ファンタジースポーツとは|日本での扱いと企業の関わり方

ファンタジースポーツとは|日本での扱いと企業の関わり方 スポーツビジネス

新規事業の会議で、「海外で人気のファンタジースポーツを、自社のファン向けサービスに取り入れられないか」という案が出る。リーグの公式ゲームに賞品を出さないかという協賛の提案書も届いている。調べ始めると、賞金が出る海外の事例と、賭博罪という言葉が並んでいて、どこまでが国内でできる形なのかが見えにくいテーマです。

ファンタジースポーツは、実在の選手で仮想のチームを組み、選手の実際の試合の成績を点数にして、ほかの利用者と順位を競うゲームです。日本では、参加料を取るかどうかと、賞金や賞品の原資を誰が出すかによって、法律上の論点が変わります。経済産業省とスポーツ庁の研究会が2022年12月にまとめたレポートは、この2点で場合を分けて、刑法の賭博罪と景品表示法の論点を整理しています。

この記事は、遊び方の案内ではありません。仕組み、リーグ公式のゲームの例、公的な資料が日本での扱いをどう書いているか、企業の関わり方と確かめる点の順に整理します。法律の説明は一般的な内容の紹介です。個別の判断は弁護士に確かめてください。

  1. ファンタジースポーツとは|実在の選手で組んだチームの成績を競うゲーム
    1. シーズン制とデイリー制は勝敗が決まるまでの期間が違う
    2. 点数のもとは公式の試合データ
  2. リーグ公式のファンタジースポーツ|サッカーはプレミアリーグとJリーグが提供
    1. プレミアリーグ公式は2025/26シーズンに1,300万人超が参加
    2. 国内はJリーグ公式が2026年1月に始まりBリーグ公認は終了
    3. 国内の予想アプリと駅伝中継の企画は参加無料
  3. ファンタジースポーツの日本での扱い|参加料と賞金の出どころで論点が分かれる
    1. 無料で参加できる形は賭博罪が成立しないと整理されている
    2. 参加料から賞金を出す形は賭博罪が成立する可能性がある
    3. スポンサーが賞金を出す形は景品表示法の上限を確かめる
  4. 海外のファンタジースポーツの規模|米国とカナダで約5,700万人が参加
  5. ファンタジースポーツへの企業の関わり方|賞品の提供と権利の許諾と共同企画
    1. 賞金や賞品を提供する協賛
    2. 選手の肖像と試合データの許諾
    3. 放送や配信と組む共同企画
  6. 企業が契約の前に確かめること|参加料と賞の出どころを書面で押さえる
    1. 参加料の使い道と賞の原資を分けて確かめる
    2. 賞の上限と支払いの流れを法務の担当と確かめる
    3. 賭けのサービスとの線引きを確かめる
  7. まとめ|ファンタジースポーツは参加料と賞の出どころで扱いが変わる

ファンタジースポーツとは|実在の選手で組んだチームの成績を競うゲーム

ファンタジースポーツの仕組みの図解。選手を選ぶ、実際の試合、成績が点数になる、順位が決まる、次の節へ選び直す、の流れが輪になって回る

ファンタジースポーツは、利用者が監督やゼネラルマネージャーの立場で選手を選び、その選手が現実の試合で残した成績で勝ち負けが決まるゲームです。利用者が動かせるのは「誰を選ぶか」だけで、試合のプレーそのものは操作しません。

経済産業省とスポーツ庁の研究会がまとめた「スポーツDXレポート」(2022年12月)は、ファンタジースポーツを「利用者が実在する選手から成る架空のチームを組成し、その選手の実際の試合におけるパフォーマンスをスコア化したうえで、他の利用者と競い合うゲーム」と定義しています。選手を選ぶ、実際の試合が行われる、成績が点数になる、順位が決まる、次の節に向けて選び直す、という流れを繰り返します。

