ストレスチェックの衛生委員会|審議事項と規程例・スポーツ施策

ストレスチェックの衛生委員会|審議事項と規程例・スポーツ施策のアイキャッチ スポーツウェルビーイング

ストレスチェックは、常時50人以上の労働者を使う事業場では、衛生委員会で実施方法などを調査審議し、その結果をもとに実施規程を定めて労働者に周知します。審議に含める事項はストレスチェック指針が①から⑪まで示しており、規程のひな形は厚生労働省が50人以上向けの「ストレスチェック制度実施規程(例)」(7章36条)と、小規模事業場向けの「モデル例」(7章29条)を公開しています。50人未満で衛生委員会がない事業場は、関係労働者の意見を聴く機会を設けて社内ルールを決めます。

今年の衛生委員会にストレスチェックの議題を出す番になり、前任者の議事録を開くと「実施について審議」の一行しかない。何を決めて、何を報告すれば足りるのかが分からない。ここでは、審議する事項と年間の議題の置き方、規程例の使い方、50人未満の事業場の決め方を、法令と厚生労働省の資料に沿って整理します。後半では、同じ衛生委員会で扱う健康づくりの運動施策と、ストレスチェックの結果をどう並べて審議するかも取り上げます。

  1. ストレスチェックを衛生委員会で審議する根拠|法第18条と規則第22条
    1. 50人以上の事業場は衛生委員会で調査審議する
    2. 委員会は毎月1回以上開き議事は3年間保存する
  2. ストレスチェックの衛生委員会の審議事項|指針の項目と規程例の条文
    1. 実施体制と実施方法|指針の①から⑤
    2. 結果と記録の扱い|指針の⑥と⑦
    3. 労働者を守る手続き|指針の⑧から⑪
  3. 衛生委員会でのストレスチェックの議題|実施前と実施後に審議する
    1. 実施前に実施方法を審議して規程を定める
    2. 実施後は集団分析の結果と講じた措置を報告する
    3. 委員会の資料は集団の数字と実施状況に限る
  4. ストレスチェック実施規程のひな形|厚生労働省の2つの規程例を比べる
    1. 規程は就業規則とは別の文書で届出もしなくてよい
    2. 実施者や担当者の氏名は職名や部署名で示せる
    3. 本社でまとめて作る規程も事業場ごとに確認する
  5. 50人未満の事業場のストレスチェック|関係労働者の意見を聴いて社内ルールを決める
    1. 現在は努力義務で2028年4月1日から義務になる
    2. 関係労働者の意見を聴く機会は会議でなくてもよい
    3. 社内ルールは実施体制から不利益な取扱いの防止までを書く
  6. 衛生委員会でストレスチェックと運動施策を一緒に審議する
    1. 集団分析の結果を委員会で審議する50人以上の事業所は約4分の1
    2. 健康づくりの運動施策も同じ委員会で審議する
  7. ストレスチェックの衛生委員会のまとめ

ストレスチェックを衛生委員会で審議する根拠|法第18条と規則第22条

ストレスチェックの衛生委員会での審議の根拠(労働安全衛生法第18条、規則第22条第10号、ストレスチェック指針、社内の実施規程)を積み上げた図

ストレスチェックを衛生委員会で審議するのは、衛生委員会の付議事項に「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること」が入っているからです。土台は労働安全衛生法、その上に規則、指針、社内の実施規程が順に積み上がります。

50人以上の事業場は衛生委員会で調査審議する

労働安全衛生法第18条は、政令で定める規模の事業場に衛生委員会を設けるよう定めており、施行令第9条がその規模を「常時五十人以上の労働者を使用する事業場」としています。委員は、事業を統括管理する人、衛生管理者、産業医、衛生に関する経験を持つ労働者から事業者が指名します。

労働安全衛生規則第22条は付議事項を12号まで挙げ、第10号が精神的健康の保持増進の対策です。ストレスチェック指針は、この第10号の調査審議に、ストレスチェック制度に関する事項を含めるとしています。あわせて、審議の結果を踏まえて実施に関する規程を定め、あらかじめ労働者に周知することを事業者に求めています。

