指定管理のメリットは、自治体にとってはサービスの向上・経費の節減・選定の透明化、企業にとっては利用料金を自社の収入にでき、5年程度の期間で自社のノウハウを出せることです。デメリットは、自治体には安全の責任と撤退のリスクが残り、企業には物価や賃金の上昇を抱えるリスクと、期間満了で事業が終わるリスクがあることです。総務省の調査では、2024年4月1日時点で79,332施設が指定管理者制度を導入しており、そのうち体育館やプールなどのレクリエーション・スポーツ施設は15,474施設です。
市の体育館の公募要項を開くと、「指定期間5年」「利用料金制」「自主事業」といった言葉が並びます。どれが自社の得になり、どこで損をしかねないのかは、要項を読んだだけでは見えにくいものです。以下では、スポーツ施設の指定管理を軸に、自治体側と企業側のメリット・デメリットを同じ数ずつ根拠の数字とともに並べ、最後にどんな施設なら向くかを判断表にまとめます。
指定管理とは|自治体が条例と議会の議決で施設の管理を任せる制度

指定管理は、自治体が持つ体育館やプールなどの「公の施設」の管理を、条例と議会の議決にもとづいて企業やNPOなどの団体に任せる制度です。地方自治法第244条の2第3項が根拠で、2003年の法改正で始まりました。任された団体を「指定管理者」と呼び、清掃や設備の点検だけでなく、施設の使用許可や運営そのものまで行えます。
流れは4つの時期に分かれます。準備の時期には、自治体が条例で指定の手続きや業務の範囲を定め、公募で事業計画を集めて候補者を選びます。指定の時期には、議会の議決を経て指定し、管理の細かな条件を協定で結んでから管理が始まります。
期間中、指定管理者は毎年度の事業報告書を自治体に出し、自治体は評価を行い、必要なら報告を求めたり指示したりします。期間が終わると、自治体は再び公募するか、直営に戻すか、施設そのものを見直すかを決めます。指定は必ず期間を定めて行うことになっており、2024年4月1日時点では5年の施設が77.1%を占めます。
(参考)地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2 – e-Gov法令検索(デジタル庁)
(参考)指定管理者制度について(令和6年4月26日) – 総務省自治行政局行政経営支援室
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
Q. 指定管理の期間は何年が多いですか?
5年が最も多く、2024年4月1日時点で指定管理者制度を導入している79,332施設のうち77.1%が5年です。地方自治法は期間を定めて指定することだけを求めており、年数は自治体が施設の目的や実情に合わせて決めます。10年以上の施設も5.7%あります。
スポーツ施設の指定管理|市区町村の体育館は導入率41.4%
スポーツ施設の指定管理は、都道府県と政令指定都市ではほぼ標準になっていますが、市区町村ではまだ半分前後です。総務省が公表した2025年4月1日時点の導入率を、体育館・競技場・プールについて自治体の区分ごとに並べると次のとおりです。
| 施設 | 都道府県 | 指定都市 | 市区町村 |
|---|---|---|---|
| 体育館 | 94.7% | 93.5% | 41.4% |
| 競技場 | 92.3% | 64.4% | 50.2% |
| プール | 94.9% | 93.7% | 53.1% |
出典:総務省「地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査」(令和7年12月19日公表、令和7年4月1日現在)をもとに Human Soar 作成。導入率は、制度を導入した施設数を公の施設数で割った値
都道府県の体育館は94.7%、プールは94.9%で、ほとんどが指定管理です。一方で市区町村の体育館は41.4%にとどまり、計算すると残りの58.6%は直営(業務の一部を委託する形を含む)などで運営されています。つまり市区町村の体育館では、「指定管理にするか、直営のままにするか」がいまも現実の選択肢として残っています。
全体で見ると、2024年4月1日時点で指定管理者制度を導入しているレクリエーション・スポーツ施設は15,474施設で、導入施設全体の19.5%です。指定管理者に株式会社やNPO法人などの民間企業等が入っている施設は、スポーツ施設に限らず全体で35,572施設(44.5%)あります。施設の老朽化や稼働率など、スポーツ施設の運営が抱える課題の全体像は日本のスポーツ業界の課題で整理しています。
