スポンサー契約と不祥事|スポーツ協賛で企業が決めておくこと

スポンサー契約と不祥事|スポーツ協賛で企業が決めておくこと スポーツマーケティング

朝、協賛しているクラブの名前がニュースの見出しに出ている。社内のチャットには「うちのロゴ、ユニフォームに入ってますよね」「今週末のイベントはどうしますか」と書き込みが続きます。契約書を開いても、こういうときにどうするかは、どこにも書かれていません。

協賛先の不祥事は、スポンサー契約に書いていなければ、解除や返金の理由にしにくいものです。民法の解除は、相手が契約上の義務を果たさないことが出発点だからです。備えは、何が起きたら何ができるかを契約書に書くことと、起きた日に誰が何を決めるかを社内で決めておくことの2つになります。

この記事では、企業やリーグが公式に発表した対応の実例、民法の条文、スポーツ庁の資料をもとに、起きる前に決めておくことと、起きた日に動く順番を整理します。資料は、いずれも2026年10月11日に確認したものです。法律の話は一般的な内容の紹介で、個別の契約については弁護士に確かめてください。

スポンサー契約に書いていない不祥事は解除の理由にしにくい

協賛先で不祥事が起きても、それだけで契約をやめられるとは限りません。民法第541条が定める解除は、「当事者の一方がその債務を履行しない場合」に、期間を決めて催促し、それでも履行されないときにできるものです。ロゴの掲出やイベントへの参加といった契約上の義務が果たされている限り、選手や指導者の問題は、条文の上では別の話になります。

不祥事があったときの扱いを決めた、国や競技団体のスポンサー契約のひな形は、確かめた範囲では見当たりませんでした。いわゆるモラル条項(品位保持条項。相手の不適切な行いを理由に、契約を見直せるようにする定め)を置くかどうかも、中身をどうするかも、契約する当事者が決めることになります。しておくことを時期ごとに並べると、次のようになります。

時期 しておくこと 手がかりになる資料
契約の前 相手の体制と、過去の処分の公表を確かめる スポーツ団体ガバナンスコード、リーグの規約、リーグの発表
契約のとき 解除の事由、報告、露出の停止、返金を契約書に書く 民法、反社会的勢力についての政府の指針
契約の期間中 連絡先と、判断する人を決めておく スポーツ庁委託事業の不祥事対応事例集
起きた日 事実を確かめ、露出の扱いを決める リーグや競技団体の公表、相手からの報告
方針が出た後 続けるか、見直すか、終えるかを決める 相手の調査結果と再発防止策

協賛先の不祥事に備えて企業がしておくこと(出典:民法、スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>、不祥事対応事例集、Jリーグ規約、Bリーグ規約をもとに本記事が整理。2026年10月11日に確認)

契約書に入れる項目の全体は、スポーツスポンサー契約で企業が確かめる6項目でまとめています。この記事では、そのうち不祥事と解除に関わる部分と、契約書の外で決めておくことを掘り下げます。

(参考)民法 – e-Gov法令検索

Q. 協賛先に不祥事があれば、スポンサー契約は解除できますか?

契約書に解除の事由として書いてあれば解除しやすく、書いていなければ民法の一般的なルールによることになります。民法第541条の解除は、相手が契約上の債務を履行しないことが前提で、不祥事そのものが債務の不履行に当たるかは、契約の書き方で変わります。個別の契約については、弁護士に確かめてください。

スポーツ協賛のリスクは読みやすさと自社への影響で分かれる

スポーツ協賛のリスクを、前もって読めるかと自社への影響の2軸で分けた図。協賛先の不祥事は読みにくく評判に及ぶ位置にある

協賛のリスクは、不祥事だけではありません。前もって読めるかどうかと、自社への影響が露出の減少で済むか、評判にまで及ぶかの2つで分けると、備え方の違いが見えてきます。図の軸と位置は、公式の分類ではなく本記事の整理です。

