血圧を測るタイミングと方法|企業の健康経営とスポーツ施策で使う

血圧を測るタイミングと方法|企業の健康経営とスポーツ施策で使う スポーツDX

毎年の健康診断で「血圧がやや高め」と書かれた結果票を受け取りながら、次の健診まで何もしないまま1年が過ぎる。社内で健康施策を進める立場でも、従業員に「家で血圧を測ってください」と伝えたところで、いつ、どう測ればよいのかまでは説明できていない。そんな状態の担当者も多いのではないでしょうか。

血圧は、上腕式の血圧計で朝(起床後1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前)と晩(就寝前)に、1〜2分座ってから2回ずつ測り、その平均を記録するのが日本高血圧学会の示す測り方です。家庭で測った血圧は135/85mmHg以上が高血圧の目安で、健診の1回の値では見逃される高血圧を見つける手がかりになります。この記事では、正しい測り方と値がぶれる理由、場所で変わる判定の目安、企業が職場で測る習慣を広げる方法を順に整理します。

血圧を測る正しい方法|上腕式で朝と晩に2回ずつ測る

血圧を測る手順の図解。起床後1時間以内、1〜2分座ってから2回測り平均、就寝前も同じ手順で測る

血圧を家庭で測るときは、上腕式の血圧計を使い、朝と晩の決まった時間に、座って落ち着いてから2回測ります。日本高血圧学会は家庭での血圧測定を推奨しており、一般向けのパンフレット「家庭で血圧を測定しましょう」で手順を5つにまとめています。

測るタイミングは朝の起床後1時間以内と晩の就寝前

測る時間は朝と晩の1日2回です。朝は「起床後1時間以内・朝食前・服薬前」、晩は「就寝直前」とされ、朝はトイレを済ませてから測ります。日本高血圧学会の2019年版ガイドライン(JSH2019)も、朝の測定を起床後1時間以内・排尿後としています。

毎日同じ条件で測ることで、日ごとの値を比べられるようになります。出勤前の慌ただしい時間でも、起床後すぐにトイレを済ませて座る、という順番を決めておくと続けやすくなります。

(参考)家庭で血圧を測定しましょう ~あなたは「白衣高血圧」や「仮面高血圧」ではありませんか?~ – 日本高血圧学会

測る位置は上腕で|カフを心臓の高さにそろえる

血圧計は、腕に巻く上腕式を選びます。JSH2019は家庭血圧を上腕式の機器で測るよう求めており、手首式については、心臓と手首の高さの差を補正しにくく「不正確な測定値になることが多い」としています。学会のパンフレットも「上腕血圧計を選びましょう」と示しています。

測るときは、いすに座って腕を台に置き、腕に巻くカフ(腕帯)を心臓と同じ高さに保ちます。JSH2019が診察室での測り方として示している条件で、家庭でも同じ姿勢をとると値がそろいやすくなります。

(参考)The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH 2019) – 日本高血圧学会(Hypertension Research)

1回に2回測って平均|週5日以上続ける

1回の機会には原則2回測り、その平均をとります。パンフレットは「週に5日以上測定した結果」を主治医に見せるよう勧めており、JSH2019も診断には朝・晩それぞれ7日間(少なくとも5日)の平均を使うとしています。

一方で、1回の機会に4回以上測ることは、続かなくなるため勧めていません。多く測るより、1日2回・2回ずつを毎日続けることを優先します。

(参考)家庭で血圧を測定しましょう – 日本高血圧学会

Q. 血圧を測るタイミングはいつがよいですか?

朝と晩の1日2回です。日本高血圧学会のパンフレットでは、朝は起床後1時間以内で朝食前・服薬前、晩は就寝直前に測るよう示しています。朝はトイレを済ませてから、どちらも1〜2分いすに座ってから測ります。

血圧を測るたびに値が違うのは普通|1回目が高く出やすい理由

血圧を続けて測ると、測るたびに違う値が出ますが、これは測り方の失敗ではありません。JSH2019は、血圧は短い時間でも大きく変わるもので、家庭で測った血圧も同じだとしています。

