スポーツ庁の令和8年度のスポーツ関係予算は368億円で、令和9年度の概算要求では210億円多い578億円を求めています。増額の中心は、運動部活動の地域展開、学校体育施設の整備、そして新しく要求された企業人材の「健康インフラ」づくりへの20億円です。企業がこの予算に関われる入り口は、民間団体への委託事業に応募する、自治体の補助事業に加わる、認定や表彰の仕組みを使う、の3つに分かれます。
自治体の担当者から「国の事業で一緒にやりませんか」と声がかかった。スタジアムの構想づくりに国の支援があると聞いた。そんなとき、スポーツ庁の予算がどの事業にどれだけ付いていて、誰に向けたお金なのかを知っていれば、話を進めるかどうかをすぐに判断できます。ここでは、予算の決まり方、平成28年度からの推移、令和9年度概算要求の主な事業、企業の関わり方、公募の追い方を順に整理します。
スポーツ庁の予算とは|令和8年度は368億円で令和9年度は578億円を要求
スポーツ庁の予算は、文部科学省の予算の一部として毎年度組まれます。スポーツ庁は資料の中で、競技力の向上、地域スポーツ、健康づくり、スポーツ産業などに使うお金を「スポーツ関係予算」としてまとめて示しており、令和8年度は368億円です。この数字とは別に、日本スポーツ振興センター(JSC)の運営費交付金などを含む96.2億円も計上されています。
概算要求|8月末に翌年度の要求額が出る
概算要求は、各省庁が翌年度に必要な予算を財務省に求めるものです。スポーツ庁は令和8年8月26日付の資料で、令和9年度の概算要求主要事項を公表しました。要求額は578億円で、令和8年度の368億円を210億円上回ります。
ただし概算要求は「要求」の段階の金額です。このあと財務省との調整を経て予算案が作られるため、要求した額がそのまま付くとは限りません。とくに新規事業は、予算案で金額や中身が変わることがあります。
予算案|1月に事業ごとの金額が示される
年末に政府の予算案がまとまると、スポーツ庁は1月ごろに「予算(案)主要事項」を公表します。令和8年度分は令和8年1月15日付の資料で、スポーツ関係予算を前年度から5億円増の368億円としました。事業ごとの金額や、委託・補助といった実施の形もこの資料に書かれているため、企業が中身を確かめるならこちらが基本の資料になります。予算案は国会で議決されて、4月からの年度の予算として使われます。
Q. スポーツ庁の令和8年度予算はいくらですか?
スポーツ関係予算は368億円で、令和7年度の363億円から5億円増えました。このほか、日本スポーツ振興センター運営費交付金などを含む96.2億円が計上されています。
スポーツ庁予算の推移|平成28年度の約324億円から10年で368億円へ
スポーツ庁は平成27年10月に発足しました。発足後に通年で組んだ平成28年度から並べると、当初予算は毎年度、前年度を上回ってきましたが、伸びは1年に数億円から十数億円ほどです。令和9年度の概算要求の578億円は、それまでの伸び方と比べて大きな要求といえます。
| 年度 | 予算額(千円) | 億円 | 金額を確認した資料 |
|---|---|---|---|
| 平成28年度(2016年度) | 32,360,310 | 約324 | 平成29年度予算(案)主要事項 |
| 平成29年度(2017年度) | 33,393,116 | 約334 | 平成30年度予算(案)主要事項 |
| 平成30年度(2018年度) | 33,989,139 | 約340 | 2019年度予算(案)主要事項 |
| 令和元年度(2019年度) | 33,994,139 | 約340 | 令和2年度予算(案)主要事項。臨時・特別の措置を加えると35,033,064千円 |
| 令和2年度(2020年度) | 35,083,872 | 約351 | 令和3年度予算(案)主要事項 |
| 令和3年度(2021年度) | 35,383,872 | 約354 | 令和4年度予算(案)主要事項 |
| 令和4年度(2022年度) | 35,480,014 | 約355 | 令和4年度予算(案)主要事項 |
| 令和5年度(2023年度) | 35,900,157 | 約359 | 令和6年度予算(案)主要事項 |
| 令和6年度(2024年度) | 36,100,868 | 約361 | 令和7年度予算(案)主要事項 |
