KPIは毎月集めているのに、数字を見ても次に何をするかが決まらない。スポーツ統計学で指標の質を確かめる3つの基準を使い、御社のKPIを「残す・直す・外す」に分けて、毎月の判断に使える形に整えます。
対象となるお客さま
- KPIが増えて、何を見ればよいか分からなくなった経営者・事業責任者
- 全社のKPIや報告資料を取りまとめる経営企画の担当者
- DXや業務改善の成果の測り方に迷っている推進担当者
よくあるお悩み
- 報告資料の数字は増えるのに、会議で何も決まらない
- 数字が動いても、実力なのか偶然なのか分からない
- 一度決めたKPIを、誰も外そうとしない
課題|KPIを置いても、判断に使われなければ形だけになる
KPIは、目標に近づいているかを途中で確かめるための数字です。ところが、集めることが目的になると、担当者は毎月資料を作り、会議では数字の説明を聞くだけになります。数字が動いても対応が変わらなければ、KPIは形だけのものです。
指標の決め方そのものに迷う企業も少なくありません。情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2026」(2026年4月中旬〜6月中旬に調査、1,799社が回答)では、DXの成果指標を設定している企業は23.9%でした。設定していない企業に理由を聞くと、最も多いのは「評価指標の設定方法がわからない」の36.0%で、前年度の28.7%から上がっています。
これはDXの成果指標についての調査で、KPI全般の数字ではありません。それでも、何を測ればよいかを決める方法が社内にないという悩みは、KPIの見直しにも共通します。
原因|指標の質を確かめないまま、数を増やしている
担当者のやる気や、数字への関心の問題ではありません。原因は次の3つです。
- 測りやすいものから選ぶ:すぐに取れる数字を選ぶと、経営目標とのつながりが後回しになります。
- 偶然の動きを実力と読む:件数の少ない率は、たまたまの結果で大きく動きます。先月より上がった理由を説明する資料だけが増えていきます。
- 似た数字が重なっている:ほぼ同じ動きをする数字が並ぶと、数は多くても分かることは増えません。外す基準がないので、そのまま残ります。
選び方の偏りは調査にも表れています。同じ「DX動向2026」で、成果指標を設定している企業に対象を聞くと、「内向きの業務改革(社内の効率化)」が80.0%と最も高く、「経営改革(デジタル事業売上高、市場シェア等)」は16.3%でした。
スポーツ知見|スポーツ統計学は、指標を安定性・区別力・独立性で評価する
プロスポーツでも、指標が増えすぎて選べないという問題が起きています。Franks らの論文(Journal of Quantitative Analysis in Sports、2016年)は、経営や指導の判断に使う指標を、次の3つの基準で評価する方法を示しました。分析の対象は、2000年以降のNBAの70指標とNHLの40指標です。
- 安定性:時間がたっても同じものを測れているか
- 区別力:選手の違いを見分けられるか
- 独立性:ほかの指標にない新しい情報があるか
NBAの3ポイントシュート成功率は、調べた指標の中で安定性も区別力も最も低く、同じシーズン内の選手間の差の50%超は偶然によるものでした。一方で総合力を表す5つの指標は、第1主成分(複数の数字に共通する動きをまとめたもの)だけで動きの75%を説明でき、情報の多くが重なっていました。逆にスティールは、ほかの69指標で説明できる動きが60%にとどまり、独自の情報を持っていました。よく見られている数字でも、質が高いとは限らないわけです。
論文は、何を信号とみなすかは判断の目的で変わるとも述べています。年間の表彰のように今季の貢献を見るときと、獲得するかを決めるときでは、再現性の扱いが違います。
ただし、試合と仕事は同じではありません。この研究の対象はNBA・NHLの選手で、企業のKPIで確かめたものではありません。また企業は比べる部門の数も月次の実績も少ないため、統計モデルをそのまま使えません。そこで3つの基準を質問に置き換え、過去の実績を見て判定します。さらに論文が断っているとおり、3つの基準では競技にとっての重要さまでは分からないので、経営目標とのつながりを先に確かめます。
解決策|KPIを3つの質問で判定し、残す・直す・外すに分ける
