朝礼が終わると、現場責任者は毎朝スマートフォンのアプリで暑さ指数を確認してから作業員を送り出す。以前は「今日は暑いから気をつけて」と声をかけるだけだったが、いまはそれだけでは済まない。2025年6月1日施行の労働安全衛生規則改正で、事業者には熱中症の「体制整備」と「手順作成」が罰則付きで義務付けられました。対応の近道は、WBGTセンサーやウェアラブル端末を使った市販の監視サービスを導入することです。本記事では、公式サイトで機能を確認できた10のサービス・製品を比較します。
- 職場の熱中症対策が義務化された理由|2025年施行の最新データ
- 熱中症対策サービスは2タイプ|環境センサー型とウェアラブル型の違い
- 企業が使える熱中症対策サービス10選|比較表と特徴
- SAFEMO安全見守りクラウドサービス|心拍とWBGTを一体で監視
- SisMil|JIS規格準拠のセンサーで複数拠点のWBGTを一元管理
- ワーカーコネクト|LoRaWANで長距離通信に強いバイタル管理
- みまもりがじゅ丸®|脈拍と位置情報で一人作業を見守る
- Work Mate|特許取得のAI予兆検知で休憩タイミングを知らせる
- REMONY(リモニー)|充電不要で24時間データを途切れさせない
- 暑さ指数(WBGT)センサーによる熱中症アラートシステム|ピンポイント計測に特化
- カオカラ|顔を撮影するだけで暑熱リスクを判定するAIカメラ
- 熱中症対策IoTサービス|工事不要で設置できる環境センサー
- AAASWatch Pro2|4G内蔵で単体通信できる新型スマートウォッチ
- 熱中症対策サービスの選び方|現場規模と業種で見る3つの基準
- 導入までの4ステップ|まず何から始めるべきか
- まとめ|職場の暑さ対策は「見える化」から始まる
職場の熱中症対策が義務化された理由|2025年施行の最新データ
厚生労働省は2025年5月20日付の通達で、労働安全衛生規則の一部改正を都道府県労働局に周知しました。改正の背景には、熱中症による労働災害の増加があります。
厚生労働省労働基準局によると、2024年(令和6年)における休業4日以上の熱中症死傷災害は1,195人と、統計開始以来最多を記録しました。死亡災害も3年連続で30人以上となり、労働災害による死亡者数全体の約4%を占めています。熱中症による死亡の多くは初期症状の放置や対応の遅れが原因であるため、今回の改正では「早期発見の体制整備」と「重篤化を防ぐ手順の作成」が新たに義務付けられました。
対象となるのは、湿球黒球温度(WBGT)が28度以上、または気温が31度以上の場所で、継続して1時間以上、あるいは1日当たり4時間を超えて行われる作業です。事業者はこの条件に該当する作業について、熱中症の自覚症状や疑いを報告させる体制と、身体冷却や医療機関への搬送手順をあらかじめ整備し、作業者に周知する義務を負います。違反した場合は6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
厚生労働省の通達は、報告体制の整備方法の一つとして「ウェアラブルデバイスを用いた作業者の熱中症のリスク管理」を明示的に挙げています。ただし、ウェアラブル端末だけでは装着者の状態を正確に把握できるとは限らないため、巡視やバディ制など他の方法と組み合わせることが望ましいとされています。制度対応の全体像は企業向けスポーツ熱中症対策|職場実践ガイド2026でも解説しているので、あわせて確認してみてください。
Q. 熱中症対策の義務化はすべての職場が対象ですか?
WBGTが28度以上または気温31度以上の場所で、継続して1時間以上、または1日4時間を超える作業を行う場合が対象です。屋内外を問わず、出張先や移動中の作業も対象に含まれます。