(参考)全国の実施率(指定管理者)/地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査(令和7年12月19日公表) – 総務省
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
自治体から見た指定管理のメリット3つとデメリット3つ
自治体にとってのメリットとデメリットを、総務省の調査の数字と合わせて3つずつ並べます。数字は、制度を導入した全国の施設(スポーツ施設以外も含む)を対象にしたものです。
| 区分 | 内容 | 根拠になる数字 |
|---|---|---|
| メリット | サービスを広げやすい | 選定基準に「サービス向上」を入れた施設88.1% |
| メリット | 管理の経費と事務を減らせる | 選定基準に「管理経費の節減」を入れた施設84.8% |
| メリット | 選び方と評価が外から見える | 公募53.4%、評価の実施80.8% |
| デメリット | 安全の責任と監督の手間が残る | 市区町村で評価を実施した施設76.6% |
| デメリット | 撤退や応募なしで運営が止まる | 3年間の指定取消し495施設 |
| デメリット | 公募しない継続が多く競争が弱まる | 従前の指定管理者を公募なしで選んだ施設43.0% |
出典:総務省「公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果」(令和7年7月、令和6年4月1日現在。指定取消しは令和3年4月2日〜令和6年4月1日)をもとに Human Soar 作成
メリット1|民間のノウハウでサービスを広げやすい
指定管理の目的は、民間のノウハウを生かして住民サービスの質を上げることにあります。総務省の調査では、指定管理者を選ぶ基準に「施設のサービス向上」を入れている施設が88.1%と、選定基準の中で最も多くなっています。
船橋市のガイドラインは、導入効果を検討する観点として、開館時間の拡大、利用者のニーズに合わせた事業、施設の空き時間やスペースを使った新しいサービスを挙げています。体育館なら、平日の夜や早朝の時間帯に教室を開くといった形で、直営では手が回りにくいサービスを足せます。
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
(参考)船橋市指定管理者制度ガイドライン 導入検討編【第8版】 – 船橋市企画財政部行政経営課
メリット2|管理の経費と事務を減らせる
選定基準に「施設の管理経費の節減」を入れている施設は84.8%です。民間同士の競争で効率のよい運営を求められるため、自治体は同じサービスをより少ない経費で提供できる可能性があります。
利用料金制を採ると、利用料金が指定管理者の収入になるため、自治体と指定管理者の両方で会計の事務が軽くなります。船橋市のガイドラインは、施設や所管課の職員数を見直せるかどうかも、導入効果として検討するよう求めています。
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
(参考)船橋市指定管理者制度ガイドライン 導入検討編【第8版】 – 船橋市企画財政部行政経営課
メリット3|選び方と評価が外から見える
指定管理者の指定には議会の議決が要り、指定管理者は毎年度、事業報告書を出します。総務省は、管理の担い手を選ぶ手続きを透明にすることを、制度の目的の1つに挙げています。
2024年4月1日時点で、公募で候補者を募集した施設は53.4%、指定管理者の評価を実施している施設は80.8%、選定の理由を公表している施設は65.3%です。誰がどんな理由で選ばれ、どう評価されたかを住民が確かめられる仕組みになっています。
(参考)指定管理者制度について(令和6年4月26日) – 総務省自治行政局行政経営支援室
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
デメリット1|安全の責任と監督の手間が自治体に残る
管理を任せても、施設を設けた自治体の責任はなくなりません。地方自治法は、自治体が指定管理者に業務や経理の報告を求め、実地で調べ、必要な指示をできると定めています。世田谷区のガイドラインも、利用者の安全確保について指定管理者に丸投げせず、モニタリングなどの管理責任を果たす必要があると明記しています。
