健康経営の認定は取った。ところが、社員が実際に体を動かしているかと聞かれると、自信がない。そんなとき、国のスポーツの計画が来年度から変わり、企業の取り組みが目標に入ると耳にした。自社に関係があるのか、何を準備すればよいのかがわからない。
スポーツ基本計画とは、スポーツ基本法にもとづいて文部科学大臣が定める、国のスポーツ政策の計画です。これまで5年ごとに作られ、現行の第3期は2026年度までです。2027年4月に始まる予定の第4期は、審議会の中間報告で「勤務先で運動・スポーツの取り組みがある人の割合を21.3%から30%以上にする」という目標を挙げており、企業が直接の対象になります。この記事では、計画の仕組み、第1期から第4期の一覧、第3期の達成状況、第4期で企業に関わる変化を、スポーツ庁の資料で整理します。内容は2026年10月10日に確認したものです。
スポーツ基本計画とは国がスポーツ政策の方向を決める計画
スポーツ基本計画は、スポーツ基本法の第9条にもとづく計画です。同条は、文部科学大臣が、スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に進めるために、基本的な計画を定めなければならないとしています。定めるときは、あらかじめ審議会の意見を聴くことになっています。
何年ごとに作るかは、法律には書かれていません。これまでの3回は、いずれも5年間の計画として作られてきました。スポーツ庁は、この計画を「スポーツに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための重要な指針」と説明しています。
国の計画は、地方にもつながります。スポーツ基本法の第10条は、都道府県や市町村が、国の計画を参考にして、地域の実情に合ったスポーツの計画を定めるよう努めるとしています。自治体の補助や認定の制度は、この流れの中で作られます。
スポーツ基本法は2025年に改正され、同年9月に施行されました。改正では、企業が果たす役割として、スポーツへの国民の参加の促進と、スポーツを通じた地域の振興が加わっています。第4期は、この改正のあとに作られる最初の計画です。
Q. スポーツ基本計画とは何ですか?
スポーツ基本法の第9条にもとづいて、文部科学大臣が定める国のスポーツ政策の計画です。これまで5年間の計画として3回作られ、現行の第3期は2022年度から2026年度までです。都道府県や市町村は、この計画を参考にして地域のスポーツの計画を定めるよう努めることになっています。
スポーツ基本計画は第1期から第4期まで|期間と策定日の一覧
これまでの計画と、次の計画の期間を一覧にします。
| 期 | 計画の期間 | 策定日 |
|---|---|---|
| 第1期 | 2012年度〜2016年度 | 2012年3月30日 |
| 第2期 | 2017年度〜2021年度 | 2017年3月24日 |
| 第3期(現行) | 2022年度〜2026年度 | 2022年3月25日 |
| 第4期(策定中) | 2027年度〜2031年度 | 2026年10月10日時点で未決定 |
スポーツ基本計画の期間と策定日(出典:文部科学省・スポーツ庁の各期の計画。第4期は審議会の中間報告による)
いずれも年度末の3月に定められ、4月から始まっています。現行の第3期は2027年3月で終わるので、第4期もこれまでと同じ時期に決まる見通しです。
第3期は、スポーツを「つくる・はぐくむ」、スポーツで「あつまり、ともに、つながる」、スポーツに「誰もがアクセスできる」という3つの視点を掲げました。スポーツ市場の拡大も政策目標に入っており、背景はスポーツ市場規模15兆円目標で整理しています。
(参考)第3期スポーツ基本計画(令和4年3月25日) – 文部科学省
第3期スポーツ基本計画の目標は週1回の実施率70%に対し現状51.7%
第3期は、成人が週1回以上スポーツをする割合を70%にする目標を掲げました。スポーツ庁の令和7年度の世論調査では51.7%で、目標まで約18ポイントの差があります。スポーツ庁は、2022年以降ほぼ横ばいだと説明しています。
とくに低いのが、20代から50代の働く世代です。同じ調査で、勤務先に運動やスポーツの取り組みがある人の実施率は71.1%、取り組みがない人は45.2%でした。25.9ポイントの差があります。ただし、もともと運動する人の多い職場が取り組んでいる可能性もあるので、取り組めば必ず上がるとまでは言えません。
勤務先に取り組みがあると答えた人は21.3%で、取り組みを望む人は32.1%でした。望む人のほうが約11ポイント多く、職場の取り組みが足りていないことがわかります。
