ネーミングライツ募集の読み方|スポーツ施設に応募する企業の手順

ネーミングライツ募集の読み方|スポーツ施設に応募する企業の手順 スポーツビジネス

地元の体育館や球場に、自社の名前を付けられないか。そう考えて自治体のサイトを開くと、数ページから20ページを超えるものまで、募集要項のPDFが並んでいます。最低額、応募資格、配点表、費用負担と項目が多く、どこから読めばよいのか、締切までに何をそろえればよいのかが見えにくいはずです。

ネーミングライツの募集には、自治体が施設を指定して募る型と、企業の側から施設を選んで提案する型の2つがあり、どちらも金額だけでなく、愛称、経営の安定、地域貢献を合わせた点数で選ばれます。配点表を確認できた5つの要項では、金額の配点は100点のうち30点から50点でした。2026年10月10日時点で受付期間内と確認できたスポーツ施設の募集は、静岡県(11月9日まで)、和歌山県(12月4日まで)、埼玉県(随時)の3件です。

この記事では、自治体の募集要項と契約書の案の文言をもとに、応募の流れと、読み落としやすい条件を整理します。命名権料の水準や広告としての効果には踏み込まず、「どう応募するか」に絞りました。

  1. ネーミングライツの募集は施設指定型と提案型の2つの方式で行われる
    1. 施設を指定して募る型は最低額と期間が先に決まっている
    2. 企業から提案する型は事前相談から始まる
  2. いま応募できるスポーツ施設の募集|2026年10月10日時点の3件
    1. 静岡県は県営都市公園の7施設を11月9日まで受付
    2. 和歌山県は紀三井寺公園の5施設を一括で12月4日まで受付
    3. 埼玉県は県営公園と緑道を随時受付
  3. 募集要項で先に確かめる3つの条件|応募資格と提出書類と愛称
    1. 応募資格は税の滞納と業種と所在地で決まる
    2. 提出書類は決算書3期分と証明書を締切から逆算してそろえる
    3. 愛称は施設の種類が分かる語と文字数の条件に合わせる
  4. 審査の配点表では金額が100点のうち30点から50点
    1. 所沢市の選定は500点満点で8点差
    2. 最高額との比率で付ける方式は最低額でも点が入る
    3. 仙台市の方式は最低額ちょうどの応募が0点になる
    4. 契約年数と足切りの条件も点数に入る
  5. 選定後は優先交渉と市民意見の募集を経て契約に進む
  6. 命名権料のほかにかかる費用と契約終了時の扱い
    1. 看板の設置と書き換えは命名権者の負担とする要項が多い
    2. 休館中の命名権料は返還なしと減額に分かれる
    3. 途中解除には違約金の定めがある
    4. 契約終了時は看板を撤去し更新は優先交渉で決まる
    5. 税務の扱いは契約内容を持って税理士に確かめる
  7. まとめ|スポーツ施設のネーミングライツ募集は要項と契約書案から読む

ネーミングライツの募集は施設指定型と提案型の2つの方式で行われる

自治体のネーミングライツの募集は、大きく2つの方式に分かれます。自治体が施設と条件を決めて公募する型と、企業が施設を選んで愛称と金額を提案する型です。呼び名は自治体ごとに違うので、要項の最初のページで、どちらの方式なのかを確かめます。

方式 施設と条件を決める側 公式の呼び名の例 受付の期間
施設を指定して募る型 自治体が、施設・金額・契約期間を決めて公募する 「施設特定募集型」(柏市・奈良市)、「特定募集型」(出雲市・さいたま市) 1か月から2か月ほどの期間を区切る例が多い
企業から提案する型 企業が、施設を選び、愛称と金額を提案する 「提案募集型」(柏市・奈良市・さいたま市)、「提案型募集方式」(仙台市) 期間を区切る自治体と、随時受け付ける自治体がある

ネーミングライツの募集の2つの方式(出典:柏市・奈良市・出雲市・さいたま市・仙台市の公表資料。2026年10月10日に確認)

施設を指定して募る型は最低額と期間が先に決まっている

この型では、対象の施設、最低額または希望額、契約期間、募集の締切を、自治体が先に決めています。柏市は、市が選定した施設についてスポンサーを募集するものを「施設特定募集型」と呼んでいます。出雲市は、2026年3月の全員協議会の資料で、「特定募集型」の募集期間を60日間とする考えを示しました。

