1997年に当時史上最年少でJ1デビューし、アーセナルやガラタサライなど欧州の名門クラブを渡り歩いた稲本潤一。日韓ワールドカップではベルギー戦の逆転ゴールとロシア戦の決勝点で日本中を沸かせた稲本は、2024年12月に47歳で現役を退くまで、関東リーグの南葛SCでプレーを続けながら独自の食事管理でコンディションを維持していた。夜間練習という変則的な生活リズムの中で、稲本が実践していたのは1日3食にこだわらない柔軟な栄養摂取だった。現役時代のインタビューをもとに、その具体的な中身を紹介する。
南葛SC時代に確立した「1日4〜5食」のリズム
稲本が南葛SCに加入した当時、チームにはクラブハウスがなく、練習時間も夜7時から9時という変則スケジュールだった。それまでのプロ生活では午前中に全体練習を行い、午後に体のケアや筋力トレーニングを済ませるのが習慣だったため、昼夜が逆転する生活への適応が課題になった。
そこで稲本が選んだのが、決まった時間に3食をとる従来型の食事から、1日4〜5食に分けて栄養を摂取するスタイルへの切り替えだった。練習前には炭水化物などエネルギー源になるものをしっかり摂り、練習後はリカバリーに適した食品を、就寝前にはたんぱく質が多いものを選ぶというように、3食という枠にとらわれず「その時に必要なもの」を摂る考え方に変えていったという。
移籍直後は生活リズムの変化に戸惑うことも多かったというが、時間をかけて自分なりのペースをつかんでいったことも語っている。回数を増やすこと自体が目的ではなく、練習時間から逆算して栄養が必要なタイミングを見極める発想が、この食事法の核になっている。
練習前後で使い分けた栄養補給とリカバリー飲料
変則的な生活リズムの中でも栄養素を計画的に摂るため、稲本は市販のリカバリー飲料も活用していた。エネルギー補給とリカバリーの両方を意識した飲料を、練習前と練習後に必ず摂るようにしていたと語っている。
当時は毎食指導を受ける専属の栄養士がいたわけではなく、質問すれば答えてくれる栄養士のアドバイスと、妻の協力を受けながら食事全体を管理していた。決まったメニューを機械的にこなすのではなく、自分の体調と相談しながら食べるものを選ぶという姿勢が、40代を過ぎても現役を続けられた土台のひとつになっている。
飲料や補食に頼るのはあくまで「補う」ためであり、主食と副菜からなる普段の食事を土台に据えていた点も見逃せない。エネルギー補給とリカバリーという異なる目的を分けて考え、練習前後で摂るものを使い分ける習慣は、時間の制約が大きい社会人にも応用しやすい発想だ。
(参考)サッカー元日本代表・稲本潤一選手から学ぶ、”ベストコンディション”を維持する秘訣 – MELOS
揚げ物を「オフの日だけ」に絞った線引き
食事管理というと制限ばかりが強調されがちだが、稲本の場合は完全に断つのではなく、食べるタイミングを線引きする方法をとっていた。油ものは以前からできるだけ控えていたが、我慢ばかりではストレスになるとして、試合の翌日やオフの日には好きなものを楽しんでいたという。
練習がある日や試合の前日は揚げ物を避けるというルールを自分の中に設け、それ以外の日は柔軟に対応する。制限と楽しみのバランスを取ることで、長期間にわたって食事管理を継続できる仕組みを作っていたと言える。
好きなものを完全に断つ食事制限は短期間なら続いても、長期的には反動やストレスにつながりやすい。稲本のように「食べていい日」をあらかじめ決めておく方法は、我慢の総量を減らしながら結果的に食事管理全体を長続きさせる工夫だと言える。
栄養士に頼り切らず家族と二人三脚で支えた食卓
稲本の食事管理を語るうえで欠かせないのが、家族のサポートだ。専属の栄養士がつかない環境の中で、妻の協力を得ながら日々の献立を組み立てていたことが、変則的な生活リズムでも栄養バランスを崩さなかった理由のひとつになっている。
トレーニング、食事、休養という3つの要素を同じペースでルーティーン化していくことが、コンディションを維持するうえで重要だと稲本自身も語っている。環境が変わるたびに戸惑いながらも、少しずつ自分に合ったペースを見つけていくプロセスは、年齢を重ねてから新しい生活リズムに適応する必要がある人にとっても参考になる考え方だ。
ウェアラブル端末で食事とコンディションのつながりを可視化する
稲本のように練習時間が変則的な人ほど、食事のタイミングと体調の関係を感覚だけに頼らず数値で確認する仕組みが役立つ。Apple Watchを例に、変則的な生活リズムでも使える方法を紹介する。
夜練習の日と朝練習の日でデータを取り分ける
Apple Watchを装着していれば、睡眠時間・安静時心拍数・消費カロリーが自動で記録される。稲本が経験したような昼夜が入れ替わる生活では、練習が夜だった日と朝だった日でこれらの数値を分けて眺めるだけでも、体への負担のかかり方の違いが見えてくる。
ヘルスケアアプリで食事のタイミングを逆算する
iPhoneの「ヘルスケア」アプリでは、就寝直前に食事をとった日ほど深い睡眠の割合が下がる傾向が確認できる場合がある。稲本が「練習後はリカバリー、就寝前はたんぱく質」と使い分けていたように、記録から自分に合う食事の時間帯を逆算していく。
数値が崩れた日から食事の並べ方を見直す
安静時心拍数がなかなか下がらない日が続いたら、練習後の補食を練習後30分以内に早めてみる、就寝2時間前までに食事を終えるようにするなど、1つずつ条件を変えて数値の変化を確かめていく。
よくある質問
1日4〜5食に分けることに医学的な決まりはあるのか
食事の回数そのものに絶対的な正解はなく、生活リズムや練習時間に合わせて栄養摂取のタイミングを調整するという考え方が本質だ。稲本のケースも、3食という固定観念を外し、練習前後や就寝前に必要な栄養素を分けて摂るという柔軟な発想がベースになっている。
揚げ物をオフの日だけにする線引きは効果があるのか
完全に禁止するのではなく食べる日を限定する方法は、無理なく食事管理を継続しやすいという利点がある。ストレスをためすぎないことも、長期的なコンディション維持には欠かせない要素だ。
栄養士がいない環境でも食事管理は可能か
稲本のように、必要なときだけ栄養士に相談しながら家族の協力を得るという形でも、日々の食事管理は十分に成り立つ。大切なのは専門家任せにせず、自分の体調の変化に関心を持ち続けることだ。
40代でも食事管理次第で現役を続けられるのか
稲本は47歳まで現役を続けた選手であり、年齢を重ねても生活リズムに合わせて食事の摂り方を見直し続けたことが、コンディション維持の土台になっていた。年齢による衰えを前提にしつつ、食事のタイミングを微調整していく姿勢が長く現役を続ける鍵になる。
まとめ
- 稲本潤一は南葛SC時代、夜練習という変則スケジュールに合わせて1日4〜5食に分けて栄養を摂取していた
- 練習前は炭水化物、練習後はリカバリー食、就寝前はたんぱく質という使い分けを徹底していた
- 揚げ物は完全に断つのではなく、試合前日や練習日は避けオフの日に楽しむという線引きをしていた
- 専属栄養士がいない環境でも、妻の協力を得ながら食事全体を管理する体制を築いていた
- トレーニング・食事・休養を同じペースでルーティーン化することが、47歳までの現役生活を支えた
マラソンランナーの栄養管理については以下の記事でも詳しく解説している。

バレーボール選手の食事管理の考え方は別の視点からも参考になる。


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