同じレポートは、選手の実力と活躍を見極める利用者の能力が勝敗を左右する点を、このゲームの特徴に挙げています。試合のない日にも選手の調子や出場の見込みを調べる理由が生まれるため、リーグやクラブにとってはファンとの接点を増やすデジタル施策の1つになっています。

シーズン制とデイリー制は勝敗が決まるまでの期間が違う

レポートは、ファンタジースポーツを、参加者がプレーする期間によって「シーズン」と「デイリー」の2つに分けています。シーズンは従来からある形で、利用者は特定のリーグに入り、開幕前に利用者どうしのドラフトでチームを作って、現実のシーズンが終わるまで数か月間競います。選手のけがや不調に合わせて、登録する選手を入れ替えていく必要があります。

デイリーは、近年広がっている形です。レポートは「1日~1週間程度の短期戦」と説明しており、1つの試合、または数日の間に行われる複数の試合が終わった時点で勝敗が決まります。モバイル端末の普及とともに人気が高まったとされています。

米国では、このデイリーの形が賭博にあたるかどうかが議論されてきました。レポートは、短い期間で結果が出て、勝敗に運が占める割合が相対的に高いという性質を、その理由に挙げています。日本で企画を考えるときも、どちらの形なのかを最初に決めておくと、後の確認が進めやすくなります。

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

点数のもとは公式の試合データ

点数の付け方は、運営する事業者が決めます。レポートは、サッカーであれば「ゴールのみが加点されるのではなく、アシストによる加点や、イエローカードによる減点等ファンタジースポーツ独自のスコア方式がある」と書いています。使われるデータは、チームと選手の基本情報、試合の日程、選手とチームのスタッツ、出場の情報などです。

Jリーグ公式の「J.LEAGUE FANTASY CARD」を運営する株式会社マイネットは、2025年9月17日の発表で、点数を「50項目以上の公式スタッツから算出される独自スコア」と説明しました。得点や順位の正しさは、もとになる試合データの正しさに支えられています。そのため、リーグや、リーグの公式データを扱う会社との契約が、このゲームの土台になります。

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

(参考)Jリーグ公式 トレーディングカード×ファンタジースポーツゲーム 『J.LEAGUE FANTASY CARD』 2026年始動。(2025年9月17日) – 株式会社マイネット

Q. ファンタジースポーツとは何ですか?

実在の選手を選んで仮想のチームを組み、選手の実際の試合の成績を点数にして、ほかの利用者と順位を競うゲームです。経済産業省とスポーツ庁の研究会のレポート(2022年12月)は、利用者が動かせるのは自分のチームの構成だけで、プレーは操作しない点を特徴に挙げています。期間によって、数か月間競うシーズン制と、1日から1週間程度で決まるデイリー制に分かれます。

リーグ公式のファンタジースポーツ|サッカーはプレミアリーグとJリーグが提供

ファンタジースポーツは、リーグが自ら公式のゲームとして出している例があります。サッカーでは、英国のプレミアリーグと日本のJリーグが公式のサービスを持っています。確かめられた例を、運営する主体で3つに分けました。

区分 例 参加料 賞の出し方
海外のリーグ公式 Fantasy Premier League(プレミアリーグ) 公的なレポートは、リーグやメディアが運営する場合は無料が多いと記載 成績上位者のリーグの勝者に、パートナー企業の商品やレプリカユニフォームなど
国内のリーグ公式・公認 J.LEAGUE FANTASY CARD(Jリーグ公式、2026年1月開始)/B.LEAGUE#LIVE(Bリーグ公認、終了) Jリーグ公式は基本無料(課金あり) Jリーグ公式に賞金の記載はなく、キャンペーンの賞品は抽選
国内のメディアと事業者 TBSファンタジー駅伝/スポーツ予想アプリ「なんドラ」 どちらも参加無料 抽選の賞品、協賛社が提供するギフト

