実業団を持つ企業のメリットは、健康の促進、広告効果、社会的な評価、社員の士気の4つです。一方で費用は毎年かかり、業績が悪いと続けにくくなります。1963年に237あった企業の野球チームは2008年に84まで減りました。持つ前に、雇用や協賛で同じ狙いをかなえられないかを比べます。
創業の節目に、スポーツチームを持ってはどうかという話が出た。採用にも社内の一体感にもよさそうだが、どれくらいの負担なのかが見えない。実業団の検討で気になるのは、よいことだけではないはずです。
この記事では、メリット、かかる費用の種類、チームが減ってきた背景、持たずに支える方法、判断の順番を整理します。
実業団を持つ企業のメリットは健康と広告と評価と士気の4つ
大阪大学の佐々木勝教授は『戦略経営者』2025年12月号で、企業がスポーツ支援を行う動機を、従業員の健康促進、広告効果、CSR、従業員のモラール(士気)向上の4つに整理しています。実業団を持つ場合も、この4つで考えると狙いを説明しやすくなります。
(参考)中小企業のスポーツ支援(佐々木勝、『戦略経営者』2025年12月号) – TKC全国会
健康の促進は社員の意識を変えるきっかけになる
身近に競技に打ち込む同僚がいると、運動や食事の話題が社内で増えます。選手が体づくりを教える場を設ければ、健康経営の取り組みとしても使えます。健康経営の認定企業のスポーツの取り組みも参考になります。厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023は成人に1日約8,000歩以上を勧めており、スポーツ庁はスポーツエールカンパニーの取組例を公表しています。
(参考)健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(概要) – 厚生労働省
(参考)スポーツエールカンパニー2024 特徴ある取組例 – スポーツ庁
広告効果はユニフォームと試合の報道で生まれる
ユニフォームや会場に社名が出て、試合の結果が報道されれば、地域での認知が上がります。ただし、地域の大会では報道される機会が限られます。広告だけが目的なら、協賛のほうが費用を抑えられる場合があります。
社会的な評価は地域とのつながりで高まる
地域の子どもへの教室や大会の運営に関わると、地域での評判につながります。障害者スポーツの例では、日立ソリューションズが2004年に障害者スキーの実業団チームを設立したと紹介されています。社名を広めるだけでなく、何を支える会社なのかが伝わります。
(参考)中小企業のスポーツ支援(佐々木勝、『戦略経営者』2025年12月号) – TKC全国会
社員の士気は同じ部署の選手の活躍で高まる
佐々木教授の記事によると、2013年の大手自動車メーカーを対象にした研究では、チームの勝利時に約3割の従業員が意欲の向上を感じました。同じ部署に選手がいる場合は、その割合が最大17.3%上昇しました。負けたときの意欲の低下は7〜10%で、勝ったときより小さいとされています。
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(参考)中小企業のスポーツ支援(佐々木勝、『戦略経営者』2025年12月号) – TKC全国会
Q. 実業団を持つメリットは何ですか?
主に、社員の健康促進、広告効果、地域からの評価、社員の士気の向上です。大手自動車メーカーの研究では、チームの勝利時に約3割の従業員が意欲の向上を感じました。費用は毎年かかるので、同じ狙いを協賛や雇用でかなえられないかも比べてください。
