スタジアム・アリーナ改革とは|21拠点と企業が使える窓口

スタジアム・アリーナ改革とは|21拠点と企業が使える窓口 スポーツビジネス

自治体が新しいアリーナの構想を発表し、基本計画づくりや運営事業者の公募が始まる。建設、不動産、金融、設備、協賛のどの立場でも、資料を開くと「スタジアム・アリーナ改革」「スマート・ベニュー」「プロフィットセンター」といった言葉が、説明のないまま並んでいます。国が何を目指していて、自社がどこから関われるのかが、つかみにくいはずです。

スタジアム・アリーナ改革は、スポーツ庁と経済産業省が2016年から進めている政策で、観るスポーツのための施設を核に、まちづくりと地域活性化を進める取組です。モデルとなる施設として、2020年度から2025年度までに全国で21拠点が選ばれました。2025年からは、施設の周辺まで含めて考える「スポーツコンプレックス」へと発展し、ガイドブックも相談窓口もその名前に変わっています。

この記事では、国の資料をもとに、政策の流れ、改革指針の中身、選ばれた21拠点、企業が使える窓口を整理します。資料はいずれも2026年10月11日に確認したものです。

スタジアム・アリーナ改革とは|施設を核にまちづくりを進める国の政策

スタジアム・アリーナ改革は、スポーツ庁と経済産業省が進める政策の名前です。2025年6月のガイドブック第3版は、この改革を「スポーツの価値や潜在力を最大限に引き出す、みるスポーツのための施設であるスタジアム・アリーナを実現しながら、それを核にまちづくり・地域活性化を目指すための取組」と定義しています。

ここでいうスタジアム・アリーナは、数千人から数万人の観客を収容し、スポーツを観ることを主な目的とする施設です。2016年の改革指針は、原則として地方公共団体が所有する公共施設を対象にしつつ、民間の施設も参考にしてほしいと書いています。

政策の中身は、時期ごとに出された文書にまとまっています。最新は2026年6月の「スポーツコンプレックスガイドブック」で、2018年の第2版を最新として紹介している資料は、情報が古くなっています。

文書 公表 中身
スタジアム・アリーナ改革指針 2016年11月16日 改革の全体像と、4つの項目・14の要件
スタジアム・アリーナ改革ガイドブック 2017年6月15日 指針に、資金調達の手引きや国内外の事例を加えたもの
同ガイドブック 第2版 2018年12月 運営・管理計画の検討ガイドラインを追加
同ガイドブック 第3版 2025年6月 要点を最新の事例で見直し、まちづくりの視点を加えた
スポーツコンプレックスガイドブック 2026年6月 第3版を改訂し、周辺エリアを含めた考え方を解説

スタジアム・アリーナ改革の主な文書(出典:スポーツ庁の各ページとガイドブックをもとに作成。公表は資料に書かれた年月)

指針とガイドブックは、主に地方公共団体の担当者に向けて書かれています。ただ、第3版は読者を「今後まちづくり・地域活性化に携わる方々」にまで広げていて、企業が自治体や運営者と話すときの共通の土台として使えます。スポーツ産業の全体の課題のなかでの位置づけは、日本スポーツ業界の8つの課題で整理しています。

(参考)スタジアム・アリーナ改革ガイドブック<第3版>(令和7年6月) – スポーツ庁・経済産業省

(参考)スタジアム・アリーナ改革指針(平成28年11月16日公表) – スポーツ庁

(参考)スタジアム・アリーナ改革ガイドブックの公表について(平成29年6月15日) – スポーツ庁

(参考)スタジアム・アリーナ改革について(令和元年11月) – スポーツ庁

(参考)スポーツコンプレックスガイドブック(令和8年6月) – スポーツ庁・経済産業省

Q. スタジアム・アリーナ改革はいつから始まりましたか?

2016年に始まりました。スポーツ庁と経済産業省が2016年7月に「スタジアム・アリーナ推進官民連携協議会」を立ち上げ、同年11月16日に「スタジアム・アリーナ改革指針」を公表しています。その後、2017年6月にガイドブック、2018年12月に第2版、2025年6月に第3版が出ています。

スマート・ベニューの提言から始まった政策の流れ

スタジアム・アリーナ改革の政策の年表。2013年のスマート・ベニューの提言、2016年の改革指針、2020年度からの拠点の選定、2025年からのスポーツコンプレックスへの発展