要項に書かれた金額は、「最低額」なのか「希望額」なのかで意味が変わります。静岡県は、最低募集金額に満たない金額の応募を失格としています。一方、長野市の長野運動公園総合体育館の募集(2026年4月17日に終了)は、年額500万円以上(消費税込み)を希望金額としつつ、希望金額未満でも応募できると書いていました。

(参考)ネーミングライツ・スポンサーを募集 – 柏市

(参考)ネーミングライツについて(全員協議会資料 令和8年3月25日) – 出雲市 総務部行政改革課

(参考)県営都市公園ネーミングライツパートナー募集要項 – 静岡県

(参考)長野市「長野運動公園総合体育館」ネーミングライツ・パートナー募集要項 – 長野市

企業から提案する型は事前相談から始まる

提案する型では、企業が施設を選び、愛称と金額を自治体に示します。柏市は「提案募集型」について、応募を検討する場合は担当課に事前に相談するよう求め、料金は希望する額を提案する形です。仙台市の令和8年度の募集は、スポーツ施設や公園などの市民利用施設を対象に、最低募集金額を年間100万円(消費税別途)としていました。

ただし、提案した会社がそのまま選ばれる制度とは限りません。柏市は、公募したほうが多くのスポンサーが集まると審査委員会が判断した場合、公募を行う可能性があると書いています。奈良市のガイドラインも、複数の応募が見込まれるときは、手続きの途中で施設特定募集型に転換することがあるとしています。多摩市は、応募書類を受け付けたあと、市の公式ホームページでおおむね1か月間告知し、その間に届いた応募も選考の対象にします。

期間を定めずに受け付ける自治体もあります。日光市は、年額50万円以上(税込)、契約期間3年以上5年以下の条件で、企画提案型の随時募集の要項を公表しています(令和5年12月改訂)。野田市は2022年、3月の募集で応募がなかった施設について、同じ条件のまま先着順の随時募集に切り替えました。随時募集は要項の日付が古いことがあるので、いまも受け付けているかを担当課に確かめてから準備を始めてください。

応募が無いまま終わる募集もあります。仙台市の令和8年度の募集は2026年9月30日に締め切られ、市のページには「応募はございませんでした」と追記されました。前の年度の同じ制度では4施設で契約が成立しており、同じ制度でも年によって結果が違います。自治体が過去に公表した契約額の例は、スポーツスポンサー料の相場の記事で紹介しています。

あわせて読みたいスポーツ命名権の費用と効果|企業担当者向け2026年最新ガイド›

(参考)ネーミングライツ・スポンサーを募集 – 柏市

(参考)令和8年度ネーミングライツパートナー募集要項 – 仙台市

(参考)奈良市ネーミングライツ導入に関するガイドライン(平成27年12月24日制定) – 奈良市

(参考)多摩市ネーミングライツ・スポンサー募集要項(公共施設及びソフト事業)(令和8年2月改訂) – 多摩市

(参考)日光市ネーミングライツ事業企画提案型募集要項(随時募集)(令和5年12月改訂) – 日光市

(参考)ネーミングライツパートナーを募集~10月17日(月)から先着順で受付開始~ – 野田市

(参考)【募集終了しました】令和8年度ネーミングライツパートナーの募集を行います – 仙台市

(参考)ネーミングライツ契約締結による新愛称の運用を開始します – 仙台市

いま応募できるスポーツ施設の募集|2026年10月10日時点の3件

2026年10月10日時点で、受付期間内であることを要項や募集ページで確認できたスポーツ施設の募集は3件です。全国の募集を網羅した一覧ではなく、確認できた例として見てください。金額は、自治体によって税込と税別が分かれます。

自治体と対象 受付期間 金額 契約期間
静岡県|県営都市公園の7施設 2026年9月9日から11月9日まで 最低募集価格 年額150万円から650万円(税込、施設ごと) 2027年4月1日から5年間
和歌山県|紀三井寺公園の5施設(一括) 2026年10月6日から12月4日まで 年額2,000万円以上を希望(税込、5施設一括) 2027年4月1日から3年以上5年以内
埼玉県|県営公園と緑道 随時(応募が届くと2週間後を目途に締切) 契約希望額 年間100万円・20万円・10万円(税別、対象ごと) 5年以上10年以下

