研修を社内講師で回し始めたのに、講師によって中身がばらつく。引き受けてくれる人が増えず、同じ人に頼り続けている。日本サッカー協会(JFA)が指導者養成で使っている「講師を講座ごとに認定し、指導者には期限つきで学び直しを求める」仕組みをもとに、社内講師の認定と更新の制度をつくります。
対象となるお客さま
- 新人研修や階層別研修を社内講師で行っている企業の人事・人材開発の担当者
- 研修の内製化を進めたい経営者・事業責任者
- 社内講師を任された管理職・ベテラン社員
よくあるお悩み
- 講師によって、同じ研修でも中身と質が違う
- 講師を引き受ける人が限られ、同じ人に頼っている
- 一度講師になった人の教え方が、何年も変わらない
課題|研修の多くは社内で行われ、質は講師1人の力量で決まる
研修会社に頼まず、自社の社員が講師を務める研修は少なくありません。厚生労働省の令和6年度「能力開発基本調査」では、OFF-JT(職場を離れて行う研修)を実施した事業所は73.8%でした。実施した研修の教育訓練機関としては、正社員向けで「自社」が75.2%と最も多く、民間の研修会社の42.0%を上回っています。
社内講師に任せると、費用を抑えられ、自社の事情に合った研修にできます。その一方で、研修の質は講師1人の力量で決まります。教え方を確かめる場がなければ、同じ研修でも講師によって伝わる中身が変わります。
原因|講師を任命して終わりにし、認定も更新もしていない
講師本人のやる気や能力の問題ではありません。原因は、講師の選び方と続け方の仕組みにあります。
- 講師を選ぶ基準がない:仕事ができる人をそのまま講師に指名し、教えられるかどうかは確かめていません。
- 講師の資格に期限がない:一度講師になると、研修の中身も教え方も見直す機会がありません。
- 講師を務めたことが記録されない:本業の合間の負担になるだけで、引き受ける人が増えません。
教える人の不足は、多くの職場が感じています。同じ調査で、能力開発や人材育成に問題があるとした事業所(79.9%)のうち、問題点として「指導する人材が不足している」を挙げたのは59.5%と最も多く、「人材育成を行う時間がない」も47.4%でした(令和6年10月1日時点、常用労働者30人以上の事業所が対象)。
スポーツ知見|サッカーは講師を講座ごとに認定し、指導者に4年で40ポイントの学び直しを求める
日本サッカー協会(JFA)は「指導者に関する規則」で、指導者養成講習会と研修会の講師を「チューター」と呼び、JFA主催のチューター研修会に参加して適格と認められた人を認定しています。チューターはライセンスごとに分かれ、たとえばCライセンスとDライセンスの講習会は「47FAチューター」が指導・評価・認定審査を担当します。教える人を、講座ごとに先に育てているわけです。
ライセンスを持つ指導者にも期限があります。Bライセンス・Cライセンスなどは4年間に40ポイント(Proライセンスは2年間に40ポイント)を「リフレッシュ研修会」で獲得しなければならず、届かなければライセンスは失効します。ポイントは講義と実技が1コマ5ポイントなのに対し、受講者自身が指導する「指導実践」は1回10ポイントと2倍です。eラーニングで取れるのは期間内に10ポイントまでで、チームの監督やコーチとして登録されていれば期間内に1回20ポイントが付きます。座って聞くより、実際に教えることを重く数えているのが特徴です。
(参考)指導者に関する規則(2026年3月12日改定) – 公益財団法人日本サッカー協会
(参考)リフレッシュ研修会|JFA公認指導者ライセンス – 公益財団法人日本サッカー協会
ただし、サッカーと職場は同じではありません。サッカーの指導者は教えることが役割の中心ですが、社内講師は本業と兼務で、学び直しの時間を自分では取りにくい立場です。そのため、学び直しと登壇の時間を業務として扱い、更新の期間も研修の見直しの周期に合わせて決めます。
解決策|講座ごとに講師を認定し、期限つきで更新する
講師を増やす前に、講師を「選ぶ・確かめる・続ける」決まりをつくります。いまの講師を外す必要はありません。
- 講座ごとの認定:講座ごとに担当できる講師を決め、受講者役の前で実際に教える「模擬登壇」で確かめてから認定する
- 主任講師を置く:講座ごとに、ほかの講師の模擬登壇を評価し、教え方を伝える主任講師を決める
- 期限つきの更新:認定には2年などの期限を付け、期間内に学び直しと登壇を決まった量だけ満たした人を更新する
