スポーツ産業のエコシステムとは|企業の入り口と資金循環を図解

スポーツ産業のエコシステムとは|企業の入り口と資金循環を図解 スポーツビジネス

新規事業の企画書に「スポーツ産業のエコシステムに入る」と書いたものの、会議で「それは誰にお金を払って、誰と何をする話なのか」と聞かれて手が止まる。調べ直すと、国の資料には「好循環」と書かれていて、エコシステムという言葉がなかなか出てこない。市場規模も10兆円、11兆円、15兆円と資料ごとに違い、どれを使えばよいのか迷うはずです。

スポーツ産業のエコシステムは、スポーツで稼いだ収益をスポーツへもう一度投じて、市場と環境と人を育て続ける循環を指す言葉です。国のスポーツ基本計画はこの循環を「好循環」と書いていて、「エコシステム」は有識者会議の報告書や民間の協議会が使っている言葉です。企業の入り口は、協賛金や広告料として資金を出す道と、スポーツ団体と組んで事業をつくる道の2つに分かれます。

この記事では、国の計画と会議の報告書、日本政策投資銀行(DBJ)の推計をもとに、お金と価値がどう回っているのかと、企業がどこから入れるのかを整理します。資料はいずれも2026年10月11日に原典を確認しました。

スポーツ産業のエコシステムは稼いだ収益をスポーツへ戻す循環を指す

「スポーツエコシステム」を定義した公的な文は、確かめた範囲では見つかりませんでした。いちばん近い説明は、スポーツ庁と経済産業省の会議が2016年に書いた「スポーツで稼ぎその収益をスポーツへ再投資する自律的好循環」という一文です。誰がどの言葉を使っているのかを、先に表で並べます。

使っている主体 使っている言葉 循環させるもの
国のスポーツ基本計画(第3期、第4期の中間報告) 好循環 市場の収益、スポーツ環境、スポーツ参画人口
スポーツ未来開拓会議(スポーツ庁・経済産業省の有識者会議) エコシステム、好循環 収益と再投資、人材と資金
民間の協議会、兵庫県 スポーツエコシステム 資金と人材(協議会)、4つの柱の施策(兵庫県)

「エコシステム」と「好循環」の使い分け(出典:スポーツ基本計画、スポーツ未来開拓会議の各報告書、日本野球機構と兵庫県の公表資料をもとに作成。語の有無は各PDFの本文を検索して確認)

国の基本計画は好循環と書いている

文部科学省が令和4年3月25日に定めた第3期スポーツ基本計画には、「エコシステム」という語が1か所もありません。本文を検索すると、使われているのは「好循環」で、4か所に出てきます。スポーツ審議会が令和8年7月にまとめた第4期計画の中間報告も同じで、「エコシステム」は0か所、「好循環」は6か所でした。

社内の資料で国の方針を引くときは、「国はスポーツ産業のエコシステムを掲げている」と書くと原典と合いません。「国は好循環を政策目標に掲げている」と書くのが正確です。計画の全体像はスポーツ基本計画の内容と企業への影響で整理しています。

(参考)スポーツ基本計画(令和4年3月25日) – 文部科学省

(参考)第4期スポーツ基本計画の策定について 中間報告(令和8年7月) – スポーツ審議会

エコシステムは有識者会議の報告書に出てくる

国の文書でこの語が見出しになったのは、スポーツ庁と経済産業省が開いたスポーツ未来開拓会議の中間報告(平成28年6月)です。「スポーツ産業のエコシステムの構築」という見出しのもとで、自律的な好循環を実現するには「新たなビジネスを継続的に創出する仕組みが必要」だと書いています。その手段として挙げたのが、公民連携のプロジェクトとオープンイノベーションでした。

2023年7月の第二期の中間報告にも、「経営を担う優秀な人材と資金が循環するエコシステムの構築」という見出しがあります。エコシステムは、国の計画の言葉というより、計画を議論する会議が循環の仕組みを指して使った言葉だと言えます。