Q. 違反した場合の罰則はどのくらい重いですか?
労働安全衛生法違反として、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になり得ます。体制整備・手順作成・周知のいずれかが欠けていても違反となる点に注意が必要です。
(参考)労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について – 厚生労働省労働基準局
熱中症対策サービスは2タイプ|環境センサー型とウェアラブル型の違い
市販の熱中症対策サービスは、大きく分けて「現場の暑さそのものを測る環境センサー型」と「作業者一人ひとりの体調を測るウェアラブル型」の2系統があります。どちらか一方だけでなく、両方を組み合わせて導入している現場も少なくありません。

Human Soarが整理したこの2軸(測定対象×携帯性)で見ると、後述する10サービスはきれいに4つの象限に分かれます。自社の現場が「拠点が固定されているか、作業者が広く動き回るか」を基準に選ぶと、タイプを絞り込みやすくなります。
環境センサー型|現場の暑さを面で捉える
環境センサー型は、作業場所に温湿度計や黒球センサーを設置し、複数拠点のWBGT値をクラウドで一元管理する方式です。人が何かを装着する必要がないため導入のハードルが低く、学校の体育館や工場のように拠点があらかじめ決まっている現場と相性が良い方式です。一方で、センサーを置いた地点以外の状況は把握できないため、作業者が現場を離れて移動する業務にはやや不向きです。
ウェアラブル型|作業者一人ひとりの体調を直接検知する
ウェアラブル型は、作業者本人の心拍数や皮膚温度をリアルタイムに取得できるため、同じ環境下でも生じる個人差のある熱中症リスクを直接検知できます。高齢の作業者や暑さに慣れていない新人など、リスクの高い人を個別に把握したい場合に向いています。ただし、装着を徹底する運用ルールを整えないと、肝心なときにデータが取得できないという弱点もあります。水分補給の管理まで含めて考えたい場合は、ウェアラブルで代謝・水分補給を管理する法も参考になります。
企業が使える熱中症対策サービス10選|比較表と特徴
公式サイトで機能・提供元を確認できた国内サービスのうち、建設・製造・物流など現場作業を持つ企業で導入実績のあるものを10件選びました。上位4サービスは事業モデルや機能まで踏み込み、残り6サービスは要点のみ紹介します。
| サービス名 | 提供元 | 検知方式 | 主な機能 |
|---|---|---|---|
| SAFEMO安全見守りクラウドサービス | 富士フイルムPBC | バイタル×WBGT | 心拍・WBGT分析、転倒検知、GPS/ビーコン測位 |
| SisMil(シスミル) | オーク情報システム | 環境WBGT | JIS準拠センサーで多地点WBGTを一元管理 |
| ワーカーコネクト | センスウェイ | バイタル | 腕時計型センサーで皮膚温度・心拍・転倒を検知 |
| みまもりがじゅ丸® | NTTPC | バイタル | 脈拍・位置情報の継続把握、SOS発信機能 |
| Work Mate | ユビテック | バイタル(AI予兆検知) | AIによる熱中症予兆検知(特許取得)、転倒検知 |
| REMONY(リモニー) | MEDIROM MOTHER Labs | バイタル | 充電不要ウェアラブルで24時間データ取得 |
| 暑さ指数(WBGT)センサーによる熱中症アラートシステム | エイムネクスト | 環境WBGT | ピンポイント設置でWBGT実測・見える化 |
| カオカラ | ポーラメディカル | 個人(AI画像判定) | 顔を撮影し約3秒でAIが暑熱リスクを4段階判定 |
| 熱中症対策IoTサービス | ジェネック(IoT Station) | 環境WBGT | 工事不要のセンサー設置で温湿度・WBGTを遠隔監視 |
| AAASWatch Pro2 | アイフォーカス | バイタル | 4G内蔵スマートウォッチ、心拍・血中酸素・転倒検知 |
表は各サービスの公式サイトで確認できた情報をもとに作成(2026年8月時点)。価格・仕様は変更される場合があるため、導入検討時は必ず公式サイトで最新情報を確認してください。
SAFEMO安全見守りクラウドサービス|心拍とWBGTを一体で監視
富士フイルムPBCが提供する「SAFEMO」は、作業者が装着するウェアラブル端末から脈拍数と加速度データを取得し、作業環境のWBGT値と組み合わせて熱中症リスクを見える化するサービスです。あらかじめ設定したしきい値を超えると管理者にアラートを通知します。屋外はGPS、屋内はビーコンで位置を把握できるため、一人作業や夜間作業の現場でも安全管理と熱中症対策を同時に運用できる点が特徴です。