ファンタジースポーツの公式サービスと国内の企画の例(出典:Premier League、Jリーグ、株式会社マイネット、株式会社UPSIDE SPORTS ENTERTAINMENT、株式会社ブリューアスの発表、スポーツDXレポート。2026年10月11日に確認)

プレミアリーグ公式は2025/26シーズンに1,300万人超が参加

リーグ公式の代表例が、英国のプレミアリーグが運営する「Fantasy Premier League」です。プレミアリーグの公式サイトは2026年7月20日の記事で、前のシーズン(2025/26)に1,300万人を超える人が参加したと書いています。2024/25シーズンは、最終節の締め切りの時点で、1,143万の認証済みのチームが登録されていました。

遊び方は、公式サイトの入門記事が説明しています。利用者は1億ポンドの仮想の予算で15人の選手を選び、選手のゴール、アシスト、セーブ、無失点などに応じて点数が付きます。2025/26シーズンに新しく設けられた成績上位者のリーグでは、勝者への賞品として、公式ボールのサプライヤーの商品や、クラブのレプリカユニフォームなどが案内されました。

スポーツDXレポートは、リーグなどの権利者やメディア企業が運営する場合は、無料で提供されることが多いと書いています。ねらいは参加料の収入ではなく、試合を見る人やファンを増やすことにあると、同じレポートは分析しています。

(参考)FPL basics explained: How to register(2026年7月20日) – Premier League

(参考)What’s new in 2025/26 Fantasy: Qualifying for elite global leagues(2025年7月18日) – Premier League

(参考)How to play FPL: A beginner’s guide(2021年6月20日) – Premier League

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

国内はJリーグ公式が2026年1月に始まりBリーグ公認は終了

国内では、Jリーグが2026年1月14日に、公式の新サービス「J.LEAGUE FANTASY CARD」を始めました。Jリーグの発表によると、Jリーグサポーティングカンパニーである株式会社マイネットとの協業で、ジャンルは「Jリーグ公式トレーディングカード × ファンタジースポーツゲーム」、価格は「基本無料(課金あり)」です。

Jリーグ公式サイトの説明では、集めた選手カードの中から、実際のJリーグの試合にあわせて5人の選手を選び、チームを組みます。選手の出場、得点、アシスト、守備などが「ファンタジーポイント」という点数になり、チームの合計で順位を競います。選手カードのパックは、「Jコイン」を使って購入する仕組みです。公式の発表に賞金の記載はなく、キャンペーンの賞品は抽選で提供されています。

バスケットボールでは、Bリーグ公認の「B.LEAGUE#LIVE」がありました。マイネットは2024年9月26日の発表で、2024-25シーズン版を4シーズン目と説明し、無料でも楽しめること、上位に入賞すると賞金を獲得できることを案内していました。ただし、2026年10月11日の時点で、公式サイトはサービスの終了を告知しています。協賛や共同企画を検討するときは、サービスが続いているかを公式サイトで確かめてください。

あわせて読みたいファントークンとは|スポーツクラブの国内事例と企業の確認点›

(参考)Jリーグ公式 トレーディングカード×ファンタジースポーツゲーム『J.LEAGUE FANTASY CARD』 サービス開始(2026年1月14日) – 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

(参考)【公式】J.League Fantasy Card – Jリーグ公式サイト

(参考)Jリーグ公式のトレーディングカード×ファンタジーゲーム 『J.LEAGUE FANTASY CARD』1月14日(水)正式リリース。 豪華特典が手に入るキャンペーンも同時開催。(2026年1月15日) – 株式会社マイネット

(参考)B.LEAGUE公認ファンタジースポーツ「B.LEAGUE#LIVE」 本日2024年9月26日(木)より開幕戦のエントリーを開始 – 株式会社マイネット