(参考)スポーツ未来開拓会議 中間報告~スポーツ産業ビジョンの策定に向けて~(平成28年6月) – スポーツ庁・経済産業省

(参考)第二期 スポーツ未来開拓会議 中間報告(2023年7月) – スポーツ庁・経済産業省

民間の協議会と兵庫県は名前に掲げている

名前そのものに「スポーツエコシステム」を掲げているのは、民間の団体と自治体です。スポーツエコシステム推進協議会は2022年1月31日に発足した民間の団体で、国の機関ではありません。日本野球機構は2025年10月7日にこの協議会とパートナーシップを結び、協議会の目標を「スポーツ産業を起点とする資金と人材の循環システムの構築によるスポーツ価値の向上」と紹介しています。

兵庫県は「HYOGOスポーツエコシステム」という名前で、人材バンク、空間開放、Well-being、スポンサーシップの4つの柱を連携させる施策を進めています。使い手によって中身は少しずつ違いますが、一度きりの支援で終わらせず、回り続ける仕組みをつくるという点は共通しています。

(参考)スポーツエコシステム推進協議会への参画について(2022年1月31日) – 株式会社サイバーエージェント

(参考)一般財団法人スポーツエコシステム推進協議会とのパートナーシップ締結のお知らせ(2025年10月7日) – 日本野球機構

(参考)HYOGOスポーツエコシステムの展開 – 兵庫県

Q. スポーツ産業のエコシステムとは何ですか?

スポーツで稼いだ収益をスポーツへ再び投じて、市場と環境と人を育て続ける循環のことです。公的な定義文は確認できず、最も近い説明は、スポーツ未来開拓会議の中間報告(平成28年6月)にある「スポーツで稼ぎその収益をスポーツへ再投資する自律的好循環」です。国のスポーツ基本計画は、同じ内容を「好循環」と書いています。

国の計画が描く好循環は市場と環境と参画人口で回る

第3期スポーツ基本計画が描くスポーツの好循環の図解。市場の拡大、スポーツ環境の改善への還元、参画人口の拡大が輪になって回る

国が政策目標として書いている循環は、市場の拡大、スポーツ環境の改善、参画人口の拡大の3つがつながる形です。お金だけが回る図ではなく、スポーツに関わる人が増えることまでを1つの輪に入れている点が特徴です。その後の会議は、この輪に「人材」の流れを加えました。

第3期計画は市場の拡大を循環の起点に置いた

第3期スポーツ基本計画は、スポーツの成長産業化の政策目標を次のように書いています。「スポーツ市場を拡大し、その収益をスポーツ環境の改善に還元し、スポーツ参画人口の拡大につなげるという好循環を生み出す」。上の図は、この文の順番どおりに3つの段階を並べたものです。

企業にとって大事なのは、2つ目の「還元」です。協賛金や事業の売上がクラブや団体に入るだけでは輪は閉じず、その収益が施設や育成などの環境に戻って初めて、参画する人が増え、次の市場につながります。協業の相手を選ぶときは、受け取ったお金をどこへ戻しているのかを聞くと、相手が循環をつくれているかが分かります。

(参考)スポーツ基本計画(令和4年3月25日) – 文部科学省

(参考)スポーツの成長産業化(第3期スポーツ基本計画) – スポーツ庁

2023年の報告書は人材の循環を加えた

第二期スポーツ未来開拓会議の中間報告(2023年7月)は、循環させるものを資金だけでなく「人と資金」の2つにしました。トップスポーツの収益を地域スポーツへの投資に回し、育った選手などの人材が地域に貢献すれば、地域のスポーツ人口が増え、それがトップスポーツの潜在的な顧客になる、という流れです。

同じ報告書は、チームに投資が集まれば経営人材が集まり、経営人材が集まれば収益が生まれて次の投資を呼び込める、という循環も望ましい姿として挙げています。資金を出す企業だけでなく、人を出す企業、人を育てる企業にも役割があるということです。