SisMil|JIS規格準拠のセンサーで複数拠点のWBGTを一元管理
オーク情報システムの「SisMil」は、日本産業規格(JIS B 7922、JIS Z 8504)に準拠した黒球センサーで温湿度を自動計測し、無線(LoRa)でクラウドへ送信する環境モニタリング型のサービスです。親機1台につき子機(センサー)を最大30台まで接続でき、建築・土木現場や学校の体育館、スポーツイベントなど複数地点の暑さ指数を同時に把握したい現場に向いています。作業強度や熱順化の状況に応じてWBGT基準値を自動設定できる点も実務的です。
ワーカーコネクト|LoRaWANで長距離通信に強いバイタル管理
センスウェイの「ワーカーコネクト」は、腕時計型のバイタルセンサーで心拍数・皮膚温度・転倒を検知し、異常時にアラートメールを送信するサービスです。センサーとゲートウェイの通信に長距離・低消費電力のLoRaWANを採用しているため、電波が届きにくい広大な建設現場や工場でもゲートウェイの設置台数を抑えられ、通信費も比較的安価に運用できます。初期設定が不要で、作業員はセンサーを腕に装着するだけで利用を始められます。
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みまもりがじゅ丸®|脈拍と位置情報で一人作業を見守る
NTTPCの「みまもりがじゅ丸」は、活動量計から取得する脈拍情報と位置情報を継続的に確認できるウェアラブルヘルスケアサービスです。SOS発信ボタンや転倒検知機能を備えたプランもあり、一人作業や夜間作業の見守りに強みがあります。国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に評価済みサービスとして登録されているほか、SIM一体型の端末を使えばスマートフォンを持ち込めない現場でも運用できます。
Work Mate|特許取得のAI予兆検知で休憩タイミングを知らせる
ユビテックの「Work Mate」は、特許を取得した熱中症予兆検知機能を持つスマートウォッチ型サービスです。バイタルデータをAIが学習し、作業者ごとに適したタイミングで「熱負荷アラート」を通知します。バイタルが回復しない、あるいは急激なWBGT値の上昇があった場合は「熱負荷警戒アラート」で段階的に知らせる仕組みです。転倒検知や設備異常の通知連携など多機能で、2026年4月時点で240社超の導入実績があります。
REMONY(リモニー)|充電不要で24時間データを途切れさせない
MEDIROM MOTHER Labsの「REMONY」は、充電が不要なウェアラブル「MOTHER Bracelet」と連携し、24時間365日バイタルデータを収集できる遠隔体調管理システムです。心拍異常アラートや熱負荷アラートに加え、転倒検知やSOSコールにも対応します。建設・製造業だけでなく介護施設や運送業でも導入されており、業種を問わず使える汎用性の高さが特徴です。
暑さ指数(WBGT)センサーによる熱中症アラートシステム|ピンポイント計測に特化
エイムネクストのサービスは、必要な地点にWBGTセンサーを設置し、気温だけでなく湿度や日射の違いを加味した暑さ指数を継続的に計測・見える化するシステムです。複合的な気象条件を踏まえた実測値をもとに、より的確な熱中症予防対策につなげられます。
カオカラ|顔を撮影するだけで暑熱リスクを判定するAIカメラ
ポーラメディカルの「カオカラ」は、専用カメラで顔を撮影するだけで、約3秒でAIが暑熱リスクを4段階判定するユニークな製品です。ウェアラブル端末の装着が難しい現場や、出退勤時のチェックポイントでの一括判定に向いています。
熱中症対策IoTサービス|工事不要で設置できる環境センサー
ジェネックが提供する「IoT Station」の熱中症対策IoTサービスは、センサー・通信・クラウド管理画面をセットで提供し、配線工事を必要とせずに温度・湿度・WBGTを遠隔監視できます。しきい値を超えるとメールで通知される仕組みで、複数現場を抱える企業がスピーディーに導入しやすい設計です。
AAASWatch Pro2|4G内蔵で単体通信できる新型スマートウォッチ
アイフォーカスの「AAASWatch Pro2」は2026年5月に正式発売された新型スマートウォッチで、4G通信を内蔵しているためスマートフォンなしで単独運用できます。心拍数・皮膚温度・血中酸素を自動測定し、GPSと屋内ビーコン測位で位置も把握可能です。国内メーカーとの提携による国内製造で品質管理にもこだわっています。
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Q. 環境センサー型とウェアラブル型はどちらか一方だけで十分ですか?
