自治体が新しいスタジアムの構想を発表し、資料に「PFIの導入を検討」と書かれている。建設、ビル管理、金融、イベント運営のどの会社にも関係がありそうなのに、どの立場で、いつ手を挙げればよいのかが読み取れません。命名権や看板の話をしたい会社にとっても、相手が自治体なのか運営会社なのかが分からないままです。
スタジアム整備のPFIは、自治体が持つ施設の設計・建設・維持管理・運営を、長期の契約で民間の事業者に一括して任せる手法です。指定管理者制度は運営だけを任せる別の制度で、国内で初めてPFIで整備された北九州スタジアムは、この2つを重ねて使っています。企業が入る立場は、事業のために作る会社(SPC)への出資、業務の受注、指定管理者、命名権や寄附の4つに分かれます。
この記事では、法律の条文と国・自治体の公式の資料をもとに、手法の違い、国内の実例、企業の入り方、命名権の契約相手を整理します。資料はいずれも2026年10月11日に確認したものです。制度の説明は一般的な内容の紹介であり、個別の事業の条件は自治体の募集要項と専門家に確認してください。
スタジアム整備のPFIとは|設計から運営までを民間に一括で任せる手法

PFIは、公共施設の建設、維持管理、運営などを、民間の資金と経営能力、技術的な能力を使って行う手法です。内閣府は、PFIを「公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法」と説明しています。根拠になる法律は、平成11年7月に制定された「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」で、PFI法と呼ばれます。
PFI法の第2条は、対象になる「公共施設等」の例に、教育文化施設や集会施設と並べてスポーツ施設を挙げています。スタジアムやアリーナは、条文のうえでもPFIの対象です。
上の図は、誰が建てるかを起点に、手法がどう分かれるかを示したものです。自治体が自分で建てる場合は、運営を指定管理者に任せるか、都市公園の中であれば管理許可を出す形があります。民間が建てて自治体へ渡す場合がPFIのBTO方式で、運営は指定管理者制度を併用するか、運営権を設定します。寄附で建てて自治体が持つ形と、民間が建ててそのまま持つ民設民営は、PFIとは別の道です。
従来の公共事業との違いは一括と長期と性能発注
PFIが従来の公共事業と違う点は、業務をまとめて長期で任せることです。内閣府の「PFI事業導入の手引き」は、従来は設計、建設、維持管理、運営の各業務を分割し、年度ごとに発注していたのに対し、PFIではすべての業務を長期の契約として一括してゆだねる、と説明しています。
発注の仕方も変わります。細かな仕様を決めるのではなく、性能を満たしていれば細かな手法は問わない「性能発注」で任せます。観客席の配置や設備の選び方に、運営する側の考えを設計の段階から入れられるのは、このためです。
資金の出どころも違います。従来は、設計と建設の費用を公的な資金でまかなっていました。PFIでは、事業のために作る会社(SPC。特別目的会社)が、必要な資金の一部を金融機関から借りるのが一般的だとされています。自治体は、建設の時期に一度に支出するのではなく、サービスの対価として分けて支払います。
(参考)PPP/PFIとは – 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)
(参考)PFI事業導入の手引き 基礎編 Q4 PFIの仕組み – 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)
(参考)民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成十一年法律第百十七号) – e-Gov法令検索
BTOとBOTは完成後の所有者が違う
PFIには、BTO、BOT、BOO、ROといった事業方式があります。BTOは、建てて(Build)、所有権を移して(Transfer)、管理・運営する(Operate)の頭文字です。内閣府の手引きによると、BTO方式では完成後の施設を地方公共団体が持ち、BOT方式とBOO方式では民間の事業者が持ちます。RO方式は、すでにある施設を改修する方式です。
お金の流れによる分け方もあります。自治体が事業者へ支払う形をサービス購入型、自治体は支払わず利用者の料金でまかなう形を独立採算型といいます。両方を合わせた形もあります。北九州スタジアムは、サービス購入型のBTO方式です。
募集の資料で「BTO・サービス購入型」と書かれていれば、完成した建物は自治体のものになり、事業者の主な収入は自治体からの支払いになる、と読めます。
(参考)PFI事業導入の手引き 基礎編 Q11 PFIの事業方式と事業類型 – 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)