2026年10月10日時点で受付期間内と確認できたスポーツ施設のネーミングライツの募集(出典:静岡県・和歌山県の募集要項、埼玉県の募集ページ)

静岡県は県営都市公園の7施設を11月9日まで受付

静岡県は、県営都市公園のネーミングライツパートナーを、2026年9月9日から11月9日まで募集しています。対象は、草薙総合運動場の陸上競技場・体育館(このはなアリーナ)・庭球場・球技場、愛鷹広域公園の多目的競技場・野球場、遠州灘海浜公園の球技場の7施設です。最低募集価格(税込)は施設ごとに決まっていて、球技場の年額150万円から、体育館の年額650万円までの幅があります。

契約期間は、2027年4月1日から5年間です。提出は持参か郵送で、郵送は11月9日必着とされています。同じ施設に複数の提案を出すことはできません。

(参考)県営都市公園ネーミングライツパートナー募集要項 – 静岡県

(参考)県営都市公園の維持管理に関する業務(ネーミングライツ) – 静岡県

和歌山県は紀三井寺公園の5施設を一括で12月4日まで受付

和歌山県は、紀三井寺公園の陸上競技場、野球場、補助競技場・球技場、庭球場、登はん競技場の5施設について、ネーミングライツ・パートナーを募集しています。受付は2026年10月6日の午前10時から12月4日の午後5時まで(必着)です。応募は5施設の一括に限られ、県は、年額2,000万円以上(消費税と地方消費税の相当額を含む)を希望しています。

契約期間は、2027年4月1日から3年以上5年以内です。応募が1者だけで、応募金額が県の希望金額の50%未満の場合は、選定されません。広告代理店を通じた申し込みもできますが、委任状を合わせて提出します。

(参考)紀三井寺公園ネーミングライツ・パートナー募集要項 – 和歌山県

(参考)紀三井寺公園ネーミングライツ・パートナーの募集 – 和歌山県

埼玉県は県営公園と緑道を随時受付

埼玉県は、県営公園と緑道のネーミングライツパートナーを、通年で募集しています。契約希望額(年間、税別)は、公園の名称が100万円、野球場やテニスコートなどの特定スポーツ施設が20万円、その他の公園施設が10万円で、命名権料は契約希望額以上とされています。希望する契約期間は5年以上10年以下です。

随時受付ですが、応募の書類が県に届くと、2週間後を目途に締切日が設定されます。先に応募した会社があると、検討に使える期間は短くなります。対象の公園と施設は、県のページで確かめてください。

(参考)県営公園&緑道でネーミングライツパートナーを通年募集中! – 埼玉県

Q. ネーミングライツを募集中のスポーツ施設はありますか?

2026年10月10日時点で受付期間内と確認できたのは、静岡県の県営都市公園7施設(11月9日まで)、和歌山県の紀三井寺公園5施設(12月4日まで)、埼玉県の県営公園と緑道(随時)の3件です。全国の募集を網羅した一覧ではないので、応募したい施設がある自治体の募集ページも確かめてください。

募集要項で先に確かめる3つの条件|応募資格と提出書類と愛称

金額を検討する前に、そもそも応募できるのか、締切までに書類がそろうのかを確かめます。読むのは、募集要項の「応募資格」「提出書類」「愛称の条件」の3か所です。

応募資格は税の滞納と業種と所在地で決まる

多くの要項は、応募できない者を列挙しています。所沢市は、法人市民税などの租税公課を滞納しているものや、公職にあるものが役員を務めるものを挙げています。静岡県は、消費者金融・高利貸し、たばこ、ギャンブル(宝くじを除く)に係るものや、興信所・探偵事務所などを対象から外しています。

経営の状態を資格にする自治体もあります。仙台市は、経常利益が直近3期連続で赤字の団体と、直近の決算期末で債務超過の団体は応募できないとしていました。

所在地の条件も分かれます。小城市の芦刈文化体育館の募集(2024年6月14日に終了)は、市内に事業所がある法人格を持つ団体に限り、個人からの応募は受け付けませんでした。日光市は、市内外を問わないとしています。自社の業種や所在地が条件に合わないと分かったときは、近くのほかの自治体の要項も読んでみてください。