| 令和7年度(2025年度) | 36,270,868 | 363 | 令和7年度予算(案)主要事項・令和8年度予算(案)主要事項 |
| 令和8年度(2026年度) | - | 368 | 令和9年度概算要求主要事項 |
| 令和9年度(2027年度)概算要求 | - | 578 | 令和9年度概算要求主要事項(要求額) |
出典:スポーツ庁「予算(案)主要事項」(平成29年度〜令和8年度)、「令和9年度概算要求主要事項」をもとに Human Soar 作成。各年度の額は、翌年度の資料に「前年度予算額」として載った当初予算の額(令和4年度・令和7年度は当該年度の予算(案)の額)。令和8年度と令和9年度は資料の億円表記。億円の列は千円の額を本記事で換算した値
平成28年度の32,360,310千円(約324億円)から令和8年度の368億円まで、10年で増えたのは約44億円です(本記事の計算値)。令和元年度は、防災・減災、国土強靱化のための「臨時・特別の措置」1,038,925千円を加えると35,033,064千円になります。
これに対して令和9年度の要求は、令和8年度より210億円多く、伸び率にすると約57%です(本記事の計算値)。要求額の伸びの大半は、運動部活動の地域展開(120.2億円)と体育・スポーツ施設の整備(80.0億円)が占めています。年度ごとの予算と概算要求の資料は、スポーツ庁の「予算決算」のページにまとめて掲載されています。
Q. スポーツ庁の予算は毎年増えていますか?
平成28年度以降、当初予算は毎年度、前年度を上回っています。平成28年度の32,360,310千円(約324億円)から令和8年度の368億円まで、10年で約44億円増えました(本記事の計算値)。ただし増え方は年に数億円程度で、令和9年度の概算要求の578億円は要求の段階の金額です。
令和9年度概算要求の主な事業|健康インフラ・部活動・スポーツ産業が増額
令和9年度の概算要求では、企業の健康づくり、学校施設の開放、スポーツ産業、地域のスポーツツーリズムといった、民間と組むことを前提にした事業の多くが増額されています。下の表は、主な事業の令和8年度予算額と令和9年度の要求額、実施の形を並べたものです。
| 事業 | 令和8年度予算額(千円) | 令和9年度要求額(千円) | 実施の形 |
|---|---|---|---|
| 運動・スポーツを活用した企業人材等の健康インフラ整備支援事業 | -(新規) | 2,000,000 | 都道府県・政令指定都市へ補助 |
| 学校施設等を活用した生涯スポーツ推進のための先進モデル構築事業 | 120,000 | 1,000,000 | 民間団体へ委託 |
| Sport in Life コンソーシアムの運営等 | 66,584 | 196,584 | 民間団体へ委託 |
| スポーツ産業の成長促進事業 | 442,589 | 702,788 | 自治体または民間団体へ委託 |
| スポーツによる地域活性化・まちづくりコンテンツ創出等総合推進事業 | 150,025 | 208,000 | 地方自治体・民間団体へ委託 |
| スポーツによる地域活性化・まちづくり担い手育成総合支援事業 | 126,332 | 280,000 | 地方自治体へ補助・民間団体へ委託 |
| 運動部活動の地域展開等の全国的な実施 | 4,981,008 | 12,020,196 | 地方自治体へ補助・民間団体へ委託等 |
| 体育・スポーツ施設整備(学校施設環境改善交付金等) | 2,817,891 | 8,001,960 | 地方自治体へ補助 |
| 競技力向上事業 | 10,500,772 | 11,470,000 | - |
| 国際競技大会の戦略的・継続的な招致・開催支援パッケージ | 117,293 | 511,306 | - |
出典:スポーツ庁「令和9年度概算要求主要事項」をもとに Human Soar 作成。「-」は資料に実施の形の記載がない事業
金額がいちばん大きく伸びたのは運動部活動の地域展開で、4,981,008千円から12,020,196千円への要求です。令和7年度の補正予算でも57.7億円が付いています。体育・スポーツ施設の整備も、学校と地域が共同で使うプールの屋内化などを含めて8,001,960千円を要求しています。