Q. スタジアムのPFIとは何ですか?
自治体などが持つスタジアムの設計・建設・維持管理・運営を、長期の契約で民間の事業者に一括して任せる手法です。根拠はPFI法(平成11年制定)で、対象の施設の例にスポーツ施設が挙げられています。国内では、北九州スタジアムがPFIのBTO方式で整備され、2017年2月から運営されています。
スタジアムの整備と運営に使われる6つの手法
官民が連携してスタジアムを整備・運営する手法は、PFIだけではありません。スポーツ庁と経済産業省が平成30年7月にまとめた「スタジアム・アリーナ運営・管理計画検討ガイドライン」は、主な事業方式として下の表の6つを図で示しています。違いは、根拠になる法律と、任せる範囲、期間に表れます。
| 手法 | 主な法律 | しくみ | 期間の決まり | 例(同ガイドライン) |
|---|---|---|---|---|
| 指定管理者制度 | 地方自治法 | 自治体が指定した団体に、公の施設の管理を任せる | 法令上の制限なし | 広島市民球場、カシマサッカースタジアム |
| PFI(BTO、BOTなど) | PFI法 | 設計、建設、維持管理、運営を一括して任せる | 法令上の制限なし | 北九州スタジアム |
| PFI(コンセッション) | PFI法 | 所有権は公共に残したまま、運営権を民間に設定する | 法令上の制限なし | 有明アリーナ(当時は予定) |
| 公園施設の管理許可 | 都市公園法 | 公園管理者の許可を受けて、公園の施設を管理する | 1回の許可は10年まで | 宮城球場 |
| 普通財産の貸し付け | 地方自治法、民法、借地借家法 | 自治体と賃貸借の契約を結び、建物を借りて運営する | 法令上の制限なし | 舞洲アリーナ |
| 負担付き寄附 | 地方自治法(議会の議決) | 民間が建設して寄附し、自治体が所有する | — | 市立吹田サッカースタジアム |
スタジアム・アリーナの整備と運営に使われる主な手法(出典:スポーツ庁・経済産業省「スタジアム・アリーナ運営・管理計画検討ガイドライン」平成30年7月の表3と図11。負担付き寄附の法律の欄は地方自治法第96条をもとに本記事で補った)
このほかに、自治体が自分で建てて自分で運営する従来の方式と、民間が建てて持つ民設民営があります。以下、表の6つを順に見ていきます。
指定管理者制度|自治体が持つ施設の管理を任せる
指定管理者制度は、自治体が持つ「公の施設」の管理を、自治体が指定した法人などに任せる制度です。地方自治法の第244条の2第3項が根拠で、指定には期間を定めること、あらかじめ議会の議決を経ることが決められています。自治体が適当と認めれば、施設の利用料金を指定管理者の収入にできます。
総務省の調査では、令和6年4月1日の時点で、制度を導入している施設は全国で79,332施設です。このうち体育館や競技場、プールなどを含む「レクリエーション・スポーツ施設」は15,474施設で、全体の19.5%を占めます。この区分には海水浴場やキャンプ場なども含まれ、スタジアムだけの数字ではありません。
同じ調査で、民間企業など(株式会社、NPO法人、企業共同体など)が指定管理者になっている施設は、全体の44.5%にあたる35,572施設でした。指定の期間は「5年」が77.1%で最も多く、公募で選んでいる施設は53.4%です。5年という期間は、大きな設備投資を回収するには短く、長い期間を取れる手法が検討される理由の1つになっています。指定管理者として施設を運営している会社は、公共スポーツ施設の運営会社を紹介した記事でまとめています。
(参考)地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号) – e-Gov法令検索
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和6年4月1日現在) – 総務省
PFI|設計と建設と運営をまとめて任せる
PFIは、前の章で見たとおり、設計から運営までを一括して任せる手法です。指定管理者制度と、どちらか一方を選ぶ関係ではありません。スポーツ庁と経済産業省のガイドラインは、「BTO方式の場合は、指定管理等を併用し、SPCに運営を行わせる」と注記しています。