読みやすい側にあるのが、降格とクラブの赤字です。Jリーグ規約は、J1の年間順位の下位3クラブがJ2に降格すると定めていて、順位表を見れば可能性が分かります。クラブの健全な経営も規約が求めており、Jリーグはクラブ別の決算を毎年公表しています。こうしたリスクは、契約の期間や金額を決めるときに織り込めます。

読みにくい側には、選手個人の法令違反や、指導者のハラスメントがあります。相手を調べても、起きるかどうかは分かりません。しかも、ロゴや社名が並んで報じられるので、影響は自社の評判に及びます。契約と初動で備えるのは、この領域です。

組織の管理に原因がある問題は、評判への影響が大きい一方で、相手の体制をある程度は公開情報で確かめられます。Jリーグ規約もBリーグ規約も、個人が違反したときに、所属するクラブにも懲罰や制裁を科せると定めています。個人の問題とクラブの問題は、規約の上でつながっているわけです。

評判には及ばなくても、露出が急に無くなることもあります。チームが試合の出場を辞退したり、運営する企業がチームの譲渡を検討すると発表したりした例が、実際にあります。こちらは、返金や引き継ぎの決まりで備えることになります。

あわせて読みたいクラブライセンスとは|Jリーグの基準と債務超過・制裁の扱い›

(参考)Jリーグ規約 – 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

(参考)Bリーグ規約 – 公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ

(参考)日野レッドドルフィンズ 2月4日の試合出場辞退について(2023年2月3日) – 日野自動車

(参考)「NECグリーンロケッツ東葛」の譲渡に向けた検討開始について(2025年8月20日) – NEC

不祥事が起きたとき企業とリーグが公式に発表した対応

公式の発表を並べると、対応は一度に決まるのではなく、第一報と方針の発表の2段階に分かれています。下の表は、チームを自社で運営する企業と、リーグが、自分のサイトで発表したものだけを集めました。書いてあるのは、発表された事実です。

発表日 発表した主体 発表された対応
2016年4月11日 NTT東日本(男子バドミントン部を持つ) 賭博行為を行った社員の処分、男子バドミントン部の半年間の対外活動自粛、部長・監督などの解任
2019年6月27日 トヨタ自動車(ラグビー部を持つ) 部に所属する社員の逮捕についておわびし、捜査の状況を踏まえて厳正に対処すると表明
2019年8月8日 トヨタ自動車 廃部を前提に検討したが、部を再建すると発表。行動指針、外部の人材の招聘、検査の実施
2022年1月4日 NEC(ラグビーチームを運営) 逮捕された元契約選手との契約を1月2日に解除。全員の薬物検査、調査委員会の設置。開幕戦には出場
2022年3月28日 NEC 外部の有識者を含む調査委員会の結果と、再発防止策を公表
2023年2月3日 日野自動車(ラグビーチームを持つ) 翌日の試合の出場辞退と、無期限の活動停止
2025年7月28日 B.LEAGUE ヘッドコーチのハラスメント行為を認定し、本人に3か月間の活動の停止など、クラブにけん責と制裁金200万円

不祥事を受けて公式に発表された対応(出典:NTT東日本、トヨタ自動車、NEC、日野自動車、B.LEAGUEの各発表。2026年10月11日に確認)

トヨタ自動車は、2019年6月27日の第一報では、おわびと、厳正に対処するという姿勢だけを示しました。部を残して立て直すという方針を発表したのは、42日後の8月8日です。NECも、2022年1月4日に当面の対応を、83日後の3月28日に調査の結果と再発防止策を発表しています(日数は本記事の計算)。

対応の中身は、個人との契約の解除や処分、チームの活動の停止、存続を決めたうえでの再発防止策に分かれます。NECは、選手との契約を解除する一方で、開幕戦には出場し、ホストゲームの収益の一部を寄付する考えを示しました。個人への対応と、チームへの対応を分けていることが分かります。