(参考)第二期 スポーツ未来開拓会議 中間報告(2023年7月) – スポーツ庁・経済産業省

2022年のスポーツ市場規模には3つの数字がある

2022年のスポーツ市場規模の3つの数字を測るものの違いで分けた分岐図。スポーツGDPは約10.3兆円、スポーツ総供給は約15.5兆円、スポーツ庁の試算は11.6兆円で、15兆円の目標と比べてよいのは11.6兆円だけ

2022年のスポーツの規模を表す数字は、約10.3兆円、約15.5兆円、11.6兆円の3つがあり、どれも正しい数字です。測っているものが違うので、15兆円の目標と比べてよいのは11.6兆円だけです。企画書に引く前に、3つの違いを押さえてください。

スポーツGDPは約10.3兆円|付加価値を測る数字

日本政策投資銀行の産業調査部が2026年3月に発行した推計(監修はスポーツ庁と経済産業省)によると、2022年のスポーツGDPは10.3兆円で、国のGDPに占める割合は1.83%でした。スポーツGDPは、スポーツ部門、投入部門、流通部門が生んだ付加価値を合計したものです。新型コロナの拡大前の2019年の9.5兆円を上回り、初めて10兆円を超えました。

この推計は、もとになる統計が公表される時期の都合で、発表の3年前の値を計算しています。2026年に出た数字が2022年のものなのは、そのためです。

(参考)わが国スポーツ産業の経済規模推計 日本版スポーツサテライトアカウント 2011~2022年推計(2026年3月発行) – 株式会社日本政策投資銀行 産業調査部

スポーツ総供給は約15.5兆円|輸入額も含む数字

同じ日本政策投資銀行の推計には、2022年の「スポーツ市場規模(スポーツ総供給)」として約15.5兆円という数字も載っています。これは、スポーツ部門の生産額、流通部門の生産額、スポーツの輸入額を足したものです。付加価値ではなく生産額で測り、輸入も含むので、スポーツGDPより大きくなります。

15.5兆円という数字だけを見ると、国の15兆円の目標をすでに超えたように見えます。しかし、目標と比べるための数字は別にあり、この15.5兆円で「目標達成」と書くと誤りになります。

(参考)わが国スポーツ産業の経済規模推計 日本版スポーツサテライトアカウント 2011~2022年推計(2026年3月発行) – 株式会社日本政策投資銀行 産業調査部

政策目標と比べる数字は11.6兆円|スポーツ庁の試算

第4期スポーツ基本計画の中間報告は、「スポーツ市場規模は、2022年に11.6兆円」と書いています。注によると、日本政策投資銀行の推計などをもとにスポーツ庁が試算した数字で、計算式は公表されていません。目標は、2025年4月の会議のとりまとめで「遅くとも2030年まで」に15兆円と改められ、中間報告もこの期限を引き継いでいます。

11.6兆円から2030年に15兆円へ届くには、8年間で年に約3.3%ずつ伸びる必要があります(本記事の計算)。なお、目標の出発点とされる5.5兆円は2012年時点の値で、教育と公営競技を除いた別の推計です。いまの数字と単純に引き算して増えた額を出すことはできません。目標が見直された経緯は、下の記事でくわしく扱っています。

あわせて読みたいスポーツ市場規模15兆円目標|2030年へ軌道修正【2026年最新】›

(参考)第4期スポーツ基本計画の策定について 中間報告(令和8年7月) – スポーツ審議会

(参考)スポーツ未来開拓会議~今後のスポーツの成長産業化を見据えた、当面の取組等についてのとりまとめ~(2025年4月) – スポーツ庁・経済産業省

(参考)スポーツ未来開拓会議 中間報告~スポーツ産業ビジョンの策定に向けて~(平成28年6月) – スポーツ庁・経済産業省

Q. スポーツ市場規模は15兆円の目標を達成しましたか?

達成していません。目標と比べる数字は、スポーツ庁が試算した2022年の11.6兆円で、目標の期限は「遅くとも2030年まで」です。日本政策投資銀行の推計にある約15.5兆円は、生産額に輸入額を足した「スポーツ総供給」という別の数字で、目標との比較には使えません。