(参考)労働安全衛生法 – e-Gov法令検索

(参考)労働安全衛生法施行令 – e-Gov法令検索

(参考)ストレスチェック指針(心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針) – 厚生労働省

委員会は毎月1回以上開き議事は3年間保存する

ストレスチェックの審議も、衛生委員会の運営ルールの中で行います。規則第23条は、委員会を毎月1回以上開くこと、開くたびに議事の概要を掲示や書面などで労働者に周知すること、委員会の意見とそれを踏まえて講じた措置などを記録して3年間保存することを定めています。

また同条は、産業医が衛生委員会に対して、労働者の健康を確保する観点から必要な調査審議を求められるとしています。ストレスチェックの実施者を産業医が務める場合は、産業医の側から議題を出してもらう形もとれます。

(参考)労働安全衛生規則 – e-Gov法令検索

Q. ストレスチェックを衛生委員会で審議するのは義務ですか?

常時50人以上の労働者を使う事業場では、衛生委員会で審議します。衛生委員会の設置は労働安全衛生法第18条と施行令第9条で義務になっており、規則第22条が付議事項に「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること」を入れています。ストレスチェック指針は、この調査審議に実施体制や実施方法などの事項を含めるとしています。

ストレスチェックの衛生委員会の審議事項|指針の項目と規程例の条文

衛生委員会で審議する事項は、ストレスチェック指針の「衛生委員会等において調査審議すべき事項」に①から⑪まで並んでいます。厚生労働省の実施規程(例)は、この事項を条文に落とした形になっているので、項目ごとに対応する条文を並べると、決めたことがそのまま規程の材料になります。

区分 指針の審議事項 決める中身 規程例の条文
実施体制と実施方法 ①制度の目的の周知方法
②実施体制
③実施方法
④集団ごとの集計・分析の方法
⑤受検の有無の情報の取扱い
実施者・実施事務従事者、調査票、高ストレス者の選定基準、実施の頻度・時期・対象者、面接指導の申出の方法、集団分析の手法と集団の規模、受検の勧奨の方法 ①第3条
②第4〜7条
③第8〜9条・第11〜12条・第17〜18条
④第22〜23条
⑤第10条
結果と記録の扱い ⑥結果の記録の保存方法
⑦結果の利用目的と利用方法
保存する担当者・場所・期間、閲覧させない情報管理、本人への通知方法、事業者へ提供する同意の取り方と範囲、集団分析結果の共有範囲と活用方法 ⑥第25〜28条
⑦第13条・第15条・第24条・第29〜32条
労働者を守る手続き ⑧情報の開示・訂正・追加・削除の方法
⑨苦情の処理方法
⑩受けないことを選択できること
⑪不利益な取扱いの防止
開示等の手続きと担当者の秘密保持、苦情の窓口、受検は義務ではないが全員の受検が望ましいという趣旨の周知、禁止される不利益な取扱いの周知 ⑧第33条・第35条
⑨第34条
⑩第3条
⑪第36条

出典:厚生労働省「ストレスチェック指針」5(2)、「ストレスチェック制度実施規程(例)」をもとに Human Soar 作成

実施体制と実施方法|指針の①から⑤

最初の区分は、誰が、何を使って、いつ、誰を対象に行うかです。実施者が複数いるときは共同実施者と実施代表者を明示し、事業場の産業医が実施者に含まれるなら産業医を実施代表者にすることが望ましいとされています。外部機関に全部を委託する場合は、委託契約の中で委託先の実施者や実施事務従事者を明示させます。

調査票と高ストレス者の選定基準も、ここで審議します。厚生労働省のQ&Aは、外部機関が提案した調査票や選定基準でも衛生委員会等での調査審議が必要で、産業医の意見は委員会の前に求めても委員会の場で求めてもよいとしています。集団分析の手法と、分析する集団の規模もこの区分です。

集団分析については、労働安全衛生規則の改正で「特定の個人を識別することができない方法で」行うことが明文化され、令和9年(2027年)4月1日に施行されます。厚生労働省の通達は、従来の解釈を明文化したもので運用は変わらないと説明していますが、集団の規模を審議するときの前提として押さえておきます。