改革の考え方は、2013年に民間から出された「スマート・ベニュー」の提言を下敷きにしています。国の政策になったのは2016年で、2025年からは「スポーツコンプレックス」という次の段階に入りました。

スマート・ベニューは2013年に日本政策投資銀行が提言した概念

スマート・ベニューは、日本政策投資銀行がスマート・ベニュー研究会と共同で、2013年8月に発行した調査レポートで提言した概念です。同行の発表は、多機能複合型、民間活力導入、街なか立地、収益力の向上を備えた施設を念頭に、「周辺エリアマネジメントを含む、複合的な機能を組み合わせたサステナブルな交流施設」と定義しています。

郊外にある単機能の競技場や体育館を、街なかにあって商業施設や公共施設と組み合わさった施設へ変えていく、という発想です。レポートは、当時から20年間に見込まれるスタジアム・アリーナなどの改築・新設の規模を2兆円以上と推計し、その機会にスマート・ベニューの整備を進めるよう提言しました。

2016年の改革指針は、この概念を引いたうえで、すべてを兼ね備える必要はないとしています。国の制度の名前ではなく、改革の出発点になった民間の提言として押さえておくと、資料が読みやすくなります。

(参考)『スポーツを核とした街づくりを担う「スマート・ベニュー」~地域の交流空間としての多機能複合型施設~』を発行(2013年8月30日) – 日本政策投資銀行

(参考)スタジアム・アリーナ改革指針(平成28年11月16日公表) – スポーツ庁

2016年の改革指針で国の政策になった

政府は2016年6月の日本再興戦略2016で、スポーツの成長産業化を官民の戦略プロジェクトの1つに位置づけました。これを受けて、スポーツ庁と経済産業省は同年7月に、国土交通省や観光庁、プロスポーツリーグ、自治体の関係者の協力を得て「スタジアム・アリーナ推進官民連携協議会」を立ち上げています。

協議会のもとで最初にまとめられたのが、2016年11月16日公表の改革指針です。2017年6月には、政府の未来投資戦略2017で、2025年までに20か所のスタジアム・アリーナの実現を目指すという目標が掲げられ、同じ月に最初のガイドブックが公表されました。国のスポーツ政策全体のなかでの位置は、スポーツ基本計画の解説とあわせて読むとつかみやすくなります。

(参考)スタジアム・アリーナ改革ガイドブック(第2版) – スポーツ庁

(参考)スタジアム・アリーナ改革ガイドブックの公表について(平成29年6月15日) – スポーツ庁

2025年からはスポーツコンプレックスへ発展した

スポーツ庁は現在、スタジアム・アリーナ改革を「さらに発展させた」取組として、スポーツコンプレックスを推進しています。スポーツコンプレックスは、核となるスポーツ施設の価値を最大化するために、周辺のインフラや施設と面的に連携してつくられるエリアを指す概念です。

背景には、改革の受け止められ方への反省があります。第3版は、改革がもともと施設を核にしたまちづくりを目指すものだったのに、「スタジアム・アリーナ」という言葉が目を引いて、スポーツ施設の整備の話として受け取られがちだったと振り返っています。

2026年6月にはガイドブックが「スポーツコンプレックスガイドブック」に改訂され、同年9月9日にはモデルとなる事例を表彰する要綱も定められました。これから出る国の資料や公募は、この名前で探すことになります。

(参考)スポーツコンプレックスの推進 – スポーツ庁

(参考)スタジアム・アリーナ改革ガイドブック<第3版>(令和7年6月) – スポーツ庁・経済産業省

(参考)スポーツコンプレックスガイドブック(令和8年6月) – スポーツ庁・経済産業省

(参考)持続可能なまちづくりの基盤となるスポーツコンプレックス表彰要綱(令和8年9月9日) – スポーツ庁・経済産業省

Q. スマート・ベニューとは何ですか?

日本政策投資銀行などが2013年8月に提言した概念で、周辺のエリアマネジメントを含み、複合的な機能を組み合わせた持続可能な交流施設を指します。多機能複合型、民間活力導入、街なか立地、収益力の向上がキーワードです。2016年のスタジアム・アリーナ改革指針がこの概念を引いていますが、国の制度の名前ではありません。