現場の実情によりますが、厚生労働省の通達もウェアラブル単体での管理には限界があるとしています。拠点が固定された現場は環境センサー型、作業者が広く移動する現場はウェアラブル型を軸にし、必要に応じて組み合わせるのが実務的です。
Q. 個人向けの熱中症対策アプリと何が違いますか?
今回紹介したサービスは、複数の作業者・拠点を管理者が一括で監視し、アラートを組織的に運用することを前提に設計されています。個人向けアプリは自分自身の熱中症リスクを確認するもので、事業者に義務付けられた報告体制・手順の整備には直接対応できません。
熱中症対策サービスの選び方|現場規模と業種で見る3つの基準
10のサービスを比較すると、選び方は「現場の分散度」「通信環境」「既存の安全管理体制」の3つの基準で整理できます。
基準1|拠点が固定か、作業者が動き回るか
工場や建設現場のように作業エリアがある程度固定されている場合は、SisMilやIoT Stationのような環境センサー型が管理しやすく、センサーの台数を絞って導入できます。一方、複数の現場を巡回する作業員や、警備・点検のように移動を伴う業務では、ワーカーコネクトやみまもりがじゅ丸のようなウェアラブル型のほうが実態に即した監視ができます。
基準2|通信インフラが整っているか
Wi-Fiや有線LANが引かれている屋内施設ではゲートウェイ型(SAFEMO、ワーカーコネクトなど)が導入しやすい一方、電波の届きにくい山間部や大規模野外現場では、AAASWatch Pro2のような4G内蔵型やLoRaWANを使うサービスのほうが安定して運用できます。導入前に現場の通信環境を確認することが遠回りに見えて近道です。屋外での基本的な予防策を先に押さえておきたい場合はランニングの熱中症対策|今日から実践できる予防法とグッズも参考にしてください。
基準3|既存の安全管理体制にどこまで組み込めるか
すでに巡視やバディ制など人による確認体制がある企業は、Work MateのAI予兆検知やREMONYの24時間モニタリングのように、既存の体制を補完する形で導入すると運用負荷を抑えられます。逆に体制そのものをこれから作る企業は、報告体制のテンプレートやマニュアルが充実しているサービスを選ぶと、規則改正が求める「体制整備」と「手順作成」を同時に満たしやすくなります。
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導入までの4ステップ|まず何から始めるべきか
サービスを選ぶ前に、自社が改正省令の対象になっているかどうかを確認し、段階を踏んで導入するとつまずきにくくなります。

ステップ1|現場のリスクを診断する
まずは自社の作業がWBGT28度以上・気温31度以上の環境で継続1時間以上、または1日4時間超になり得るかを洗い出します。屋外作業だけでなく、空調のない倉庫や機械室なども対象になり得る点に注意が必要です。
ステップ2|WBGT値と作業実態を照合する
環境省の熱中症予防情報サイトや簡易センサーでその場のWBGT値を把握し、実際の作業強度・作業時間と照らし合わせます。この段階で「常設のセンサーが必要か」「ウェアラブルで個人差を見る必要があるか」の判断材料がそろいます。
ステップ3|報告体制と手順書を整備する
熱中症の自覚症状や疑いを報告する連絡先・方法を定め、身体冷却や医療機関への搬送手順を作業場ごとに作成します。厚生労働省が公開する掲示例・手順例を土台にすると、ゼロから作るよりも早く整備できます。
ステップ4|サービスを試験導入し本格運用へ
多くのサービスはトライアル機の貸し出しに対応しています。実際の現場で通信状況や装着感を確認したうえで、対象人数や拠点数に応じたプランを選び、本格運用に移行します。
Q. 熱中症対策サービスの導入に補助金は使えますか?
サービスによっては分割払い(リース契約)や補助金活用に対応した窓口を用意している場合があります。詳細な条件はサービスごとに異なるため、各社の問い合わせ窓口で自社が対象になるか確認してください。
まとめ|職場の暑さ対策は「見える化」から始まる
この記事のポイントを振り返ります。
- 2025年6月施行の労働安全衛生規則改正により、事業者には熱中症の報告体制整備と対応手順の作成が罰則付きで義務付けられた。
- 熱中症対策サービスは「環境センサー型」と「ウェアラブル型」の2系統に大別でき、現場の分散度に応じて選び方が変わる。
- SAFEMO、SisMil、ワーカーコネクトなど10サービスは、それぞれ検知方式や通信方式に特徴があり、価格・仕様は公式サイトで最新情報を確認する必要がある。
- 選定は「拠点の固定度」「通信環境」「既存の安全管理体制」の3つの基準で整理すると迷いにくい。
- 導入は現場診断からWBGT照合、体制整備、試験導入という4ステップで進めると、規則改正への対応と実運用の両方を満たしやすい。
職場の熱中症対策は、精神論や個人の注意力に頼る段階から、データで「見える化」して組織的に管理する段階に移っています。まずは自社の現場がどのタイプの対策サービスに合うかを見極めることから始めてみてください。
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