地元のJリーグのクラブから、増資の引き受けを打診された。資料には「クラブライセンスの財務基準を満たすため」と書かれている。別のページには、スタジアムの屋根が基準に足りず「制裁」を受けているとの記載もある。ライセンスを失うとどうなるのか。出資や協賛をする側は、何を確かめればよいのか。
クラブライセンスとは、クラブがJリーグに参加するために毎年審査を受けて取得する資格です。競技、施設、組織、法務、財務などの基準があり、必須の基準を満たさないと交付されません。2026/27シーズンは、申請した60クラブすべてに交付されました。この記事では、制度の意味、ライセンスの種類と交付の状況、7つの基準と3つの等級、債務超過や赤字の扱い、スタジアムの基準、制裁と不交付の事例、そして親会社・スポンサー・自治体が知っておきたい点を、Jリーグの規則と公式の発表をもとに整理します。
クラブライセンスとはJリーグに参加するための資格
Jリーグのクラブライセンス制度は、2012年2月1日に施行されました。Jリーグの説明によると、制度の始まりはドイツの審査の仕組みにあると言われ、欧州、国際サッカー連盟を経て、アジアサッカー連盟(AFC)が2013年のシーズンから導入を決めました。日本ではこれを受けて、国内のリーグ戦に参加するための資格の要件として定められています。
目的は、Jリーグの説明では「サッカーの競技水準や施設的水準の持続的な向上」と「クラブの経営安定化、財務能力・信頼性の向上」の2つに集約されます。ライセンスは1年ごとの更新で、クラブは毎年申請します。
ライセンスは3種類あります。
| 種類 | 参加できるリーグ | 交付を決める機関 | 2026/27シーズンの交付数 |
|---|---|---|---|
| J1クラブライセンス | J1・J2・J3 | 第三者による第一審の機関(FIB) | 49クラブ |
| J2クラブライセンス | J2・J3 | 同じ | 9クラブ |
| J3クラブライセンス | J3のみ | Jリーグの理事会 | 2クラブ |
クラブライセンスの種類(出典:Jリーグ「クラブライセンス」と2026年5月26日の判定結果をもとにHuman Soarが整理)
J1とJ2のライセンスは、弁護士や公認会計士などで構成する第三者の機関が判定し、不服があれば上訴できます。J3のライセンスはJリーグの理事会が決め、上訴の制度はありません。このほかに、アジアの大会に出るためのAFCのライセンスが別に判定されます。
(参考)J1・J2クラブライセンス交付規則(2026年7月1日改正) – Jリーグ
Q. クラブライセンスとは何ですか?
クラブがJリーグに参加するために、毎年審査を受けて取得する資格です。2012年2月1日に施行されました。競技、施設、組織、法務、財務などの基準があり、必須の基準を満たさないと交付されません。J1・J2・J3のどのリーグにも参加できるJ1クラブライセンス、J2とJ3に参加できるJ2クラブライセンス、J3だけに参加できるJ3クラブライセンスの3種類があります。
クラブライセンスの一覧|2026/27シーズンは60クラブすべてに交付
2026年5月26日に発表された2026/27シーズンの判定では、J1クラブライセンスが49クラブ、J2クラブライセンスが9クラブに交付されました。交付されなかったクラブはありません。J3クラブライセンスは、レイラック滋賀FCと高知ユナイテッドSCの2クラブで、高知は財務の基準について追加の確認があり、6月の理事会で交付が決まりました。
J2クラブライセンスの9クラブは、八戸、福島、栃木シティ、相模原、長野、FC大阪、奈良、鳥取、宮崎です。それ以外の49クラブは、J1クラブライセンスを持っています。
ここで注意したいのは、ライセンスの種類と、クラブがいま所属しているリーグは別だという点です。J1のクラブの数は20ですが、J1クラブライセンスを持つクラブは49あります。J3に所属していてもJ1クラブライセンスを持つクラブがあります。交付規則も、J1ライセンスは参加するための資格にすぎず、翌シーズンにJ1に所属することを保証するものではないと定めています。成績の条件を満たしたときに、昇格できる資格があるという意味です。