(参考)B.LEAGUE#LIVE(サービス終了のお知らせ。2026年10月11日に確認) – B.LEAGUE#LIVE 公式サイト

国内の予想アプリと駅伝中継の企画は参加無料

リーグ公式のほかにも、国内の事業者やメディアの企画があります。株式会社ブリューアスは2025年12月25日、TBSテレビと博報堂と共同で、ニューイヤー駅伝の中継にあわせた視聴者参加型のゲーム「TBSファンタジー駅伝」を開発したと発表しました。参加費は無料で、7つの区間にそれぞれ違うチームを選び、最も速いタイムや最も高い点数を出した人が、賞品が当たる抽選の権利を得ます。

スポーツ予想アプリ「なんドラ」は、試合の勝敗や選手の活躍を予想して順位を競うサービスです。運営する株式会社UPSIDE SPORTS ENTERTAINMENTは、2026年4月23日の発表で、「完全無料モデルにてサービスを提供しています」と説明しています。順位に応じたポイントをカタログのギフトと交換できるほか、協賛社が提供するギフトが贈られる予想もあるとしています。

確かめた範囲では、国内で続いているサービスは、参加が無料または基本無料で、賞は協賛社や主催する側が用意する賞品や抽選という形でした。参加料を集めて、そこから賞金を出すと明記したサービスは見つかりませんでした。その背景にあるのが、次の章で見る法律上の論点です。

(参考)ブリューアス、LINEを活用した「駅伝×ファンタジースポーツ」第7弾をTBSテレビ、博報堂と共同開発。TBSファンタジー駅伝®「ニューイヤー駅伝2026」ゲーム(2025年12月25日) – 株式会社ブリューアス

(参考)『RISE197』全試合の勝敗予想企画をスポーツ予想アプリ「なんドラ」で開催 !(2026年4月23日) – 株式会社UPSIDE SPORTS ENTERTAINMENT

Q. ファンタジースポーツは日本でも遊べますか?

日本でも、リーグ公式のサービスや事業者の企画が提供されています。サッカーでは、Jリーグが2026年1月14日に公式サービス「J.LEAGUE FANTASY CARD」を始めました。確かめた範囲では、国内のサービスは参加が無料または基本無料で、賞は協賛社などが用意する賞品や抽選という形です(2026年10月11日時点)。

ファンタジースポーツの日本での扱い|参加料と賞金の出どころで論点が分かれる

ファンタジースポーツの日本での扱いの図解。無料参加は賭博罪が不成立との整理、参加料から賞金を出す形は成立する可能性、スポンサーが賞金を出す形は不成立との整理と考えられる、とレポートが整理している

日本での扱いは、「ファンタジースポーツだから」という名前では決まりません。経済産業省とスポーツ庁の研究会の「スポーツDXレポート」(2022年12月)は、参加料があるかどうかと、賞金などの原資を誰が出すかで場合を分けて、刑法の賭博罪にあたるかどうかを検討しています。

レポートは、賭博罪の要件を、偶然の勝敗によることと、勝者が財産を得て敗者が財産を失う関係があることの2つに整理しています。1つ目について、利用者は選手の成績を左右できず、偶然性の影響を排除できないので、要件を満たすとしました。そのため、場合を分けるのは2つ目の要件、つまりお金の流れです。

このレポートは研究会の報告で、裁判所の判断や、法令の解釈を示す通知ではありません。「どの形であれば適法か」を示す国のガイドラインも、確かめた範囲では見つかりませんでした(2026年10月11日時点)。以下は一般的な内容の紹介です。自社の企画がどれにあたるかは、弁護士に確かめてください。

無料で参加できる形は賭博罪が成立しないと整理されている

利用者が参加料を払わずに参加できる場合について、レポートは、「勝者は財産を得る一方で、敗者は財産を失うことにはならないため、賭博罪及び賭博場開帳図利罪は成立しない」と書いています。負けた人が何も失わないので、財産の得喪を争う関係にならない、という考え方です。

刑法の第185条は、「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する」と定めています。第186条第2項は、賭博場を開いて利益を図った者を3か月以上5年以下の拘禁刑としており、運営する側にはこちらが関わります。無料の形は、この2つの条文の手前で整理されていることになります。