つまり、BTO方式で建てた施設は自治体の「公の施設」になり、その運営をSPCに任せるために、SPCを指定管理者に指定します。PFIの契約と指定管理者の指定が、同じ事業の中に並ぶわけです。
(参考)スタジアム・アリーナ運営・管理計画検討ガイドライン(平成30年7月) – スポーツ庁・経済産業省
コンセッション|所有は公共のまま運営権を設定する
コンセッションは、PFI法が定める「公共施設等運営権」を使う方式で、PFIの一種です。PFI法の第2条は、公共側が所有権を持ち、利用料金を徴収する施設について、運営などを行い、利用料金を自分の収入として受け取る事業を「公共施設等運営事業」と定義しています。自治体が運営権を設定するには、議会の議決が必要です。
内閣府のガイドラインは、指定管理者制度とコンセッションを表で比べています。期間は、指定管理者制度が「5年程度の場合が多い」のに対し、コンセッションは「20年以上が一般的」です。建物の改築や更新は、指定管理者制度では業務に含まれないことが一般的で、コンセッションでは業務の一環として行えます。運営権には抵当権を設定でき、金融機関が融資の担保にすることが一般的だとも書かれています。
新しく建てる施設では、整備をBT(建てて引き渡す)で行い、その後の運営をコンセッションで行う「BT+コンセッション手法」が使われます。内閣府は、愛知県の新体育館の事業で用いられた手法として紹介しています。
(参考)民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成十一年法律第百十七号) – e-Gov法令検索
(参考)スタジアム・アリーナに係るコンセッション事業活用ガイドライン(令和4年12月、令和5年12月改定版) – 内閣府 民間資金等活用事業推進室
公園施設の管理許可|都市公園の施設を許可で管理する
管理許可は、都市公園の中にある施設を、公園の管理者ではない者が許可を受けて設けたり管理したりする制度です。根拠は都市公園法の第5条です。スタジアムが都市公園の中にある場合に使える手法で、公園の外の施設には使えません。
期間には上限があります。同じ条文は、設置や管理の期間は10年を超えることができず、更新するときも同じだと定めています。PFI法で選ばれた事業者が行う場合は例外で、事業契約の期間(30年を超えるときは30年)の範囲で決められます。
(参考)都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号) – e-Gov法令検索
普通財産の貸し付け|建物を賃貸借で借りて運営する
普通財産の貸し付けは、自治体の財産のうち特定の用途を持たないもの(普通財産)を、民間の事業者に貸す方法です。ガイドラインは、事業者が自治体と定期建物賃貸借の契約を結び、管理・運営できる制度だと説明しています。例に挙がる大阪市の舞洲アリーナは、指定管理者制度から賃貸借の契約に切り替えた施設です。
スポーツ庁の資料によると、舞洲アリーナでは、市が指定管理料を払う形から、使用料の収入を得る形へ変わりました。借りているのは、プロバスケットボールクラブの運営会社です。公の施設としての条例の制約を受けにくくなるぶん、料金や使い方を事業者が決めやすくなります。
(参考)スタジアム・アリーナ改革推進の取組~改革指針及び民間活力導入による収益向上のポイント~(令和元年11月) – スポーツ庁
負担付き寄附|民間が建てた施設を自治体が受け取る
負担付き寄附は、条件を付けた寄附のことです。スタジアムでは、民間の団体が資金を集めて建設し、完成した施設を自治体へ寄附し、その施設の運営を指定管理者として長く任される、という組み合わせで使われています。地方自治法の第96条は、自治体が負担付きの寄附を受けるときに議会の議決が必要だと定めています。
ガイドラインの図は、寄附することで固定資産にかかる税などが免除されると注記しています。建物を自治体のものにしつつ、運営は建てた側が担う形です。自治体から見れば、初期の投資を負担せずに施設を持てます。