改革指針が示したプロフィットセンターへの転換と4つの項目

スタジアム・アリーナ改革指針の14の要件を4つの項目に分けた図解。経営資源としての要件、上流段階の要件、収益・財務の要件、事業推進・運営の要件

改革指針の柱は、「コストセンターからプロフィットセンターへ」という考え方と、それを実現するための14の要件です。指針は14の要件を、4つの項目に分けて示しています。

指針は、これまでの公共のスポーツ施設が、観客の快適さやチームの営業活動よりも、公的な負担の軽減や公共性の確保に比重を置きすぎていたと指摘します。維持管理費や更新費用を将来世代に積み残すのをやめ、施設の収益性の向上を中長期の収支計画に組み込むことを、コストセンターからプロフィットセンターへの転換と呼びました。

ただし、プロフィットセンターは施設だけで黒字にするという意味ではありません。指針は、にぎわいの創出や税収の増加なども含めて、投資以上の効果を地域にもたらすという意味だと断っています。第3版は、この言葉の本来の意図が伝わらず、改革を進めにくくした地域もあったと書いていて、自治体と話すときは言葉の受け取り方に幅があると考えておくほうが安全です。

集客力を高めまちづくりを支える経営資源としての要件

1つ目の項目は、要件1から要件4です。顧客経験価値の向上、多様な利用シーンの実現、収益モデルの確立とプロフィットセンターへの変革、まちづくりの中核となるスタジアム・アリーナ、の4つが並びます。

指針は、プロスポーツでもっとも試合数の多いプロ野球でも、本拠地での試合は80日程度にしかならないと書いています。そのため、コンサートやコンベンションにも使える仕様と設備が必要になります。企業が商談などに使う場を整えることも要件1に含まれていて、スポーツホスピタリティの考え方と重なります。

(参考)スタジアム・アリーナ改革指針(平成28年11月16日公表) – スポーツ庁

プロジェクトの上流段階で検討する要件

2つ目の項目は、要件5から要件9です。ステークホルダーの確認と検討体制の整備、顧客の把握と情報提供、収益性の検証と設計への反映、管理の検討、コンプライアンスとリスク管理が入ります。

要件5は、確認する相手として、スポーツチーム、小売、交通、地域住民、金融機関、メディア、飲食・宿泊などの民間企業を挙げています。要件6は、命名権や広告を買うスポンサーも顧客としてとらえることができると書いています。構想の段階から企業の声を聞くことが、指針の前提になっているわけです。

あわせて読みたいスポーツ業界のステークホルダーとは|クラブ9者の関係と企業の立場›

(参考)スタジアム・アリーナ改革指針(平成28年11月16日公表) – スポーツ庁

収益と財務に関する要件

3つ目の項目は、要件10の民間活力を活用した事業方式と、要件11の多様な資金調達方式です。指針は、PPPやPFIの手法のなかから地域や施設の実情に合うものを選ぶこと、税金を中心とした資金調達から民間資金を組み合わせた調達へ転換することを求めています。

一方で指針は、新築や改修には多くの資金とリスクが伴うため、多くの場合は公的な資金の提供が欠かせないとも書いています。公と民のどちらかだけで建てるのではなく、組み合わせ方を設計する、というのがこの項目の趣旨です。

(参考)スタジアム・アリーナ改革指針(平成28年11月16日公表) – スポーツ庁

事業の推進と運営に関する要件

4つ目の項目は、要件12から要件14です。目標設定と評価とフィードバック、運営におけるIT・データ活用、スタジアム・アリーナ経営人材の3つです。

指針は、スタジアム・アリーナの建設が地方公共団体にとって数十年に一度の事業であり、行政の職員だけでは対応しきれない専門性が必要になると書いています。運営、マーケティング、財務、契約の知見を持つ企業や人材が、上流の段階から求められる理由です。

なお、14の要件は2016年の指針の整理です。第3版は、顧客体験価値の向上、利用用途の多様化、収益源の複線化、複合化、持続可能なまちづくりへの貢献、ステークホルダーの整理という6つの要点に組み替えています。

(参考)スタジアム・アリーナ改革指針(平成28年11月16日公表) – スポーツ庁

(参考)スタジアム・アリーナ改革ガイドブック<第3版>(令和7年6月) – スポーツ庁・経済産業省

2025年までに20拠点の目標と選ばれた21拠点

国は、改革のモデルとなる施設を「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」として選んできました。2020年度から2025年度までに選ばれた拠点は21で、スポーツ庁の選定拠点マップは「全21拠点」と表示しています。