その一方で、評価の体制には差があります。指定管理者の評価を実施している施設の割合は、都道府県99.4%、指定都市99.9%に対し、市区町村は76.6%です。プールのように事故が命に関わる施設ほど、監督に人手を割けるかが導入の前提になります。
(参考)地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2 – e-Gov法令検索(デジタル庁)
(参考)指定管理者制度運用に係るガイドライン【第8版】 – 世田谷区
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
デメリット2|撤退や応募なしで運営が止まる
指定管理者の経営が苦しくなると、期間の途中で撤退することがあります。総務省の調査では、2021年4月2日から2024年4月1日までの3年間に指定を取り消した施設は495施設あり、取消しの理由のうち「指定管理者の経営困難等による撤退(指定返上)」は109施設でした。
期間満了で指定管理をやめた施設の理由にも、経営困難等による撤退が72施設、「公募への応募なし」が49施設あります。取消しと期間満了の分を合わせて計算すると181施設になり、それだけの施設で経営困難を理由に指定管理者が手を引いています。撤退した後の施設をどう運営するかは、自治体が決めなければなりません。
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(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
デメリット3|公募しない継続が多く競争が弱まる
指定管理は、複数の事業者から計画を出させて最も適した担い手を選ぶことに意味がある制度です。ところが2024年4月1日時点で、従前の指定管理者を公募せずに選んだ施設は34,115施設(43.0%)あり、市区町村では45.8%にのぼります。
総務省の通知は、利用者や住民の評価を踏まえて同じ事業者を再び指定する例もあるとしたうえで、施設に応じて適切に選ぶよう求めています。公募しない継続が続くと、新しい事業者の提案を比べる機会が減るため、評価の結果で継続の理由を示せるかが問われます。
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
(参考)指定管理者制度の運用について(平成22年12月28日総行経第38号) – 総務省自治行政局長
Q. 指定管理者が撤退したらスポーツ施設はどうなりますか?
自治体が別の団体を指定し直すか、直営に戻すか、施設を休止・廃止するかを決めます。総務省の調査では、2021年4月2日から2024年4月1日までに指定を取り消した施設のその後は、統合・廃止(譲渡・貸与を含む)が43.8%、再指定が30.0%、直営が11.9%、休止が8.7%でした。
企業から見た指定管理のメリット3つとデメリット3つ

スポーツ施設の指定管理に応募する企業にとって、最初に確かめたいのは利用料金制を採るかどうかです。利用料金制を採る施設では、利用料金と指定管理料の両方が収入になり、利用者が増えれば自社の収入が増え、減れば自社の収入が減ります。利用料金制を採らない施設では、利用料金は自治体の収入になり、自社の収入は協定で決まる指定管理料が中心になるため、料金収入の増減は自社の収入に表れにくくなります。この違いを前提に、メリットとデメリットを3つずつ見ていきます。
メリット1|利用料金を自社の収入にできる
地方自治法第244条の2第8項により、自治体は適当と認めるときは、施設の利用料金を指定管理者の収入として受け取らせることができます。2024年4月1日時点で、利用料金制(一部の採用を含む)を採っている施設は42,378施設で、導入施設の53.4%です。
集客の工夫がそのまま売上につながるので、フィットネスやスクールの運営で培った集客のノウハウを持つ企業ほど、この仕組みを生かせます。船橋市のガイドラインも、経営努力で利用者の増加が期待できる施設には利用料金制の導入を検討するよう求めています。
(参考)地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2 – e-Gov法令検索(デジタル庁)
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
(参考)船橋市指定管理者制度ガイドライン 導入検討編【第8版】 – 船橋市企画財政部行政経営課
メリット2|5年程度の期間で事業を組み立てられる