アジアの大会に出るためのAFCクラブライセンスは、13クラブに交付されました。Jリーグのクラブと協賛の全体像は、サッカーのスポンサー一覧でまとめています。
(参考)2026/27シーズン J1・J2クラブライセンス判定結果について(2026年5月26日) – Jリーグ
(参考)2026/27シーズン J3クラブライセンス判定結果について(2026年5月26日) – Jリーグ
(参考)2026年度 第5回Jリーグ理事会後会見発言録 – Jリーグ
(参考)J1・J2クラブライセンス交付規則(2026年7月1日改正) – Jリーグ
Q. クラブライセンスの一覧はどこで見られますか?
Jリーグが毎年発表する判定結果で確かめられます。2026年5月26日に発表された2026/27シーズンの判定では、J1クラブライセンスが49クラブ、J2クラブライセンスが9クラブ、J3クラブライセンスが2クラブに交付され、交付されなかったクラブはありませんでした。ライセンスの種類は、クラブがいま所属しているリーグとは一致しません。
クラブライセンスの基準は7つで等級はA・B・Cの3段階

審査の基準は、現在の交付規則(2026年7月1日改正)では7つです。
- 競技基準(選手の登録、医療面のケア、アカデミーなど)
- 施設基準(スタジアム、トレーニング施設など)
- 人事体制・組織運営基準(監督、医師、財務の担当者などの配置)
- 法務基準(登記、他のクラブの経営への関与の禁止など)
- 財務基準(監査を受けた決算書、未払金がないことなど)
- 育成・サステナビリティ基準
- マーケティング基準
以前は5つの基準でしたが、育成・サステナビリティとマーケティングの2つが加わりました。Jリーグの公式のページは、7つの基準で合わせて64項目とし、2027/28シーズンのライセンスから適用すると説明しています。
それぞれの項目には、A・B・Cの等級が付いています。A等級は必須で、満たさないとライセンスは交付されません。B等級も必須ですが、満たさなくても交付はされ、かわりに制裁が科されます。C等級は推奨で、満たさなくても交付にも制裁にも影響しません。ニュースで「基準を満たしていない」と伝えられたときは、どの等級の話なのかを確かめると、深刻さがわかります。
(参考)J1・J2クラブライセンス交付規則(2026年7月1日改正) – Jリーグ
財務基準|債務超過と3期連続の赤字の特例は2029年6月期に元へ戻る
財務基準のうち最もよく知られているのが、債務超過と3期連続の赤字です。運用細則は、次のどちらかにあたると、A等級の財務基準を満たさないと定めています。
- 3期以上連続で当期純損失を計上した場合。ただし、期末の純資産が、その期の赤字の額を上回っていれば該当しない
- 期末に純資産がマイナス(債務超過)である場合
1つ目のただし書きは大事です。資本に厚みがあれば、赤字が続いても基準には触れません。親会社などの出資で純資産が厚いクラブは、赤字を出しながら投資を続ける余地があるということです。
ただし、この記事を書いた2026年10月の時点では、この2つは判定の対象から外れています。Jリーグのシーズンが秋から春に移ることに伴う特例です。
| 対象の決算 | 債務超過と3期連続の赤字の扱い |
|---|---|
| 2026年の特別シーズンと2026/27シーズンに関わる決算 | 特例として、判定の対象にしない |
| 2027/28シーズンに関わる決算(2028年6月期など) | 猶予の期間。債務超過が残っていてもよいが、前の年より増えてはならず、新たに陥ってもいけない。3期連続の赤字は、ここを1期目として数え直す |
| 2029年6月期以降の決算 | 元の基準に戻す |
シーズン移行に伴う財務基準の特例(出典:Jリーグの2025年9月18日の発表、クラブ経営ガイド2025、運用細則をもとにHuman Soarが整理)
Jリーグは理由として、決算期や契約の時期の変更など、シーズンの移行が財務に与える影響が大きいことを挙げています。2020年度から設けられた新型コロナウイルスに伴う特例とは、別のものです。特例の期間中も、短期的に資金が足りなくなるおそれがないかという資金繰りの審査は続きます。