ただし、基本は無料でも、課金の要素があるサービスは少なくありません。お金を払って得たものが、賞を得られるかどうかにどう関わるのかは、サービスの設計によって違います。「無料と書いてあるから問題ない」と名前だけで判断せず、利用者が払うお金と賞の関係を、設計の資料で確かめます。

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

(参考)刑法(明治四十年法律第四十五号) – e-Gov法令検索

参加料から賞金を出す形は賭博罪が成立する可能性がある

米国で広がったのは、利用者が参加料を払い、集まった参加料から成績の上位の人に賞金を出す形です。レポートは、運営会社に集められた参加料の総額を原資として、たとえ一部であっても、そこから勝者にだけ賞金が支払われる場合は、「賭博罪及び賭博場開帳図利罪が成立する可能性がある」としています。

別の箇所では、集めた参加料から賞金を設定して成績の上位から支払う米国と同じ仕組みは、「賭博罪にあたると解されるため」、国内では参加料から賞金を出さない仕組みでサービスが行われている、と説明しています。前の章で見た国内のサービスの形は、この記述と重なります。

この点には、別の見解があることもレポートは注に書いています。参加費が大会に参加する対価として合理的で、その大半が必要経費にあてられている場合などに、参加費の支払いと賞金の交付を別の事実として見る余地があるという見解です。ただしレポートは、この考え方は「必ずしも議論が尽くされているわけではなく」、さらなる検討が必要だとしています。

国の会議は、その後もこの点を取り上げています。スポーツ庁と経済産業省の第二期スポーツ未来開拓会議は、2023年7月の中間報告で、賭博罪にあたるのではないかという懸念からサービスの提供をためらう事業者の声があるとし、賞金の提供を伴うファンタジースポーツなどについて、適法にサービスを提供するためのガイドラインの策定などを官民で検討する、と書きました。一方、同じ会議が2025年4月に出したとりまとめには、「ファンタジー」という語が出てきません。

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

(参考)第二期スポーツ未来開拓会議 中間報告(2023年7月) – スポーツ庁・経済産業省

(参考)スポーツ未来開拓会議 ~今後のスポーツの成長産業化を見据えた、当面の取組等についてのとりまとめ~(2025年4月) – スポーツ庁・経済産業省

スポンサーが賞金を出す形は景品表示法の上限を確かめる

3つ目は、利用者は参加料を払うものの、賞金などの原資は第三者であるスポンサーが出す形です。レポートは、勝者が得た賞金は、負けた参加者が払った参加料とは無関係なので、「賭博罪及び賭博場開帳図利罪は成立しないと考えられる」としています。国内の例として、Bリーグ公認の「B.LEAGUE#LIVE2021」では、参加料はサービスの運営費にあてられ、賞金はスポンサーからの拠出金があてられている、と紹介しました。

賭博罪にあたらない形でも、別の法律の確認が残ります。レポートは、提供される賞金が、有料の大会への参加を促すための「景品類」とみなされる場合は、景品表示法の規制が適用されるとしています。上限は、最高額が取引の価額の20倍(その額が10万円を超える場合は10万円)、総額が取引の予定総額の100分の2です。消費者庁が一般懸賞の限度額として示している数字と同じです。

お金の送り方にも論点があります。運営会社がスポンサーから原資を預かり、勝者に賞金にあたる額を送る場合、一連の行為が資金決済法の「為替取引」にあたる可能性があるとして、レポートは、資金移動業の登録が必要かどうかを慎重に確かめる必要があると書いています。協賛する企業にとっては、自社が出したお金や賞品が、誰から誰へ、どの名目で渡るのかが確認点になります。