指定は期間を定めて行い、2024年4月1日時点で5年が77.1%、10年以上も5.7%あります。単年度の契約と違い、数年先までの人員や教室の計画を立てられます。
自治体が複数年度にわたって指定管理料を払うことが確実な場合、総務省の通知は債務負担行為(翌年度以降の支払いを予算であらかじめ約束しておく手続き)を設定するよう求めています。この設定がある施設は48,108施設(60.6%)で、期間中の指定管理料が予算の面からも裏づけられています。
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
(参考)指定管理者制度の運用について(平成22年12月28日総行経第38号) – 総務省自治行政局長
メリット3|自主事業と使用許可で自社のノウハウを出せる
指定管理者は施設の使用許可を行え、条例と協定の範囲で自主事業も行えます。業務の範囲に「裁量性のある自主事業」を含む施設は48,896施設(61.6%)、「施設の事業企画業務」を含む施設は49,933施設(62.9%)です。
総務省は制度の説明で、「体育館」を「フィットネスクラブ」へ任せる例を挙げています。公共スポーツ施設の運営を受託している主な企業と、その関わり方は下の記事で紹介しています。施設に社名を付けるネーミングライツで関わる方法もあり、その相場はネーミングライツの相場と効果にまとめています。
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(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
(参考)指定管理者制度について(令和6年4月26日) – 総務省自治行政局行政経営支援室
デメリット1|物価や賃金の上昇を抱えやすい
指定管理料は応募時の計画をもとに決まるため、期間中に電気代や人件費が上がると企業の負担になります。2024年4月1日時点で、原材料価格などが上がったときの扱いを選定時にも協定にも示していない施設が23,385施設(29.5%)あります。
札幌市は、人件費を統計の単価などで算定し、基本的に5年後の次の募集まで単価を変えてこなかったことを踏まえ、賃金の変動に応じて2年目以降の指定管理費用を変える賃金スライド制度を導入しました。ただし物価の変動は基本的に指定管理者のリスクと整理し、人件費計画額の1%相当額までは指定管理者が負担するとしています。応募の前に、協定のリスク分担表で物価と賃金の扱いを確かめておくことが大切です。
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
(参考)指定管理者制度への賃金スライド制度の導入について(第1回札幌市働きやすいまち推進協議会 資料1・令和5年12月14日) – 札幌市総務局改革推進室
デメリット2|期間満了で事業が終わることがある
指定期間が終わると、再び公募にかけられるのが基本です。2021年4月2日から2024年4月1日までの3年間に、期間満了をもって指定管理をやめた施設は1,363施設あり、その後の管理は直営(業務委託を含む)が517施設、統合・廃止(譲渡・貸与を含む)が642施設でした。
やめた理由で最も多いのは施設の休止・廃止の465施設(34.1%)です。運営の評価が良くても、施設の統廃合で事業そのものがなくなることがあります。設備に投資するなら、回収を指定期間の中で終えられるかを先に計算しておきます。
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和7年7月・令和6年4月1日現在) – 総務省自治行政局行政経営支援室
デメリット3|料金や建物の扱いには自治体の承認が要る
利用料金を収入にできても、料金は条例の範囲で定め、あらかじめ自治体の承認を受けなければなりません。施設を本来の目的の外で使わせる「目的外使用許可」も指定管理者には任せられず、自治体の権限のままです。
内閣府は、建物の改築や更新は指定管理者の業務範囲に含まれないことが一般的だとしています。設備を入れ替えて集客を伸ばしたい場合は、自治体との協議か、運営権を設定するコンセッションなど別の方式を検討します。自治体は指示に従わないときなどに指定を取り消せるため、協定の条件を守ることが事業を続ける前提になります。
(参考)地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2 – e-Gov法令検索(デジタル庁)