一方で、協賛している企業が、協賛先の不祥事を理由に契約を解除したと自社のサイトで発表した原文は、探した範囲では確かめられませんでした。表の企業は、どれもチームを自社で持つ立場です。協賛企業の判断は外から見えにくいので、他社の動きを待つより、自社の基準を先に決めておくほうが確実です。

協賛の終了が、不祥事と関係なく発表されることもあります。Jリーグのトップパートナーだった、いちごは、2026年4月14日に、契約期間の満了で同年6月末に契約を終えると発表しました。理由には、より直接的に企業価値の向上につながる事業へ展開するため、と書かれています。企業がスポーツに協賛する動機は、スポーツスポンサーになる理由で調査の結果を紹介しています。

(参考)弊社社員(男子バドミントン部所属)の処分及び男子バドミントン部の今後の活動について(2016年4月11日) – NTT東日本

(参考)「当社従業員 逮捕」事案について(2019年6月27日) – トヨタ自動車

(参考)当社ラグビー部 今後の対応について(2019年8月8日) – トヨタ自動車

(参考)NECグリーンロケッツ東葛 元契約選手逮捕を受けた今後の対応について(2022年1月4日) – NEC

(参考)NECグリーンロケッツ東葛 元契約選手不祥事を受けた今後の再発防止策の策定について(2022年3月28日) – NEC

(参考)日野レッドドルフィンズ 2月4日の試合出場辞退について(2023年2月3日) – 日野自動車

(参考)規約違反による制裁決定について – B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト

(参考)Jリーグトップパートナー契約期間満了のお知らせ(2026年4月14日) – いちご株式会社

Q. スポンサーが撤退する理由は何ですか?

企業が公式に理由を書いている例では、契約期間の満了と、事業の重点の見直しが挙げられています。いちごは2026年4月14日、Jリーグのトップパートナー契約を同年6月末の契約期間満了で終えると発表し、より直接的に企業価値の向上につながる事業へ展開するためと説明しました。協賛先の不祥事を理由にした解除を、協賛企業が自社のサイトで発表した原文は、本記事の調査では確かめられていません。

契約前と契約時と契約中にスポンサー企業がしておく3つのこと

スポンサー契約の前・契約のとき・契約の期間中に企業がしておくことと、それで防げる困りごとの対応図

備えは、契約の前、契約のとき、契約の期間中で中身が変わります。時期ごとにしておくことと、それで防げる困りごとを対応させたのが上の図です。対応づけは本記事の整理で、線の1本ずつを下で説明します。

契約前|相手の体制と処分の履歴を公開情報で確かめる

契約の前にできるのは、相手を知らないまま組むのを避けることです。スポーツ庁のスポーツ団体ガバナンスコードは、中央競技団体に、危機管理と不祥事対応の体制をつくることを求めています。原則12は、危機管理マニュアルの策定、不祥事が起きたときの調査体制の速やかな構築、外部調査委員会の独立性の3点を挙げています。

この3点は、そのまま相手への質問になります。マニュアルはあるか、起きたときは誰が調べるのか、外部の人は入るのか。中央競技団体は、コードを守っているかどうかの説明を毎年公表しているので、公式サイトでも確かめられます。

相手がプロクラブなら、リーグの規約と、過去の発表を見ます。Jリーグ規約第135条は、決定した懲罰を原則として公表すると定めています。ただし、けん責や100万円以下の罰金、関係者のプライバシーに関わる場合は、公表を控えられます。公表が無いことは、処分が無いことを意味しません。確かめ方の全体はスポーツインテグリティと協賛前の確認で扱っています。

(参考)スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>(令和5年9月29日改定) – スポーツ庁

(参考)Jリーグ規約 – 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

契約時|起きたときの扱いを契約書に書く

契約のときにしておくのは、解除の事由、報告、露出の停止、返金を契約書に書くことです。解除の事由が書かれていれば、解除の理由が無いという事態を避けられます。報告と返金の決まりがあれば、あとで返金でもめることも、連絡を待つだけで初動が遅れることも減らせます。