(参考)地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号) – e-Gov法令検索
(参考)スタジアム・アリーナ運営・管理計画検討ガイドライン(平成30年7月) – スポーツ庁・経済産業省
Q. PFIと指定管理者制度の違いは何ですか?
PFIは設計・建設から維持管理・運営までを長期の契約で一括して任せる手法で、指定管理者制度はすでにある公の施設の管理を任せる制度です。根拠の法律も、PFI法と地方自治法で異なります。両者は重ねて使われることがあり、BTO方式で建てた施設では、運営のためにSPCを指定管理者に指定します。
手法ごとの国内の実例|期間と金額は公式資料で確かめる
国内のスタジアムとアリーナを、国や自治体、運営者の公式の資料で確かめられた範囲で、手法ごとに並べると下の表になります。金額は、整備費、契約金額、運営権対価など種類が違うため、横に比べることはできません。
| 手法 | 施設 | 建物の所有者 | 運営者 | 期間 | 公式資料の金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| PFI(BTO)と指定管理者制度 | 北九州スタジアム | 北九州市 | SPCの株式会社ウィンドシップ北九州 | 運営15年(2017年2月から2032年3月) | 整備費99億円 |
| 公共施設等運営権(コンセッション) | 有明アリーナ IGアリーナ(愛知国際アリーナ) 国立競技場 |
東京都 愛知県 日本スポーツ振興センター |
株式会社東京有明アリーナ 株式会社愛知国際アリーナ 株式会社ジャパンナショナルスタジアム・エンターテイメント |
有明は令和4年6月から令和29年3月 IGは2025年4月から2055年3月 国立は令和6年11月29日から令和37年3月31日 |
有明は運営権対価93億8,682万7,396円(税込) IGは契約金額199億9,910万円(税込) 国立は運営権対価528億円(消費税等を含む提案額) |
| 寄附で建設して指定管理者制度 | 市立吹田サッカースタジアム | 吹田市 | 株式会社ガンバ大阪 | 平成27年9月30日から令和45年3月31日 | 寄附金と助成金の合計140億8,567万円 |
| 管理許可 | 宮城球場 | 宮城県 | 株式会社楽天野球団 | 10年間と延長5年間(平成30年の資料) | 球団の設備投資が2005年から約140億円(令和元年の資料) |
| 民設民営 | エスコンフィールドHOKKAIDO 長崎スタジアムシティ |
株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント 株式会社ジャパネットホールディングス |
同社 株式会社リージョナルクリエーション長崎 |
期間の定めなし | エスコンは整備費約600億円(スポーツ庁の資料) 長崎は事業費約1,000億円(運営者の公式サイト) |
手法ごとの国内の実例(出典:スポーツ庁の事例資料、東京都・愛知県・吹田市・北九州市・日本スポーツ振興センターの公表資料、長崎スタジアムシティ公式サイト。2026年10月11日確認。金額は種類と時点が異なる)
北九州スタジアム|国内で初めてPFIで整備したスタジアム
北九州スタジアム(愛称はミクニワールドスタジアム北九州)は、スポーツ庁の資料で「我が国初のPFI手法によるスタジアム整備プロジェクト」と紹介されています。サービス購入型のBTO方式で整備され、建物は北九州市が所有しています。観客席は15,300人です。
運営しているのは、SPCの株式会社ウィンドシップ北九州です。代表企業は株式会社九電工、構成員は株式会社奥村組と株式会社日本施設協会、協力会社は美津濃株式会社と株式会社梓設計で、SPCが指定管理者として維持管理と運営を担います。整備は2014年10月から2017年1月、運営は2017年2月から2032年3月までの15年間です。
整備費は99億円で、内訳はスポーツ振興くじ(toto)の助成金30億円と市債69億円とされています。同じ資料には、市がサービス購入料として年間約1億円を支出していること、2019年の利用料収入が約1,500万円だったことも書かれています。利用料だけでは運営費をまかなえず、市の支払いが収入の柱になっている例です。
(参考)ミクニワールドスタジアム北九州(北九州スタジアム)<全体概要> – スポーツ庁
(参考)北九州市におけるPPP/PFI事業について – 北九州市
有明アリーナとIGアリーナと国立競技場|運営権を設定した施設
運営権を設定した施設は、期間が長く、運営者の顔ぶれが広いのが特徴です。有明アリーナは、東京都が持つ施設に運営権を設定した例です。都が公表した実施契約の内容によると、運営権者は株式会社東京有明アリーナで、運営権対価は93億8,682万7,396円(税込)です。運営権者は、これとは別に、運営権対価を支払った後の税引前当期純利益の50%を都に支払います。運営期間は令和4年6月から令和29年3月までです。
IGアリーナ(愛知国際アリーナ)は、愛知県が「BTコンセッション方式」と呼ぶ手法で整備しました。県と株式会社愛知国際アリーナの契約は2021年5月31日に結ばれ、契約金額は199億9,910万円(消費税及び地方消費税を含む)です。設計・建設は2021年6月から2025年3月、維持管理・運営は2025年4月から2055年3月までの30年間で、グランドオープンは2025年7月13日でした。