(参考)指定管理者制度運用に係るガイドライン【第8版】 – 世田谷区
(参考)スタジアム・アリーナに係るコンセッション事業活用ガイドライン(令和5年12月改定版) – 内閣府民間資金等活用事業推進室
Q. 指定管理者は利用料金を自由に決められますか?
自由には決められず、条例の範囲で定めたうえで、あらかじめ自治体の承認を受ける必要があります。地方自治法第244条の2第9項がこの手続きを定めています。値上げを考える場合は、承認にかかる時間を見込んで事業計画を立てます。
指定管理と直営・業務委託・PFI・コンセッションの違い
指定管理と並べて検討される方式は、管理権限を誰が持つか、利用料金を誰の収入にできるか、期間がどれくらいかで分かれます。主な方式を項目ごとに並べると次のとおりです。
| 方式 | 仕組み | 施設の使用許可 | 利用料金 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 直営 | 自治体が自ら管理する(業務の一部を委託する形を含む) | 自治体 | 自治体の収入 | 定めなし |
| 業務委託(包括管理委託を含む) | 契約で清掃・受付などの業務を任せる。包括管理委託は複数の業務や施設をまとめて任せる | 自治体(受託者は不可) | 利用料金制は採れない | 契約で定める |
| 指定管理 | 議会の議決を経た指定で管理権限を任せる(地方自治法) | 指定管理者が行える | 指定管理者の収入にできる(変更は首長の承認) | 5年程度が多い |
| PFI | 設計・建設・運営などをまとめて民間に任せる(PFI法) | 運営には指定管理者の指定が必要 | 指定を受ければ収入にできる | 事業ごとに定める |
| コンセッション | 所有は公共のまま運営権を設定する(PFI法) | 与えられない(指定管理と併用する) | 収入にできる(変更は届出) | 20年以上が一般的 |
出典:地方自治法第244条の2、内閣府「スタジアム・アリーナに係るコンセッション事業活用ガイドライン」「PFI事業導入の手引き」、国土交通省、船橋市・世田谷区のガイドラインをもとに Human Soar 作成
直営と比べると|自治体にノウハウが残る代わりに民間の工夫が入りにくい
直営のメリットは、自治体が自ら管理するため、運営のノウハウと判断の権限が手元に残ることです。船橋市のガイドラインは、市による管理運営のノウハウが必要な業務は一部を直営にすることも考えられるとしています。世田谷区も、検討の結果として指定管理になじまないと判断した施設は直営で適正に管理するとしています。
直営のデメリットは、利用料金制や自主事業といった、民間の工夫を引き出す仕組みを使えないことです。世田谷区は、指定管理の導入にあたって「利用料金制度」と「自主事業」に期待する効果を検証し、委託と比べてから導入するとしています。
(参考)船橋市指定管理者制度ガイドライン 導入検討編【第8版】 – 船橋市企画財政部行政経営課
(参考)指定管理者制度運用に係るガイドライン【第8版】 – 世田谷区
業務委託と比べると|手続きが軽い代わりに受託者の裁量が仕様の中に限られる
業務委託のメリットは、議会の議決が要らず、清掃や設備点検、受付など必要な業務だけを契約で任せられることです。国土交通省は、複数の業務や施設をまとめて委託する方式を「包括的民間委託」と呼び、受託した民間事業者が創意工夫やノウハウを生かして効率よく管理できるようにする方法として示しています。
業務委託のデメリットは、受託者の業務が仕様の範囲内に限られ、施設の使用許可も利用料金制も使えないことです。企業から見ると、集客を増やしても自社の収入にはつながらないため、運営の工夫を収益に変えたいなら指定管理のほうが向いています。
(参考)船橋市指定管理者制度ガイドライン 導入検討編【第8版】 – 船橋市企画財政部行政経営課
(参考)「インフラメンテナンスにおける包括的民間委託導入の手引き」を作成しました(令和5年3月22日) – 国土交通省
PFIやコンセッションと比べると|建て替えや長期の投資まで任せられる
PFIは施設の設計・建設から運営までをまとめて民間に任せる方式で、運営を民間が担う場合は、その事業者が指定管理者としての指定も受けます。コンセッションは所有を公共に残したまま運営権を設定する方式で、期間は20年以上が一般的とされ、建物の改築や更新も業務の一環として行えます。
指定管理は期間が5年程度と短く、建物の改築や更新は業務に含まれないことが一般的です。新しいスタジアムやアリーナの整備から関わるならPFIやコンセッション、既存の体育館やプールの運営を引き受けるなら指定管理、という使い分けが基本になります。国が進めるスタジアム・アリーナ整備の動きはスタジアム・アリーナ改革で解説しています。