条項ごとの考え方は、次の章でまとめます。選手個人と契約する場合は、解除の予告など、別の決まりも関わります。

あわせて読みたいアンバサダー契約とは|スポーツ選手と結ぶ企業の確認点と報酬›

契約中|連絡先と判断する人を決めておく

契約の期間中にしておくのは、起きた日に誰が誰に連絡し、誰が露出の扱いを決めるのかを、紙1枚にしておくことです。相手の担当者と責任者の連絡先、自社の決裁者、止める対象になる広告や掲出物の一覧があれば、初動は早くなります。

日本取引所グループの「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」は、原則6で、業務委託先や仕入先、販売先で問題が起きた場合も、当事者としての役割を意識するよう求めています。協賛先を名指しした文書ではなく、上場会社に向けた指針ですが、取引の相手の問題を自社の問題として扱う考え方の手がかりになります。

(参考)上場会社における不祥事予防のプリンシプル – 日本取引所グループ

スポンサー契約に書いておく5つの条項と民法の解除のルール

民法で決まっているのは、解除できる場合の原則と、解除した後の原則までです。何を不祥事とするか、いつまでに報告を受けるか、返金をどう計算するかは、契約で決めます。下の表の条項は例で、そのまま使える契約書の文面ではありません。実際の文面は、弁護士と相談して決めてください。

条項(例) 決めておくこと 関係する民法の条
解除の事由 どんな行為や処分があったときに解除できるか 第541条、第542条
報告 何を、いつまでに、誰から知らせてもらうか 定めなし
露出の停止 ロゴの掲出や広告を止められるか、費用は誰が持つか 定めなし
返金と費用 解除したときの協賛金の計算と、撤去の費用 第545条
違約金と損害賠償 損害の額をあらかじめ決めておくか 第415条、第420条

スポンサー契約に書いておく条項の例と民法の関係(出典:民法 第415条・第420条・第541条・第542条・第545条。条項の例と対応づけは本記事の整理)

解除の事由|リーグや団体の処分に合わせて書く

民法第541条は、相手が債務を履行しないときに、期間を決めて催促し、それでも履行されなければ解除できると定めています。不履行が軽いときは、解除できません。第542条は、履行がまったくできないときなど、催促をしないで解除できる場合を並べています。どちらも、契約上の義務が果たされないことが前提です。

そこで、契約書の側に、解除できる場合を書いておきます。書き方の一例は、相手が守るべきルールに合わせる方法です。たとえばBリーグ規約は、関係者の暴力、暴言、ハラスメント行為を禁じています。「リーグや競技団体から処分を受けたとき」のように、外から確かめられる出来事にしておくと、当てはまるかどうかで争いになりにくくなります。

反社会的勢力との関係が分かった場合の解除は、根拠がはっきりしています。法務省が公表している政府の指針は、相手が反社会的勢力だと判明した場合に契約を解除できる旨を、契約書に盛り込んでおくことが有効だとしています。指針そのものに法的な拘束力はありませんが、解除の根拠を国の文書で説明できる条項です。

(参考)民法 – e-Gov法令検索

(参考)Bリーグ規約 – 公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ

(参考)企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について – 法務省

報告|第一報の期限と中身を決める

報告の義務は、民法には書かれていません。契約に無ければ、協賛企業は報道で知ることになります。知らせてもらう出来事、期限、相手の窓口を決めておきます。

スポーツ庁の委託事業でつくられた「不祥事対応事例集」(2018年)は、団体の側に、把握している確実な事実だけでも、まず第一報を出すことを勧めています。「現在、事態の把握に向けて対応中です」というだけでもよい、という書き方です。第一報の時点で事実がそろわないことを前提に、続報の時期まで決めておくと、待つ側も動きやすくなります。