国立競技場は、独立行政法人の日本スポーツ振興センターが持つ施設です。同センターは、令和6年11月29日付けで、運営権を株式会社ジャパンナショナルスタジアム・エンターテイメントに設定しました。存続期間は令和37年3月31日までです。事業者を選んだ時点の提案額は、運営権対価528億円(消費税等を含む)でした。
3施設の金額は、意味がそれぞれ違います。有明と国立の運営権対価は、運営する側が所有者へ支払うお金です。IGアリーナの契約金額は、県と事業者が結んだ整備と運営の契約の金額で、県の公表ページに内訳は書かれていません。
(参考)有明アリーナ管理運営事業 公共施設等運営権実施契約の内容 – 東京都
(参考)有明アリーナ管理運営事業報告書(令和6年度) – 東京都
(参考)愛知県新体育館整備・運営等事業特定事業契約の締結について – 愛知県
(参考)愛知国際アリーナ(IGアリーナ)について – 愛知県
(参考)国立競技場 公共施設等運営権の設定について – 独立行政法人日本スポーツ振興センター
(参考)「国立競技場運営事業等」の優先交渉権者を選定しました(令和6年6月3日) – 独立行政法人日本スポーツ振興センター
市立吹田サッカースタジアム|寄附で建てて市が持つ
市立吹田サッカースタジアム(Panasonic Stadium Suita)は、寄附で建てて自治体が持つ形の代表例です。吹田市によると、スタジアム建設募金団体が3万人以上の個人と700社以上の企業から集めた募金と、スポーツ振興くじの助成金などで建設され、平成27年9月30日に市へ寄贈されました。集まった資金は、法人721社から99億5,019万円、個人34,627名から6億2,215万円、助成金35億1,333万円で、合計140億8,567万円です。
運営は、指定管理者の株式会社ガンバ大阪が担っています。市の一覧では、指定の期間は平成27年9月30日から令和45年3月31日までで、公募によらない選考です。一般に5年が多い指定の期間に比べて、きわめて長い設定です。
スポーツ庁の資料は、この仕組みを、市が所有する施設でありながら、土地の賃料、維持管理と運営、大規模修繕などを指定管理者のガンバ大阪が負担する「実質上、民設民営の事業スキーム」と説明しています。指定管理料は0円です。
(参考)Panasonic Stadium Suita(市立吹田サッカースタジアム) – 吹田市
(参考)指定管理者制度導入施設一覧(令和8年4月1日現在) – 吹田市
(参考)パナソニックスタジアム吹田の整備及び管理運営~寄附による新たな官民連携の形~ – スポーツ庁(株式会社ガンバ大阪の説明資料)
(参考)スタジアム・アリーナ改革推進の取組~改革指針及び民間活力導入による収益向上のポイント~(令和元年11月) – スポーツ庁
宮城球場|管理許可で球団が運営する
宮城球場は、宮城県が持つ都市公園の中の球場で、プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地です。スポーツ庁の資料は、県が球団に管理許可を付与し、アマチュアに一定の貸し出しを行う条件で球場を貸し、運営の業務もすべて球団に移した仕組みだと説明しています。
球団は、維持管理と修繕の費用、球場の改修にかかる投資を負担する代わりに、営業権を得ています。令和元年の時点の資料では、球団が2005年から約140億円を設備に投じ、増築した設備はすべて寄附によって県の資産になる、とされています。期間は、平成30年の資料で「10年間と延長5年間」と紹介されています。
管理許可は1回10年までという上限があるため、長い投資を前提にする場合は、更新の考え方を自治体と確かめておくことになります。
(参考)スタジアム・アリーナ改革推進の取組~改革指針及び民間活力導入による収益向上のポイント~(令和元年11月) – スポーツ庁
(参考)スタジアム・アリーナ運営・管理計画検討ガイドライン(平成30年7月) – スポーツ庁・経済産業省
エスコンフィールドと長崎スタジアムシティ|民間が建てて持つ
民間が建てて持つ施設は、PFIにもコンセッションにも当たりません。エスコンフィールドHOKKAIDOは、北広島市の土地を借り、株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントが建設して所有し、運営しています。スポーツ庁の資料では、整備費は約600億円、市の役割は土地の造成と周辺のインフラ整備、土地の貸与です。
長崎スタジアムシティは、株式会社ジャパネットホールディングスが工場の跡地を取得して整備し、土地と建物を所有しています。運営はグループ会社の株式会社リージョナルクリエーション長崎です。公式サイトによると、開業は2024年10月14日、事業費は約1,000億円です。
民設民営では、公募で選ばれる事業者という立場はありません。建設や設備、運営の業務は、所有する会社との民間どうしの取引になります。
(参考)ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールド HOKKAIDO)<全体概要> – スポーツ庁