- 実際に教えることを重く数える:講義を聞くより模擬登壇や本番の登壇を重く数え、動画の視聴には上限を決める
いちばん効くのは、期限つきの更新です。期限がなければ、認定は一度きりの手続きで終わります。期限があると、講師は研修の中身を見直すきっかけを持ち、人事は誰が講師を続けられるかを毎年確かめられます。
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進め方|1つの研修の講師陣で試してから、全講座に広げる
最初から全講座に認定を入れると、評価の基準がそろわないまま形だけの制度になりがちです。まず1つの研修の講師陣で、認定と更新の決まりが回るかを確かめます。
診断では、社内講師が担当している講座と講師を一覧にし、受講者アンケートと講師への聞き取りで、講師による違いを洗い出します。設計・試行では、1つの講座で認定の基準と模擬登壇の評価表をつくり、講師3〜5人で認定を試します。定着では、更新の決まりと記録の付け方を全講座に広げ、主任講師が社内で回せる状態にします。
期間は目安です。診断だけ、1講座だけといった始め方もご提案します。Human Soarは様式の用意・聞き取り・評価表の案づくり・模擬登壇の進行・規程の文書化を担い、御社には講座一覧と講師名簿の共有、試す講座の決定、人事評価との調整をお願いします。
成果物|講師を育て続けるための4つの仕組み
成果物は、ひな形を渡して終わりにはしません。どれも御社の実際の講座と講師をもとに、一緒につくります。
最初にできるのが「講座と講師の一覧表」です。どの講座を誰が担当でき、講師が1人しかいない講座はどれかが一目で分かり、人事が講師を割り当てるときに使います。次に、講座ごとの「認定基準と模擬登壇の評価表」をつくります。主任講師が新しい講師を認定するときに、何ができれば合格かを同じ基準で判断できるようにします。
運用に入ったら、学び直しと登壇の数え方、期限、期限までに届かなかったときの扱いを定めた「認定更新の規程」に沿って回します。登壇と学び直しは「講師の記録簿」に講師ごとにつけ、人事が年に1回、更新の判定に使います。支援が終わった後も、社内だけで講師を育て続けられます。
期待できる効果|経営・人事・講師の3つが変わる
経営にとっては、研修の質が特定の講師に左右されにくくなり、内製化を広げても品質を保てます。人事は、どの講座を誰に任せられるかが一覧で分かり、講師が辞めたり異動したりしても次の講師をすぐに割り当てられます。講師は、何ができれば認定されるかが分かり、講師を務めたことが記録として残ります。
見る数字は2つです。1つは「講座ごとの認定講師の人数」で、2人以上いれば1人が抜けても研修は止まりません。もう1つは「期限内に更新できた講師の割合」で、低ければ学び直しや登壇の時間が取れていないサインです。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、社内講師の仕組みを見直す時期です。
Human Soarからのコメント
サッカーの指導者養成は、選手を教える人より先に「教える人を教える人」を育て、全国で同じ水準の講習を続けています。社内講師も、熱意のある人に任せるだけでは長続きしません。誰が教えられるかを確かめ、学び直しを続ける決まりがあってはじめて、研修の内製化は会社の力になります。御社の講座に合わせて、無理なく回る認定と更新の形を一緒に考えます。
よくあるご質問
Q. 社内講師に手当を出すべきですか?
手当を出すかどうかより先に、登壇と準備の時間を業務として扱い、評価にどう入れるかを決めることをおすすめします。時間が業務として認められないと、手当があっても引き受ける人は増えにくいためです。手当を出す場合は、認定や更新と結びつけ、期限内に更新した講師に出す形にすると、学び直しが続きやすくなります。
Q. 研修を内製化するデメリットは何ですか?
主なデメリットは、研修の質が講師の力量で決まることと、講師の負担が一部の人に集中することです。講座ごとの認定と期限つきの更新は、この2つに対応するための仕組みです。外部の研修会社をやめる必要はなく、専門性の高い講座は外部に任せる組み合わせもご提案します。
Q. 講師が数人しかいない会社でも依頼できますか?
できます。最初は1つの講座・講師3〜5人から始める設計です。講師がさらに少ない場合は、主任講師を置かずに、認定と更新の基準と記録簿だけを整える形もご提案できます。
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