お金の流れはプロの興行の外側まで広がっている

スポーツ産業のお金の大半は、プロスポーツの試合の外側で動いています。日本政策投資銀行の推計は、スポーツGDPを11の分類に分けていて、その内訳を見ると、企業が関われる場所が興行だけではないことが分かります。

プロスポーツの興行はスポーツGDPの2.4%

2022年のスポーツGDP約10.3兆円のうち、プロスポーツ(興行)は2,413億円で、全体の2.4%です。最も大きい分類は「スポーツ活動」の32.4%ですが、その中身は公営競技が14.1%、スポーツ施設の運営が13.2%を占めます。2番目は、スポーツに関連した卸売・小売や旅客輸送を含む「スポーツ関連流通」の22.7%でした。

スポーツ産業に入ると聞くと、プロのリーグやクラブとの取引を思い浮かべがちです。数字のうえでは、施設、流通、教育、メディアといった周辺の領域のほうがずっと大きく、自社の事業と重なる場所を探す余地があります。領域ごとの事業の中身は、下の記事で整理しています。

あわせて読みたいスポーツビジネスとは|7要素・市場動向・キャリアを解説›

(参考)わが国スポーツ産業の経済規模推計 日本版スポーツサテライトアカウント 2011~2022年推計(2026年3月発行) – 株式会社日本政策投資銀行 産業調査部

興行には協賛金と放映権が流れ込む

規模は小さくても、プロスポーツの興行にはお金が集まる構造があります。日本政策投資銀行は、同じ推計のなかで産業分類どうしの資金の流れを図にしていて、興行には、企業からの協賛金、スポーツ関連メディアからの放映権、スポーツ用品・アパレルや食品・飲料などからの協賛金が入ると示しています。興行からは、施設利用料がスポーツ施設の運営へ流れます。

企業が払ったお金は、興行で止まらず、施設の運営やその先の建設へと渡っていきます。この図は企業どうしの取引を簡単に示したもので、ファンが払うチケット代などは描かれていません。クラブの収入の内訳はプロスポーツクラブの収益構造で、業界全体の課題は日本スポーツ業界の8つの課題で扱っています。

(参考)わが国スポーツ産業の経済規模推計 日本版スポーツサテライトアカウント 2011~2022年推計(2026年3月発行) – 株式会社日本政策投資銀行 産業調査部

企業の入り口は資金を出す道と事業を組む道に分かれる

企業がスポーツエコシステムに入る入り口の図解。資金は広告料・命名権・協賛金として、技術や商品は共創プログラムを通じてクラブや競技団体につながる

企業がこの循環に入る道は、資金を出す道と、スポーツ団体と事業を組む道の2つです。上の図は、企業の持ち物、入り口、相手の組み合わせのうち、公的な資料や統計で確かめられたものだけを線で結んでいます。自社が出せるものから、右へたどってみてください。

資金を出す道|協賛金と広告料と命名権

1つ目は、お金を出して権利や露出を得る道です。日本政策投資銀行の資金の流れの図では、企業のお金は協賛金としてプロスポーツの興行へ、広告料としてスポーツ関連メディアへ入ります。同じ推計の分類表では、命名権(ネーミングライツ)とスポンサーシップの収入が、興行とスポーツ施設の運営の両方の品目に入っています。

つまり、資金を出す相手は、リーグやクラブ、メディア、施設の運営者の3つに分かれます。どこに出すかで、得られる権利も、お金がその先で何に使われるかも変わります。施設に名前を付ける場合の金額はスポーツ命名権の費用と効果でまとめています。