(参考)J1・J2クラブライセンス交付規則運用細則(2026年7月1日改正) – Jリーグ
(参考)2026/27シーズンに向けクラブライセンス制度を改定(2025年9月18日) – Jリーグ
(参考)2026年度 第5回Jリーグ理事会後会見発言録 – Jリーグ
Q. クラブライセンスは債務超過だと交付されませんか?
原則として交付されません。運用細則は、期末に債務超過である場合と、3期以上連続で赤字の場合に、必須の財務基準を満たさないと定めています。ただし、シーズンの移行に伴う特例で、2026年の特別シーズンと2026/27シーズンに関わる決算では、この2つは判定の対象になりません。2029年6月期以降の決算から、元の基準に戻る予定です。
施設基準|スタジアムはJ1で15,000人以上が原則だが例外もある
スタジアムの大きさは、「Jリーグスタジアム基準」で定められています。入場できる人数は、J1が15,000人以上、J2が10,000人以上、J3は原則として5,000人以上です。芝生席は、J1とJ2では観客席に数えません。
ただし、例外があります。アクセスがよい、すべての観客席が屋根で覆われているなど、Jリーグ規約が定める「理想のスタジアム」の要件を満たし、理事会が総合的に判断した場合は、5,000人以上で全席が個席であれば、J1とJ2の基準を満たします。小さくても質の高い専用のスタジアムを認める道です。
屋根とトイレは、B等級の基準です。屋根は観客席の3分の1以上を覆うこと、トイレは観客1,000人に対して洋式5室と男性用の小便器8基が求められます。足りなくてもライセンスは交付されますが、制裁の対象になります。
入場できる人数が足りないクラブには、将来の整備を約束することで上位のライセンスを受けられる例外の規定があります。新しいスタジアムを整備すると文書で約束し、昇格が決まってから3年以内に場所・予算・内容を備えた計画を出し、5年以内に使い始めるというものです。2026/27シーズンは、12クラブがこの規定を使っています。スタジアムを運営する会社については、下の記事で扱っています。
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(参考)J1・J2クラブライセンス交付規則(2026年7月1日改正) – Jリーグ
(参考)J1・J2クラブライセンス交付規則運用細則(2026年7月1日改正) – Jリーグ
(参考)2026年度 第5回Jリーグ理事会後会見発言録 – Jリーグ
クラブライセンスの制裁と不交付の事例
交付規則は、B等級の基準を満たさない場合の制裁として、クラブ名の公表、改善計画の提出、戒告、罰金(1億円が上限)、勝点の減点(15点が上限)、無観客試合、下位リーグへの降格などを挙げています。
実際に多いのは、軽いものです。2026/27シーズンの判定では、27クラブが施設の基準で制裁の対象になりました。屋根だけが足りないクラブが25、屋根とトイレの両方が足りないクラブが2です。制裁の内容は、クラブ名の公表と改善計画の提出でした。「制裁」という言葉から受ける印象と、中身には差があります。
「剥奪」という言葉は、規則にはありません。規則にあるのは、ライセンスの「取消し」と、交付しないという判定です。破産や民事再生の申立てがあった場合などに、取り消されることがあると定められています。
直近で交付されなかった例は、2025年9月の判定です。高知ユナイテッドSCがJ2クラブライセンスを受けられず、J3クラブライセンスの交付になりました。理由は財務ではなく、アカデミーのチームという選手の育成の体制が基準を満たさなかったことです。ライセンスが出ないことと、経営が行き詰まることは、同じではありません。
判定の時期も変わっています。以前は9月でしたが、2026/27シーズン向けは2026年5月に行われ、2027/28シーズン以降は毎年3月に判定されます。なお、バスケットボールのBリーグは、2026-27シーズンから成績による昇格と降格をなくし、売上高や入場者数などのライセンスの基準で所属が決まる仕組みになりました。2025年10月の判定で、全55クラブの所属が決まっています。Bリーグの制度はサラリーキャップとはで扱っています。