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

(参考)不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号) – e-Gov法令検索

(参考)景品規制の概要 – 消費者庁

Q. ファンタジースポーツは賭博にあたりますか?

参加料の有無と、賞金の原資を誰が出すかで整理が分かれます。経済産業省とスポーツ庁の研究会のレポート(2022年12月)は、無料で参加できる場合は賭博罪が成立しない、参加料から賞金を出す場合は成立する可能性がある、スポンサーが賞金を出す場合は成立しないと考えられる、と書いています。研究会の報告であり、個別の企画の判断は弁護士に確かめてください。

海外のファンタジースポーツの規模|米国とカナダで約5,700万人が参加

海外の規模を示す数字として、米国の業界団体であるFantasy Sports & Gaming Association(FSGA)の調査があります。FSGAは2025年7月1日の発表で、過去12か月にファンタジースポーツをした人は、米国とカナダを合わせて約5,700万人(米国が5,300万人、カナダが420万人)と推計しました。調査会社のAngus Reid Groupが、2025年5月30日から6月5日に、両国の成人3,930人を対象に行った調査にもとづく数字です。

同じ発表には、「8,400万人」という数字も出てきます。これは、ファンタジースポーツかスポーツベッティングのどちらかに参加した成人の数で、ファンタジースポーツだけの人数ではありません。FSGAは、米国の参加者のほぼ半数が両方に参加しているとも書いており、海外では2つの市場が重なっていることが分かります。資料に引くときは、どちらの数字かを確かめます。

米国でも、扱いは一様ではありません。スポーツDXレポートによると、2006年にオンラインの賭博を取り締まる法律ができた時点では、ファンタジースポーツはデータ分析というスキルにもとづくゲームと整理され、規制の対象になりませんでした。その後、デイリーの形が広がるなかで議論が起き、2022年2月の時点では、45の州で事業者によるサービスが展開される一方、5つの州では認められていなかったと、レポートは書いています。

海外の事例を社内で紹介するときは、「米国では参加料から賞金が出ている」という事実と、「日本で同じ形ができるか」を分けて伝えます。前の章で見たとおり、国の研究会のレポートは、同じ仕組みを日本で行うことには賭博罪の論点があるとしています。

(参考)New FSGA Research Highlights Industry Stability and Next-Generation Growth in Fantasy Sports and Sports Betting(2025年7月1日) – Fantasy Sports & Gaming Association

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

ファンタジースポーツへの企業の関わり方|賞品の提供と権利の許諾と共同企画

ファンタジースポーツへの企業の関わり方の図解。運営事業者を中心に、リーグ・クラブ、データを扱う会社、協賛企業、利用者が、許諾とライセンス料、データと対価、賞品と社名の表示、参加料とゲームを渡し合う

企業の関わり方は、ゲームを運営する事業者を中心に見ると整理できます。運営事業者は、リーグやクラブから選手の肖像やロゴを使う許諾を受けてライセンス料を払い、データを扱う会社から試合のデータを受け取って対価を払います。利用者からは参加料や課金を受け取り、ゲームと賞品を提供します。協賛する企業は、賞金や賞品を出し、提供した社名が企画のなかで示されます。

スポーツDXレポートは、運営元を、リーグなどの権利者が自ら運営する場合、メディア企業が運営する場合、ゲームの専業の会社が運営する場合の3種類に分けています。自社がこのうちのどこに、どの立場で関わるのかを決めると、結ぶ契約の相手と中身が見えてきます。

賞金や賞品を提供する協賛

企業にとって入りやすいのが、賞金や賞品を提供する協賛です。前の章で見たとおり、国内では賞の原資を第三者が出す形が取られてきたため、協賛する企業の役割は小さくありません。スポーツDXレポートは、スポンサーが見つからない限り賞金や賞品の原資を用意できないことを、この仕組みの事業上の限界として挙げています。

賞品の提供は、公式の発表で確かめられます。「なんドラ」が2026年4月に行った格闘技の大会の予想企画では、サイン入りのポスターや次の大会のチケットがギフトになり、発表にはギフトの提供元として会社の名前が書かれていました。プレミアリーグ公式のゲームでも、成績上位者のリーグの賞品に、公式ボールのサプライヤーの商品が含まれています。

