企業の健康増進にスポーツを活かす|取り組み5つと補助金の探し方

企業の健康増進にスポーツを活かす取り組みと補助金のアイキャッチ スポーツウェルビーイング

企業の健康増進は、従業員が望むスポーツの取り組みから始めると進めやすくなります。スポーツ庁の調査では、勤務先に運動・スポーツの取り組みがある人の実施率は71.1%で、ない人より25.9ポイント高い結果でした。

健康診断の結果は気になるのに、運動を呼びかけても参加するのはいつも同じ人。セミナーを開いても、次の週には元に戻っている。社内の健康促進を任されて、何から手をつけるか迷う場面は多いものです。

この記事では、調査の数字をもとに取り組みを5つ選び、国の新しい指針、使える補助金、スポーツエールカンパニーの認定、進め方までを順に整理します。

勤務先に運動の取り組みがある人はスポーツ実施率が25.9ポイント高い

勤務先の取り組みで実施率に差がある|企業の健康増進の図解

勤務先に運動・スポーツの取り組みがある就業者の週1日以上のスポーツ実施率は71.1%で、取り組みがない就業者の45.2%を25.9ポイント上回っています。スポーツ庁が令和8年3月に公表した令和7年度の世論調査の結果です。

ただし、この差がすべて取り組みの効果とは言えません。もともと運動に関心のある人が多い職場に取り組みが多い可能性もあるので、「取り組みがある職場では運動する人が多い」という関係として読むのが正確です。

同じ調査で、20歳以上全体の週1日以上の実施率は51.7%でした。20代〜50代の働き盛りの世代は引き続き低い傾向にあるため、職場で取り組む余地があります。

(参考)令和7年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の結果を公表します(令和8年3月11日) – スポーツ庁

Q. 企業の健康増進は何から始めればよいですか?

勤務時間中にできる体操やストレッチから始めるのが進めやすい方法です。スポーツ庁の調査で、従業員の希望が26.4%と最も多かった取り組みだからです。費用が少なく、1つの部署でも試せます。

企業の健康増進で従業員が望む取り組みは5つある

企業の健康増進で選びたいのは、従業員の希望が多い次の5つの取り組みです。スポーツ庁の調査では、勤務先で取り組みを実施している割合は21.3%、希望している割合は32.1%で、10.8ポイントの開きがありました。

取り組み 実施の割合 希望の割合
勤務時間中の運動プログラム(体操・ストレッチ・ヨガなど) 21.4% 26.4%(1位)
金銭補助(ジムの法人契約・優待、イベント参加費の補助) 上位5項目外 26.1%(2位)
体力測定や運動機能チェック 19.4% 25.0%(3位)
運動・スポーツのイベント(ウォーキングラリー・運動会など) 19.4% 上位5項目外
職場の運動器具やジム・運動室の設置 上位5項目外 19.0%(4位)

スポーツ庁「令和7年度 スポーツの実施状況等に関する世論調査」の上位5項目をもとに本記事で作成。実施の割合は取り組みがある就業者(n=5,313)、希望の割合は取り組みを希望する人(n=8,020)が母数。実施の最多は勤務時間外の運動プログラムの23.2%。

勤務時間中の体操やヨガは希望が最も多い

実施で最も多いのは勤務時間外のプログラムですが、希望で最も多いのは勤務時間中のプログラムです。時間外に開くと、忙しい人や家庭の事情がある人が参加しにくくなります。