(参考)J1・J2クラブライセンス交付規則(2026年7月1日改正) – Jリーグ
(参考)2026年度 第5回Jリーグ理事会後会見発言録 – Jリーグ
(参考)2026特別シーズン J1・J2クラブライセンス判定結果について(2025年9月25日) – Jリーグ
(参考)2026/27シーズンに向けクラブライセンス制度を改定(2025年9月18日) – Jリーグ
(参考)2025年10月 B.LEAGUEクラブライセンス判定結果 – B.LEAGUE
Q. クラブライセンスの制裁にはどんなものがありますか?
交付規則は、クラブ名の公表、改善計画の提出、戒告、罰金(1億円が上限)、勝点の減点(15点が上限)、下位リーグへの降格などを挙げています。実際に多いのは軽いもので、2026/27シーズンの判定では、スタジアムの屋根やトイレが基準に足りない27クラブが対象になり、内容はクラブ名の公表と改善計画の提出でした。
親会社・スポンサー・自治体がクラブライセンスで知っておく4つのこと

クラブを支える側から見ると、押さえておきたい点は4つあります。
債務超過は増資か利益で解消する
Jリーグの資料は、債務超過を解消する方法を、増資をするか、当期純利益を出すかの2つだと説明しています。アビスパ福岡は、福岡市議会に出された資料によると、2025年1月期の末に約2億7,200万円の債務超過でしたが、翌年度に約1億9,400万円の増資と約1億5,400万円の当期純利益で、純資産を約7,600万円のプラスにしました。増資は最も早い解消の方法ですが、利益を生むわけではありません。翌年に赤字が出れば、また元に戻ります。
(参考)アビスパ福岡株式会社について(令和8年6月) – 福岡市議会
議決権の15%以上を持つ株主はJリーグの承認が要る
Jリーグ規約は、議決権の15%以上を持つ株主が新しく生じる場合などに、チェアマンの承認を得なければならないと定めています。まとまった出資を引き受ける企業は、クラブとJリーグの手続きの時間を見込んでおく必要があります。
高額のスポンサー料の未入金はクラブがJリーグに報告する
運用細則は、クラブがJリーグに報告すべきことの例として、契約の金額が1,000万円以上のスポンサーが倒産した場合や、入金の期限から3か月を過ぎても入金がない場合を挙げています。スポンサー料の支払いの遅れは、クラブの審査に関わる事柄として扱われます。
スタジアムの期限は自治体の計画に左右される
例外の規定を使っているクラブは、期限までにスタジアムを整備しなければなりません。秋田県・秋田市とブラウブリッツ秋田は2026年7月、整備費の上限を142億円、収容を5,000人から1万人の規模とし、国の交付金などを除いた負担を民間50%、県25%、市25%とする基本方針をまとめました。2031年8月の供用開始を目指しています。民間の資金が前提なので、企業が整備に関わる場面が出てきます。
協賛や出資の前には、Jリーグが公表している判定結果と、クラブ別の決算の一覧を確かめられます。決算の読み方は、下の資料で整理しています。
あわせて読みたいクラブ経営は市場規模で決まらない|53クラブ決算分析›
クラブの収入の1つである移籍金は移籍金とはで、業界全体の課題は日本スポーツ業界の8つの課題で扱っています。
(参考)J1・J2クラブライセンス交付規則運用細則(2026年7月1日改正) – Jリーグ
(参考)スタジアム整備に関する基本方針(令和8年7月17日) – 秋田県・秋田市・ブラウブリッツ秋田
まとめ|クラブライセンスは等級と特例を確かめて読む
クラブライセンスは、クラブの経営と施設の状態を、外から確かめられる仕組みでもあります。要点を振り返ります。
- クラブライセンスは、Jリーグに参加するために毎年審査を受けて取得する資格で、J1・J2・J3の3種類がある
- 2026/27シーズンは60クラブすべてに交付。J1クラブライセンスは49クラブが持つ
- 基準は7つで、A等級を満たさないと交付されず、B等級を満たさないと制裁が付く
- 債務超過と3期連続の赤字は、シーズン移行の特例でいまは判定の対象外。2029年6月期から元に戻る予定
- 制裁の多くは、屋根やトイレの不足に対するクラブ名の公表と改善計画の提出
出資や協賛を検討しているクラブがあれば、まずJリーグの最新の判定結果で、ライセンスの種類、例外の規定の適用、制裁の有無を確かめてみてください。そのうえで決算の純資産と当期純利益を見ると、クラブが何を必要としているのかが読み取れます。


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