(参考)所沢市民体育館ネーミングライツパートナー募集要項 – 所沢市

(参考)県営都市公園ネーミングライツパートナー募集要項 – 静岡県

(参考)令和8年度ネーミングライツパートナー募集要項 – 仙台市

(参考)小城市芦刈文化体育館 ネーミングライツ募集要項 – 小城市

(参考)日光市ネーミングライツ事業企画提案型募集要項(随時募集)(令和5年12月改訂) – 日光市

提出書類は決算書3期分と証明書を締切から逆算してそろえる

提出書類で共通しているのは、所定の申込書や提案書と、決算書です。決算書は、所沢市、仙台市、静岡県が直近3か年分、和歌山県が前3事業年度分を求めています。所沢市は、登記簿謄本を申請日前3か月以内に取得したものとし、納税証明書も求めています。

提出の方法と、提出したあとの扱いも要項で違います。仙台市は持参、郵送、Eメールのいずれかで受け付け、静岡県は持参か郵送に限っています。差し替えについては、所沢市が一切認めないとし、和歌山県は受付期間内に限り認めるとしています。

質問や事前相談の締切は、応募の締切より早く来ます。仙台市は、一覧にない施設に提案したい場合の事前相談を、応募締切の約1か月前の8月31日までとしていました。証明書の取得にも日数がかかるので、締切から逆算して早めに手配します。

(参考)所沢市民体育館ネーミングライツパートナー募集要項 – 所沢市

(参考)令和8年度ネーミングライツパートナー募集要項 – 仙台市

(参考)県営都市公園ネーミングライツパートナー募集要項 – 静岡県

(参考)紀三井寺公園ネーミングライツ・パートナー募集要項 – 和歌山県

愛称は施設の種類が分かる語と文字数の条件に合わせる

愛称にも条件があります。静岡県は、体育館なら「アリーナなど」、野球場なら「スタジアム、野球場など」と、施設の利用形態が分かる字句を含めるよう求めています。文字数は、小城市が10文字以内、多摩市が15文字以内としていました。

付けるのは「愛称」です。静岡県は、条例で定める施設の正式名称を変更するものではないと書いています。所沢市は、利用者の混乱を避けるため、契約期間中の愛称の変更は原則できないとしています。社名の変更や合併の予定がある場合は、応募の前に担当課に相談してください。

愛称を使えない場面があることも、要項に書かれています。静岡県は、国際イベントの開催や興行主の意向により、イベントの開催期間中は愛称の使用が制限される場合があるとしています。

(参考)県営都市公園ネーミングライツパートナー募集要項 – 静岡県

(参考)小城市芦刈文化体育館 ネーミングライツ募集要項 – 小城市

(参考)多摩市ネーミングライツ・スポンサー募集要項(公共施設及びソフト事業)(令和8年2月改訂) – 多摩市

(参考)所沢市民体育館ネーミングライツパートナー募集要項 – 所沢市

審査の配点表では金額が100点のうち30点から50点

ネーミングライツの募集の審査で金額に配られる点数を3つの段で示した図解。100点のうち仙台市と三次市が50点、静岡県の草薙総合運動場が40点、所沢市と和歌山県が30点

選ばれるのは、いちばん高い金額を出した会社とは限りません。配点表を確認できた5つの要項では、金額の配点は100点のうち30点から50点でした。所沢市と和歌山県が30点、静岡県(草薙総合運動場)が40点、仙台市と三次市が50点です。

残りの点は、愛称、経営の安定、地域貢献、契約年数などに配られます。金額の点をどう計算するかは自治体で違うので、配点表と採点の式を合わせて読みます。

所沢市の選定は500点満点で8点差

所沢市民体育館の募集(2026年2月20日から3月23日)では、優先交渉権者に選ばれた会社が500点満点の424点、もう1者が416点で、差は8点でした。市の発表には、提出された書類やプレゼンテーションの内容などを審査したと書かれています。

所沢市の配点(委員1人あたり100点)は、ネーミングライツ料が30点、パートナーとしての適格性が30点、愛称案が20点、期間が20点です。適格性には、経営の安定性、地域活動や社会貢献活動への取組、法令遵守などが入ります。三次市のみよし運動公園の募集(2023年)は、ネーミングライツ料が50点、愛称案・表示計画案が30点、適格性と地域貢献等が各10点でした。長野市の要項のように、配点表を載せず、「総合的な審査」とだけ書くものもあります。