選定の根拠は、2020年3月6日にスポーツ庁と経済産業省が定めた選定要綱です。要綱は、政府の成長戦略フォローアップ(2019年6月21日閣議決定)の「2017年から2025年までに20拠点を実現する」という文言を踏まえています。外部の有識者による審査委員会が評価項目ごとにAからDの4段階で評価し、該当するすべての項目がAかBだった案件が選ばれます。

年度 選定数 選ばれた施設(選定時の名称)
令和2年度 11 ES CON FIELD HOKKAIDO、FLAT HACHINOHE、横浜文化体育館再整備事業、桜スタジアム、東大阪市花園ラグビー場、ノエビアスタジアム神戸、FC今治新スタジアム、ミクニワールドスタジアム北九州、SAGAアリーナ、アイシンアリーナ(仮称)、長崎スタジアムシティプロジェクト
令和3年度 3 愛知県新体育館、京都府立京都スタジアム、神戸アリーナ(仮称)
令和4年度 3 太田市総合体育館、TOKYO A-ARENA(仮称)、沖縄アリーナ
令和5年度 3 川崎新アリーナ(仮称)、長崎スタジアムシティ、等々力緑地 球技専用スタジアム・新とどろきアリーナ
令和6年度 2 エディオンピースウイング広島、富山市総合体育館
令和7年度 2 三河安城交流拠点(旧称 アイシンアリーナ(仮称))、GLION ARENA KOBE(旧称 神戸アリーナ(仮称))

年度ごとの選定数と施設(出典:スポーツ庁の各年度の選定結果のページ。令和5年度の長崎と令和7年度の2施設は、構想・計画段階で選ばれていた案件が段階を進めて選び直されたもの)

目標の20拠点に数えるのは、「設計・建設段階」か「運営・管理段階」で選ばれた施設だけです。「構想・計画段階」での選定は数に入りません。そのため、令和6年度までの累計は21件でも、目標に含まれるのは19件でした。

令和7年度には、構想・計画段階で選ばれていた愛知県安城市と神戸市の2施設が、事業が進んだことで新しい段階で選び直されました。現在のマップの内訳は、設計・建設段階での選定が14件、運営・管理段階での選定が7件です。年度ごとの選定数を足すと24になりますが、選び直しの3件を除いた拠点の数が21です。

第4期スポーツ基本計画の中間報告(2026年7月)も、モデルとなる施設として「21拠点を選定してきた」と書いています。一方、今回確認した国の資料のなかに、20拠点の目標を達成したと明記した文は見当たりませんでした。選ばれると、施設の名称と先進的な取組がスポーツ庁と経済産業省のサイトで公表されます。選定そのものに補助金が付くとは、要綱のページには書かれていません。資料で数を引くときは、まず選定拠点マップの内訳を見ておくと確実です。

(参考)多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ選定要綱(令和2年3月6日) – スポーツ庁・経済産業省

(参考)令和6年度「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」選定結果の公表について – スポーツ庁

(参考)令和7年度「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」選定結果の公表について – スポーツ庁

(参考)多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ選定拠点MAP – スポーツ庁

(参考)第4期スポーツ基本計画(中間報告)(令和8年7月27日) – スポーツ庁

選定拠点の整備手法は民設民営からコンセッションまで3通り

21拠点の事業の組み立て方は1つではありません。スポーツ庁の事例集(情報は2025年1月1日現在)を読むと、民間が建てて運営する形、自治体が建てて民間が運営する形、運営の権利を民間に設定する形の3通りに大きく分けられます。この分け方は本記事の整理です。

民間が建てて運営する民設民営

ES CON FIELD HOKKAIDO(北海道北広島市)は、土地を北広島市が貸し、建物は株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントが所有し、整備も運営も同社が行う民設民営です。事例集は、市による土地の貸与や周辺インフラの整備を伴う官民連携事業だと注記しています。整備費は約600億円です。

長崎スタジアムシティ(長崎市)も民設民営で、土地と建物を株式会社ジャパネットホールディングスが所有し、グループの株式会社リージョナルクリエーション長崎が運営しています。整備費は約900億円で、資金調達の欄には社会資本整備総合交付金43億円などの記載があります。民間が主体でも、国や自治体の制度が組み合わされているわけです。