(参考)スポーツ界におけるコンプライアンス強化ガイドライン 不祥事対応事例集(平成29年度スポーツ庁委託事業、2018年3月8日) – スポーツ競技団体のコンプライアンス強化委員会

露出の停止|解除の手前の選択肢を用意する

解除は、最後の手段です。その手前に、ロゴの掲出や、選手を使った広告を一時的に止める選択肢を、契約に書いておくことができます。止めている間の協賛金をどう扱うか、差し替えの費用を誰が持つかも、あわせて決めます。

Jリーグ規約の懲罰には、無観客試合の開催、一部の観客席の閉鎖、勝点の減、下位リーグへの降格があります。Bリーグ規約にも、無観客試合の開催や、公式試合の出場停止があります。こうした処分は、協賛企業が受け取る露出を直接減らします。協賛金を見直す場合を、処分の種類に合わせて書いておく方法もあります。

(参考)Jリーグ規約 – 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

(参考)Bリーグ規約 – 公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ

返金と費用|計算の方法まで書く

民法第545条は、解除したときに、互いに元の状態に戻す義務を負うと定めています。ただ、シーズンの途中まで露出を受けていた場合に、いくら戻るのかは、条文からは決まりません。月割りか、試合の数で割るのか。計算の方法を契約に書いておきます。

看板やユニフォーム、印刷物の撤去や作り直しの費用も、もめやすいところです。原因がどちらにあるかで、負担する側を分けておきます。

(参考)民法 – e-Gov法令検索

違約金と損害賠償|額を決めておくかを検討する

民法第415条は、債務の不履行で生じた損害の賠償を請求できると定めています。ただし、評判への影響を金額で示すのは簡単ではありません。第420条は、当事者が損害賠償の額をあらかじめ決めておけるとし、違約金はその予定と推定すると定めています。

額を決めておくかどうかは、相手との力関係にも左右されます。違約金の水準に、公的な目安は見当たりません。入れる場合は、金額の根拠を説明できるようにしておきます。

(参考)民法 – e-Gov法令検索

Q. スポンサー契約を解除したら、払った協賛金は返ってきますか?

返ってくる額は、契約の定めで変わります。民法第545条は、解除したときに互いに元の状態に戻す義務を定めていますが、すでに受けた露出の分をどう計算するかまでは書いていません。月割りや試合数での計算など、返金の方法を契約書に書いておくことが備えになります。

不祥事が起きた日にスポンサー企業が動く4つの段階

協賛先で不祥事が起きた日に、協賛企業がクラブ・選手側、リーグ・競技団体、社内の決裁者、弁護士、広告会社、顧客・取引先とやり取りする内容の関係図

起きた日にすることは、結論を出すことではなく、事実を確かめて、露出の扱いを決めることです。図は、その日に協賛企業がやり取りする相手を並べたものです。弁護士や広告会社とのやり取りは一般的な進め方で、資料に定めがあるわけではありません。

事実を確かめる|相手の報告とリーグの公表を見る

最初に確かめるのは、何が事実として公表されているかです。相手のクラブや選手の側から報告を受け、リーグや競技団体が発表を出していれば、それを読みます。B.LEAGUEの2025年7月の発表には、認定した事実、当てはめた規約の条項、制裁の内容と理由、通報から決定までの経緯が書かれていました。報道より先に、こうした一次情報に当たります。

問題が個人のものか、組織の管理にも原因があるのかも、ここで見ます。この発表は、クラブの監督上の責任も認め、クラブにも制裁を科しています。

(参考)規約違反による制裁決定について – B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト

露出の扱いを決める|止める範囲を社内で決める

次に、自社の広告や掲出物をどうするかを決めます。契約書に露出の停止の定めがあれば、それに沿って相手に求めます。定めが無ければ、弁護士に契約書を見てもらい、相手と話し合うことになります。

