ノー残業デーや声かけを続けても、残業が減らない。業務量と上限と休みが、計画に入っていないためです。スポーツ庁が示す部活動の基準は、時間の上限と休みを先に決め、計画で回す形になっています。同じ順番で、部署ごとの業務量、上限、休みの計画と、超えそうなときの決まりをつくります。
対象となるお客さま
- 残業削減を任されている人事・労務の担当者
- 部署の業務量と人員のやりくりに悩む部門長
- 長時間労働を数字で確かめたい経営者・事業責任者
よくあるお悩み
- ノー残業デーを続けても、ほかの日の残業が増えるだけに見える
- 「早く帰ろう」と声をかけても、仕事の量が変わらない
- 残業が特定の部署や人に偏り、全社の平均では分からない
課題|週60時間以上の人は7.7%で、国の目標の5%に届いていない
平均だけを見ると、残業は多くないように見えます。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2025年の所定外労働時間は月9.8時間で、前年より2.5%減りました(事業所規模5人以上)。パートタイム労働者を除く一般労働者では月13.2時間です。
ところが、長く働く人は残っています。令和8年版の過労死等防止対策白書によると、週40時間以上働く雇用者のうち、週60時間以上の人の割合は令和7年に7.7%でした。前年から0.3ポイント減りましたが、国の大綱の目標である5%には届いていません。
業種の差も大きく、運輸業・郵便業は17.4%、宿泊業・飲食サービス業は14.4%、教育・学習支援業は12.3%です。運輸業・郵便業は、計算すると全体の約2.3倍です。平均が小さくても長時間の人はいるので、社内でも平均だけでは部署や人の偏りが分かりません。
休みの面でも、目標との差が残っています。年次有給休暇の取得率は令和6年に66.9%で、10年連続で上がりましたが、目標の70%には届いていません。勤務間インターバル制度(終業から次の始業までに一定の休息時間を設ける制度)を導入している企業は、令和7年1月1日時点で6.9%です。
原因|残業の理由は業務量と人員なのに、帰る時刻だけを変えている
厚生労働省の委託調査(令和元年度・労働者9,798人・複数回答)で残業が生じる理由を見ると、「業務量が多いため」が57.0%で最も多く、「人員が不足しているため」が40.4%、「仕事の繁閑の差が大きいため」が30.7%と続きます。ノー残業デーや声かけが働きかけるのは帰る時刻です。業務量が同じなら、その日の仕事は別の日に移るだけになります。
残業が減らない職場の仕組みには、次の3つが欠けています。
- 業務量の見積もりがない:月ごとの業務量と人員を並べていないので、足りない月と人が前もって分かりません。
- 現場で使う上限がない:法律の上限は、超えてはならない線です。毎月の運用の目安には向きません。
- 休みが計画に入っていない:仕事が落ち着いたら休む形では、忙しい月に休みが入りません。
法律の上限は、時間外労働が原則として月45時間・年360時間です。労使で合意して特別条項を使う場合も、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満、2〜6か月の平均で80時間以内とされ、月45時間を超えられるのは年6か月までです。一部の業務には別の決まりがあります。
スポーツ知見|部活動の基準は、時間の上限と休みを先に決めて計画で回す
部活動には、国が示す活動量の基準があります。令和7年12月のガイドラインは、週2日以上の休養日を設け、1日の活動時間は長くとも平日2時間程度、休日3時間程度、週11時間程度の範囲内とし、長期休業中には一定期間のオフシーズンを設定するとしています。その中で「できるだけ短時間で合理的かつ効率的・効果的な活動を行うこと」を求めています。
この基準は、スポーツ医・科学の研究も踏まえて設定されたものです。ガイドラインは、公益財団法人日本体育協会が平成29年に示した「休養日を少なくとも1週間に1~2日設けること」、週当たりの活動時間の上限は「16時間未満とすることが望ましい」という見解を挙げています。スポーツ庁の資料によると、平成28年度の調査では、1週間に休養日を設けていない中学校が22.4%ありました。
注目したいのは、数字を決めて終わりにしていない点です。地域クラブ活動の認定では、活動日、休養日、参加予定の大会を書いた年間の計画と、毎月の計画を作って公表していることを確かめます。学校の部活動では、校長が方針をホームページなどで公表し、活動時間と休養日が守られているかを確かめて、必要なら指導・是正します。
例外の扱いも決まっています。スポーツ庁のFAQは、この基準は日常的な練習を想定したもので、大会参加などの特殊な事情にまで厳密な遵守を求めるものではないとしています。平成30年のガイドラインには、週末に大会で活動したら休養日を他の日に振り替える、という定めがありました。
(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月) – 文部科学省
(参考)運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(平成30年3月) – スポーツ庁
(参考)運動部活動の現状について(平成29年5月) – スポーツ庁