(参考)「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」選定拠点事例集 – スポーツ庁

自治体が建てて民間が運営する公共整備と指定管理

SAGAアリーナ(佐賀市)は、佐賀県が整備して所有し、指定管理者制度で民間が運営する形です。運営は、株式会社電通を代表とする特別目的会社の株式会社SAGAサンシャインフォレストが担っています。整備費は約257億円で、うち県債が183億円です。

エディオンピースウイング広島(広島市)は、スタジアムを設計と施工を一括で発注するデザインビルド方式で整備し、指定管理者として株式会社サンフレッチェ広島が運営しています。整備費は約286億円で、国の補助金が約101億円、ふるさと納税と企業版ふるさと納税による寄附金が約77億円です。企業が寄附で関わる方法は、企業版ふるさと納税でスポーツを支援する方法で解説しています。

あわせて読みたいスタジアム経営の今|主要10社と企業の関わり方›

(参考)「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」選定拠点事例集 – スポーツ庁

運営の権利を民間に設定するコンセッション

IGアリーナ(愛知国際アリーナ、名古屋市)は、設計と建設をBT方式で、管理と運営を公共施設等運営権(コンセッション方式)で行っています。建物は愛知県が所有し、特別目的会社の株式会社愛知国際アリーナが2025年4月から2055年3月までの30年間、維持管理と運営を担います。事例集は、アリーナでは初めてのBTコンセッションだと紹介しています。整備費は約400億円です。

富山市総合体育館(富山市)は、築25年を過ぎた体育館の改修と運営を一体で行う事業で、改修と公共施設等運営権を組み合わせた方式を採っています。事例集によると、この方式は国内のスタジアム・アリーナで初めてです。新築だけでなく、既存の施設の改修でも民間の資金と運営の力を使う例が出てきています。

(参考)「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」選定拠点事例集 – スポーツ庁

国と自治体と運営者と企業の関係|企業が使える3つの窓口

スタジアム・アリーナの事業をめぐる国、自治体、運営者、スポーツチーム、協賛企業の関係の図解。それぞれが渡すものと受け取るものを矢印で示す

スタジアム・アリーナの事業では、国が考え方と相談の場を示し、自治体や民間が土地と資金を出し、運営者とスポーツチームが施設を動かし、企業が資金や技術で加わります。国の事業は建設費を出すものではなく、構想づくりの支援、表彰、相談、調査が中心です。

それぞれの役割は、指針と事例集から読み取れます。国は、指針と先進事例を示し、相談窓口を設けます。選ばれた拠点の取組は、モデル事例として国のサイトで公表されます。自治体は、土地や整備費を出し、にぎわいの創出や税収の増加という形で効果を受け取ります。

運営者は、運営のノウハウを持ち込み、利用料を収入にします。スポーツチームは、試合で人を集め、安定した興行の場となる本拠地を得ます。協賛企業は、命名権料や広告料を払い、社名の露出や商談の場を得ます。命名権に応募する手順は、ネーミングライツ募集の読み方にまとめています。

第3版は関係者を9つの類型に整理していて、設計・建設企業やデベロッパー、金融機関、パートナー企業、テクノロジーを提供する企業がそれぞれ挙げられています。ここからは、企業が実際に使える国の窓口を3つ紹介します。

(参考)スタジアム・アリーナ改革指針(平成28年11月16日公表) – スポーツ庁

(参考)スタジアム・アリーナ改革ガイドブック<第3版>(令和7年6月) – スポーツ庁・経済産業省

相談窓口|事業の進め方や専門家の紹介を相談できる

スポーツ庁は「スポーツコンプレックスの推進に関する相談窓口」を設けています。対象は、スポーツコンプレックスやスタジアム・アリーナの整備を検討している地方公共団体と事業者です。

相談できる内容として、事業スキームや事業化の進め方、国内外の先行事例と留意点、専門家や関係機関の紹介、活用できる国の施策や補助制度の情報提供などが挙げられています。相談フォームから申し込むと、事務局から翌営業日までにメールで連絡があります。費用については、ページに記載がありません。

