携する最初の一歩は何ですか?
自社の目的がスポンサーシップによる認知向上なのか、人材育成なのか、地域活性化なのかを明確にした上で、目的に合った事業レイヤー(チーム・大会・施設)の企業へ問い合わせることが最初の一歩です。小規模なコミュニティ大会への協賛から始める企業も少なくありません。
データ分析やAI活用の観点からeスポーツ産業に関わりたい企業には、選手のパフォーマンス可視化技術を解説したAIモーションキャプチャとは|主要10社と導入価値もあわせて参考になります。また、市場全体の構造や企業参入の最新動向は日本のeスポーツ市場と企業参入の現状2026で詳しく解説しています。
まとめ|eスポーツ業界は3レイヤーで捉えると関わり方が見える
eスポーツ業界は「チーム運営」「大会運営・興行」「専門施設運営」という3つの事業レイヤーに分けて捉えると、自社がどこと組むべきかが見えやすくなります。最後に本記事の要点を振り返ります。
- 2024年の国内eスポーツ市場規模は前年比9.9%増の約161億円で、2026年には200億円超えが見込まれる
- チーム運営会社(DetonatioN、Crazy Raccoon、REJECT、SCARZ、QT DIG∞、ZETA DIVISION)は異業種の資本参加が相次いでいる
- 大会・興行会社(GLOE、CyberZ、CyberE)はブランド運営と制作実務で役割分担が進んでいる
- 専門施設運営会社(NTTe-Sports、Red Bull Japan、QTnet)は法人利用や地域活性化の受け皿としての需要が伸びている
- 企業がeスポーツ業界と関わる際は、協賛・人材育成・地域活性化のどの目的で関わるかを最初に明確にすることが重要
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