ただし、試合と仕事は同じではありません。部活動の基準は、成長期の生徒の生活のバランスを守るためのもので、会社員で確かめたものではありません。また、部活動の活動量は基準と計画の中で調整できますが、会社の業務量は顧客の要望や納期にも左右されます。時間の上限だけをまねると、仕事が持ち帰りや記録されない残業に移るおそれがあります。そのため、業務量の見直しと勤怠記録の確認を一緒に進めます。法律の上限と36協定は、これとは別に必ず守ります。
解決策|業務量、上限、休み、例外の順に決める
帰る時刻を呼びかける前に、次の4つを順に決めます。ノー残業デーは残してもかまいませんが、これらの代わりにはなりません。
- 業務量の見積もり:月ごとに業務の時間を見積もり、人員と並べる。足りない月は、やめる業務、外に頼む業務、応援の人を先に決める
- 部署別の上限:法律の上限より手前に、部署ごとの月と週の上限を決める。数字は実績と業務量から決める
- 休みの年間計画:年次有給休暇と連休を年度の初めに予定へ入れ、繁忙の後の休みも先に置く
- 超えそうなときの決まり:誰に相談し、誰が判断し、後でどこで休むかを決める。顧客対応の受付時間や納期の決め方も見直す
休みの計画には、今ある制度も使えます。年5日の年次有給休暇の時季指定は、平成31年4月から事業主の義務です。年次有給休暇の計画的付与制度(会社が計画を立てて休暇日を割り当てる制度)がある企業は、令和7年の調査で40.8%でした。計画と実績は社内で公開し、毎月並べて確かめます。
進め方|1部署で試してから、全社に広げる
最初から全社に上限を広げると、部署の事情に合わず、記録されない残業に移るおそれがあります。まず1部署で、見積もりと実績がどれだけずれるか、上限と休みの計画が守れるかを確かめます。
診断では、直近1年の勤怠の記録、36協定、業務の一覧を一緒に棚卸しし、部署、人、月ごとの偏りを調べます。設計・試行では、1部署で業務量の見積もり、上限、休みの計画を作り、やめる業務を決めて、毎月実績と比べます。定着では全社に広げ、月次レビューの手順にして運用します。
期間は目安です。診断だけ、1部署だけといった始め方もご提案します。Human Soarは様式の用意・聞き取り・集計・月次レビューの進行を担い、御社には勤怠の記録と業務の一覧の共有、試す部署の決定、やめる業務の判断をお願いします。法令や賃金に関わる確認は、御社の社会保険労務士などの専門家と進めます。
成果物|支援が終わっても社内で回せる4つの計画と手順
成果物は、ひな形を渡して終わりにはしません。どれも御社の勤怠の記録と実際の業務をもとに、一緒に作ります。
年度の初めに使うのが「部署別上限表」と「年間休暇カレンダー」です。人事と部門長が部署ごとの上限を決め、社員全員が休みと繁忙の時期を確かめられるようにします。毎月は、部門長が「業務量見積もり表」で翌月の業務量と人員を並べ、足りない分の対応を決めます。
最後に「超過時の対応と月次レビューの手順」を整えます。上限を超えそうなときに部門長と人事が使い、月に一度は計画と実績を確かめます。既存の部門会議や安全衛生委員会に組み込めるので、支援が終わった後も社内だけで回せます。
期待できる効果|平均ではなく、部署ごとの偏りを数字で説明できる
経営にとっては、どの部署で人員や業務量に手を入れるべきかを、数字で判断しやすくなります。部門長は、足りない月を前もって知り、やめる業務や応援を先に決められます。人事・労務の担当者は、呼びかけではなく計画と実績をもとに部署と話せます。社員は、自分の休みと忙しい時期を先に見通せます。
見る数字は2つです。「部署別の上限を超えた人の割合」で偏りを、「年間計画どおりに取れた休みの割合」で計画が守られているかを確かめます。記録を正確にすると、始めた直後は残業が増えて見えることがあります。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、計画を見直す時期です。
Human Soarからのコメント
部活動の基準は、「頑張りすぎないように」と呼びかけるのではなく、上限と休みを先に数字で決め、計画に書いて公表する形をとっています。残業も、声かけだけでは仕事の量は変わりません。業務量を見積もり、上限と休みを先に決める仕組みを、御社の部署の実情に合わせて一緒につくります。
よくあるご質問
Q. ノー残業デーはやめたほうがいいですか?
やめる必要はありません。ただし、ノー残業デーだけでは業務量が変わらないので、主な手段にはしません。業務量の見積もりと部署別の上限を先に決めたうえで、定時に帰る日を年間の予定に組み込みます。
Q. 残業が減ると、残業代も減って不満が出ませんか?
出ることがあります。残業代を収入の一部として考えている人にとっては、大事な変化だからです。そのため、残業が減った場合の処遇の扱いを経営と人事で早めに話し合い、社員に説明する場を設計に含めます。賃金に関わる変更は、社会保険労務士などの専門家と確かめながら進めます。
Q. 繁忙期や急な顧客対応で、上限を超えそうなときはどうしますか?
あらかじめ決めた手順で対応します。誰に相談し、誰が判断し、後でどこで休むかを決めておきます。部署別の上限を超える場合があっても、法律の上限は超えないように、毎週の時点で実績を確かめます。
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