(参考)ストレスチェック制度関係Q&A(令和3年2月22日付) – 厚生労働省 こころの耳

(参考)労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について(令和8年6月30日付け基発0630第2号) – 厚生労働省

結果と記録の扱い|指針の⑥と⑦

2つ目の区分は、出てきた結果を誰が持ち、どこまで共有するかです。規程例では、個人の結果の記録は実施事務従事者の衛生管理者が会社のサーバー内に5年間保存し、本人の同意を得て会社に提供された結果の写しは人事労務部門の中だけで持つ形になっています。

集団ごとの集計・分析の結果は、その集団の管理者にとって評価につながりうる情報なので、指針は事業場内で無制限に共有しないよう求めています。規程例は、課ごとの結果を当該課の管理者に提供し、結果と実施した措置の内容を衛生委員会に報告する形にしています。

(参考)ストレスチェック制度実施規程(例) – 厚生労働省

労働者を守る手続き|指針の⑧から⑪

3つ目の区分は、労働者が安心して受けられるようにするための決まりです。情報の開示や苦情の窓口をどこに置くかに加え、受検は義務ではないものの全員が受けることが望ましいという趣旨と、禁止される不利益な取扱いを、どう周知するかを決めます。

苦情の窓口を外部機関に置く場合、指針はその窓口のスタッフが社内の産業保健スタッフと連携できる体制を整えておくことが望ましいとしています。規程例の第36条は、面接指導の申出を理由とする不利益な取扱いや、面接指導の結果を理由とする解雇・退職勧奨などを、会社が行わない行為として列挙しています。

あわせて読みたいストレスチェック実施者の要件|企業が選ぶ6職種とチーム分析›

(参考)ストレスチェック指針(心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針) – 厚生労働省

Q. ストレスチェックは衛生委員会で毎年審議する必要がありますか?

実施の前だけでなく、実施した後にも審議します。厚生労働省の実施マニュアルは、実施後に実施状況やそれを踏まえた実施方法の改善などを調査審議し、次回の実施に生かすとしています。毎年実施するなら、その都度、前回の振り返りを議題に入れることになります。

衛生委員会でのストレスチェックの議題|実施前と実施後に審議する

ストレスチェックの衛生委員会の議題を、実施前・実施後・改善の途中・次回の前の4つの時期に並べた図

衛生委員会でストレスチェックを扱う時期は、実施前の1回で終わりではありません。厚生労働省の実施マニュアルは、実施前に実施体制や実施方法を審議して社内規程を定め、実施後には実施状況とそれを踏まえた改善を審議して次回に生かす流れを示しています。

実施前に実施方法を審議して規程を定める

実施前の委員会では、前のセクションの事項を審議し、その結果を規程にして労働者に周知します。年に複数回実施することや、ストレスが高まりやすい繁忙期に実施することも、衛生委員会等で審議して労使で合意すれば可能とされています。

実施マニュアルは、衛生委員会を、制度が適切に実施されているかを確認・点検し、PDCAサイクルで評価・改善する場として活用することが重要だとしています。初年度に決めた内容を、2年目以降は前回の振り返りとあわせて見直す議題にしておくと、手続きが形だけになりにくくなります。

(参考)労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(平成28年4月改訂) – 厚生労働省

実施後は集団分析の結果と講じた措置を報告する

実施後の委員会では、集団分析の結果と、それをもとに実施した措置の内容を扱います。規程例の第31条は、課ごとの集計・分析の結果と実施した措置の内容を衛生委員会に報告すると定めています。職場環境の改善に取り組む場合、実施マニュアルは各部署から衛生委員会に中間報告を出してもらう方法や、3か月・6か月など期間を決めて実施状況や効果を報告してもらう方法を挙げています。

労働安全衛生法第66条の10第6項は、面接指導をした医師の意見を勘案して就業上の措置を講じるほか、医師の意見の衛生委員会への報告などの適切な措置を講じることを事業者に求めています。また、個人情報の漏えいや不利益な取扱いが起きた場合は、再発防止策を調査審議しなければならないと実施マニュアルは説明しています。