あわせて読みたいスタジアム整備のPFIとは|指定管理者制度との違いと企業の入り方›
(参考)PFI事業導入の手引き Q3 民間の活力を活用した事業方式 – 内閣府民間資金等活用事業推進室
(参考)スタジアム・アリーナに係るコンセッション事業活用ガイドライン(令和5年12月改定版) – 内閣府民間資金等活用事業推進室
Q. 指定管理と業務委託の違いは何ですか?
施設の管理権限を任せるかどうかが違います。指定管理は議会の議決を経た指定によって管理権限を任せるため、施設の使用許可や利用料金制を使えます。業務委託は契約で清掃や受付などの業務を任せる方法で、管理権限は自治体に残り、使用許可も利用料金制も使えません。
指定管理が向く場合と向かない場合|スポーツ施設の判断表
指定管理が向くかどうかは、施設の性格と、担い手になる企業の条件の両方で決まります。自治体のガイドラインと総務省の調査をもとに、判断の観点ごとに向く場合と向かない場合を並べました。
| 判断の観点 | 指定管理が向く場合 | 向かない場合(直営・委託などを検討) |
|---|---|---|
| 利用を伸ばす余地 | 開館時間の拡大や教室・大会で利用を伸ばせる | 利用が固定的で、工夫で変わる部分が小さい |
| 担い手の数 | 同じ種類の施設を運営できる事業者が複数いる | 応募が見込めず、競争が働かない |
| 料金収入 | 利用料金で収入の柱を作れる | 料金が低く、運営費のほとんどを指定管理料に頼る |
| 施設の先行き | 指定期間を通じて運営が続く見込みがある | 統廃合や大規模改修が近い |
| 投資の回収 | 設備投資を指定期間の中で回収できる | 建て替えや長期の投資が必要(PFI・コンセッションを検討) |
| リスク分担 | 物価・賃金の上昇の扱いが協定で決まっている | 扱いが決まっておらず、上昇分を企業が抱える |
出典:世田谷区・船橋市の指定管理者制度ガイドライン、総務省「公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果」、内閣府「スタジアム・アリーナに係るコンセッション事業活用ガイドライン」をもとに Human Soar 作成
自治体が導入を決める前に見る点
世田谷区は、サービスの向上、経費の節減、利用料金制の効果、事業者の複数存在による競争性など6つの視点で施設ごとに総合的に判断し、当てはまる項目が多いほど民間の領域だとしています。判断表の「担い手の数」と「利用を伸ばす余地」は、とくに市区町村の体育館で差が出やすい観点です。
船橋市は、導入を検討する段階で、事業者に直接意見を聞くサウンディング型市場調査を行い、参入の意向や課題を確かめる手順を示しています。応募がなければ制度は動かないため、担い手の有無は公募の前に確かめておきます。
(参考)指定管理者制度運用に係るガイドライン【第8版】 – 世田谷区
(参考)船橋市指定管理者制度ガイドライン 導入検討編【第8版】 – 船橋市企画財政部行政経営課
企業が応募を決める前に見る点
企業の側は、募集要項と協定案で、利用料金制の有無、自主事業の範囲、指定期間、物価と賃金の扱いの4点を先に確かめます。判断表で「向かない場合」に当てはまる項目が多い施設は、指定管理料だけでは採算が合わず、期間中に負担が膨らむおそれがあります。
施設の稼働率を上げる取り組みや収益の多角化については、スポーツ施設の経営課題と解決策で詳しく扱っています。
スポーツ施設の指定管理のメリット・デメリットのまとめ
指定管理は、自治体と企業の双方に得るものと負うものがある制度です。数字の出典は本文の各セクションに記載しています。
- 指定管理は条例と議会の議決で公の施設の管理を任せる制度で、2024年4月1日時点で79,332施設、うちスポーツ施設は15,474施設
- 自治体のメリットはサービスの向上・経費の節減・選定の透明化、デメリットは安全の責任・撤退のリスク・競争の弱まり
- 企業のメリットは利用料金の収入・5年程度の事業期間・自主事業、デメリットは物価と賃金の上昇・期間満了・承認の手続き
- 業務委託は使用許可も利用料金制も使えず、建て替えから任せるならPFIやコンセッションが向く
- 向き不向きは、利用を伸ばす余地・担い手の数・料金収入・施設の先行き・投資の回収・リスク分担で判断する
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