(参考)所沢市民体育館ネーミングライツパートナー募集要項 – 所沢市

(参考)所沢市民体育館ネーミングライツパートナーの選定結果について – 所沢市

(参考)三次市みよし運動公園のネーミングライツパートナーを募集します(令和5年8月1日) – 三次市

(参考)長野市「長野運動公園総合体育館」ネーミングライツ・パートナー募集要項 – 長野市

最高額との比率で付ける方式は最低額でも点が入る

金額の点の付け方で多いのは、いちばん高い応募金額に対する比率で計算する方式です。所沢市、静岡県、和歌山県がこの式を使っています。和歌山県の要項の算出例では、応募金額が2,200万円の者が30点、2,000万円の者が27点です。

この方式では、最低額ちょうどの応募でも、最高額との比率に応じた点が入ります。静岡県は、応募が1事業者の場合、最低募集金額以上の金額であれば満点としています。

(参考)所沢市民体育館ネーミングライツパートナー募集要項 – 所沢市

(参考)県営都市公園ネーミングライツパートナー募集要項 – 静岡県

(参考)紀三井寺公園ネーミングライツ・パートナー募集要項 – 和歌山県

仙台市の方式は最低額ちょうどの応募が0点になる

仙台市の採点は、最低募集金額を超えた部分だけを比べます。要項は、最低募集金額を超える提案と最低募集金額での提案が競合した場合、最低募集金額での提案は点数が0点になると明記しています。要項の例では、最低100万円に対して300万円、200万円、100万円の応募があると、金額の点は50点、25点、0点です。

応募金額を除いた合計が20点に満たない場合は失格、という決まりもあります。一方で、競合が無ければ最低額でも成立します。仙台市の令和7年度の募集は、最低額を年間100万円以上(特定の2施設は250万円以上)とし、成立した4施設のうち2施設は年額100万円(消費税別途)でした。

(参考)令和8年度ネーミングライツパートナー募集要項 – 仙台市

(参考)令和7年度提案型施設命名権の優先交渉権者を決定しました – 仙台市

(参考)ネーミングライツ契約締結による新愛称の運用を開始します – 仙台市

契約年数と足切りの条件も点数に入る

契約年数が点になる自治体があります。所沢市は、提案された期間が10年間なら20点、5年間なら10点です。和歌山県は、5年が10点、4年が7点、3年が4点です。長く約束するほど点は上がりますが、契約期間中は愛称を変えられず、途中でやめれば違約金がかかる場合があります。

足切りの条件も読んでおきます。和歌山県は、合計の得点が60点未満の場合は選定しません。静岡県は、最低募集金額に満たない応募のほか、消費税を含む応募金額に1万円以下の端数がある場合や、提出書類に不備がある場合を失格としています。

(参考)所沢市民体育館ネーミングライツパートナー募集要項 – 所沢市

(参考)紀三井寺公園ネーミングライツ・パートナー募集要項 – 和歌山県

(参考)県営都市公園ネーミングライツパートナー募集要項 – 静岡県

Q. ネーミングライツは最低額で応募しても選ばれますか?

選ばれることがあります。静岡県の要項は、応募が1事業者の場合、最低募集金額以上の金額であれば金額の点を満点としています。仙台市の令和7年度の募集でも、成立した4施設のうち2施設は年額100万円(消費税別途)でした。ただし仙台市の採点の式では、他社がより高い金額で応募すると、最低募集金額での提案は金額の点が0点になります。

選定後は優先交渉と市民意見の募集を経て契約に進む

ネーミングライツの募集で選定されたあとの自治体と関係者のやり取りを示す関係図。自治体は優先交渉権者と協議し、市民や関係機関の意見を聞き、議会に報告して契約に進む

審査で選ばれた会社は、すぐに契約者になるのではなく、「優先交渉権者」として自治体との協議に入ります。奈良市のガイドラインは、スポンサーの募集、審査委員会による審査と優先交渉権者の決定、優先交渉権者との協議、関係機関等への意見聴取、スポンサーの決定と契約締結、施設の表示変更、愛称の使用開始という順を示しています。応募書類の提出から愛称の使用開始までには、いくつもの段階があります。

仙台市は、優先交渉権者を選んだあとに市民意見の募集を行い、その結果を踏まえて協議し、契約を結ぶとしています。令和8年度の要項の予定は、9月30日に応募締切、11月中旬に優先交渉権者と愛称案の決定、11月下旬から12月下旬に市民意見の募集、翌年2月上旬に契約締結でした。前の年度に成立した4施設は、2026年4月1日に新しい愛称の運用が始まっています。