新しい管理システムは入れません。いま使っているKPIを1つずつ、経営目標とのつながりを確かめたうえで、次の3つの質問にかけます。
- 安定性:同じやり方を続けているのに、月ごとに大きく揺れていないか。揺れるなら、集計の期間を長くするか、件数の多い単位で見ます。
- 区別力:部門や拠点の違いが見えるか。どこも同じ値なら、改善の判断には使えません。
- 独立性:ほかのKPIを見れば分かる数字ではないか。動きがほぼ同じなら、1つにまとめます。
すべて通ったものは残し、定義や集計の期間で直せるものは直し、どちらでもないものは外します。あわせて、今期の貢献を見る数字と次の対応を決める数字を分けます。残ったKPIには、動いたときに誰が何をするかを1行で書き添えます。
進め方|1事業部で棚卸しし、2四半期試してから広げる
全社のKPIを一度に変えると、どの変更が効いたのか分からなくなります。まず1事業部で試し、会議の進め方が変わるかを確かめてから広げます。
診断では、いま報告しているKPIをすべて書き出し、過去の月次実績で3つの質問に答えます。設計・試行では、残す・直す・外すを決めて定義書にまとめ、2四半期のあいだ実際の会議で使います。定着では、ほかの事業部に広げ、半期ごとの見直しを社内の予定に組み込みます。
期間は目安です。診断だけ、1事業部だけといった始め方もご提案します。Human Soarは様式の用意・聞き取り・実績データの判定・定義書の文書化を担い、御社には報告資料と実績データの共有、試す事業部の決定をお願いします。
成果物|支援が終わっても社内で見直せる4つの仕組み
成果物は、ひな形を渡して終わりにはしません。どれも御社の実際の数字をもとに、一緒に作ります。
最初にできるのが「KPI棚卸し表」です。いま報告しているKPIと、作成にかかる手間、使っている会議を一覧にしたもので、診断の結果を経営に報告するときにそのまま使えます。次に、経営企画の担当者が判定に使う「KPI判定シート」を作ります。3つの質問への答えと、残す・直す・外すの結論を1枚に残します。
残したKPIは「KPI定義書」にまとめます。計算式、データの出どころ、担当者、見る頻度、動いたときの対応を書くので、担当者が替わっても同じ数字を出せます。最後に「半期ごとの見直し手順」を整え、新しいKPIを足すときも外すときも、社内だけで同じ基準で決められるようにします。
期待できる効果|経営・部門長・担当者の3つが変わる
経営にとっては、会議で見る数字が絞られ、数字をもとに次の対応を話し合う時間が増えます。部門長は、数字が動いたときに実力の変化か一時的な揺れかを落ち着いて読めるようになり、そのつど原因の説明に追われることが減ります。担当者は、使われていない数字を集める手間から離れられます。
見る数字は「KPIをもとに決めた対応の件数」です。KPIの数を減らすこと自体は目的ではありません。もう1つ「報告資料の作成にかかる時間」を見ると、手間が減ったかが分かります。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、KPIを見直す時期です。
Human Soarからのコメント
KPIは足すより外すほうが難しいものです。誰かが大事だと思って置いた数字を外すには、納得できる理由が要ります。スポーツの研究が示した3つの基準は、その理由を言葉にする助けになります。御社の数字を一緒に見ながら、毎月の判断に使えるKPIを選び直します。
よくあるご質問
Q. KPIはいくつまでに絞ればよいですか?
決まった数はありません。3つの質問を通り、数字が動いたときの対応まで決められたものだけを残します。経営会議や部門会議で毎月扱いきれない数なら、まだ多いと考えます。
Q. 実績データが少ない部門でも見直せますか?
見直せます。統計モデルは使わず、過去の月次実績と部門別の比較で判定するためです。新設の部門など実績がほとんどない場合は、定義と計算式だけを先に決め、半年分の実績がたまった時点で判定します。
Q. 3つの基準を満たせば、業績につながるKPIと言えますか?
言えません。3つの基準が確かめるのは数字の測り方の質で、業績への効き目までは分かりません。そのため最初に経営目標とのつながりを確かめ、半期ごとの見直しで業績との関係を確認します。
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