企業に関係が深いのは、新規の「運動・スポーツを活用した企業人材等の健康インフラ整備支援事業」です。都道府県と政令指定都市を通じて、地域の企業が行う運動・スポーツの取り組みを支える事業で、要求額の2,000,000千円はすべて「強く豊かな日本」投資枠として要望されています。事業の中身は健康経営のスポーツ補助金|国の20億円要求と企業の備えで詳しく解説しています。
スポーツ産業の成長促進事業は442,589千円から702,788千円への要求で、スタジアム・アリーナを核にしたまちづくりを支えるスポーツコンプレックス推進事業に加え、民間企業のビジネス人材をプロスポーツクラブなどへ出向させる「スポーツビジネス人材越境活性化事業」が新しく盛り込まれました。このほか、国際競技大会の招致・開催を支える事業も117,293千円から511,306千円に増やしています。
企業がスポーツ庁の予算に関わる方法|委託・補助・認定の3つの入り口

企業がスポーツ庁の予算に関われるかどうかは、事業の実施の形で決まります。予算の資料には事業ごとに「民間団体へ委託」「地方自治体へ補助」といった記載があり、委託なら企業が直接応募できる場合があり、補助なら自治体と組んで加わる形になります。お金を受け取らない関わり方として、認定や表彰の仕組みもあります。
民間団体への委託事業に応募する
委託事業は、スポーツ庁が企画競争(企画提案の審査)で受託者を選びます。令和8年度のスポーツコンプレックス推進事業(基本構想・計画支援事業)の場合、対象は地方公共団体か法人格を持つ団体のうち、スタジアム・アリーナ整備の実施主体になる予定の団体でした。整備の事業主体のほか、ホームチームの運営事業者や、整備に出資・投資する事業者も含まれます。
事業規模は1件あたり14,387千円(税込)が上限で、採択は3件の予定でした。審査の結果、公益財団法人滋賀レイクスターズ、公益社団法人富山県サッカー協会、株式会社アルファーズの3団体が採択されています。受託すると、原則月1回の定例会でスポーツ庁と進捗を共有し、構想・計画を公表するところまでが仕事になります。
あわせて読みたいスタジアム・アリーナ改革とは|21拠点と企業が使える窓口›
(参考)令和8年度 スポーツ産業の成長促進事業「スポーツコンプレックス推進事業(基本構想・計画支援事業)」の公募について – スポーツ庁
(参考)令和8年度 スポーツ産業の成長促進事業「スポーツコンプレックス推進事業(基本構想・計画支援事業)」の公募結果について – スポーツ庁
地方自治体への補助事業に加わる
補助事業のお金は自治体に渡るので、企業は自治体の事業の協力先や受注先として関わります。令和9年度に要求された健康インフラ整備支援事業は、交付先が都道府県と政令指定都市、補助率は定額、補助期間は3〜5年程度とされています。支援メニューの例には、就業時間中に社員が運動する機会への支援(運動指導者の派遣や運動機器の購入など)や、運動・スポーツ関連サービスを提供する企業とのマッチングが挙がっています。
運動部活動の地域展開も、自治体への補助が中心です。地域クラブの運営や指導者の確保に企業がどう関われるかは、部活動の地域展開とは|スポーツで企業が関わる5つの方法と補助金で整理しています。なお、スポーツくじの収益を財源にしたJSCの助成金も自治体やスポーツ団体向けで、企業は組む側に回ります(スポーツ振興くじ助成金の解説)。
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(参考)令和9年度概算要求主要事項 運動・スポーツを活用した企業人材等の健康インフラ整備支援事業 – スポーツ庁
認定や表彰の仕組みを使う
Sport in Life推進プロジェクトでは、企業・自治体・団体などが加盟するコンソーシアムを運営し、従業員の健康づくりにスポーツを取り入れる企業を「スポーツエールカンパニー」として認定しています。令和8年度のSport in Life推進プロジェクトは273,184千円で、令和9年度はコンソーシアムの運営等に196,584千円を要求しました。
令和9年度の要求では、加盟する民間企業どうしのマッチングを促すプラットフォームを作る計画も示されています。認定そのものは補助金ではありませんが、国の事業の情報が早く入り、連携先を探す場にもなります。