(参考)わが国スポーツ産業の経済規模推計 日本版スポーツサテライトアカウント 2011~2022年推計(2026年3月発行) – 株式会社日本政策投資銀行 産業調査部

事業を組む道|SOIPでスポーツ団体と共創する

2つ目は、自社の技術や商品を持ち込み、スポーツ団体と新しい事業をつくる道です。スポーツ庁は2019年にスポーツオープンイノベーションプラットフォーム(SOIP)を立ち上げ、団体と他の産業の組み合わせを後押ししてきました。2020年度から2022年度は「INNOVATION LEAGUE」の名前で、競技団体が出したテーマに企業が応募する形をとり、3年間で5社、5社、4社が採択されています。2020年度は、日本バレーボール協会と3×3.EXE PREMIERを相手に、アイ・オー・データ機器など5社が選ばれました。

2023年度は、日本フットサルトップリーグと日本自動車連盟を相手に、22件の応募から8社が採択されました。2024年度は、団体と事業者の組を単位に7つの共創事業体が採択されています。秋田ノーザンハピネッツとエーエスピーは秋田の米をもとにした食品の開発に、仙台89ERSとナビタイムジャパンは地図を使った誘客に、PFUブルーキャッツ石川かほくと石川かほく農業協同組合は能登半島地震の復興支援のワインに取り組みました。2025年度には、アビスパ福岡と東京海上日動火災保険が、クラブを防災の拠点にする取り組みを進めています。

2020年度から2024年度までに採択された団体と企業の組み合わせは、合わせて29組になります(各年度の公表資料からの本記事の集計)。相手には競技団体や地方のクラブが多く、企業の側も保険、地図、農業、食品と、スポーツを本業にしていない会社が並びます。

(参考)スポーツオープンイノベーションの推進 – スポーツ庁

(参考)第二期 スポーツ未来開拓会議 中間報告(2023年7月) – スポーツ庁・経済産業省

(参考)イノベーションリーグ・アチーブメント(2020年度) – INNOVATION LEAGUE

(参考)イノベーションリーグ・アチーブメント(2021年度) – INNOVATION LEAGUE

(参考)イノベーションリーグ・アチーブメント(2022年度) – INNOVATION LEAGUE

(参考)令和5年度スポーツオープンイノベーション推進事業「スポーツオープンイノベーションプラットフォーム(SOIP)の基盤形成」概要版 報告書(2024年3月31日) – スポーツ庁

(参考)令和6年度スポーツ産業の成長促進事業「スポーツオープンイノベーション推進事業」事例集(2025年3月31日) – スポーツ庁

(参考)令和7年度スポーツ産業の成長促進事業「スポーツオープンイノベーション推進事業」報告書(2026年3月24日) – スポーツ庁

令和8年度の公募はスポーツ団体と組んで応募する

年度ごとに名前と仕組みが変わる点には注意が必要です。「INNOVATION LEAGUE」は2022年度までの名前で、いまはこの名前で募集していません。令和8年度のスポーツオープンイノベーションプラットフォーム推進事業は、スポーツ団体を10団体以上公募する形で、支援の規模は1団体あたり最大200万円の範囲内です。

公募の対象はスポーツ団体で、すでに企業と共創に取り組んでいる組についても、応募主体はスポーツ団体だと明記されています。企業は、団体のパートナー企業として一緒に参加する立場です。この事業を使いたい企業は、公募を待つのではなく、先に組みたい団体へ事業の案を持ち込むところから始めることになります。

(参考)令和8年度スポーツ産業の成長促進事業「テクノロジー等を活用した地方創生・スポーツ収益拡大事業」(スポーツオープンイノベーションプラットフォーム推進事業)公募のお知らせ – スポーツ庁

Q. 企業はSOIPに単独で応募できますか?

令和8年度の公募では、企業が単独で応募する形にはなっていません。スポーツ庁の公募はスポーツ団体を対象にしていて、すでに共創に取り組んでいる組も応募主体はスポーツ団体です。企業はパートナー企業として団体と組んで参加します。募集の時期や条件は年度ごとに変わるので、スポーツ庁の最新の公募ページで確かめてください。