始業前や昼休み明けの10分など、仕事の流れに組み込むと参加しやすくなります。ヨガやストレッチのような健康スポーツは、運動が苦手な人も入りやすい種目です。

(参考)令和7年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(概要) – スポーツ庁

ジムの法人契約は好きな運動を選べる

金銭補助は、実施の上位には入らない一方で、希望では2番目に多い取り組みです。会社の中に場所がなくても始められ、従業員が自分に合う種目や時間を選べます。

使う人が偏りやすいので、利用状況を確かめながら、普段運動しない人も使いやすい形に調整していきます。

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体力測定は自分の変化に気づくきっかけになる

体力測定や運動機能チェックは、実施と希望のどちらでも上位に入っています。数字で今の状態が分かると、運動を始める理由を自分で見つけやすくなります。

健康診断の問診票にも運動習慣の質問があるので、健康診断の運動習慣の質問とあわせて見ると、職場全体の傾向もつかめます。

ウォーキングラリーは部署を越えて参加できる

イベントは実施では上位に入りますが、希望の上位5項目には入っていません。単発で終わらせず、アプリのチーム対抗戦のように、日常の中で続く形にするのがポイントです。

歩くことは特別な道具がいらず、参加のハードルが低い健康スポーツです。部署を混ぜてチームを作れば、社内の会話を増やすきっかけにもなります。

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運動器具や運動室は空きスペースから小さく置く

職場の運動器具やジム、運動室の設置を希望する人は19.0%でした。大きな投資に見えますが、ストレッチマットやバランスボールなど、会議室の隅に置けるものから試せます。

使われるかを確かめてから広げると、投資の失敗を避けられます。詳しくは費用も含めて別の記事で整理しています。

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国の指針は2026年10月に検診の勧奨と保険者連携を明記した

国の指針は予防の範囲を広げた|企業の健康増進の図解

企業の健康増進の土台になるのが、厚生労働省の「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」で、令和8年10月19日に新しい内容が公示されました。これまでの生活習慣病予防を中心とした一次予防に加え、検診や精密検査の受診勧奨といった二次予防などが明確に位置づけられています。

運動の取り組みは一次予防として計画に入れる

指針では、生活習慣の改善などによる病気の発症予防を一次予防と呼んでいます。運動やスポーツの取り組みはここに当たるので、社内の計画では一次予防の施策として書くと整理しやすくなります(本記事の整理)。

健康経営全体の枠組みは健康経営とはで、スポーツを使った施策はスポーツで実現する健康経営で詳しく説明しています。

検診の勧奨と保険者との連携も一緒に進める

今回の指針は、がん、女性特有の健康課題、歯科疾患、骨粗しょう症、眼科疾患の検診や精密検査の受診勧奨を、健康保持増進の措置として位置づけました。医療保険者などとの連携や、治療と就業の両立支援の取り組みも明記されています。

運動の施策だけで終わらせず、健診の受診案内と同じ時期に案内すると、従業員にも一連の健康づくりとして伝わります。

(参考)「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」に関する公示(令和8年10月19日) – 厚生労働省

補助金はエイジフレンドリー補助金から確かめる

補助金は完了してから請求する|企業の健康増進の図解

企業の健康増進で最初に確かめたい国の補助金は、中小企業事業者向けのエイジフレンドリー補助金です。令和8年度の交付申請は令和8年11月20日まで延長されていますが、予算に達すると期間の途中でも締め切られます。

対象は60歳以上が働く中小企業事業者になる

対象は、1年以上事業を実施し、役員を除く労災保険適用の高年齢労働者(60歳以上)が常時1名以上就労している中小企業事業者です。個人事業主を含む対象の範囲は、案内の【参考】とQ&Aで確かめてください。

運動に関わるのは2つのコースです。専門家総合対策コースの第2段階では、転倒や腰痛を防ぐ身体機能のチェックや運動指導の経費が補助率2分の1、上限100万円(第1段階との合計)です。コラボヘルスコースは補助率4分の3、上限30万円です。

(参考)「令和8年度エイジフレンドリー補助金」のご案内(リーフレット) – 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署・一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会

交付決定の後に実施して完了後に支払いを請求する

流れは、交付申請、審査、交付決定、取り組みの実施と完了、支払請求、補助金の確定と支払いの順です。申請は毎月末に取りまとめて翌月に審査されるので、実施の予定には2か月ほどの余裕を見ます。

補助金は完了後に請求するため、費用はいったん自社で立て替えることになります。専門家総合対策コースの第1段階は令和8年9月30日で受付を終えていますが、初めての申請なら第2段階から申し込めます。相談は事務を担う日本労働安全衛生コンサルタント会の窓口が案内しています。