(参考)長崎スタジアムシティプロジェクト<全体概要> – スポーツ庁
Q. 北九州スタジアムはPFIで作られたのですか?
北九州スタジアムは、PFIのBTO方式(サービス購入型)で整備されたスタジアムです。スポーツ庁の資料では国内で初めてPFIで整備したスタジアムとされ、整備費は99億円、運営は2017年2月から2032年3月までの15年間です。建物は北九州市が所有し、SPCの株式会社ウィンドシップ北九州が指定管理者として運営しています。
PFIではSPCを中心に資金と契約が動く

PFIの事業では、選ばれた企業のグループが、その事業だけを行う会社であるSPCを作り、SPCが自治体と契約を結びます。スポーツ庁と経済産業省のガイドラインは、SPCは事業者を選ぶときの代表企業と構成企業の出資によって設立される、と説明しています。上の図は、SPCと関係者の間で動くものを示したものです。
自治体は、SPCが提供するサービスの対価を支払い、施設と運営のサービスを受け取ります。金融機関はSPCに融資し、SPCは自治体からの支払いなどを収入にして返済します。内閣府の手引きは、この借り入れを、事業の収益力を担保にする「プロジェクト・ファイナンス」と呼んでいます。
代表企業と構成企業は、SPCに出資したうえで、設計、建設、維持管理、運営の業務を引き受けます。出資をしない協力企業も、業務の委託を受けて加わります。利用者は利用料金を払い、サービスを受けます。北九州スタジアムでは、チームなどの利用者が払う利用料が、指定管理者であるSPCの収入になっています。
SPCの経営が行き詰まった場合に備える仕組みもあります。内閣府の手引きによると、自治体と金融機関はあらかじめ「直接協定」を結び、事業が最後まで続くように協議する仕組みを作ります。コンセッションの場合は、ここに運営権が加わり、SPCが自治体へ運営権対価を支払う流れになります。
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(参考)スタジアム・アリーナ運営・管理計画検討ガイドライン(平成30年7月) – スポーツ庁・経済産業省
企業がスタジアムのPFI事業に入る4つの立場
企業がスタジアムの整備と運営に入る立場は、SPCへの出資、業務の受注、指定管理者、命名権や寄附の4つに分けられます。建設会社や運営会社だけの話ではなく、金融、放送、不動産、スポーツ用品の会社も実際に加わっています。この分け方は、公式の資料に出てくる立場を本記事で整理したものです。
SPCに出資する代表企業と構成企業
事業の中心に入るのが、SPCに出資する立場です。有明アリーナでは、株式会社電通が代表企業で、株式会社NTTドコモ、日本管財株式会社、株式会社アミューズ、Live Nation Japan合同会社、株式会社電通ライブ、アシックスジャパン株式会社が出資しました。広告、通信、ビル管理、音楽、スポーツ用品の会社が並びます。
IGアリーナのSPCは、前田建設工業株式会社、株式会社NTTドコモ、Anschutz Sports Holdings、三井住友ファイナンス&リース株式会社、東急株式会社、中部日本放送株式会社、株式会社日本政策投資銀行、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド株式会社が設立しました。設計・建設の期間は前田建設工業、維持管理・運営の期間はNTTドコモが代表企業です。
国立競技場の運営では、NTTドコモを代表企業に、前田建設工業株式会社、SMFLみらいパートナーズ株式会社、公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が構成企業になりました。リーグそのものが、運営する側に入った例です。
(参考)愛知県新体育館整備・運営等事業特定事業契約の締結について – 愛知県
(参考)「国立競技場運営事業等」の優先交渉権者を選定しました(令和6年6月3日) – 独立行政法人日本スポーツ振興センター
出資をせずに業務を受ける協力企業
出資をしなくても、協力企業として事業に加わる道があります。東京都は、有明アリーナの発表で、出資した企業とは別に「SPCへの出資を伴わない協力企業」を挙げています。北九州スタジアムでも、美津濃株式会社と株式会社梓設計が協力会社として紹介されています。
地域の企業も対象です。内閣府の手引きは、地域の企業が応募グループの代表企業、構成員、協力企業として参加していると説明しています。佐賀県のSAGAアリーナでは、県内の企業が51%を出資するSPCが、指定管理者として施設を運営しています。
中小の会社にとっては、大きなグループの協力企業として得意な業務を担う形が、現実的な入り口になります。運営の分野でどんな会社が動いているかは、スタジアムの運営会社を取り上げた記事が参考になります。
(参考)ミクニワールドスタジアム北九州(北九州スタジアム)<全体概要> – スポーツ庁