(参考)ストレスチェック制度実施規程(例) – 厚生労働省

(参考)労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(平成28年4月改訂) – 厚生労働省

(参考)労働安全衛生法 – e-Gov法令検索

委員会の資料は集団の数字と実施状況に限る

衛生委員会には事業者側と労働者側の委員が並ぶので、資料に何を載せるかに注意がいります。個人の結果は本人の同意がなければ事業者に提供されず、実施マニュアルは、衛生委員会等での合議による包括的な同意は認められず、対象となる労働者全員から個別に同意を取る必要があるとしています。

集団分析の結果も、集計の単位が10人を下回る場合は、対象となる全員の同意がない限り事業者に提供しないのが原則です。委員会の資料は、受検率などの実施状況と、10人以上の集団ごとの集計結果を中心に組み立てます。

(参考)労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(平成28年4月改訂) – 厚生労働省

(参考)ストレスチェック指針(心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針) – 厚生労働省

Q. 衛生委員会の資料に個人のストレスチェック結果を載せてもよいですか?

載せず、集団ごとの集計や実施状況の数字を使います。個人の結果は本人の同意がなければ事業者にも渡らず、実施マニュアルは衛生委員会での合議による包括的な同意も認めていません。10人を下回る集団の集計は、全員の同意がない限り事業者に提供されないのが原則です。

ストレスチェック実施規程のひな形|厚生労働省の2つの規程例を比べる

実施規程のひな形は、厚生労働省が公開している規程例を使うのが近道です。50人以上向けの「ストレスチェック制度実施規程(例)」と、小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルの巻末にある「モデル例」の2つがあり、章立ては同じでも、規程を変えるときの手続きや実施者の置き方が違います。

項目 実施規程(例) 小規模事業場向けモデル例
掲載されている資料 厚生労働省のストレスチェック制度のページ 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月)の巻末
章と条の数 7章・36条 7章・29条
規程を変えるときの手続き 衛生委員会で調査審議し、その結果に基づいて変更 関係労働者の意見を聴き、その結果に基づいて変更
ストレスチェックの実施者 会社の産業医と保健師(産業医が実施代表者) 委託先の外部機関で選任された医師・保健師等
面接指導をする医師 会社の産業医 外部の面接指導担当医師
集団分析の単位 原則として課ごと。10人未満の課は同じ部門の他の課と合算 原則として会社単位
個人の結果の記録の保存 会社のサーバー内に5年間 委託先の外部機関で保存
対象者の範囲 派遣社員も含む全社員。派遣社員の結果は集団分析の目的のみに使う 同じ

出典:厚生労働省「ストレスチェック制度実施規程(例)」「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」をもとに Human Soar 作成

どちらの規程例も、事業場の実情に合わせて加除修正して使う一例と位置づけられています。産業医を選任して社内で実施するなら「実施規程(例)」、外部機関に委託して進めるなら「モデル例」のほうが、手を入れる箇所が少なく済みます。小規模事業場向けマニュアルは、社内ルール例や規程のモデル例の編集できる形式を厚生労働省のサイトに掲載していると案内しています。

(参考)ストレスチェック制度実施規程(例) – 厚生労働省

(参考)小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月) – 厚生労働省

規程は就業規則とは別の文書で届出もしなくてよい

厚生労働省のQ&Aは、ストレスチェック制度に関する社内規程は形式を問わず、何らかの形で文書化すればよいとしています。就業規則には当たらないため、労働基準監督署への届出も必要ありません。就業規則の変更手続きを待たずに、衛生委員会の審議の結果をそのまま規程にできます。

実施者や担当者の氏名は職名や部署名で示せる

規程に実施者や実施事務従事者、面接指導をする医師を明示するのは、誰が個人の結果を扱うかをはっきりさせるためです。Q&Aによると、職名で特定できれば氏名まで書く必要はなく、実施事務従事者が複数いるなら「●●課の職員」のように部署名で示すこともできます。規程には書かず、社内掲示板やメールで別途知らせる方法も認められています。