(参考)スポーツコンプレックスの推進に関する相談窓口 – スポーツ庁

構想と計画づくりの公募|1件あたり上限14,387千円の委託事業

スポーツ庁の「スポーツコンプレックス推進事業(基本構想・計画支援事業)」は、スタジアム・アリーナを核にしたまちづくりの基本構想や基本計画の策定を、国が委託する事業です。令和8年度の公募では、1件あたり14,387千円(税込)が上限で、採択は3件の予定でした。

応募できるのは、地方公共団体か法人格を有する団体で、整備の実施主体になる予定の団体です。実施主体には、ホームチームの運営事業者や、整備に出資・投資する事業者も含まれます。法人格が条件なので、個人事業主は応募できません。すでに設計・建設の段階にある案件も対象外です。令和8年度の公募期間は2026年3月31日から4月24日で、終了しています。

この事業は、令和6年度までは「スタジアム・アリーナ改革推進事業」という名前でした。令和9年度の概算要求では、スポーツコンプレックス推進事業として221百万円が要求されています。これは2026年8月時点の要求の額で、決まった予算の額ではありません。

(参考)令和8年度 スポーツ産業の成長促進事業「スポーツコンプレックス推進事業(基本構想・計画支援事業)」の公募について – スポーツ庁

(参考)令和6年度スポーツ産業の成長促進事業「スタジアム・アリーナ改革推進事業」の公募について – スポーツ庁

(参考)令和9年度概算要求主要事項 – スポーツ庁

施策の一覧|建設や運営に使える27の制度を探せる

建設や運営に使える資金の制度は、スポーツ庁が「スポーツコンプレックスの実現に活用可能な施策」として一覧にしています。2026年10月更新の一覧には、内閣府、総務省、国土交通省、観光庁、環境省、経済産業省などの27の施策と、30の活用事例が載っています。

一覧には、企業版ふるさと納税、社会資本整備総合交付金、都市構造再編集中支援事業、地域未来投資促進税制などが並びます。対象が地方公共団体か民間事業者か、構想・整備・運営のどの段階で使えるかも分かるので、自治体へ提案するときの下調べに使えます。

案件を探すには、同じくスポーツ庁が公表している新設・建替構想の一覧が手がかりになります。2026年1月時点で、全国でスタジアム36件、アリーナ40件の計画が進んでいるとされています。各種の報道資料などをもとに作られた一覧なので、最新の状況は自治体や事業者の発表で確かめてください。

(参考)スポーツコンプレックスの実現に活用可能な施策 – スポーツ庁

(参考)スタジアム・アリーナの新設・建替構想の現状 – スポーツ庁

Q. スタジアム・アリーナ改革推進事業には、企業も応募できますか?

法人格を有する団体であれば応募できますが、整備の実施主体になる予定であることが条件です。事業の名前は令和7年度から「スポーツコンプレックス推進事業」に変わっていて、令和8年度の基本構想・計画支援事業は1件あたり14,387千円(税込)を上限とする委託事業でした。建設費の補助ではなく、構想と計画づくりを支援する事業です。

まとめ|スタジアム・アリーナ改革を資料で追うときの要点

スタジアム・アリーナ改革は、施設の建設そのものではなく、施設を核にしたまちづくりを進める政策です。要点を振り返ります。

  • スタジアム・アリーナ改革は、スポーツ庁と経済産業省が2016年から進めている政策で、下敷きは2013年のスマート・ベニューの提言
  • 改革指針は、コストセンターからプロフィットセンターへの転換と、4つの項目・14の要件を示した
  • モデルとなる施設として21拠点が選ばれ、目標の20拠点に数えるのは設計・建設段階と運営・管理段階の選定だけ
  • 2025年からはスポーツコンプレックスへ発展し、最新のガイドブックは2026年6月版
  • 企業が使える窓口は、相談窓口、構想と計画づくりの公募、27施策の一覧の3つ

まず、関わりたい地域の構想がスポーツ庁の一覧に載っているかを確かめ、該当する自治体の基本構想や公募資料を、指針の14の要件と照らして読むところから始めてみてください。補助金や税制の適用は案件ごとに条件が違うので、個別の判断は所管の窓口や専門家に確認することをおすすめします。

元気な社員が、いちばんのマーケティングになる。

社員のウェルビーイングを高め、
その元気が自然と外に伝わる仕組みをつくります。

インナーマーケティングを知る →

About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

コメント

タイトルとURLをコピーしました