組む前に確かめたい循環の詰まりと備え

循環は、国の資料の図のとおりに滑らかに回っているわけではなく、詰まっている場所があります。国の会議も日本政策投資銀行も、その点を自分の言葉で書いています。入る前に知っておくと、相手との役割分担と社内への説明が進めやすくなります。

団体の人材と体制を先に確かめて役割を決める

スポーツ未来開拓会議の2025年4月のとりまとめは、SOIPの課題として、スポーツ団体の側に民間企業との協業や事業企画のノウハウを持つ人材、協業のための体制が十分でない場合があると書いています。団体の実務の課題に沿った事業は提案されやすい一方で、地域や社会に広く影響する比較的大規模な事業は生じにくい、とも指摘しています。第4期計画の中間報告も、経済的なインパクトの高い事業は依然として限定的だとしています。

企業の側でできる備えは、最初の打ち合わせで相手の担当者の人数と決裁の流れを聞き、企画書づくりや進行の管理を自社が引き受ける前提で計画を組むことです。相手に体制がないことを理由に見送るのではなく、足りない役割を自社が持つと決めたほうが、話は前に進みます。

(参考)スポーツ未来開拓会議~今後のスポーツの成長産業化を見据えた、当面の取組等についてのとりまとめ~(2025年4月) – スポーツ庁・経済産業省

(参考)第4期スポーツ基本計画の策定について 中間報告(令和8年7月) – スポーツ審議会

成果の数字は使う場面に合わせて準備する

日本政策投資銀行は、第4期計画に向けた2025年12月のヒアリング資料で、スポーツ業界の分野の間のお金の流れに目詰まりがあると指摘しました。スタジアムやアリーナについても、施設だけで収益を上げることが難しく、黒字であっても指定管理料などの行政の支援が行われていることが多い、と書いています。

同じ資料は、スポーツの社会的な価値を数字で示すときに求められる客観性は、対外的なPR、社内の説明、議会への説明、投融資の順に高くなる、と整理しています。協賛や共創の成果を社内の稟議に使うのか、金融機関への説明に使うのかで、集めておくデータの細かさが変わります。始める前に、成果を誰に見せるのかを決めておいてください。業界を調べるときの資料の探し方はスポーツ業界の業界研究でまとめています。

(参考)第4期スポーツ基本計画策定に向けた関係団体ヒアリング資料(2025年12月22日) – 株式会社日本政策投資銀行 産業調査部

まとめ|好循環のどこに自社が入るかを決める

スポーツ産業のエコシステムという言葉は、使う人によって少しずつ中身が違います。要点を振り返ります。

  • スポーツ産業のエコシステムは、稼いだ収益をスポーツへ戻して回し続ける循環を指す。国の基本計画は「好循環」と書き、「エコシステム」は会議の報告書や民間の協議会の言葉
  • 国の計画の好循環は、市場の拡大、スポーツ環境の改善、参画人口の拡大の3つで回る
  • 2022年の数字は、スポーツGDP約10.3兆円、スポーツ総供給約15.5兆円、スポーツ庁の試算11.6兆円の3つ。15兆円の目標と比べるのは11.6兆円
  • プロスポーツの興行はスポーツGDPの2.4%で、お金の大半は施設、流通、教育などの周辺で動いている
  • 企業の入り口は、協賛金・広告料・命名権で資金を出す道と、SOIPなどでスポーツ団体と事業を組む道の2つ

最初の一歩として、自社が出せるものを資金、技術やサービス、商品の3つに分けて書き出し、それぞれについて相手になりそうな団体を1つずつ挙げてみてください。相手が決まったら、受け取った収益をどこへ戻しているのかを聞くことで、その協業が循環の一部になるかどうかを確かめられます。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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