運営する事業者の側が、クラブに協賛する例もあります。「B.LEAGUE#LIVE」を運営していたGAMEDAY Interactiveは、2024年9月24日に、サンロッカーズ渋谷と2024-25シーズンのオフィシャルパートナー契約を結んだと発表し、ホームゲームでのブースの出展や協賛試合を予定しているとしていました。試合の名前に社名を付ける協賛の考え方は、冠スポンサーの費用と実例でまとめています。

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

(参考)『RISE197』全試合の勝敗予想企画をスポーツ予想アプリ「なんドラ」で開催 !(2026年4月23日) – 株式会社UPSIDE SPORTS ENTERTAINMENT

(参考)What’s new in 2025/26 Fantasy: Qualifying for elite global leagues(2025年7月18日) – Premier League

(参考)Bリーグ公認ファンタジースポーツゲーム「B.LEAGUE#LIVE」 サンロッカーズ渋谷とオフィシャルパートナー契約締結(2024年9月24日) – 株式会社マイネット

選手の肖像と試合データの許諾

ファンタジースポーツは、実在の選手の名前や写真と、試合のデータがなければ成り立ちません。スポーツDXレポートは、運営会社が、対象となるリーグなどに、肖像権やパブリシティ権の利用料とともにデータを使う対価を払い、データの提供を受けて運営していると説明しています。海外では、ライセンス料の対価として、リーグから公式の事業者としての承認と、肖像やロゴを使う許諾を得る契約が主流だとしています。

自社でゲームを企画する場合について、レポートは、実在の選手の氏名や肖像を使うときは、スポーツ団体の規約などを確かめ、所属するクラブや球団との間でライセンス契約などを結んで使用の許諾を受けることになる、と書いています。選手の肖像を誰が管理しているかは、競技や団体によって違います。使用料の考え方は、スポーツ選手の肖像権の使用料でくわしく扱っています。

データを扱う企業には、提供する側としての関わり方があります。スポーツDXレポートは、ファンタジースポーツが盛んな北米では、データを扱う会社が商流の中核的な存在になっていると書いています。データを提供する側に立つ場合は、データがどのサービスで、どの国の利用者に向けて使われるのかを、契約で確かめます。

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

放送や配信と組む共同企画

メディアや広告の会社は、中継や配信と組み合わせた企画で関わっています。「TBSファンタジー駅伝」は、放送局のTBSテレビ、広告会社の博報堂、開発会社のブリューアスの3社が共同で開発したもので、ブリューアスの2025年12月の発表は、これをLINEを使った企画の第7弾と説明しています。番組を最初から最後まで見る理由をつくる企画です。

配信との連動もあります。マイネットは2026年6月9日、「JリーグオールスターDAZNカップ」(6月13日開催)にシルバーパートナーとして協賛し、DAZNの生配信で、先発メンバーの発表に選手カードの画像を使う演出を行うと発表しました。ゲームの運営、大会への協賛、配信での露出が1つの企画にまとまっています。

スポーツDXレポートも、メディア企業がファンタジースポーツを運営するねらいを、参加者が試合の視聴やスポーツニュースを求める点に見ています。自社の媒体や店舗、会員サービスを持つ企業は、賞品を出すだけでなく、自社の接点にファンを呼び込む企画として組めるかを検討できます。

(参考)ブリューアス、LINEを活用した「駅伝×ファンタジースポーツ」第7弾をTBSテレビ、博報堂と共同開発。TBSファンタジー駅伝®「ニューイヤー駅伝2026」ゲーム(2025年12月25日) – 株式会社ブリューアス

(参考)JリーグオールスターDAZNカップの生配信にて『J.LEAGUE FANTASY CARD』の特別演出を実施!(2026年6月9日) – 株式会社マイネット

