ダイナミックプライシングの導入方法|Jリーグに見る値付けの決まり

ダイナミックプライシングの導入方法|Jリーグに見る値付けの決まり ソリューション
SOLUTION|戦略・営業 × Jリーグのチケット販売

需要に合わせて値段を変えたいけれど、顧客の反発が怖く、決め方も分からない。ダイナミックプライシングの導入でつまずく点を、Jリーグのチケット販売が公表している決まりをもとに整理し、対象・上限と下限・説明文を決めて小さく試します。

ダイナミックプライシング値付け営業戦略顧客説明

このプログラムについて相談する

対象となるお客さま

  • 宿泊・施設・イベント・予約制サービスなどの経営者・事業責任者
  • 値付けの見直しを任された営業企画・マーケティングの担当者
  • 値段についての問い合わせを受ける顧客対応の責任者

よくあるお悩み

  • 混む日も空く日も同じ値段で、取りこぼしと売れ残りが両方ある
  • 値段を動かしたら、前に買った顧客にどう説明すればよいか分からない
  • どの商品から、どの幅で動かすのかを決める基準がない
ISSUE

課題|値段を動かす前に、顧客への約束が決まっていない

変動値付けルール設計プログラム|導入の検討が止まる流れと、固定の値付けで起きる2つの損

ダイナミックプライシングは、需要に合わせて値段を変える売り方です。同じ値段のままだと、混む日は早く売り切れて買えない人が出て、空く日は売れ残ります。予約枠や客室のように、その日を過ぎると売れなくなる商品では、どちらも取り戻せません。

ただ、値段を動かす仕組みの比較から検討を始めると、「前に買った人が損をしたと思わないか」「高くなりすぎないか」と聞かれたときに答えがありません。答えられないまま話が進めば、不安だけが残り、検討が止まります。

値段の表示は、消費者が商品を選ぶうえで最も重要な情報の一つだと消費者庁も位置づけています。導入の判断は、システムの選定より先に、顧客に何を約束するかを決める仕事です。

(参考)二重価格表示(表示規制の概要) – 消費者庁

CAUSE

原因|対象・約束・法令の確認が後回しになっている

変動値付けルール設計プログラム|導入が止まる3つの原因と、先に確かめる法令の論点

値段を変えることそのものより、変え方が決まっていないことが問題です。原因は次の3つです。

  • 対象を絞っていない:持ち越せる商品や、代わりがすぐ見つかる商品まで同じ議論に入れると、賛成も反対も一般論になります。
  • 既存の顧客との約束を決めていない:年間契約や会員の顧客より安くなってよいのか、買った後に下がったらどうするのかが未定のままです。
  • 法令の確認が最後になる:「通常◯◯のところ」と比べて見せる表示や、他社の値段を見て動かす方法は、確かめる点があります。売り方が固まってから気づくと、作り直しになります。

3つとも、システムを入れても解決しません。人が決めて、文章に残す必要があります。

SPORTS INSIGHT

スポーツ知見|FC東京のチケット販売は、下限や差額の扱いを先に公表した

変動値付けルール設計プログラム|FC東京の試験導入などに見る、対象・下限と上限・事前の告知・差額の扱いの決まり

試合のチケットは、試合が終われば売れなくなり、席の数もすぐには増やせません。このため、Jリーグのクラブや日本代表の試合では、需要に合わせて値段を変える販売が行われています。参考になるのは、値段の動かし方より、購入前に公表している決まりです。

FC東京は2023年7月、8月以降のホームゲーム3試合で試験導入すると発表しました。対象は全席種の予定で、基本となる値段は試合日の約5週前に知らせるとしています。公式のQ&Aでは、上限は設けないこと、下限は年間チケットの1試合あたりの単価を下回らないことを明記しました。年間チケットを買った顧客より安くならないことを、先に約束した形です。

買った後の扱いも書かれています。後日値段が変わっても差額の請求や返金はなく、自由席が指定席より高くなる場合があることも説明しています。2019年のJリーグワールドチャレンジのQ&Aでは、値段の変更は1日最大1回でした。日本代表の2024年1月のタイ戦では、一部の席種を除いて実施し、基準となる値段から上下すると案内しています。

入れないという判断もあります。Bリーグの琉球ゴールデンキングスは2026-27シーズンの販売方針で、値段の分かりやすさや納得感の観点から、現時点では導入を見送ると発表しました。導入するかどうかも、顧客との約束から決める判断です。

(参考)価格変動制「ダイナミックプライシング」試験導入のお知らせ(2023年7月19日) – FC東京

(参考)価格変動制「ダイナミックプライシング」におけるQ&A(Jリーグワールドチャレンジ2019) – Jリーグ

(参考)チケット販売概要 SAMURAI BLUE 対 タイ代表 – 公益財団法人日本サッカー協会

(参考)2026-27シーズンチケット価格改定と販売方針について – 沖縄バスケットボール株式会社

ただし、試合と仕事は同じではありません。試合は日が決まっていて席が消え、同じ試合の代わりはありません。企業の商品は持ち越せたり、他社に乗り換えられたりします。また、これらの公表資料が示すのは決まりの中身で、顧客の反発が減ったという効果までは示していません。そこで、対象の商品を判定表で確かめ、小さく試して問い合わせの件数と売れ残りを見ます。