1回目は2回目より高く出ることが多い

JSH2019によると、1回の機会に続けて測ると、1回目の値がその後の値より高くなることが多いとされています。ただし、2回目のほうが高くなる場面も10%以上あるため、どちらか一方を正しい値として選ぶことはできません。続けて測ると値が下がることが多いのは、この1回目の高さが理由の一つです。

だからこそ2回測って平均をとり、測った値は選ばずにすべて記録します。低いほうだけを書き残すと、実際より低い血圧を見ていることになります。

血圧は夏に下がり冬に上がる

血圧には季節による変動もあり、JSH2019は夏に下がり冬に上がる傾向を示しています。数日の記録だけで判断せず、季節をまたいで続けて測ると、自分の血圧の変化が見えてきます。

また、JSH2019は家庭血圧の日ごとのばらつきが大きいことが、心血管病などのリスクの高まりと関連すると報告しています。毎日の記録は、平均値だけでなくばらつきを見る材料にもなります。

(参考)The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH 2019) – 日本高血圧学会(Hypertension Research)

Q. 測るたびに血圧の値が違うのはなぜですか?

血圧は短い時間でも大きく変わるためで、珍しいことではありません。日本高血圧学会の2019年版ガイドラインは、1回目の値がその後に測った値より高くなることが多いとしています。そのため1回の機会に2回測って平均をとり、値を選ばずにすべて記録します。

病院と家庭で血圧が違う|白衣高血圧・仮面高血圧・職場高血圧の見分け方

血圧を測る場所による違いの図解。病院と家庭の血圧の組み合わせで白衣高血圧・仮面高血圧・持続性高血圧を分ける

病院や健診で測った血圧と家庭で測った血圧が食い違うことはよくあり、その組み合わせで呼び名が変わります。JSH2019は、診察室の血圧と家庭の血圧で診断が食い違うときは家庭血圧による診断を優先するとしています。

白衣高血圧は病院だけで高くなる

白衣高血圧は、診察室では140/90mmHg以上なのに、家庭では135/85mmHg未満の状態です。医療の場での緊張などによる血圧の上昇で、JSH2019は高血圧の患者の15〜30%に見られ、高齢者ほど多いとしています。

病院で高いだけだから安心、とは言えません。学会のパンフレットは、白衣高血圧にも将来、持続性の高血圧になる危険性があるとしており、JSH2019も慎重な経過観察が必要としています。

(参考)家庭で血圧を測定しましょう – 日本高血圧学会

仮面高血圧は健診で正常でも家庭では高い

仮面高血圧は、診察室では140/90mmHg未満なのに、家庭では135/85mmHg以上の状態です。JSH2019は、高血圧でない人の10〜15%に見られ、治療していない仮面高血圧の心血管リスクは持続性の高血圧と同じ程度だとしています。

学会のパンフレットは、仮面高血圧は家庭血圧を測っていなければ見逃されると注意しています。健診の1回の値だけで判断しないことが、企業にとっての出発点になります。

(参考)家庭で血圧を測定しましょう – 日本高血圧学会

職場高血圧は健診では正常でも職場で高い

JSH2019は仮面高血圧の一つとして、健診や診察室で測ると正常なのに、ストレスのかかる職場で測ると高い「職場高血圧」を挙げています。肥満の人や高血圧の家族歴がある人に多いとされ、高血圧の管理では職場での血圧にも注意を払うよう求めています。

健診の血圧欄が正常でも、職場や家庭で測ると違う顔を見せる人がいる、ということです。健診の問診票と同じように、測った記録を施策に生かす発想は、健康経営の認定要件と施策の入れ方を考えるときにも役立ちます。

あわせて読みたい健康診断の運動習慣の質問|スポーツ施策に生かす企業の使い方›

(参考)The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH 2019) – 日本高血圧学会(Hypertension Research)