(参考)PFI事業導入の手引き 基礎編 Q15 地域の企業の参加 – 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)
自治体が公募する指定管理者
すでにある施設の運営に入るなら、指定管理者の公募が入り口です。総務省の調査では、指定管理者制度を導入している施設の53.4%が公募で選んでおり、都道府県の施設では66.1%、指定都市では67.7%です。選ぶ基準は、施設のサービス向上に関することが88.1%で最も多く、次が団体の業務を遂行する能力でした。
一方で、プロのクラブが本拠地にする施設では、公募によらずにクラブを指定する例もあります。吹田市はガンバ大阪を公募によらない選考で指定し、広島市は球団と協定を結んだうえで非公募で指定しています。本拠地のスタジアムを狙う場合は、クラブと組むか、クラブが運営する施設の業務を受ける形になります。
(参考)公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(令和6年4月1日現在) – 総務省
(参考)指定管理者制度導入施設一覧(令和8年4月1日現在) – 吹田市
(参考)スタジアム・アリーナ改革推進の取組~改革指針及び民間活力導入による収益向上のポイント~(令和元年11月) – スポーツ庁
命名権と広告と寄附で関わる企業
整備にも運営にも加わらない会社は、命名権、広告、寄附で関わります。市立吹田サッカースタジアムの建設には、721社の法人が寄附をしました。FC今治のスタジアムでは、今治市が企業版ふるさと納税を募り、建設の資金に充てています。寄附の税の扱いは、企業版ふるさと納税でスポーツを支援する方法で解説しています。
命名権と広告は、契約する相手を先に確かめる必要があります。同じ自治体の施設でも、手法によって窓口が変わるためです。次の章でくわしく見ます。
(参考)パナソニックスタジアム吹田の整備及び管理運営~寄附による新たな官民連携の形~ – スポーツ庁(株式会社ガンバ大阪の説明資料)
命名権の契約相手は施設の所有者か運営権者かで変わる

命名権を誰と契約するかは、建物を誰が持ち、運営権が設定されているかで変わります。上の図は、公式の発表で確かめられた6つの施設を、建物の所有と、命名権を扱っている者の2つの軸に置いたものです。配置は本記事の整理です。
運営権を設定した施設では、運営権者が契約の相手になっています。愛知県は、IGアリーナの名称を発表した資料で、「BTコンセッション方式を採用しており、ネーミングライツの権利は整備・運営事業者が有している」ため、契約はIGグループと株式会社愛知国際アリーナが結んだと説明しています。国立競技場も、運営権者の株式会社ジャパンナショナルスタジアム・エンターテイメントが三菱UFJフィナンシャル・グループとの契約を発表し、2026年1月1日から2030年12月31日までの5年間、呼称を「MUFGスタジアム」としています。
自治体が持ち、運営権を設定していない施設では、自治体が窓口になっている例があります。PFIで整備した北九州スタジアムは、北九州市が株式会社ミクニとの契約の更新を発表しており、金額は年間2,000万円(消費税及び地方消費税相当額を除く)、期間は令和8年2月1日から令和11年1月31日までの3年です。管理許可の宮城球場も、宮城県が楽天グループ株式会社との契約更新を発表しており、契約額は年2億100万円(税別)、期間は令和8年1月1日から令和10年12月31日までです。
民間が持つ施設では、所有し運営する会社が相手です。エスコンフィールドHOKKAIDOの命名権は、株式会社日本エスコン(当時の社名)が、球団と、球場を保有し運営する株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの2社と契約を結んで取得しました。長崎スタジアムシティでは、ソフトバンク株式会社が、ジャパネットとの連携の中で2024年から2028年までの命名権を取得しています。
ただし、自治体の施設でどこまでを運営者に任せるかは、施設ごとの決め方によります。命名権や看板を検討するときは、所有者、運営者、運営権の有無の3点を先に確かめ、募集の窓口を特定してください。自治体が出す募集要項の読み方は下の記事で、看板などの広告枠の料金はスタジアム広告の料金の記事で扱っています。
あわせて読みたいネーミングライツ募集の読み方|スポーツ施設に応募する企業の手順›
(参考)愛知県新体育館のネーミングライツによる名称等の決定について – 愛知県
(参考)「ミクニワールドスタジアム北九州」ネーミングライツスポンサー契約が更新されました。 – 北九州市
(参考)宮城球場のネーミングライツ契約更新のお知らせ – 宮城県
(参考)北海道日本ハムファイターズ新球場のネーミングライツ取得のお知らせ(2020年1月29日) – 株式会社日本エスコン