議会への報告を定める自治体もあります。郡山市の基本方針は、対象施設が決まった場合などに、市議会へ適宜報告するとしています。さいたま市のガイドラインは、十分な事前説明が行われず、住民の強い反対で導入を見送った自治体があることにも触れています。

優先交渉権者に決まった時点で、社名が公表される自治体もあります。所沢市は、応募者については応募者数だけを公表し、優先交渉権者については企業名を公表するとしています。社内外への発表の段取りは、契約の締結ではなく、この時点に合わせて組んでおきます。

募集から愛称の使用開始までは、半年ほどを見込みます。静岡県と和歌山県の募集は、どちらも2026年の秋に締め切り、2027年4月1日から契約が始まる日程です。看板の書き換えは、その間に進めることになります。

(参考)奈良市ネーミングライツ導入に関するガイドライン(平成27年12月24日制定) – 奈良市

(参考)令和8年度ネーミングライツパートナー募集要項 – 仙台市

(参考)ネーミングライツ契約締結による新愛称の運用を開始します – 仙台市

(参考)郡山市ネーミングライツ実施に関する基本方針(令和8年6月一部改正) – 郡山市

(参考)さいたま市ネーミングライツ導入ガイドライン(令和7年1月、最終改正 令和8年3月) – さいたま市 行財政改革推進部

(参考)所沢市民体育館ネーミングライツパートナー募集要項 – 所沢市

(参考)県営都市公園ネーミングライツパートナー募集要項 – 静岡県

(参考)紀三井寺公園ネーミングライツ・パートナー募集要項 – 和歌山県

命名権料のほかにかかる費用と契約終了時の扱い

要項に書かれた金額は、命名権料だけの額です。看板の費用、途中で解除になったときの違約金、契約が終わるときの撤去の費用は、別に見込んでおく必要があります。要項の「費用負担」と「契約の解除」の項目に加えて、公開されていれば契約書の案まで読みます。

看板の設置と書き換えは命名権者の負担とする要項が多い

所沢市は、看板の設置や維持管理、原状復帰にかかるパートナーの負担分は、ネーミングライツ料とは別だと明記しています。外壁の構造上、看板を設置できない場合があるとも書かれています。和歌山県は、県が設置する道路案内看板の表示を変える場合、その施設が表示されているすべての道路案内看板を変更するよう求めています。

自治体が費用を持つ例もあります。小城市は、愛称を施設に1か所標示し、その標示の費用は市が負担するとしていました。看板の金額そのものを書いた要項は、確認した範囲にはありませんでした。

応募の前に、設置できる場所と数を担当課に確かめ、製作と撤去の見積もりを取っておきます。球場に出す看板広告の料金の例は、スタジアム広告の料金にまとめています。

(参考)所沢市民体育館ネーミングライツパートナー募集要項 – 所沢市

(参考)紀三井寺公園ネーミングライツ・パートナー募集要項 – 和歌山県

(参考)小城市芦刈文化体育館 ネーミングライツ募集要項 – 小城市

休館中の命名権料は返還なしと減額に分かれる

施設が工事で使えない期間の扱いは、自治体で正反対です。所沢市は、閉館を伴う工事や修繕を行う場合、閉館期間の長短にかかわらずネーミングライツ料を返還しないとしています。仙台市の契約書の案は、施設の全般が30日以上連続して使用不能の場合、使用不能の日数に応じて日割りで減額するとしています。

支払い方も確かめます。静岡県は、一括払いとし、分割して支払うことはできず、契約期間中はネーミングライツ料を変更しないとしています。和歌山県も年度ごとの一括払いで、納付期限は毎年4月末です。大規模な改修の予定があるかどうかは、応募の前に質問しておきたい点です。

(参考)所沢市民体育館ネーミングライツパートナー募集要項 – 所沢市

(参考)(別紙5)ネーミングライツ契約書(案) – 仙台市

(参考)県営都市公園ネーミングライツパートナー募集要項 – 静岡県

(参考)紀三井寺公園ネーミングライツ・パートナー募集要項 – 和歌山県

途中解除には違約金の定めがある

契約の途中で解除になった場合の負担も、要項や契約書の案に書かれています。和歌山県は、命名権者として適当でないと認めて県が契約を解除する場合、違約金として、契約期間中の命名権料の総額(納付済みの額を除く)の10%にあたる額の支払いを求め、納付済みの命名権料は返還しないとしています。仙台市の契約書の案は、残る契約期間の契約金額の総額に0.2を掛けた額を違約金としています。