社内では、決裁する人に状況を伝え、止める範囲の判断をもらいます。決まったら、広告会社や制作会社に連絡します。顧客や取引先から問い合わせが来たときの答え方も、同じ日にそろえておきます。

相手の調査と処分を待つ|求めすぎないようにする

第一報の後は、相手の調査と、リーグや団体の処分を待つ期間になります。先に見た例では、方針の発表まで、42日と83日かかっていました。その間に、協賛企業が処分の中身まで指示するのは避けたほうがよさそうです。

スポーツ庁の委託事業の不祥事対応事例集は、団体が「スポンサーの言いなり」になって統治が働いていないと見られれば、別の批判を受けると書いています。協賛企業が求められるのは、正確な報告と、調査の見通しです。処分を決めるのは、相手と、リーグや団体の役割です。

(参考)スポーツ界におけるコンプライアンス強化ガイドライン 不祥事対応事例集(平成29年度スポーツ庁委託事業、2018年3月8日) – スポーツ競技団体のコンプライアンス強化委員会

続けるか終えるかを決めて伝える

相手の方針と再発防止策が出たら、続けるか、条件を見直すか、終えるかを決めます。見るのは、原因の説明があるか、外部の人が調査に入ったか、再発防止策に期限と担当があるか、といった点です。NECの2022年3月の発表は、外部の有識者を含む調査委員会の構成と調査の期間、体制の見直しの中身まで公表していました。

決めた内容は、相手に伝え、必要なら社外にも説明します。続ける場合も、理由を自分の言葉で説明できるようにしておきます。スポーツへの協賛を事業の中でどう位置づけるかは、スポーツマーケティングの基本に立ち返ると整理しやすくなります。

(参考)NECグリーンロケッツ東葛 元契約選手不祥事を受けた今後の再発防止策の策定について(2022年3月28日) – NEC

協賛する企業の不祥事もスポンサー契約の解除の理由になる

不祥事への備えは、協賛される側だけの話ではありません。協賛する企業の側に問題が起きたときに、相手から契約を解除される定めも、実際の契約書にあります。公開されている例が、自治体のネーミングライツの契約書です。

仙台市が令和8年度の募集で公開した契約書の案は、命名権を持つ企業が「著しく社会的信用を失墜したとき」などに、市が契約を解除できるとしています。その場合、企業は、残る契約期間の契約金額の総額に0.2を掛けた額を、違約金として支払います。これは1つの自治体の例で、相場ではありません。

自社の契約書を読むときは、相手の不祥事の扱いだけでなく、自社に問題が起きたときの扱いも確かめてください。解除の事由、違約金、撤去の費用が、どちらにも同じ重さで書かれているかが、見るところです。施設の命名権の契約はネーミングライツ募集の読み方で詳しく扱っています。

(参考)(別紙5)ネーミングライツ契約書(案) – 仙台市

まとめ|協賛先の不祥事には契約と社内の決め事で備える

協賛先の不祥事は、起きるかどうかを読めません。読めないからこそ、起きたときの扱いを先に決めておきます。

  • 民法の解除は、相手が契約上の債務を履行しないことが前提。不祥事の扱いは契約書に書く
  • 不祥事の扱いを決めた公的なスポンサー契約のひな形は見当たらない
  • 公式の発表では、対応は第一報と方針の発表の2段階。その間は42日と83日の例がある
  • 契約書には、解除の事由、報告、露出の停止、返金と費用、違約金と損害賠償を書く
  • 起きた日は、事実を確かめて、露出の扱いを決める。処分の中身は相手とリーグに委ねる
  • 協賛する企業の側の不祥事も、解除の事由になる

まず、いま結んでいるスポンサー契約書を開いて、解除の事由と報告の定めがあるかを確かめてみてください。無ければ、次の更新のときに、弁護士と相談しながら相手と話し合う材料になります。あわせて、相手の連絡先と自社の決裁者を書いた紙を1枚、つくっておくと安心です。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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