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

企業が契約の前に確かめること|参加料と賞の出どころを書面で押さえる

協賛や共同企画の話を進める前に確かめたいのは、お金と賞の流れです。前の章までで見た公的な資料の整理は、どれも「誰が払ったお金が、誰に渡るのか」を軸にしていました。提案書の言葉ではなく、利用規約と契約書で確かめます。

参加料の使い道と賞の原資を分けて確かめる

最初に、利用者が払うお金があるかどうかを確かめます。参加料だけでなく、アイテムやチケットの購入、有料の会員の仕組みも含めて、利用者の支払いを一覧にします。そのうえで、賞金や賞品の原資が、利用者の支払いとは別に用意されているかを見ます。

スポーツDXレポートが紹介した国内の例は、参加料は運営費に、賞金はスポンサーの拠出金に、と使い道が分かれていました。協賛する企業は、自社が出すお金や賞品が賞の原資になるのか、運営費になるのかを、契約書に書いてもらいます。協賛の契約書で確かめる項目は、スポーツスポンサー契約の6項目が参考になります。

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

賞の上限と支払いの流れを法務の担当と確かめる

次に、賞の金額と渡し方です。賞が景品表示法の「景品類」にあたる場合は、最高額と総額に上限があります。一方で消費者庁は、商品やサービスの購入や来店を条件とせずに申し込める抽選の企画には、景品の規制は適用されないと説明しています。自社の企画がどちらにあたるかは、参加の条件によって変わります。

賞金を現金で渡す企画では、誰が利用者に支払うのかも確かめます。運営会社が協賛企業のお金を預かって勝者に送る形には、資金決済法の論点があると、スポーツDXレポートは指摘していました。こうした点は、企画が固まる前の段階で、法務の担当者や弁護士に相談しておくと、後からの作り直しを避けられます。

(参考)景品規制の概要 – 消費者庁

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

賭けのサービスとの線引きを確かめる

最後に、賭けのサービスとのつながりです。海外では、ファンタジースポーツの事業者がスポーツベッティングも手がけている例があり、スポーツDXレポートが挙げた北米の大手2社の売上は、どちらもスポーツベッティングなどを含む数字でした。海外の事業者と組む場合は、相手の事業の範囲と、日本から利用できるサービスの中身を確かめます。

日本でスポーツの結果にお金を賭けることがどう扱われているか、広告や協賛で何に気をつけるかは、下の記事で整理しています。選手や関係者の不正を防ぐ取り組みは、スポーツインテグリティの解説も参考になります。

あわせて読みたいスポーツベッティングは日本で違法?|企業の協賛と広告の注意点›

(参考)スポーツDXレポート -スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会-(2022年12月) – 経済産業省・スポーツ庁

まとめ|ファンタジースポーツは参加料と賞の出どころで扱いが変わる

ファンタジースポーツは、実在の選手で組んだ仮想のチームの成績を競うゲームです。要点を振り返ります。

  • 選手を選ぶ、実際の試合、成績が点数になる、順位が決まる、という流れを繰り返し、期間によってシーズン制とデイリー制に分かれる
  • プレミアリーグ公式のゲームには2025/26シーズンに1,300万人超が参加し、Jリーグは2026年1月に公式サービスを始めた
  • 国の研究会のレポートは、無料の形、参加料から賞金を出す形、スポンサーが賞金を出す形に分けて、賭博罪の論点を整理している
  • 賭博罪にあたらない形でも、景品表示法の上限と資金決済法の確認が残る
  • 企業の関わり方は、賞金や賞品の提供、肖像とデータの許諾、放送や配信と組む共同企画に分けられる

まずは、検討している企画について、利用者が払うお金と、賞の原資を出す人を1枚の紙に書き出してください。そのうえで、契約の前に弁護士に相談します。スポーツ産業の全体の動きは、日本のスポーツ業界の課題で整理しています。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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