Q. 健診では正常なのに職場で血圧が高いのはなぜですか?

ストレスのかかる職場で血圧が上がる「職場高血圧」の可能性があります。日本高血圧学会の2019年版ガイドラインは、健診や診察室では正常でも職場で測ると高い状態をこう呼び、仮面高血圧の一つとして注意を促しています。健診の1回の値だけでなく、家庭や職場で測った記録を見ることが見逃しを防ぐ手がかりになります。

血圧の判定の目安は測る場所で違う|家庭135/85と健診130/85

血圧が高いかどうかの目安は、どこで測ったかによって変わります。家庭で測った値を健診の基準で読むと、判断を誤ります。

測る場所 目安となる値 出典
家庭血圧 高血圧:135/85mmHg以上/降圧の目標:125/75mmHg未満 日本高血圧学会(JSH2025の要約論文)
診察室血圧 高血圧:140/90mmHg以上/高値血圧:130〜139/80〜89mmHg 日本高血圧学会(JSH2025の要約論文)
特定健診 保健指導判定値:130/85mmHg以上/受診勧奨判定値:140/90mmHg以上 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」

出典:日本高血圧学会「Key highlights of the JSH2025」(Hypertension Research、2025年8月29日公開)、厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」をもとに作成。値は収縮期/拡張期

家庭血圧の基準は、診察室より5mmHg低く設定されています。家庭で測った値が130台でも、家庭血圧としては高血圧に当たることがある点に注意が必要です。

家庭血圧は135/85mmHg以上が高血圧|目標は125/75mmHg未満

家庭血圧の高血圧の基準は135/85mmHg以上です。日本高血圧学会のパンフレットは、この値以上が脳卒中や心筋梗塞にかかる率を2〜3倍に高める危険な高血圧だとしています。2025年8月29日に発行された「高血圧管理・治療ガイドライン2025」(JSH2025)でも、家庭血圧の診断基準は変わっていません。

JSH2025では、降圧の目標を年齢や合併症によらず診察室で130/80mmHg未満とし、家庭血圧では125/75mmHg未満を推奨しています。家庭血圧を診断と管理の中心に置く方針も続いています。

(参考)Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025) – 日本高血圧学会(Hypertension Research)

(参考)高血圧管理・治療ガイドライン – 日本高血圧学会

診察室血圧は140/90mmHg以上が高血圧

病院や診療所で測る診察室血圧では、140/90mmHg以上が高血圧、130〜139/80〜89mmHgが高値血圧です。JSH2025でもこの分類は2019年版と同じです。

白衣高血圧のように診察室だけで高くなる人がいるため、家庭血圧との食い違いがあるときは家庭血圧を優先して判断します。

(参考)Key highlights of the JSH2025 – 日本高血圧学会(Hypertension Research)

特定健診では130/85mmHg以上で保健指導|140/90mmHg以上で受診勧奨

40歳以上が受ける特定健診では、収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上が保健指導判定値、140mmHg以上または90mmHg以上が受診勧奨判定値です。厚生労働省の資料は、130〜139/85〜89mmHgの人は120/80mmHg未満の人に比べ、約1.5〜2倍脳卒中や心臓病にかかりやすいと説明しています。

国の調査でも高めの血圧は珍しくありません。令和5年国民健康・栄養調査では、収縮期血圧が140mmHg以上の人の割合は男性27.5%、女性22.5%でした。令和6年の同調査では、20歳以上の収縮期血圧の平均値は126.4mmHgです。

(参考)標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)フィードバック文例集等 – 厚生労働省

(参考)令和5年国民健康・栄養調査結果の概要 – 厚生労働省

(参考)令和6年国民健康・栄養調査結果の概要 – 厚生労働省

企業が職場で血圧を測る習慣を広げる3つの方法

健診で血圧を測ったあとに企業が促す行動の図解。受診勧奨値は家庭血圧を持参、保健指導値は家庭で測る習慣、基準値未満は職場でも測る

企業ができることは、健診の血圧の値に合わせて次の行動を示し、家庭や職場で測る習慣を後押しすることです。健診の結果を受け取って終わりにせず、測った記録を次の受診や施策につなげる流れをつくります(本記事の整理)。

