法律で決まった定期健康診断は事業者の義務なので、福利厚生というより必ず行うものです。福利厚生になるのは、検査項目の追加や人間ドックの補助など法定を超える部分です。結果を運動につなげると、スポーツを使った健康施策の入口にもなります。
「健康診断は福利厚生に入りますか」と聞かれて、すぐに答えられなかった。求人票に書いてよいのか、費用はどこまで会社が持つのか、再検査はどうするのか。意外と整理されていないものです。
この記事では、法律の義務と福利厚生の境目、費用と賃金の扱い、上乗せの選び方、結果をスポーツや運動につなげる方法を順に整理します。
健康診断は法定の部分と上乗せの部分で扱いが分かれる
事業者は、常時使用する労働者に1年以内ごとに1回、定期健康診断を行う義務があります。根拠は労働安全衛生法第66条と労働安全衛生規則第44条です。これを超えて会社が任意で行う部分が、福利厚生に当たると考えられます。分け方は本記事の整理です。
| 区分 | 例 | 費用 |
|---|---|---|
| 法定の健康診断 | 雇入れ時、年1回の定期健診 | 事業者が負担すべきもの |
| 上乗せの検査 | がん検診、検査項目の追加 | 会社が任意で決める |
| 人間ドックの補助 | 一定年齢以上への補助 | 会社が任意で決める |
| 再検査・精密検査 | 健診後の医療機関の受診 | 法令で定めなし。社内で決める |
出典:厚生労働省、石川労働局の資料をもとに本記事で表にしました。
(参考)定期健康診断 – 職場のあんぜんサイト(厚生労働省)
(参考)健康診断の費用は労働者と使用者のどちらが負担するものなのでしょうか? – 厚生労働省
(参考)労働安全衛生法に基づく健康診断に関するFAQ – 石川労働局
Q. 健康診断は福利厚生ですか?
法律で決まった定期健康診断は事業者の義務なので、福利厚生というより必ず行うものです。がん検診の追加や人間ドックの補助など、法定を超えて会社が任意で行う部分は福利厚生に当たると考えられます。
法定の健康診断は費用を事業者が負担し時間の賃金は協議で決める

お金の扱いは、費用と受診時間の賃金で分けて考えます。厚生労働省の案内を確かめます。
費用は事業者が負担すべきものとされる
厚生労働省のQ&Aは、法で義務づけられた健康診断の費用は事業者が負担すべきものとしています。社員に立て替えさせたままにせず、精算の流れを決めておきます。
(参考)健康診断の費用は労働者と使用者のどちらが負担するものなのでしょうか? – 厚生労働省
受診時間の賃金は支払うことが望ましい
一般の健康診断は業務との直接の関連で行うものではないので、受診時間の賃金は労使の協議で定めるものとされています。ただ、円滑に受診してもらうため、支払うことが望ましいとされています。有害業務の特殊健康診断は労働時間に当たり、賃金の支払いが必要です。
(参考)健康診断を受けている間の賃金はどうなるのでしょうか? – 厚生労働省
Q. 健康診断の費用は誰が払いますか?
法律で決まった健康診断の費用は、事業者が負担すべきものと厚生労働省は説明しています。再検査や精密検査の費用は法令で定められておらず、会社の規程や労使の話し合いで決めます。受診時間の賃金は、支払うことが望ましいとされています。
福利厚生としての上乗せは全員が使える形にする
任意の部分を手厚くするときは、対象の決め方に注意します。国税庁の事例は、一定の年齢以上の全従業員が受けられる人間ドックなら給与課税は不要とし、限られた人だけなら課税の問題が生じるとしています。
JILPTの調査では、人間ドック受診の補助を必要だと思う人は38.8%で、制度の中で最も多くなっています。上乗せの最初の候補として検討しやすい制度です。詳しくは次の記事で整理しています。
あわせて読みたい人間ドックの補助|協会けんぽ2.5万円と企業のスポーツ施策›
(参考)調査シリーズNo.263「福利厚生に関する労働者調査」(2026年3月) – 労働政策研究・研修機構
有所見率は59.4%で再検査の受診まで見届ける
群馬労働局の資料によると、令和6年の定期健康診断の有所見率は全国で59.4%でした。半数以上の人に何らかの所見があるので、受けて終わりにはできません。事業者には結果の通知や、医師の意見を聞くことなどの決まりがあります。
再検査の受診を促すには、受診の時間を取りやすくする、費用の扱いを先に決めておくといった方法があります。社員の健康情報は慎重に扱い、見る人を限ります。担当者の全体の仕事は社員の健康管理の記事で整理しています。
(参考)定期健康診断 – 職場のあんぜんサイト(厚生労働省)
健診の結果をスポーツや運動につなげる

健診の結果が返ってくる時期は、体を動かす案内を届ける機会です。厚生労働省の身体活動ガイドは、成人に1日約8,000歩以上と週2〜3日の筋力トレーニングを勧めています。スポーツエールカンパニーの坂川建設のように、歩数の目標と手当を組み合わせる例もあります。流れは本記事の提案です。
持病がある人や治療中の人は、運動の前に医師に相談するよう添えます。歩数の企画は企業のウォーキングイベントが参考になります。社員の健康施策の全体はウェルビーイングの施策の考え方で説明しています。
あわせて読みたい健康診断の運動習慣の質問|スポーツ施策に生かす企業の使い方›
(参考)健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 – 厚生労働省
(参考)スポーツエールカンパニー2024認定企業一覧 – スポーツ庁
Q. 健康診断を受けない社員がいる場合はどうすればよいですか?
事業者には実施の義務があり、労働者にも受ける義務があるとされています。業務時間内に受けられるようにする、日程を複数用意するなどで受けやすくします。それでも難しい場合は、社会保険労務士など専門家に相談してください。
健康診断と福利厚生の要点
- 法定の定期健診は事業者の義務で、費用は事業者が負担すべきもの
- 受診時間の賃金は協議で決めるが、支払うことが望ましい
- 法定を超える部分が福利厚生に当たる
- 有所見率は59.4%で、再検査まで見届ける
- 結果が返る時期に運動の案内を届ける
まずは自社の健診の費用、受診時間の賃金、再検査の扱いが規程に書かれているかを確かめてください。
FREE DOCUMENT
関連する資料を無料でダウンロード




コメント