禁煙に企業が取り組むには|スポーツ界に学ぶ喫煙率の下げ方

禁煙に企業が取り組むには|スポーツ界に学ぶ喫煙率の下げ方のアイキャッチ スポーツウェルビーイング

企業の禁煙の取り組みは、吸わない環境を整え、やめたい人を支え、運動の習慣につなげる順に進めると無理がありません。オリンピックが長くたばこのない大会を目指してきたように、スポーツの現場は健康と喫煙対策を結びつけて考えてきました。

喫煙所の周りでは会話が弾むのに、禁煙を呼びかけると反発される。受動喫煙の苦情は来るけれど、どこまで会社が踏み込んでよいか迷う。そんな担当の方に向けて、法律で求められることと、会社の工夫を分けて整理します。

企業が禁煙に取り組む理由は喫煙率と法律の両方にある

企業が取り組む理由は、働き盛りの世代で喫煙率が高いことと、望まない受動喫煙を防ぐことがルールになったことです。厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査では、20歳以上で現在習慣的に喫煙している人は14.8%(男性24.5%、女性6.5%)でした。男性は40〜50歳代で高く、3割を超えています。

健康増進法の改正は令和2年4月1日に全面施行され、多くの施設で屋内が原則禁煙になりました。屋内で喫煙するには喫煙室の設置が必要です。職場の対応は、厚生労働省の「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」で確かめられます。

(参考)令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要 – 厚生労働省

(参考)職場における受動喫煙防止対策について – 厚生労働省

(参考)なくそう!望まない受動喫煙 – 厚生労働省

Q. 企業はなぜ禁煙に取り組むのですか?

従業員の健康を守り、望まない受動喫煙を防ぐためです。令和2年4月に全面施行された改正健康増進法で、多くの施設の屋内が原則禁煙になりました。男性の40〜50歳代では喫煙率が3割を超えており、働き盛りの世代の対策としても重要です。

スポーツの現場は健康と禁煙を結びつけてきた

スポーツと禁煙は健康でつながる|禁煙の企業の図解

スポーツの世界では、たばこ対策は健康づくりの一部として扱われてきました。社内で禁煙を呼びかけるときも、禁止の話より、体を動かす健康づくりの話として伝えると受け入れられやすくなります(本記事の提案)。

WHOとIOCはたばこのないオリンピックで合意している

厚生労働省が公表したWHO事務局長の書簡(仮訳)によると、WHOは2010年に国際オリンピック委員会(IOC)と、健康的な生活習慣やスポーツを通した身体活動、タバコフリーのオリンピックを推進することで合意しました。大きなスポーツの大会が、健康のメッセージを伝える場になっている例です。

(参考)WHO事務局長の書簡(仮訳、2017年3月29日) – 厚生労働省

アスリートの体調管理でも喫煙は避ける対象になる

国立スポーツ科学センターの免疫コンディショニングガイドは、過度な飲酒や喫煙は免疫機能を低下させると説明しています。日本選手団の感染対策のために作られた資料です。アスリートの体調管理の考え方は、休めない時期を抱える働く人にも伝えやすい話題です。

(参考)免疫コンディショニングガイド – 日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター

スポーツ企業も禁煙を健康経営の一部にしている

スポーツ用品のアシックスは、メンタルヘルスケアやフィジカルヘルスケアと並べて、スモークフリー(受動喫煙のないオフィス)の取り組みを進めています。あわせてウォークラリーやウォーキング・ランニング通勤の推奨も行っており、禁煙と運動を一緒に扱っている例です。

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(参考)スポーツエールカンパニー2024 特徴ある取組例 – スポーツ庁

企業の禁煙の取り組みは環境と支援と習慣の3段階で進める

環境から順に進める|禁煙の企業の図解

取り組みは、吸わない環境、やめたい人への支援、運動の習慣づくりの3段階で考えると整理できます。この分け方は本記事の提案です。段階を飛ばして本人にやめるよう迫ると反発を招くので、環境から順に進めます。