本社でまとめて作る規程も事業場ごとに確認する

本社と複数の事業所がある会社は、全社共通のルールを全社の会議体で審議して各事業場に展開するやり方もとれます。ただし法令は事業場ごとに適用されるので、全社共通のルールも各事業場の衛生委員会等で確認して労働者に周知し、実施者や実施時期など共通にできない部分は事業場ごとに審議します。

(参考)ストレスチェック制度関係Q&A(令和3年2月22日付) – 厚生労働省 こころの耳

Q. ストレスチェックの実施規程は就業規則に入れる必要がありますか?

入れる必要はなく、労働基準監督署への届出も要りません。厚生労働省のQ&Aは、ストレスチェック制度の社内規程は形式を問わず文書化すればよく、就業規則には当たらないとしています。ひな形として、厚生労働省が実施規程(例)を公開しています。

50人未満の事業場のストレスチェック|関係労働者の意見を聴いて社内ルールを決める

衛生委員会の設置義務がない50人未満の事業場は、関係労働者の意見を聴く機会を設けて、ストレスチェックの社内ルールを決めます。2028年4月1日からは50人未満の事業場でもストレスチェックが義務になるので、この手順を前提に準備を進めることになります。

現在は努力義務で2028年4月1日から義務になる

いまの労働安全衛生法では、産業医の選任義務がない事業場について、附則第4条によりストレスチェックは当分の間、努力義務とされています。2025年(令和7年)5月14日に公布された改正法で50人未満の事業場も義務の対象になり、施行日は令和10年(2028年)4月1日です。

地域産業保健センターなど、無料で使える公的支援は中小企業のメンタルヘルス対策で解説しています。

(参考)小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月) – 厚生労働省

関係労働者の意見を聴く機会は会議でなくてもよい

労働安全衛生規則第23条の2は、委員会を設けていない事業者に、安全や衛生に関する事項について関係労働者の意見を聴く機会を設けるよう求めています。小規模事業場向けマニュアルは、この機会を使って、実施体制や実施方法などについて意見を聴くことを示しています。

意見を聴く機会は、必ずしも会議体の形をとる必要はありません。マニュアルは、事業者の方針を示したうえで社内ルールの案を周知して意見を募る方法や、定例の業務ミーティングや朝礼の場を使う例を挙げています。常時10人以上50人未満の事業場では衛生推進者などの選任が必要で、マニュアルは意見聴取をその衛生推進者などを中心に行うことが望ましいとしています。

(参考)労働安全衛生規則 – e-Gov法令検索

社内ルールは実施体制から不利益な取扱いの防止までを書く

小規模事業場向けマニュアルは、社内ルールとして、実施体制、実施方法、記録の保存、情報管理、情報の開示・訂正等と苦情処理、不利益な取扱いの防止を定めることが望ましいとしています。マニュアルには1ページに収まる社内ルールの例も載っており、規程として作る場合は巻末のモデル例を参考にするよう案内しています。

実施した後にも、実施状況やそれを踏まえた改善について関係労働者の意見を聴くことが望まれるとされています。50人以上の衛生委員会と同じく、実施前と実施後の2回を年間の予定に入れておきます。

あわせて読みたいストレスチェック義務化はいつから|50人未満2028年4月施行›

(参考)小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月) – 厚生労働省

衛生委員会でストレスチェックと運動施策を一緒に審議する

衛生委員会は、ストレスチェックと、運動指導を含む健康づくりの計画の両方を審議する場です。ところが厚生労働省の調査では、50人以上の事業所でも、メンタルヘルス対策を衛生委員会等で調査審議しているのは取り組む事業所の53.0%、集団分析の結果を委員会での審議に使っているのは活用した事業所の45.4%です。