(参考)ジャパネットとソフトバンクが長崎スタジアムシティプロジェクトで連携(2022年12月19日) – ソフトバンク株式会社
スポーツ施設のPFIは10年で50件が国の目標|募集から終了までの流れ
スポーツ施設は、国がPFIを重点的に広げる分野の1つで、案件は今後も出てくる見込みです。募集が始まってから資料を読み始めると、グループを組む時間が足りません。国の目標と、事業が進む順番を押さえておくと、動き出す時期を決めやすくなります。
国は令和13年度までの10年間で50件を目標にしている
内閣府の「PPP/PFI推進アクションプラン(令和8年改定版)」は、重点分野の1つに「スポーツ施設(スタジアム・アリーナ等)」を挙げ、10年間の目標を50件としています。対象の施設はスタジアム、アリーナ、体育館、プールなどで、対象の手法は「公共施設等運営事業等のPFI」です。10年間とは、令和4年度から令和13年度までを指します。
50件は、スタジアムとアリーナだけの数ではありません。また、令和8年度からは、運営権を使わないPFIも数える対象に加わりました。同じプランは、初期の投資に対して一定の比率以上の民間企業からの投資が得られ、エンターテイメントを含む複合的な機能を持つスポーツ施設を、重点的な国費の支援などの対象にするとも書いています。
(参考)PPP/PFI推進アクションプラン(令和8年改定版)(令和8年6月11日) – 内閣府 民間資金等活用事業推進室
募集から選定と建設と運営を経て終了まで進む
PFIの事業は、発案、導入の可能性の調査、事業者の選定、事業の実施の順に進みます。PFI法では、自治体が実施方針を定めて公表し、事業を選び、公募などの方法で事業者を選ぶ、という流れです。民間の事業者の側から、実施方針を定めるよう自治体に提案することもできます。
IGアリーナの日付を追うと、流れがつかめます。県が事業者と契約したのは2021年5月31日、設計・建設は2021年6月から2025年3月、運営権の設定は2025年4月1日、グランドオープンは2025年7月13日でした。運営は2055年3月まで続きます。契約から開業まで約4年、終了まで約34年という長さです。
終わり方も契約で決まっています。有明アリーナの実施契約は、事業の終了日までに、都または都が指定する者へ事業が円滑に引き継がれるよう、契約や許認可の承継への協力、最新の文書の提供などを運営権者に求めています。
応募を考えるときに読む書類は、実施方針、募集要項(入札説明書)、要求水準書、契約書の案です。応募の資格、リスクの分担、解除と補償、利用料金、命名権の扱いは、事業ごとにこれらの書類で決まります。ここまでの説明は一般的な内容の紹介ですので、個別の事業は自治体の募集要項を確かめ、弁護士などの専門家に相談してください。
(参考)PFI事業導入の手引き 基礎編 Q7 PFIを進めるスケジュール – 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)
(参考)民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成十一年法律第百十七号) – e-Gov法令検索
(参考)愛知県新体育館整備・運営等事業特定事業契約の締結について – 愛知県
(参考)愛知国際アリーナ(IGアリーナ)について – 愛知県
(参考)有明アリーナ管理運営事業 公共施設等運営権実施契約の内容 – 東京都
まとめ|スタジアムのPFI事業は所有と運営と期間で読み分ける
スタジアムの整備と運営の手法は、誰が建て、誰が持ち、誰が運営するかで分かれます。要点を振り返ります。
- PFIは、設計・建設・維持管理・運営を長期の契約で一括して任せる手法で、根拠はPFI法。指定管理者制度とは重ねて使われる
- コンセッションはPFIの一種で、所有権を公共に残したまま運営権を設定する。期間は20年以上が一般的とされ、指定管理者制度は5年が77.1%
- 実例は、北九州スタジアム(PFIのBTO方式、運営15年)、有明アリーナ・IGアリーナ・国立競技場(運営権)、市立吹田サッカースタジアム(寄附と指定管理者制度)、宮城球場(管理許可)など
- 企業が入る立場は、SPCへの出資、協力企業としての受注、指定管理者、命名権・広告・寄附の4つ
- 命名権の契約相手は、運営権を設定した施設では運営権者、民間が持つ施設では所有者と運営者で、自治体が窓口の施設もある
気になる施設があるときは、まず自治体の資料で、所有者、運営者、手法、期間の4つを確かめてください。そのうえで、自社が出資、受注、命名権のどの立場で入るのかを決めると、話す相手がはっきりします。スポーツ産業の全体の課題は、日本のスポーツ業界の課題をまとめた記事で整理しています。
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