仙台市は、提案書の提出をもって、契約書の案の記載内容を承諾したものとみなすとしています。応募の前に、契約書の案まで読んでおく必要があるということです。ここで紹介したのは要項と契約書の案の文言で、個別の契約の判断は弁護士に確かめてください。

あわせて読みたいスポーツスポンサー契約とは|企業が確かめる6項目と印紙・法律›

(参考)紀三井寺公園ネーミングライツ・パートナー募集要項 – 和歌山県

(参考)(別紙5)ネーミングライツ契約書(案) – 仙台市

(参考)令和8年度ネーミングライツパートナー募集要項 – 仙台市

契約終了時は看板を撤去し更新は優先交渉で決まる

契約が終わると、愛称を表示した看板は、命名権者の負担で撤去します。仙台市の契約書の案は、契約を更新しない場合、命名権者の負担で、施設の愛称を掲示したものを撤去すると定めています。所沢市も、契約の解除による原状回復に必要な費用はパートナーの負担としています。

更新について、仙台市の契約書の案は、命名権者が契約の更新について優先的に市と交渉する権利を持つと定めています。優先的に交渉できるという意味で、自動で更新される決まりとは別のものです。何年続けるつもりなのかを、応募の時点で社内で決めておくことをおすすめします。

(参考)(別紙5)ネーミングライツ契約書(案) – 仙台市

(参考)所沢市民体育館ネーミングライツパートナー募集要項 – 所沢市

税務の扱いは契約内容を持って税理士に確かめる

命名権料の税務について、国税庁がネーミングライツ(命名権)を名指しして取扱いを示した資料は、2026年10月時点で見つけられませんでした。国税庁のタックスアンサー「No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分」は、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図した費用は広告宣伝費になるとしていますが、そこに命名権の例は出てきません。

自治体の要項は、命名権料に消費税がかかる前提で金額を書いています。所沢市は消費税及び地方消費税を含まない額、和歌山県は相当額を含む額です。ここで紹介したのは一般的な取扱いで、命名権料、看板の製作費、原状回復の費用をそれぞれどう処理するかは、契約書を持って税理士に確かめてください。協賛金の区分の考え方は、スポンサー料の勘定科目で扱っています。

(参考)No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分 – 国税庁

(参考)所沢市民体育館ネーミングライツパートナー募集要項 – 所沢市

(参考)紀三井寺公園ネーミングライツ・パートナー募集要項 – 和歌山県

Q. ネーミングライツの応募には命名権料のほかにどんな費用がかかりますか?

看板の設置や書き換えと、契約終了時の撤去の費用がかかります。所沢市の要項は、看板の設置や維持管理、原状復帰にかかる負担分はネーミングライツ料とは別だと明記しています。途中で解除になった場合の違約金を定める自治体もあり、和歌山県は契約期間中の命名権料の総額(納付済みの額を除く)の10%、仙台市の契約書の案は残る契約期間の契約金額の総額に0.2を掛けた額としています。

まとめ|スポーツ施設のネーミングライツ募集は要項と契約書案から読む

ネーミングライツの応募は、金額を決める前に読むものが多い手続きです。要点を振り返ります。

  • 募集には、自治体が施設を指定して募る型と、企業から提案する型の2つがあり、提案しても公募に切り替わることがある
  • 2026年10月10日時点で受付期間内と確認できたスポーツ施設の募集は、静岡県(11月9日まで)、和歌山県(12月4日まで)、埼玉県(随時)の3件
  • 応募資格(税の滞納、業種、所在地)と、決算書3期分などの提出書類を先に確かめる
  • 金額の配点は、確認した5つの要項で100点のうち30点から50点。採点の式によって、最低額ちょうどの応募が0点になることがある
  • 看板の設置と撤去、違約金は命名権料とは別にかかり、休館中の返金の扱いは自治体で分かれる

応募したい施設が決まっているなら、まずその自治体の募集ページで、要項と契約書の案、質問の締切の日を確かめてください。募集が出ていない施設でも、提案や事前相談を受け付けている自治体があります。スポーツ施設の収益をめぐる背景は、日本スポーツ業界の8つの課題で整理しています。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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