実業団の費用は人と遠征と施設と指導に分かれ毎年続く
実業団の費用について、統一された公開の統計は確認できませんでした。競技や人数、競技のレベルで変わるので、次の費目ごとに自社で見積もります。表は本記事の整理です。
| 費目 | 主な内容 | 確かめること |
|---|---|---|
| 人件費 | 選手とスタッフの給与、社会保険 | 業務と競技の時間の分け方 |
| 遠征費 | 大会への移動、宿泊 | 年間の試合数と開催地 |
| 施設費 | 練習場、用具、トレーニング機器 | 自社で持つか借りるか |
| 指導費 | 監督、トレーナー、医療 | 外部の専門家との契約 |
| 運営費 | 登録料、広報、事務 | 担当者の人数 |
出典:本記事の整理。金額は競技やレベルで大きく変わります。
見落としやすいのは、選手の引退後です。社員として雇うなら、競技を終えたあとの仕事も考えます。雇用の形はアスリート契約の記事でも整理しています。
Q. 実業団の運営にはいくらかかりますか?
統一された公開の統計は確認できませんでした。競技、選手の人数、競技のレベル、遠征の回数で大きく変わります。人件費、遠征費、施設費、指導費、運営費に分けて見積もり、同じ規模のチームを持つ企業や競技団体に聞いて確かめてください。
企業チームは最盛期の3分の1に減り業績の影響を受けてきた
企業チームは、景気が悪くなると減ってきました。nippon.comの2020年の記事によると、日本野球連盟の会社登録チームは1963年の237チームから、2008年には84チームと最盛期の3分の1程度まで減りました。1990年代後半と2008年の2つの波で、多くのチームが休廃部に追い込まれたとされています。
同じ記事では、企業スポーツの役割が、福利厚生から士気の向上、さらに宣伝効果へ移ってきたと説明しています。チームを持つときは、業績が落ちた年にも続けられるか、続けられないなら選手の次の場をどう用意するかを最初に考えます。プロとの違いは実業団とプロの違いの記事で確かめられます。
(参考)企業スポーツを襲うコロナの荒波、改革に生かせ(滝口隆司、2020年6月3日) – nippon.com
チームを持たずに支える方法は雇用とクラブ化と協賛の3つ

実業団の狙いは、チームを持たなくてもかなえられる場合があります。負担の大きさを比べながら、次の3つも検討します。比べ方は本記事の整理です。
選手の雇用はアスナビで1人から始められる
日本オリンピック委員会の就職支援「アスナビ」の就職実績(内定者含む)は、2026年10月1日時点で延べ256社/団体467名です。チームを作らず、選手1人を社員に迎える形なので、士気への効果を小さく試せます。
(参考)トップアスリート就職支援ナビゲーション「アスナビ」による選手の就職決定・内定について(2026年10月1日) – 日本オリンピック委員会
地域クラブ化は複数の企業で負担を分ける
前述の記事では、新日鉄(現・日本製鉄)が多くのチームを地域クラブにし、雇用先を分散して複数の企業のスポンサーで支える形にしたと紹介されています。「所有から支援へ」と呼ばれる考え方で、1社に負担が集中しにくくなります。
(参考)企業スポーツを襲うコロナの荒波、改革に生かせ(滝口隆司、2020年6月3日) – nippon.com
協賛は広告と地域の狙いを費用を決めて試せる
広告や地域貢献が主な狙いなら、地域のチームへの協賛が最初の一歩になります。期間と金額を決めて始められるので、やめるときの負担も小さくなります。
あわせて読みたいスポーツスポンサーの流れ|企業の検討から更新までの6手順›あわせて読みたいスポーツスポンサーの事例10選|企業の目的を公式発表で整理›
判断は狙いと負担と続けられる期間の順に確かめる

実業団を持つかどうかは、まず狙いを1つに絞ると判断しやすくなります。社員の士気なら雇用から、認知なら協賛から試し、それでも足りないときにチームを考えます。順番は本記事の提案です。
チームを持つと決めたら、5年分の費用、業績が悪い年の扱い、選手の引退後の役割を書き出して経営会議にかけます。業界全体の動きは日本スポーツ業界の課題で確かめられます。
Q. 中小企業でも実業団を持てますか?
持てないわけではありませんが、費用が毎年続くので、最初から持つより小さく試すほうが安全です。選手1人の雇用や地域チームへの協賛から始め、社内の反応を数字で確かめてください。
実業団のメリットの要点
- メリットは健康、広告、社会的な評価、士気の4つ
- 費用は人、遠征、施設、指導、運営に分かれて毎年続く
- 企業の野球チームは1963年の237から2008年の84に減った
- 雇用、地域クラブ化、協賛でも狙いをかなえられる場合がある
- 狙いと負担と続けられる期間の順に判断する
まずは自社の狙いを1つ書き出し、アスナビの案内か地域チームの協賛資料を見比べてみてください。
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