1段階目は受動喫煙を防ぐ環境を整える

まず、法律とガイドラインに沿って屋内の喫煙のルールを確かめます。健康経営優良法人の中小規模法人部門の2026年の認定要件でも、受動喫煙対策は必須です。屋外の喫煙所の場所や、勤務時間中の喫煙の扱いも社内で話し合って決めます。認定の全体像は健康経営とはで説明しています。

(参考)健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)認定要件 – 健康経営優良法人認定事務局

2段階目はやめたい人を費用と情報で支える

やめたい人には、禁煙外来の案内や費用の補助、アプリの紹介といった支援が考えられます。同じ認定要件では、喫煙率低下に向けた取り組みが選択項目です。アプリを比べるなら別の記事が参考になります。本人の健康や治療については医師への相談を案内します。

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3段階目は運動の習慣で休憩の過ごし方を変える

喫煙所が休憩や会話の場になっている職場では、代わりの過ごし方が必要です。昼休みのウォーキングや短い体操のような健康スポーツを用意すれば、禁煙の話題を出さなくても参加してもらえます。ウォーキングイベントや企業の健康増進の取り組みも参考にしてください。

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Q. 禁煙を従業員に強制してもよいですか?

喫煙そのものをやめるよう強制するより、ルールの整備と希望者への支援で進めることをおすすめします。職場での喫煙のルールは決められますが、就業時間外の行動まで制限するなど踏み込む場合は、社会保険労務士や弁護士に確認してください。

禁煙の補助金は対象を確かめてから申請する

受動喫煙防止対策助成金は、対象が限られているので先に要件を確かめます。厚生労働省によると、令和8年度の申請期日は令和9年1月31日で、工事の実施前に申請が必要です。予算に達すると期日前に締め切られます。

区分 補助率 上限
飲食店・喫茶店など 助成対象経費の3分の2 100万円
主たる業種が飲食店以外で飲食を提供できる施設 助成対象経費の2分の1 100万円

出典:北海道労働局の案内(令和8年度)をもとに本記事で作成。対象は屋内の喫煙専用室で、屋外の喫煙所は対象外です。

一般的なオフィスは対象にならないことが多いので、喫煙室の工事より先に、屋外の喫煙所や敷地内禁煙の検討、希望者への支援に予算を回す選択肢があります。業者から「国の助成金を使えば、無料で喫煙室が設置できる」と勧められたときは注意してください。厚生労働省は、助成金は工事費の一部を補助するもので全額ではないと呼びかけており、不審な点は所轄の都道府県労働局に相談できます。

飲食店や喫茶店は経費の3分の2が対象になる

北海道労働局の案内によると、令和8年度の助成対象は、一定の条件を満たす既存特定飲食提供施設の屋内の喫煙専用室です。経営者は個人または資本金5,000万円以下の企業などで、客席面積100平方メートル以下といった条件があります。社内食堂を持つだけの会社は、要件に当たるか労働局に確かめます。

(参考)受動喫煙防止対策 – 北海道労働局

飲食を提供できる他業種は経費の2分の1が対象になる

主たる業種が飲食店以外の施設は、補助率が2分の1に下がります。流れは、工事前の交付申請、交付決定、工事の実施、助成金の支給の順で、費用はいったん自社で立て替える形です。申請の内容は事業主自身が理解している必要があると、厚生労働省は注意しています。

(参考)受動喫煙防止対策助成金 – 厚生労働省

Q. 禁煙の補助金はオフィスでも使えますか?

一般的なオフィスでは対象にならないことが多くあります。受動喫煙防止対策助成金は、一定の条件を満たす既存の飲食提供施設の屋内の喫煙専用室が中心です。自社が当たるかどうかは、所轄の都道府県労働局に確かめてください。

企業の禁煙の取り組みの要点

  • 20歳以上の喫煙率は14.8%で、男性の40〜50歳代は3割を超える
  • オリンピックのようにスポーツの現場は健康と禁煙を結びつけてきた
  • 環境、支援、運動の習慣の順に進める
  • 助成金は対象が限られるので要件を先に確かめる

まずは職場の喫煙のルールと喫煙所の場所を確かめ、従業員に困っていることを聞いてみてください。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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