(参考)令和8年度予算(案)主要事項 Sport in Life推進プロジェクト – スポーツ庁
Q. 企業はスポーツ庁の予算事業に応募できますか?
民間団体への委託として示された事業は、企画競争に応募できるものがあります。たとえば令和8年度のスポーツコンプレックス推進事業(基本構想・計画支援事業)は、法人格を持つ団体のうちスタジアム・アリーナ整備の実施主体になる予定の団体が対象で、株式会社も採択されています。応募の条件は事業ごとに違うので、公募要領で確認してください。
スポーツ庁の公募を追う手順|概算要求で事業を拾い3〜4月の公募に備える

スポーツ庁の予算事業に応募するなら、8月末の概算要求で狙う事業を見つけ、1月の予算案で金額を確かめ、3〜4月の公募に合わせて提案を出す流れになります。公募が出てから準備を始めると、提出までの期間が1か月ほどしかないことがあります。
概算要求と予算案で新規・拡充の事業を拾う
概算要求の資料では、事業名の横に【新規】【拡充】と書かれています。自社の事業に近い新規・拡充の事業を拾い、実施の形が委託か補助かを確かめておきます。1月の予算案で金額がほぼ固まるので、増額の大きい事業や、要求から金額が変わった事業をあらためて確認します。
3〜4月の公募情報を確認して提案を出す
年度の事業の公募は、スポーツ庁の「公募情報」のページに掲載されます。令和8年度のスポーツコンプレックス推進事業(基本構想・計画支援事業)は、令和8年3月31日から4月24日まで公募され、事業期間は契約の日から令和9年3月29日まででした。自治体への補助事業は自治体側で募集されるため、地元の自治体のスポーツ担当課や、まちづくり・産業振興の部署と早めに話しておくと、事業に加わりやすくなります。
国の予算が向かう先を知るには、日本のスポーツ界が抱える課題を押さえておくと読みやすくなります。全体像は日本スポーツ業界の8つの課題で確認できます。
(参考)令和8年度 スポーツ産業の成長促進事業「スポーツコンプレックス推進事業(基本構想・計画支援事業)」の公募について – スポーツ庁
Q. スポーツ庁の公募はいつごろ出ますか?
年度の事業は、年度末の3月から4月ごろに公募が出るものが多くあります。令和8年度のスポーツコンプレックス推進事業(基本構想・計画支援事業)は、令和8年3月31日から4月24日まで公募されました。スポーツ庁の公募情報のページで、事業ごとの募集を確認できます。
スポーツ庁の予算のまとめ
スポーツ庁の予算は、毎年の増え方こそ小さいものの、令和9年度の要求では企業の健康づくりや部活動、スポーツ産業に大きく振り向けようとしています。出典は本文の各セクションに記載しています。
- 令和8年度のスポーツ関係予算は368億円で、令和9年度の概算要求は578億円(210億円増)
- 平成28年度の約324億円から10年で約44億円増え、毎年度前年度を上回ってきた
- 令和9年度は企業人材の健康インフラ整備に新規で2,000,000千円を要求した
- 企業の入り口は、委託事業への応募、自治体の補助事業への参加、認定や表彰の3つ
- 8月末の概算要求で事業を拾い、1月の予算案で確かめ、3〜4月の公募に備える
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