SOLUTION

解決策|対象を判定し、値付けの決まりを4つ公表してから動かす

変動値付けルール設計プログラム|対象を絞る・上限と下限を決める・基準を先に示す・買った後は変えないの4つの決まり

値段を動かす計算より先に、次の4つを文章で決めます。

  • 対象を絞る:期限を過ぎると売れない、供給をすぐ増やせない、需要の波が記録で見える、の3つを満たす商品から選びます。取引先と個別に契約している商品は外します。
  • 上限と下限を決める:下限は年間契約や会員の単価を基準にします。上限は置くか置かないかを決めて、どちらの場合も先に伝えます。
  • 基準を先に示す:基準の値段と、販売開始の時期、変更の頻度を伝えます。値段が動く理由は、残りの数や時期など、顧客が見て分かる言葉で書きます。
  • 買った後は変えない:後から値段が下がっても差額は返さないなど、買った後の扱いを購入前に示します。

あわせて法令の確認点を一覧にします。消費者向けの販売では、景品表示法の考え方を確かめます。消費者庁のガイドラインでは、セールで比べる過去の値段は、一般にセール開始から8週間さかのぼった販売期間の過半を占めていることが目安です(その値段での販売が通算2週間未満のときや、最後の販売から2週間以上たっているときは当たりません)。値段が頻繁に動く商品では、この条件を満たす値段が残りにくくなります。そこで「通常◯◯」と書かないことを決まりにします。

将来の値段と比べる表示も同じです。需要で変わる将来の値段は、その値段で販売することが確かな場合を除き、比較に使うことは適切でないとされています。また公正取引委員会の研究会報告書(2021年3月)は、値付けのアルゴリズムは使い方によっては協調的な値付けにつながり得るとし、独占禁止法で対応できる場合が多いと整理しています。他社と値段の情報を共有しないことも決まりに入れます。個別の判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。

(参考)景品表示法関係ガイドライン等 – 消費者庁

(参考)将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針(令和2年12月25日) – 消費者庁

(参考)「アルゴリズム/AIと競争政策」(概要) – 公正取引委員会

APPROACH

進め方|1商品で3か月試し、問い合わせと売れ残りを見てから広げる

変動値付けルール設計プログラム|診断・設計と試行・定着の3つのフェーズで、やること・役割分担・期間の目安

全商品を一度に変えると、顧客の反応も効果も読めなくなります。まず1商品に絞り、期間を決めて試します。

診断では、商品ごとの販売の記録を見て、対象になるかを判定します。既存の顧客への約束や、いま使っている表示も洗い出します。設計・試行では、上限・下限と説明文を作り、法令の確認点を専門家に確かめてもらってから、3か月試します。定着では、月次レビューの結果で幅を調整し、ほかの商品に広げるかを決めます。

期間は目安です。診断だけ、1商品だけといった始め方もご提案します。Human Soarは判定の様式と進行、決まりと説明文の文書化を担い、御社には販売の記録の共有、対象商品の決定、専門家への確認をお願いします。

OUTPUT

成果物|支援が終わっても社内で値付けを決められる4つの道具

変動値付けルール設計プログラム|対象商品の判定表・値付けルール表・顧客への説明文・月次レビュー手順

成果物は、ひな形を渡して終わりにはしません。どれも御社の商品と販売の記録で作ります。

最初に作るのが「対象商品の判定表」です。事業責任者が新しい商品を検討するときに、期限・供給・需要の波を確かめ、対象か対象外かを1枚で決められます。次に「値付けルール表」で、商品ごとの基準の値段、上限と下限、変更の頻度、誰が承認するかを決めます。担当者が替わっても同じ幅で運用できます。

「顧客への説明文」は、販売ページ、よくある質問、問い合わせの応対で同じ言葉を使うための文章です。買った後の扱いと、法令の確認点を反映した表示の書き方を含めます。「月次レビュー手順」では、売れ残り、問い合わせの内容、上限と下限に当たった回数を毎月見て、幅を変えるかを決めます。

VALUE

期待できる効果|顧客に説明できる値付けで、経営と現場の判断がそろう

変動値付けルール設計プログラム|経営・営業企画・顧客対応の3つの効果と、導入の準備を確かめるセルフチェック

経営にとっては、どの商品で何を約束しているのかが1枚で見えるようになり、導入するか見送るかを根拠をもって決められます。営業企画の担当者は、値段を変えるたびに相談して回らずに、決めた幅の中で動かせます。顧客対応の担当者は、問い合わせに同じ説明文で答えられます。

見る数字は、対象商品の「売れ残りの割合」と「値段に関する問い合わせの件数」です。売上だけを見ると、顧客の不満が増えていても気づきません。スライド下のセルフチェックで当てはまらない項目があれば、システムを選ぶ前に決めておく点です。

COMMENT

Human Soarからのコメント

値段を動かす計算は、後からでも直せます。直しにくいのは、顧客との約束です。公表されているチケット販売の決まりを読むと、まず顧客に何を約束するかを書いていることが分かります。御社の商品でも、その順番で一緒に決めていきます。導入しないという結論になっても、決めた約束は値付けの見直しに使えます。

FAQ

よくあるご質問

Q. 法律の面で問題がないかまで判断してもらえますか?

個別の判断は、御社の弁護士など専門家にご確認いただきます。Human Soarは、景品表示法の考え方や公正取引委員会の報告書で確かめる点を一覧にして、確認に必要な資料をそろえるところまで支援します。

Q. 取引先と個別に契約している商品にも使えますか?

そのままでは使いません。契約で条件を決めている取引は、需要に合わせて値段を動かすと約束と食い違うおそれがあるためです。判定表で対象外とし、契約の更新時に決める条件として別に扱います。

Q. 値付けを自動で決めるシステムは必要ですか?

最初は必要ありません。対象と上限・下限が決まれば、表計算と週1回の見直しで試せます。システムは、試行で効果を確かめ、変更の回数を増やす理由が見えてから検討します。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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