自治体が健康経営の補助金を設けている場合もあります。名前や金額は地域で異なるため、本社所在地の市区町村の案内もあわせて確かめてください。

(参考)令和8年度エイジフレンドリー補助金 – 一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会

Q. 企業の健康増進に使える補助金はありますか?

中小企業事業者なら、エイジフレンドリー補助金が候補です。運動指導や保険者と連携した取り組みの経費が対象になります。60歳以上の労働者が常時1名以上いることなどの条件があり、令和8年度の交付申請は令和8年11月20日までです。

スポーツエールカンパニーの認定で社内外に取り組みを示す

スポーツの取り組みを社内外に示すなら、スポーツ庁のスポーツエールカンパニーの認定が使えます。2026年は過去最多の1,635団体が認定されました。全国の認定団体の傾向は認定1635団体の全数調査でまとめています。

体操や徒歩通勤の推奨が対象になる

スポーツ庁は、朝や就業中の体操・ストレッチ時間の設定、階段利用や徒歩通勤の推奨、スタンディングミーティング、企業運動会への参加などを取り組みの例に挙げています。特定の従業員だけでなく、企業全体で進めていることや、経営者の理解を得ていることが要件です。

スポーツ観戦の支援や、スポーツ団体・大会の支援だけでは対象になりません。協賛を進めている会社は、従業員自身が体を動かす取り組みも用意しておく必要があります。

(参考)「スポーツエールカンパニー」の申請受付について(令和元年度) – スポーツ庁

スポーツ実施率が70%以上ならプラスの呼称が付く

従業員の週1回以上のスポーツ実施率が70%以上の団体には、「+(プラス)」の呼称が付きます。申請には、実施率を示す資料の提出が必須です。先ほどの調査で、取り組みがある職場の実施率が71.1%だったことを考えると、現実的な目標になります。

2027年分の申請期間は2026年9月1日から11月2日までです。間に合わないときは、この1年で取り組みと実施率の記録を整え、次回の申請に備えます。

(参考)「スポーツエールカンパニー2027」の申請受付について(令和8年9月1日) – スポーツ庁

(参考)「スポーツエールカンパニー2026」過去最多の1,635団体を認定(令和8年1月30日) – スポーツ庁

Q. スポーツエールカンパニーは観戦の支援でも認定されますか?

観戦の支援だけでは認定されません。スポーツ庁は、従業員のスポーツ観戦の支援やスポーツ団体・大会の支援のみの取り組みを対象外としています。体操の時間や徒歩通勤の推奨など、従業員自身が体を動かす取り組みを用意してください。

社内の健康促進は1部署の10分体操から広げる

社内の健康促進は、1部署で短い体操を試し、数字を見て全社へ広げると続きやすくなります。ここからは、本記事がおすすめする3つの手順です。

健診の結果と従業員の希望を先に確かめる

まず、健康診断の問診で運動習慣のある人の割合を確かめ、どんな取り組みなら参加したいかを短いアンケートで聞きます。先の5つの取り組みを選択肢にすれば、全国の結果と比べられます。

1部署で4週間の体操を試す

協力してくれる部署を1つ選び、始業前や昼休み明けに10分の体操やストレッチを4週間続けます。リーダーが一緒に動くと、参加しにくい雰囲気を減らせます。

週1日以上の実施率で効果を見る

試す前と後で、週1日以上運動している人の割合を比べます。この数字はスポーツ庁の調査と同じ考え方なので、全国の71.1%や、スポーツエールカンパニーの70%と並べて確かめられます。

企業の健康増進の要点

  • 勤務先に取り組みがある人のスポーツ実施率は71.1%で、ない人より25.9ポイント高い
  • 従業員の希望が最も多いのは勤務時間中の運動プログラム
  • 2026年10月の指針で、検診の受診勧奨や保険者との連携も明記された
  • 中小企業事業者はエイジフレンドリー補助金を確かめる
  • 認定を目指すなら、週1回以上の実施率を記録しておく

まずは次の健康診断の問診結果を見て、運動習慣のある人の割合を確かめてみてください。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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