スポーツ市場の規模も、目標に届いていません。第3期は2025年までに15兆円としていましたが、2022年の時点で11.6兆円です。期限は「遅くとも2030年まで」に改められています。
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(参考)第3期スポーツ基本計画(令和4年3月25日) – 文部科学省
(参考)令和7年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の結果について(令和8年3月) – スポーツ庁
(参考)第4期スポーツ基本計画(中間報告)概要 – スポーツ審議会
第4期スポーツ基本計画はいつから|2027年4月に始まる予定
第4期は、2027年度から2031年度までの5年間の計画です。スポーツ庁が示している日程では、2027年4月に運用が始まります。ここまでの流れは次のとおりです。
- 2025年11月21日:スポーツ庁長官が、スポーツ審議会に第4期の策定を諮問
- 2026年7月27日:審議会の中間報告を公表
- 2026年7月28日〜8月26日:意見の募集(204件)
- 2026年9月28日:審議会の部会で、答申の素案を審議
- このあと:審議会の答申、文部科学大臣の決定を経て、2027年4月に開始の予定
2026年10月10日の時点で、審議会の答申と大臣の決定は、まだ公表されていません。以下で紹介する第4期の内容は、中間報告の段階のものです。最終の計画で変わる可能性があります。
中間報告は、計画のねらいを「スポーツの『楽しさ』で人や地域の可能性を引き出し、未来を切り拓く」としています。重点の課題は3つです。国民のスポーツの実施を進めて健康の基盤をつくること、トップ選手の強化で得た知見を社会に返すこと、スポーツの価値を地域や社会に生かすことです。
(参考)第4期スポーツ基本計画(中間報告) – スポーツ審議会
(参考)第4期スポーツ基本計画 策定スケジュール(イメージ) – スポーツ庁
(参考)第4期スポーツ基本計画(中間報告)に関する意見募集の結果概要 – スポーツ庁
Q. 第4期スポーツ基本計画はいつからですか?
2027年度から2031年度までの5年間の計画で、スポーツ庁の日程では2027年4月に始まる予定です。2026年7月に審議会の中間報告が公表され、9月に答申の素案が審議されました。2026年10月10日の時点で、答申と文部科学大臣の決定はまだ公表されていません。
第4期スポーツ基本計画で企業に関わる3つの変化

第3期では、企業に関する記述は、認定制度を広げることと、健康経営でスポーツを活用することにとどまっていました。第4期の中間報告は、企業をより正面から扱っています。変化を3つに整理します。
職場の取り組みが数値目標になる
中間報告は、「勤務先で運動・スポーツを活用した取り組みが行われている人の割合」を、21.3%から30%以上にする目標を挙げています。子育てや働き盛りの世代のスポーツ実施率も、47.2%から55%にするとしています。
職場に期待する内容も具体的です。経営層がかかわってメッセージを出すこと、担当の部署や担当者を決めること、就業時間中に運動の時間を設けること、体力測定を定期的に行うことなどが挙げられています。
(参考)第4期スポーツ基本計画(中間報告)本文(令和8年7月) – スポーツ審議会
スポーツが人への投資として位置づけられる
中間報告には、「企業経営における労働力不足対策や人への投資としてのスポーツの位置付け」という項目があります。人手不足やメンタルヘルスの不調といった経営の課題に、運動やスポーツが役立つことが十分に知られていない、という問題意識です。
対策として、健康経営を通じた取り組みの促進のほか、人的資本の開示やESG投資の面からも、企業のスポーツへの投資を促すとしています。金融機関が投融資のときに評価する取り組みを広げることにも触れています。健康経営との関係は健康経営とはで整理しています。
企業の取り組みを支える予算が要求されている
スポーツ庁の令和9年度の概算要求には、新しい事業として「運動・スポーツを活用した企業人材等の健康インフラ整備支援事業」が20億円で盛り込まれました。都道府県や政令指定都市を通じて、地域の企業が行う運動やスポーツの取り組みを支える事業です。支援の例として、就業時間中の運動のための指導者の派遣や、運動の機器の購入が挙げられています。
これは要求の段階の金額で、決まった予算ではありません。お金の交付先は自治体なので、企業が使えるかどうかは、地元の都道府県や市が事業に手を挙げるかで決まります。スポーツ関係の概算要求の総額は578億円で、令和8年度の予算368億円から増えています。