受診を勧めるときに1週間分の家庭血圧を持参してもらう

健診で受診勧奨判定値に当たった人には、受診を勧めるだけでなく、家庭で測った記録を持って行ってもらいます。厚生労働省の健診・保健指導プログラムの文例集は、受診勧奨の際に「起床後と就寝前に1週間程度測定し、その記録を合わせてご持参ください」のような一言を添えると診療に役立つとしています。

受診勧奨の通知文にこの一文を加えるだけで、従業員は何を準備すればよいかが分かり、医師も家庭血圧をもとに判断しやすくなります。

(参考)標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)フィードバック文例集等 – 厚生労働省

上腕式の血圧計とアプリで記録を続けやすくする

記録を続けるには、血圧計から自動で記録が残る仕組みが役立ちます。たとえばエー・アンド・デイの上腕式血圧計「UA-651BLE Plus」は管理医療機器の認証(認証番号226AHBZX00003000)を受けた製品で、専用アプリ「A&D Connect ヘルスケア」に測定値を送れます。メーカーが公表している測定精度は、圧力±3mmHgです。

職場に血圧計を置く場合も、手首式ではなく上腕式を選ぶと学会の推奨とそろいます。オンライン診療や健康管理のアプリと組み合わせる場合の選び方は、別の記事で比べています。データの扱い全体の考え方はスポーツDXの3階層の整理も参考になります。

あわせて読みたいオンライン診療アプリ10選|健康経営担当者向け比較ガイド›

(参考)UA-651BLE Plus – 株式会社エー・アンド・デイ

スポーツや運動の施策と合わせて職場で測る機会をつくる

社内で運動やスポーツの施策を行っている企業は、その場に血圧を測る機会を組み込む方法があります。たとえばウォーキングやランニングクルーの集まりの前に血圧計を置き、参加者が自分の値を確かめられるようにしておくと、運動と健康状態をあわせて振り返るきっかけになります(本記事の提案)。

職場高血圧のように、職場で測って初めて分かる高血圧もあります。健康日本21(第三次)が収縮期血圧の平均値を5mmHg下げることを目標に掲げていることも、従業員に測る理由を伝える材料になります。

あわせて読みたいスポーツ実施率とは|年齢別の最新値と企業が職場でできること›

(参考)令和6年国民健康・栄養調査結果の概要(健康日本21(第三次)の目標) – 厚生労働省

Q. 血圧を測るアプリは使ったほうがいいですか?

記録を続けるための道具として役立ちます。ガイドラインは測った値を選ばずにすべて記録し、朝晩の値を一定期間続けて見るよう求めているため、血圧計から自動で記録できるアプリは手書きより続けやすくなります。アプリを選ぶ前に、学会が推奨する上腕式の血圧計と連携できるかを確かめてください。

まとめ|血圧は測り方をそろえて記録を続けると判断に使える

血圧は、正しい条件で測り続けて初めて判断の材料になります。この記事の要点を振り返ります。

  • 上腕式の血圧計で、朝(起床後1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前)と晩(就寝前)に、1〜2分座ってから2回測って平均する
  • 1回目は高く出やすく、値は短い時間でも変わるため、選ばずにすべて記録する
  • 家庭血圧は135/85mmHg以上が高血圧の目安で、診察室の140/90mmHgより低い
  • 健診で正常でも、家庭や職場で高い仮面高血圧・職場高血圧がある
  • 企業は、受診勧奨で1週間分の家庭血圧の持参を促し、職場で測る機会をつくれる

まずは次の健診の受診勧奨の通知文に、家庭血圧の記録を持参してもらう一文を加えるところから始めてみてください。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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