事業所規模 メンタルヘルス対策に取り組む事業所 うち衛生委員会等で調査審議 全事業所に占める割合 集団分析の結果を衛生委員会等で審議
1,000人以上 100.0% 86.4% 86.4% 62.5%
500〜999人 99.9% 73.6% 73.5% 54.9%
300〜499人 98.3% 53.1% 52.2% 45.2%
100〜299人 97.1% 57.4% 55.7% 44.9%
50〜99人 92.2% 48.9% 45.1% 44.6%
30〜49人 69.1% 24.7% 17.1% 23.2%
10〜29人 55.3% 19.1% 10.6% 22.1%
50人以上(再掲) 94.3% 53.0% 50.0% 45.4%
合計 63.2% 27.7% 17.5% 30.5%

出典:厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」第2表・第4表をもとに Human Soar 作成。常用労働者10人以上の民営事業所が対象。「全事業所に占める割合」は左の2列を掛けて計算。右端は集団分析の結果を活用した事業所に占める割合

集団分析の結果を委員会で審議する50人以上の事業所は約4分の1

令和6年の労働安全衛生調査(常用労働者10人以上の民営事業所が対象)で、50人以上の事業所の流れを順に掛け合わせると、委員会での審議までに数が絞られていく様子が見えます。メンタルヘルス対策に取り組む事業所が94.3%、そのうちストレスチェックを実施したのが89.8%、さらに集団分析を実施したのが80.0%、分析結果を活用したのが82.2%、活用内容に衛生委員会等での審議を挙げたのが45.4%です。

計算すると、50人以上の事業所100か所のうち、ストレスチェックを実施しているのは約85か所、集団分析の結果を衛生委員会等で審議しているのは約25か所になります。衛生委員会の審議は、実施前の規程づくりまでは進んでも、実施後の結果の扱いまでは届いていない事業所が多いことがうかがえます。

(参考)令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況 – 厚生労働省

健康づくりの運動施策も同じ委員会で審議する

労働安全衛生規則第22条の付議事項には、精神的健康の対策(第10号)と並んで、「労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること」(第8号)が入っています。厚生労働省の「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」は、健康保持増進対策を進めるときに衛生委員会等を活用するよう求め、具体的な措置として運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導などを挙げています。

同じ指針は、メンタルヘルスケアとともに運動指導や保健指導などを含めた取組を実施する必要があるとしています。集団分析の結果を報告する回と、運動の機会づくりなど健康づくりの計画を審議する回を同じ年間計画に並べておくと、ストレスチェックで見えた職場の課題を、業務の見直しとあわせて健康づくりの施策の面からも検討できます。社内で運動の機会をつくる方法は社内スポーツイベントの企画、健康経営の評価項目との関係は健康経営とはでまとめています。

ただし、運動施策はストレスチェックの点数を下げるための手段として扱うものではありません。集団分析で課題が出た職場には、まず仕事の量や人員体制、職場のサポートといった原因の側を審議し、運動の機会は健康づくりの計画の一部として並べて検討するのが無理のない順番です。

あわせて読みたいメンタルヘルス研修|スポーツ活用4類型と企業の導入手順›

(参考)事業場における労働者の健康保持増進のための指針 – 厚生労働省

ストレスチェックの衛生委員会のまとめ

ストレスチェックの衛生委員会は、実施前に決めて規程にするだけでなく、実施後に結果を報告して次回を見直す場です。出典は本文の各セクションに記載しています。制度全体での位置づけはウェルビーイングの施策の設計法もあわせて参考にしてください。

  • 常時50人以上の事業場は、衛生委員会で指針の①〜⑪の事項を調査審議し、実施規程を定めて周知する
  • 委員会は毎月1回以上開き、議事の概要を周知し、重要な議事の記録を3年間保存する
  • 実施後は、10人以上の集団ごとの集計結果と講じた措置を報告し、実施方法の改善を審議する
  • 規程は就業規則に当たらず届出も不要で、厚生労働省の実施規程(例)とモデル例をひな形に使える
  • 50人未満は関係労働者の意見を聴いて社内ルールを決め、2028年4月1日からは実施が義務になる

元気な社員が、いちばんのマーケティングになる。

社員のウェルビーイングを高め、
その元気が自然と外に伝わる仕組みをつくります。

インナーマーケティングを知る →

About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

コメント

タイトルとURLをコピーしました