(参考)第4期スポーツ基本計画(中間報告)概要 – スポーツ審議会
Q. 第4期スポーツ基本計画は企業にどう関係しますか?
審議会の中間報告は、勤務先で運動・スポーツの取り組みが行われている人の割合を21.3%から30%以上にする目標を挙げています。スポーツを人への投資として位置づけ、健康経営との連携や、投融資での評価を促すとしています。令和9年度の概算要求には、企業の取り組みを自治体経由で支える新しい事業が20億円で盛り込まれました。いずれも決定前の内容です。
企業がいま使えるスポーツの認定制度はスポーツエールカンパニー
計画が決まるのを待たなくても、いま使える制度があります。スポーツ庁の「スポーツエールカンパニー」は、従業員のスポーツ活動を進めている企業などを認定する制度です。2026年の認定は1,635団体で、過去最多でした。
認定の要件は、取り組みが会社全体で進められていること、経営者の理解を得ていること、実績があることなどです。実施の頻度に基準はなく、社内のクラブ活動や年1回の運動会でも申請できます。従業員の週1回以上のスポーツ実施率が70%以上なら、上位の認定になります。
申請には、スポーツ庁の「Sport in Life コンソーシアム」への加盟の申請が前提になります。参画している団体は、2026年10月4日の時点で5,898です。中間報告は、この認定と健康経営の連携を進め、中小企業への支援を強めるとしています。申請の手順はスポーツエールカンパニー2027の認定基準と申請方法で紹介しています。
あわせて読みたいスポーツエールカンパニー認定1635団体の全数調査|企業の地域差›
(参考)「スポーツエールカンパニー2026」の認定について(令和8年1月30日) – スポーツ庁
(参考)第4期スポーツ基本計画(中間報告)本文(令和8年7月) – スポーツ審議会
第4期スポーツ基本計画に向けて企業が備える3つのこと

最終の計画が決まる前でも、準備できることがあります。
自社の運動の実施状況を数える
国の目標は、週1回以上のスポーツ実施率で測られています。自社でも、社員のうち週1回以上運動している人の割合を、アンケートや健康診断の質問票で確かめておきます。数字があれば、取り組みの前後で比べられます。
(参考)第4期スポーツ基本計画(中間報告)本文(令和8年7月) – スポーツ審議会
担当者と経営層の関わりを決める
中間報告が職場に求めているのは、設備よりも体制です。担当の部署や担当者を決め、経営層がメッセージを出すところから始められます。就業時間中の短い運動や、体力測定の機会づくりは、大きな費用をかけずに取り組めます。
地元の自治体の動きを確かめる
新しい支援は、自治体を通じて行われる見込みです。都道府県や市のスポーツの計画、健康づくりの認定制度、補助の公募を、年度の変わり目に確かめておきます。スポーツ業界全体の動きは日本スポーツ業界の8つの課題で扱っています。
まとめ|スポーツ基本計画の第4期は企業の取り組みを目標に入れる
スポーツ基本計画は、これまで企業にとって遠い存在でした。第4期は、職場の取り組みを目標に入れようとしています。要点を振り返ります。
- スポーツ基本計画は、スポーツ基本法にもとづいて文部科学大臣が定める計画で、これまで5年ごとに作られてきた
- 現行の第3期は2026年度まで。週1回の実施率は目標70%に対し51.7%
- 第4期は2027年4月に始まる予定で、2026年10月10日の時点では決定前
- 中間報告は、職場に取り組みがある人の割合を21.3%から30%以上にする目標を挙げている
- いま使える制度として、スポーツエールカンパニーの認定がある
まずは、社員のうち週1回以上運動している人の割合を確かめてみてください。その数字が、認定の申請にも、これから始まる支援の活用にも、出発点になります。
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